自社の本当の強み
 

  ■自社の本当の強みとは

   ほとんどの社長は新規の見込み客などから、「御社の強みはどういった点です
   か?」という質問を受けた場合には、自社の優れている点をいくつもあげることが
   できると思います。

   しかし、そこでの答えは「相手に自社と取引したいと思わせるにはどうすれば効果
   的か」という対外的なアピールに重きが置かれていることが多いのではないでしょ
   うか。

   もちろんアピール材料として「自社の強みの見せ方」も重要ですが、会社の長期
   的な舵取りのためには、さらに深いレベルで自社の強みを捉える必要があります。

   ここではこの自社の「強み」について掘り下げて考えてみましょう。

  □本当の強みとは自社の将来を保証してくれるもの

   会社経営において、つねに自社の「強み」をいかした経営がなされているかどうか
   は非常に重要なポイントです。

   ここでいう「強み」とは、現在の自社のアピールポイントではありませんし、今期の
   売り上げ目標を達成してくれる要因のことでもありません。

   もっとも重要なのは、

    この部分さえしっかりしていれば、
    自社は今後とも長期間にわたって、存続・成長し続けることができる

   と社長が自信をもって言い切れる自社の 「核」となる部分のことです。

   しかしながら、そのような核を見極めることは容易ではありません。

   また、後述するように核となる部分は社内外の環境によっても次第に変化してい
   きますので、定期的な見直しも必要です。

   具体的に、自社の本当の強みについて以下のステップで確認してみます。

    (1)強みをできるだけ明確に特定する
          ↓
    (2)競合企業よりも本当に優れているかを確認する
          ↓
    (3)現状だけではなく、将来における強みも検討する
          ↓
    (4)強みを強化するための計画を策定する


   (1)強みをできるだけ明確に特定する

     自社の強みについて考えるときには、できるだけ強みを特定して把握すること
     が大切です。

     たとえばメーカーなどが「我が社の強みは技術力にある」とするときでも、どの 
     分野の技術力が強みなのかを特定しておかないと、強みをさらに高める施策
     に結びついていきません。

     「ローコストで大量生産する技術力」と「高付加価値のオーダーメイドに応えて
     いく技術力」とでは大きく異なります。

   (2)競合企業よりも本当に優れているかを確認する

     また、「自社の強みが商品開発力」にあると考える場合でも、「ユニークな商品
     を次々に設計する力」と「仕様通りに安定的に生産する力」では認識すべき強
     みは異なるでしょう。

     自社の強みを競合企業と比較するためには、さまざまな情報収集が必要にな
     ります。

     競合企業の製品やサービスを実際に利用したり、専門誌などによって業界動
     向をつねに把握しておかなければなりません。

     多くの社長すでにこのような情報収集を行っていると思いますが、大切なのは
     それをどれだけタイムリーに行っているかということです。

     たとえば競合企業が自社よりも優れた製品の販売を開始した場合、「その販
     売前に気づくか」、「販売直後に気づくか」、「他社製品に自社の顧客を奪われ
     てから気づくか」では、自社として対応可能な選択肢の幅は大きく異なってきます。

     またどうしても自社の強みについては「過大評価」してしまいがちですので、時
     には第三者からの客観的な評価を受けることも大切でしょう。

   (3)現状だけではなく、将来における強みも検討する

     厳しい経営環境をくぐり抜けて、会社がこれまで存続してきたのは、「過去」に
     おいては会社がその時代にマッチした何らかの「強み」をもっていたからに他
     なりません。

     しかし、これは将来に向けて会社存続を保証してくれるものではありません。

     現在の自社の強みがそのままの形で5年後、10年後も通用するとは通常は
     考えにくいでしょう。

     これは特定分野における強みの「度合い」だけの問題ではありません。

     たとえばAという精密機械製造のための熟練技術を「強み」として保有している
     会社が、今後もその熟練度合いをさらに高めていけば会社存続が保証される
     かといえばそうはなりません。

     それは世の中に圧倒的な「技術革新」が起こって、A製品がもつ欠点をすべて
     カバーする新しいBという次世代製品が生まれたり、消費者の「ライフスタイル
     の激変」などによってA製品に対するニーズがまったくなくなることも大いにあり
     得るからです。

     つまり既存の強みのレベルアップという「度合い」の問題だけではなく、既存と
     は異なる新たな強みという「質」そのものについても考慮する必要があるのです。

     たとえば昔は音楽も映像も記録媒体としてはテープが使われていました。

     この分野に関わるメーカーはテープ上にできるだけ高品質で記録するという目
     的のために、テープ自体もテープに記録するヘッドの部分についても改良を重
     ねてきました。

     しかし、ご存じのとおり、今ではデジタル技術の革新によって、音楽も映像も
     ハードディスクなどに保存することが当たり前になっています。

     つまり「テープに高品質に記録できる度合い」はいくら高めても強みとはいえな
     くなったのです。

     また、最近では消費者の環境意識が高まるなか、自動車メーカーでは「低燃
     費で環境に優しいエコカー」の開発にしのぎを削ってきています。

     自動車メーカーに製品を納入している中小企業にとっては、エコカーに対応し
     た技術開発が当面の「強み」にはなります。

     しかし、すでにハイブリット車の普及が加速しているように、近い将来には電気
     自動車が自動車の標準スタイルになる時代が必ずくるでしょう。

     その際には従来型の燃料自動車をエコ化する技術は、そのままでは電気自
     動車に対応できなくなることも十分に考えられます。

     つまりそれまで築き上げてきた燃料自動車製造における「強み」が通用しなく
     なる可能性があるということです。

     自社の強みについて検討するためには、このような将来的な環境変化につい
     ても十分に考慮し、必要に応じて、現時点では直接的には収益に結びつかな
     い「次世代の強み」についても育てていく必要があります。

       既存の強みが急速に価値を失うこともある

   (4)強みを強化するための計画を策定する

     自社の強みが明らかになったら、それらの強みを具体的にどのような手順で
     強化していくのかという計画策定に入ります。

     ここでは前述の「技術革新・ライフスタイルの転換点」なども意識した計画にす
     る必要があります。

     また、ここで重要になるのが「マイルストーン化」、「定量化」、「優先順位付け」
     です。

     まずは「マイルストーン化」ですが、これは自社の強みを数年後までどのような
     段階を経て獲得していくかについての道筋をつけるということです。

     たとえば自社の特定の製造技術を今後も強みとする場合、「1年後にはこのレ
     ベルの技術者を何人保有、3年後にはさらに何人‥」という具合に明確にして
     いきます。

     次に「定量化」ですが、これは後の進捗管理の段階でどれだけ計画通りに進
     んでいるかを、分かりやすくするために可能な限り目標を数値に置き換えてお
     くということです。

     たとえば、顧客サービスの充実を自社の強みとする場合、「3年後には地域で
     もっとも愛される店になる」という計画を掲げても、何をもってそうなったといえ
     るのか分かりません。

     「顧客満足度アンケートを3年後には10点満点申9.5点にする」など定量化す
     ることで、はじめてその進捗状況が把握できます。

     最後に「優先順位付け」です。

     前述のように自社の強みを高めていくためには、目前の競争に勝っていくため
     の短期的な強みの強化から次世代に向けた種まき的な強化まで、さまざまな
     レンジでの施策が必要になります。

     問題はこれらのバランスです。

     実際には現時点での自社の経営状況や現在の強みの発展性、次世代の強
     みが収益につながり始める時期などを考慮して優先順位付けすることになり
     ます。

     特に経営状況が思わしくない場合には長期的な施策は後回しにせざるを得な
     い場合もありますが、少なくともどのような条件がそろったら次世代の強みを
     本格的に育成していくかという目安はもっておくべきでしょう。

  □自社の強みを棚卸しする

   1.自社の価値はどのプロセスで生み出されているか

     自社の強みをさらに明確化するために、ここでは自社の強みを棚卸しするた
     めに「価値連鎖」という考え方を紹介しましょう。

     これは企業がその活動全体を通じて、どのような価値を生み出しているかを総
     合的に判断する手法です。

     たとえば不況のなか、消費者の節約志向は高まるばかりですが、世の中には
     「一斤が数千円のパン」を売って成功している会社もあります。

     普通のお店で売られているパンはせいぜい数百円程度ですから、このお店は
     約十倍の価値のあるパンを売っていることになります。

     おそらく特別な材料を使っているだろうことは容易に想像できます。

     また、お客さんに自社のパンがいかに安全でおいしいかという告知活動も上
     手に行っていることでしょう。

     さまざまなプロセスで自社の強みをいかし、商品に価値を加えることでこのよう
     な高額販売が可能となっているのです。

     価値連鎖の分析はこのような価値創出のプロセスをできるだけ分解して捉え
     ようとするものです。

     この分析を行うことで、自社の経営活動全体のなかのどのプロセスで価値を
     創出しているか(=もっとも強みを発揮しているか)ということが明らかになります。

     これはその強みをいかに高めていくかということだけではなく、強みを利用して
     新たな事業領域を探ることにもつながります。

     また、自社の価値連鎖を改めて見直した結果、現時点ではまったく価値を生
     み出していない(あるいは足を引っ張っている)、そして将来的にも大きな価値
     創出は期待できないと思われるプロセスがあれば、そのプロセスを得意として
     いる会社にアウトソーシングしてしまうという選択肢も生まれます。

   2.自社の価値連鎖を分析する

     業種業態によって違いはありますが、会社経営における価値創出の流れ(価
     値連鎖)はおおむね図のように整理することができます。

     たとえばある製造業者が前記の流れに沿って、価値連鎖分析を行ったところ、
     以下のような結果になったとします。

      ①購買物涜

       入手困難な貴重な原材料を仕入れるルートを確立している

      ②設計・製造

       顧客ニーズを忠実に商品化するための設計ノウハウがある

      ③出荷物流

       共同物流によりコスト削減などの取り組みをしているが改善の余地あり

      ④販売・マーケティング

       市場変化をタイムリーに把握する情報収集力がある

      ⑤サービス

       既存顧客へのフォローが不足しており、顧客流出比率が高い

      ⑥全般管理

       社員の成長を加速する人材育成システム・評価システムがある

     上記の結果から読み取れることは、この会社が生み出している価値はおもに
     ①②④⑥から創出されており、③および⑤、とりわけ⑤ではマイナスの価値が
     発生している可能性があります。

     このとき会社全体の価値を増大させる方向性としては、まず①②④⑥の強み
     については今後とも競合企業に対する優位性を確保することが考えられます。

     この4つのなかで特にどれに注力していくかについては、それぞれの費用対効
     果を試算して決めていきます。

     そして③⑤のうち、たとえば⑤については緊急課題として改善に取り組むが、
     ③については将来的にも自社の価値創出には貢献しにくいので、専門業者に
     アウトソーシングしてしまうということなども考えられます。

     このように自社の価値連鎖の分析ではそれぞれのステップごとの価値増大と
     ともに、全体としての価値の最大化も考慮する必要があります。

   3.強みを強化し新規事業につなげる

     価値連鎖分析によって特に自社にとって強みと思われる部分を強化すること
     で、新たなビジネス進出の可能性を検討することもできます。

     川上から川下までをカバーする大企業においては、特定の機能を担う部門を
     別会社化し、親会社だけではなく外部からも収益を獲得するというのは一般的
     な手法になっています。

     別会社化することで間接コスト負担が増すなどの問題点もありますが、中小企
     業においてもまずは自社内の一部門として新たな収益源を広げるという取り
     組みは可能でしょう。

     たとえば外食事業者が自社の強みを考えるときにまず目が向くのは、「最終的
     に顧客に提供する料理の味やサービスの質」ということになるでしょう。

     もちろんこれ自体は重要な要素ですが、もう少し上流にさかのぼれば、「購買
     物流」のなかの食材調達に強みを見いだすこともできます。

     特に最近の消費者は、料理にどのような材料を使っているかということに非常
     に敏感になっているため、仮に「安全・安心な食材を安価かつ安定的に調達で
     きる」というノウハウをもっていれば、それ自体が大きな強みになります。

     このように考えると外食事業そのものではなく、「購買物流」を自社の強みとし
     てさらに強化し、他の外食事業者、食品メーカー、小売業などにも確かな食材
     を提供する「食材提供業」という新規事業への取り組むことも考えられます。

     そのためには、「農協などの窓口との連携強化」、「契約栽培農家の直接開
     拓」、「自社農園の運営」などの施策が考えられるでしょう。

     さらに、多数の店舗を抱えるチェーン店では、店長やアルバイトをいかに短期
     間で成長させるかということが、非常に重要な要素になっています。

     また、多数の店舗を効率的にコントロールするためのチェーンオペレーション
     に関してのノウハウも蓄積されています。

     これらの人材育成やオペレーションに関するノウハウを活用して、直接競合し
     ない分野のチェーン店に対する支援ビジネスを行うことなども考えられます。

   ここまで述べてきたように自社の強みとは、たんに現時点で競合企業よりも優れ
   ていると思える部分ではなく、「この強みさえしっかりしていれば、自社は今後とも
   長期間にわたって、存続・成長し続けることができる」という会社の屋台骨ともいえ
   る部分です。

   景気低迷で今後も不透明感が増すなかにおいては、自社の強みをしっかりと見
   極めた経営が一層重要になってくるでしょう。


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