不祥事防止と企業の社会的責任
 

  ■不祥事発生の原因

   企業の不祥事は後を絶ちません。

   不祥事は自社の社会的信用を著しく毀損し、最悪の場合はそれによって廃業に
   追い込まれることもあります。

   1.「知らなかった」ではすまされない 

     不祥事が発覚した企業の多くは、経営陣の関与を否定し、「現場が突っ走って
     しまった」などと釈明します。

     その真偽のほどはわからないが、仮にそれが本当だとしても当然ながら経営
     陣は管理責任を問われることになります。

     たとえ社長自身は日頃から「正しい経営」を心掛けていたとしても、それを従業
     員に徹底できなかったことへの責任を免れることはできません。

     もちろん社長自身が不正を指示していた場合は、もはや釈明の余地はありま
     せん。

     社長は不正によって消費者に損害を与えただけではなく、社長という権限を
     使って善良な従業員を組織ぐるみの犯罪に加担させたことになります。

     社長が社内外から糾弾されることは間違いないでしょう。

   2.こんな不祥事もある

     不祥事のなかには、消費者に直接は影響を与えない内部的なものもあります。

     たとえば、経理担当者が取引先と共謀していわゆる「カラ発注」によって経費を
     流用する、飲食業や小売業で店長やアルバイトが売上をごまかすなどがこれ
     にあたります。

     実際の被害の大きさもさることながら、このようなことが外部に漏れると会社の
     信頼感が大きく損なわれることになります。

     ここまで悪質ではなくとも、本来なら経費として認められない費用を会社に請
     求する、交通費を水増し請求する、会社の備品を持ち帰って私的に流用する
     といった「小さな不正」については見落としてしまいがちです。

     そして、これらの不正が半ば「当たり前」のような意識で行われるようになると、
     いずれは大きな不祥事を引き起こす可能性が高まっていくのです。

     これらの不正のほとんどは、ちょっとした工夫で防止することができるはずです。

     実態調査を行い、もし不正が発見されたら、不正を行った社員を罰するだけで
     はなく、今後そのようなことが再発しない管理体制の整備が求められます。

     また、金銭面の不祥事だけでなく、セクハラやパワハラ(上司がその権力を利
     用して通常許される範疇を越える指示などで部下の人格を傷つけること)など
     の人間関係に関するトラブルも大きな不祥事に発展することがあります。

     被害者を出さない、つまりセクハラやパワハラを防止することが第一ですが、
     万一そのような疑いがあるトラブルが発生した場合には「社内倫理委員会」を
     発足するなどして、中立な目で解決の道を探ることなどが必要になってくるで
     しょう。

     さらに、従業員がプライベートな時間に飲酒運転や傷害事件などの問題を起
     こす可能性もあります。

     これらの不祥事は会社とは直接関係ありませんが、報道やインターネット上な
     どで社名が明らかになることも多く、会社全体のイメージダウンは避けられな
     いでしょう。

  □不祥事防止の基本は経営者の姿勢

   1.社長への早期報告が不祥事を防ぐ

     また、現状の管理システムの延長だけでなく、たとえば、「社長ホットライン」の
     ような、すべての従業員の声を聞く仕組みを新たにつくることも有効です。

     現場の従業員が「うちの部門長の行動はおかしいな」と感じることがあっても、
     それを部門長に問いただしたり、ましてや社長に直訴することは大変勇気が必 
     要です。

     そこで社長が日頃から「疑問を感じたら何でも相談してほしい」という姿勢を示
     し、従業員の心のハードルを下げるようにします。

     その際には「社長への直訴は密告ではなく会社をよくするため」、「直訴した内
     容が勘違いであってもとがめることは一切なし」といつたことをアピールしてお
     くことも欠かせません。

   2.索制機能が不祥事を防ぐ

     さらに社長自身も牽制を受ける、つまり社長の判断に対し、周囲が「それはお
     かしい」といえる雰囲気づくりを行っておくことも大切です。

     社長が「この施策は我が社のために絶対必要」と感じていても、別の角度から
     みると、その施策は「消費者軽視につながる」ということはあり得ない話ではあ
     りません。

     事実、社長が主導して不正を行っていた企業では、会社のために良かれと思
     うあまりに消費者の顔が見えなくなっていたというケースが少なくありません。

     上場企業などの大手企業では、株主総会や役員会といった牽制機能が働き
     やすいといえますが、オーナー色の強い中小企業の場合は、実質的には「社
     長の判断がすべて」という状況に陥りやすいものです。

     いかに優れた社長であってもつねに正解を導き出せるとは限りません。

     特に経営の重要事項を決定するときには経営幹部や専門家の意見にも耳を
     傾けることが必要でしょう。

  CSRという考え方

   1.企業の社会的使命を果たす

     前項まで不祥事の防止および発生後の対応について説明してきましたが、不
     祥事を起こさないということはあくまで企業としての最低ラインであって、本来
     であればもう−歩進んで企業としての社会的な使命を全うしていきたいものです。

     ここからはそのための代表的な考え方である、「CSR」を中心に説明していきます。

     CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略で通常は「企業の社会 
     的責任」と訳されます。

     社会的責任の意味するところは、

      企業は、自社の利益を追求するだけではなく、社会の一員としての
      ルールを守り、さらには環境対策や地域振興など広く社会に貢献して
      いく姿勢が求められる

     ということです。

     そして、このような社会的責任を積極的に果たしていこうという「CSR経営」を
     継続することで、企業としての本質的な強さやイメージが向上し、結果として企
     業存続の基盤が強化されると考えられています。

   2.どんな会社でもCSR経営はできる

     CSR経営という言葉からは何やら大変そうな印象を受けますが、ある中小企
     業(従業員10名程度)では会社の前の道路の掃除によってCSR経営を実践し
     ています。

     飲食店などでは毎日の店外掃除のときに自店の前だけでなく、「向こう三軒両
     隣」まで掃除をするということをよく耳にしますが、先にあげた企業はIT系の開
     発の仕事がメインであり、通りがかり人をターゲットにした商売ではありません。

     しかし、社長は「うちはまだ小さくて金銭的な社会貢献はできないから、せめて
     道路掃除で社会に貢献したい」と考え、週1回それを自ら実践し続けたそうです。

     やがて社長が強制したわけでもないのに、従業員が自主的に掃除を手伝うよ
     うになり、今では掃除が毎日になり、その範囲も広くなっているとのことです。

     この活動を通じて実際の社会貢献を果たしているだけではなく、従業員の「奉
     仕の心」が高まり、結果として顧客第一主義が徹底してきたと、社長は語って
     います。

     この事例のようにどのような企業でも明日からCSR経営を行うことが可能です。

     まずはその意志と行動を社長自らが示すことが重要なのです。

  □企業行動規範の実践

   東京商工会議所では会員企業に対して、企業行動のあり方を示す「企業行動規範」を
   公開しており、この規範を自社の業務内容に当てはめてアレンジし、独自の行動
   規範を作成して実践することを勧めています。

   これは不祥事の防止につながるだけでなく、さらに進んだCSR経営の推進にも役
   立つものです。

   以下にその抜粋を紹介しますので、自社の行動規範作成の参考としてご活用くだ
   さい。

   1)法令の遵守

    法令を遵守し、立法の趣旨に沿って公明正大な企業活動を行い、社会の信頼
    に応える。

   2)社会とのコミュニケーションの促進

    社会の声に積極的に耳を傾け、必要な企業情報を幅広く適時、適切に開示し、
    「開かれた企業」として社会とのコミュニケーションの促進を図る。

   3)地域との共存

    地域の健全な発展と快適で安全・安心な生活に資する活動に積極的に参加・協
    力し、地域との共存をめざす。

   4)環境保全への寄与

    環境に配慮した企業活動を行い、環境と経済が調和した持続可能な社会の構
    築に寄与する。

   5)顧客の信頼の獲得

    顧客のニーズにかなう商品・サービスとそれらに関する正しい情報を提供すると
    ともに、顧客情報等を適切に保護・管理し、顧客の信頼を獲得する。

   6)取引先との信頼関係の確立

    公正なルールに則った取引関係を築き、円滑な意思疎通により取引先との信頼
    関係を確立し、相互の発展を図る。

   7)従業員の自己実現への環境づくり

    従業員の人格・多様性を尊重し、公平な処遇を実現するとともに、それぞれの
    能力・活力を発拝できるような職場環境をつくる。

   8)出資者・資金提供者の理解と支持

    公正かつ透明性の高い企業経営により、出資者や事業資金の提供者の理解と
    支持を得る。

   9)政治・行政との健全な関係

    政治・行政とは健全かつ透明な関係を維持し、不当な癒着や公正さを欠く活動
    を行わない。

  10)反社会的勢力ヘの対処

    社会秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力、団体に対しては、毅然とした態
    度で対処し、あらゆる関係をもたない。
 

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