トップダウンマネジメント


  ■トップダウンマネジメント

   中小企業がこの厳しい時代を乗り越えていくためには、明確な経営戦略と社員一
   丸となった取り組みが不可欠です。

   そして、そのなかで社長が果たすべきトップダウンマネジメントの重要性は、一層
   高まっています。

   1.トップダウンとボトムアップ

     マネジメントスタイルの違いとしてよく取り上げられるのが、トップダウンとボト
     ムアップです。

     トップダウンとはトップ自らが方針を定め、会社を強力に引っ張っていくやり方
     です。

     一方、ボトムアップとは、社員自身からの提案も積極的に経営に反映させてい
     こうというやり方です。

     両者のメリット・デメリットをまとめると次のように整理できます。

     トップダウンとボトムアップそれぞれに一長一短はありますが、景気低迷下に
     おいては、トップダウン型のマネジメントの強化が大きな課題になるでしょう。

     なぜなら、厳しい経営環境のなかで会社の進むべき方向性を明確に示し、困
     難な意思決定を次々に行っていけるのは社長だけだからです。

     両者を比較した場合の最大のポイントは、意思決定のスピードの差にあります。

     トップダウンマネジメントにおいては、重要事項について社長はすべて即断即
     決できます。

     ただし、限られた情報のなかでの判断であるため、「思いつき」になってしまう
     危険もあります。

     また、社員は社長の決断を後から聞かされて、慌ててその対応に追われるこ
     ともあるでしょう。

     逆にボトムアップマネジメントを重複すると、社員の意見を吸い上げるための
     時間がかかり、意思決定のスピードは遅くなります。

     精度の高い情報は集まるかもしれませんが、「機を逸する」可能性も高くなると
     いうことです。

     社長としては、

      ・トップダウンマネジメントのもつメリットを最大最発揮すると同時に、
       デメリットをできるだけ防止すること

      ・ボトムアップマネジメントのもつメリットをトップダウン型のなかでも、
       享受できるような工夫をすること

     などが求められます。

     これらのポイントについて、次項以降で説明します。

   2.トップダウン経営とワンマン経営の違い

     トップダウンマネジメントを強化する際には、いわゆる「ワンマン経営」に陥る可
     能性もあるので注意が必要です。

     トップダウン経営とワンマン経営、イメージとして似ているような気もしま
     すが、実はまったく異なるものです。

     表は多少強調した部分もありますが、トップダウン経営とワンマン経営につい
     て、わかりやすく対比したものです。

     ワンマン経営は、実は会社がうまくいっている時期には、社長にとっても社員
     にとっても非常に「楽」なやりかたです。

     極端にいえば、「社長は好き勝手して、社員は何も考えずに適当に流す」とい
     うスタイルでも会社は回っていくからです。

     このような会社では、「マネジメントスタイルを切り替える」ことをどれだけ早く社
     長に納得してもらえるかが、会社改善のスピードを大きく左右します。

     しかし、会社のなかにも、残念ながら結局ワンマン経営から脱却できずに、事
     業継続ができなくなった会社も多数あります。

     最初のうちは、そんな社長のやる気や手腕に対する社員の信頼も厚く、また
     社長もそれに応えるべく頑張ります。

     しかし、業績好調が逆にアダとなって、社長のワンマンぶりが目立つようになり
     ます。

     社員は社長への信頼をもてなくなり、単に「社長というポジションにいる人」に
     対する「恐れや遠慮」によって指示に従うだけになります。

     それでもしばらくの間は大した支障もなく、会社は回っていきますが、やがて急
     速に売上が落ち始めることになります。

     そしてすでに業績は悪化し、とてもそれまでのワンマン経営ではもたなくなって
     しまいます。

     自分自身では正しいトップダウン経営をしているつもりでも、ワンマン経営に
     陥ってしまう可能性は誰にでもあるのです。

     そして、いったんワンマン経営が当たり前になってしまうと、基本的には社員は
     誰もそれを指摘できなくなります。

     気がつくと取り返しのつかない状況になっていることが多いのです。

     この点は、特に注意する必要があるでしょう。

  □成功に必要な姿勢

   ここでは、社長が全社を強力に引っ求っていくための心構えや社員への接し方な
   ど、トップダウンマネジメントを有効に機能させるための土台作りについて考えます。

   基本は「社長自身や全社員がどうやったら元気を出せるか」ということです。

   また、前項で取り上げたようなワンマン経営に陥らないための心構えも大切です。

   1.つねに前向きに明るく振る舞う

     会社を引っ張っていこうという社長が、いつも暗い顔をして下を向いていたの
     では、社員の士気は高まりません。

     経営環境が悪化していることは、社員の誰もが気づいています。

     そんなときだからこそ、社長は「多少無理をしてでも」明るく振る舞う必要があ
     るのです。

     社員には、会社の細かい経営状態までは分かりません。

     彼らは毎日接している社長の「元気さ」からそれを感じ取ろうとします。

     また、社長自身も「不況の今こそチャンス」と思えるぐらいの「大胆さ、楽天さ」
     がないと、精神的に参ってしまいますし、前向きな戦略も浮かんできません。

     実際に不況時に業績を伸ばした中小企業はいくらでもあります。

     社員のためにも、自分自身のためにも、まずは「前向き」な姿勢を保つことが
     不可欠です。

   2.社長が腹を括るという姿勢を示す。

     いうまでもないことですが、会社経営の全責任は社長にあります。

     社長としてはそんなことは分かりきっていますから、社員が失敗したとしても
     「最終的には自分が腹を括るしかない」という覚悟はいつでもできているはずです。

     しかし、残念ながら社長のそのような覚悟は、社員にはなかなか伝わりません。

     プロ野球で監督がリリーフピッチャーを送り出すときには、「もし打たれても、そ
     れはお前を使った俺(監督)の責任だ、臆せずにやれ!」という言葉がよく使わ
     れます。

     選手は監督の言葉を「意気に感じる」ことで実力以上のプレーをすることもあり
     ます。

     会社経営においても、「社長は普段は厳しいが、最終的には必ず社員を守っ
     てくれる」という意識を社員にもってもらうことが重要です。

     そのためには、「社員は失敗を恐れずに頑張って欲しい」というメッセージを繰
     り返し伝えていく以外ありません。

   3.状況ではなく未来を語る

     不況が続くなかで、自社もしばらくの間は苦しい業績が続くかもしれません。

     そんななかで厳しい現状と真摯に向き合い、打開策を考えていくことはもちろ
     ん大切です。

     しかし同時に、その先にあるもの、つまり厳しい状祝を乗り越えたときに、自社
     に訪れる未来についても、できるだけ積極的に社員と話すようにしましょう。

     その際には、単に「不況を乗り越える」という小さな未来ではなく、その先にあ
     るもっと大きな成功をイメージします。

     「業界で首位になる」、「海外に進出する」、「給料を3倍にする」など自社が実
     現したいワクワクできる未来を描くことが大切です。

     最初は社員も半信半疑かもしれませんが、社長が繰り返し語ることが大切です。

     そして、社員が「ひとつやってみるか」という気になれば、会社の雰囲気はガラ
     リと変わるはずです。

   4.自分に足りない部分を自覚する

     トップダウンマネジメントを強化していくということは、社長に集中させた権限を
     大胆かつスピーディーに行使してくことです。

     このことは有効に機能すれば、会社牽引の大きな原動力となりますが、一歩
     間違えば独断専行の「暴走」にもつながりかねません。

     この危険性を少しでも回避するためには、社長が自分に不足している資質や
     知識、陥りやすい判断ミスなどをあらかじめ自覚しておくことが大切です。

     社長といえどもすべての面において社内でいちばんであるはずがありません。

     不足している部分は、他の力を借りることで、最終的な正しい判断につなげれ
     ばよいのです。

     また、特に重要な判断を行うときには、他の経営幹部の意見を必ず聞くという
     ルールを決めておくことなども有効でしょう。

  □成功に必要な論理

   トップダウンマネジメントは「気合い」ではありません。

   確かにそういう部分が必要なときもありますが、基本的にはきちんとした論理が背
   景になければ、継続的な効果を出せるものではありません。

   ここでは、論理的なマネジメントの基本を説明します。

   1.戦略、戦術、実践(戦闘)

     マネジメントには、幹となる戦略が必要です。

     戦略とは、「自社のめざすべき将来の姿を描き、その姿を実現するためのシナ
     リオ」のことです。

     たとえば「業界ナンバー1になって競合他社に対して圧倒的な地位を確立す
     る」というのが経営戦略です。

     そして、戦略実現のためにどういったやり方で臨むのかが「戦術」になります。

     先の例でいえば、「一定水準の技術者を50人育成する」などが戦術になります。

      さらに、戦術にしたがって行う日々の具体的な業務が「実践(戦闘)」になります。

     これも先の例でいえば、「カリキュラムに従って技術者を日々鍛える」などが実
     践といえます。

     時間軸で考えると、戦略は数年程度、戦術は3〜6カ月程度、実践は1日〜1
     カ月程度で計画・実行されることになります。

     さらに「戦略、戦術、実践(戦闘)」は、整合性をもってブレイクダウンされている
     ことが必要です。

     たとえば「業界ナンバー1になって競合他社に対して圧倒的な地位を確立す
     る」という戦略自体が間違っていたら、その実現のためにどんなに優れた戦術
     や実践がなされたとしても決してうまくはいきません。

     また、仮に正しい戦略をとることができても、それが適切に戦術や実践(戦闘)
     にブレイクダウンされなければ、やはり成功しません。

     つまり、

      正しい戦略が策定され、かつそれが適切に戦術、実践に展開された
      場合のみに戦略は成功する

     ということになります。

     トップダウンマネジメントを行ううえでは、これらの整合性、進捗度合い、環境
     変化による修正の必要性などについて、素早く判断を下していくことが必要に
     なります。

     なお、戦略と戦術については、混同しやすいので注意が必要です。

     「一定水準の技術者を50人育成する」するということはあくまでも戦術であり、
     その上位概念である戦略を実現するための手段に過ぎません。

     また、一般社員が対応している「実践レベル」の進捗状況を社長自身がすべて
     把握することは通常は不可能なので、重要情報が選別されて、社長に上がっ
     てくるための仕組み作りも必要になります。 

   2.問題と課題

     問題と課題、どちらも聞き慣れた言葉ですが、マネジメントにおいてはこの2つ
     の言葉を正しく使い分けることが非常に重要です。

     問題とは「現状と本来あるべき姿とのギャップ」のことであり、課題とは「その
     ギャップを解消するために何をすればよいか」ということです。

     つまり、現状分析がきちんとなされ、なおかつどのような姿をめざすのかがき
     ちんと検討されていなければ、問題も課題も特定することはできません。

     また、ギャップのなかには、自分たちの努力だけではどうしても解決できない
     要素もあります。

     たとえば、「円高」、「原油高」、「人口減少」などは、状況そのものを変えること
     はできません。

     このような要素を制約条件といいます。

     たとえば、本来の計画では月商1億円となっているスーパーが、売上8000万
     円しかないとすると、この2000万円の差が問題、足りない2000万円をどのよ
     うに積み上げていくかという具体的な販促策などが、課題ということになります。

     また、制約条件のなかには、一見自らの力では改善できないようにみえるもの
     の、やり方次第では、対応可能になるケースもあります。

     たとえば、このスーパーが単独で仕入れを行っている場合、卸売業者といくら
     交渉してもその仕入れ条件には一定の限界があります。

     この段階では、制約条件です。

     ただし、いくつかのスーパーと共同仕入れを検討することで、この制約条件を   
     外すことができます。

     共同仕入れが可能になれば、単独仕入れよりも有利に仕入れ交渉を行えるよ
     うになるからです。

     これによって「仕入れ交渉の限界」という制約条件は、「近隣スーパーとの共同
     購入の実現」という課題に変えることができたのです。

     このように問題と課題を論理的に考えていくためには、

      ・現状を把握・分析する

      ・あるべき姿を明確にする

      ・ギャップである同類を明確にする

      ・問題を解決するための課題を設定する

      ・何とかして制約条件を外すことはできないかを検討する

     といった、ステップを踏むことが大切です。

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