自社の収益構造を確認しよう
 

  ■自社の収益構造の枠組み

   中小企業にとってまだまだ厳しい経営環境が続くなか、多くの社長は自社収益改
   善のためのさまざまな施策を模索し、実践していることでしょう。

   収益改善の大きな方向性は「売上増」と「コストダウン」の2つに分けることができ
   ます。

   そして、この2つの取り組みは会社のビジネスモデルにかかわる根幹部分から、
   従業員の日々の業務改善までさまざまな段階で行う必要があります。

   また、一部の会社ではいわゆる「リストラ」によって人員整理を進めていますが、
   たんなる人減らしのためのリストラは、将来的に「ジリ貧」に陥る可能性があります。

   1.自社の収益構造を確認する

     ここでは自社の収益改善に向けた取り組みのポイントについて紹介します。

     収益構造とは事業のどの部分にいくらくらいのお金をかけて、最終的に自社
     はどのくらいもうけるかというビジネスの基本的な枠組みです。

     この枠組みが把握できていないと収益改善の方向性を定めることはできません。

     過去には経営再建中の日本航空会長の稲盛和夫氏は就任直後の社内視察
     を終えた感想として、「この会社は事業運営ができていない。

     このままでは(比較的経営がシンプルな)八百屋すら経常することはできない」
     と述べていました。

     自社の収益構造が全体として悪化していると考えるだけではなく、どの部分が     
     どの程度悪化しているのか、なぜそのようなことが起こっているのかを詳しく調
     べる必要があります。

     <さまざまな収益構造>

      ・全社収益構造    全社利益  = 全社売上 − 全社コスト

      ・部門別収益構造  部門別利益 = 部門別売上 − 部門別コスト

      ・製品別収益構造  製品別利益 = 製品別売上 − 製品別コスト

     全社の収益構造については、決算書などで把握していると思いますが、部門
     別、製品別などの収益構造は把握できていないことが多いものです。

     複数の事業部に貢献する社員や、複数の製品製造で使用する機械などもあ
     り、それらを適切に配賦した管理会計の仕組みができている会社は少ないの
     が実情です。

     そのため、「どの事業が、どの製品が足を引っ張っているのか」という部分にま
     で踏み込めないのです。

     また、収益構造は時間によっても変化します。

     たとえば、以前は自社に多額の収益をもたらしてくれていた商品であっても、
     社内外の環境変化によって現在ではよくみると「お荷物」になっていることもあ
     り得ます。

     まずは、「現在の基本的な収益構造はどうなっているのか」、「それは時間経
     過によってどのように変化しているのか」など、自社の現状を正確に確認しま
     しょう。

   2.価格とコストのバランス(コストと付加価値

     世の中には用途に応じたありとあらゆる商品が売られており、また、同じ用途
     の商品でも高額品から廉価品までさまざまな価格が設定されています。

     成功している会社では自社のあるべき収益構造を独自に設定して利益確保を
     狙っています。

     たとえば、ベーカリーでは一斤300円程度のパンを売る店が一般的です。

     仮に材料を120円で仕入れていれば粗利益は180円であり、製造の手間賃
     や家賃などの経費にさらに100円かかるのであれば、もうけは80円ということ
     になります。

     これが一般的なベーカリーの収益構造です。

     ところが世の中には一斤3000円という高額販売で高い利益を上げている
     ベーカリーもあります。

     もちろんこのようなパンを買ってくれる層はごくわずかであり、その購買基準も
     大変厳しいでしょう。

     高級店では「厳選された材料仕入れ」、「特殊な焼釜を使って手間暇をかけて
     焼きあげるなどの製造工程」、「自社のパンがいかに安全でおいしいかという
     告知活動」などさまざまな部分にお金をかけています。

     逆に物流など商品の品質に直接には影響を与えないコストについては、業者
     を厳しく選択するなどして徹底したコストダウンを図っているでしょう。

     それらが奏功して一般的なベーカリーとは異なる高い収益構造が可能になっ
     ているのです。

     自社の収益構造を確認する際には「いくらで売るか」だけではなく、「どこにど
     のようにお金をかけるか」、「どの部分のコストを節約するか」を考えることがと
     ても大切です。

     また、収益はビジネスのそれぞれのプロセスが生み出した付加価値の合計と
     捉えることができます。

     付加価値とは事業活動を通じて新たに加えた商品の価値のことです。前述の
     一般的なベーカリーでは120円という材料費(もともとの価値)に対して、自店
     での製造・販売を通じて価値を高め300円で販売しているのですから、最終的
     な付加価値は180円です。

     高級型ベーカリーで仮に材料費が1000円であれば、2000円もの最終的な
     付加価値を生んでいることになります。

   3.付加価値増大の方向性

     付加価値増大の方向性は大きく分けて2つあります。

     第1はそれぞれのステップの質を高めて総合力をアップする方法です。

     ベーカリーでいえば、いかによい材料を集めて、顧客が好みそうなおいしいパ
     ンを焼き、効率的に販売していくかという力がそれにあたります。

     通常型ベーカリーが高級店を志向するのがその典型です。

     もうひとつは付加価値が発生するプロセスを広げていく方法です。

     たとえば、高級型ベーカリーが店頭で販売するだけではなく、有料で宅配まで
     行うとすると、本来的なベーカリーの仕事とは異なる分野にまで付加価値発生
     の場を広げたことになります。

     また、このベーカリーが厳選素材の調達能力をいかして、自分が調達した材
     料をほかのベーカリーに販売するビジネスに参入したとしたら、これも新たな
     付加価値発生の場を獲得したことになります。

     収益構造改善を検討する際には、あらかじめ想定した守備範囲の質をいかに
     高めていくかということだけではなく、守備範囲をどこまで広げられるかという
     発想も必要です。

  □コストダウンの考え方

   1.コストはかかるものではなくかけるもの

     コストとはいうまでもなく、売上創出のために支払うお金のことです。

     したがって、コストは本来的には「かかる」という受け身の性質のものではなく、
     売上創出のために主体性をもって「かける」ものといえます。

     そして、主体的にコストをかけるとは、そのコストの必要性や額の大きさについ
     て決裁者が完全に納得して判を押すということです。

     そこにはあいまいさは一切許されません。

     このコストの原則をまず再確認することが大切です。

     しかし、会社経営を積み重ね、社長が全社コストの細部にまで日が届きにくく 
     なると、どうしてもこの原則が見落とされがちになります。

     「相場が下がっているのに割高のまま材料を仕入れ続ける」、「不必要な備品
     を購入する」、「意味のない会議費を計上する」ということがあちこちで起こって
     きます。

     やがてその無駄が当たり前になり、毎年その無駄なコストを払い続けることに
     なってしまいます。

     このような会社では無駄なコストのおかげでその期の利益を圧迫しているだけ
     ではありません。

     より長期的には、無駄なコストのために本当に将来のために必要なコスト、す
     なわち「投資」を十分に行うことができず、将来の自分の首をも絞めていること
     になるのです。

   2.コスト削減は2段階で考える

     コスト削減は大きく分けて次の2段階で考えます。

     第1段階の目的は現状のコスト構造を把握し、標準コストに収まるようにコスト
     をコントロールすること(標準を守らせるための管理)であり、第2段階の目的
     は標準コストそのものを下げていくこと(標準を変えるための管理)にあります。

     (1)現状把握と標準コスト構造の実現

       最初の段階は、前述のように、もはやコントロールできなくなっているさまざ
       まなコストの実態を把握して、一つひとつのコストをすべて棚卸ししていくこ
       とから始めます。

       製品別、部門別、勘定科目別などさまざまな視点から分析することが必要
       になります。 

       そして、「これはまったくの無駄である」とか、「項目自体は無駄ではないが
       払い過ぎである」とか、あるいは逆に「これはもっとコストをかけるべきだ」と
       いった具合に、払っているコストの必要性と額の妥当性をすべてチェックします。

       日常的な残業や非効率な仕事の仕方をしていないかなど、労務費や間接
       人件費などについても必ずチェックしましょう。

       コストのなかでその絶対金額が大きいもの、最近増加傾向にあるものなど
       がコストダウンの優先対象となりますので、特に細かく確認します。

       そして、標準的なコスト構造を明らかにし、削減に向けた具体的な取り組み
       を開始します。

       その際には従業員全員を巻き込んだ業務改善活動なども不可欠でしょう。

       取り組みの結果、標準コスト構造に近いレベルでコストをコントロールでき
       るようになったら第1段階の完了です。

     (2)標準コストの引き下げ

       次の段階では、当面定めた、標準コスト構造をさまざまな工夫を行うことに
       よって、さらなるコストダウンにつなげていきます。

       第1段階で定めた標準コストは、以前から実施している方法によって計算さ
       れたものです。

       したがって、より効率的な方法に改善することができれば、現在用いられて
       いる標準コストそのものを引き下げることが可能です。

       ここでは製造方法や販売方法、あるいは管理方法などを改善することで、
       より安価にかつ迅速にできる方法がないかといった視点で考えます。

       たとえば、製品スペックの見直し、生産ラインの組み替え、品種の絞り込
       み、原材料の変更、原材料調達先の変更、物流体制の見直し、多能工化
       の推進、各種アウトソーシングの活用、人件費の安い海外での生産などの
       方法が考えられます。

   3.従業員の意識を高める

     また、従業員のコストダウン意識を高めるためには、「自社は人件費にはでき
     るだけ多額のコストを割り振りたい。

     そのためのコスト捻出に協力してほしい」と宣言し、実際に人件費も重要なコ
     ストとしてしっかり使うことが大切です。

     従来の仕事のやり方では必須にみえたコストも、やり方を工夫すれば大幅に
     削減できることは多いものです。

     「現状の無駄をなくす」というだけではなく、「仕事のやり方を変えてコストを下
     げる」という発想も必要になります。

     そして、コストダウンが成功すれば実際にその一部を従業員に還元します。

     こうすることで、従業員は直接的なメリットを得ることができ、また、「会社は従
     業員のことを大切にしてくれている」と感謝するでしょう。

     コストダウン活動のみならず通常業務のやる気が高まっていくことも期待できます。

  リストラクチャリングの考え方

   1.「リストラ」という経営戦略はない

     「リストラ」とは「リストラクチャリング」の略で、人員整理などで規模を小さくする
     ことだけではなく、「事業構造の再構築」を意味します。

     本来であれば現状を打破して活路を見いだすという前向きに使われるべき言
     葉です。

     しかし、世の中ではほとんどの場合、「リストラ=人減らしによる固定費削減」
     の意味で使われています。

     そして、収益状況が悪化してくると、この誤った意味でのリストラで何とか凌ご
     うという傾向が強まります。

     たとえば、順調に利益を出し続けていた会社の業績が不況によって悪化し、こ
     のままでは大きな赤字が出そうなので、リストラで50名の人員削減を行ったと
     しましょう。

     人件費が圧縮されて、何とか今期は収支トントンに収まるかもしれません。

     しかし、この会社の企業体力はリストラによって確実に落ちることになります。

     そのままの体制で同じ経営のやり方で来期に臨んだとしても、余程の神風(突
     然の景気急回復など)が吹かない限り、業績はさらに悪化するはずです。

     そして、残念ながらまたしてもリストラを余儀なくされ、結果として「ジリ貧」に
     陥っていく可能性は非常に高いといえるでしょう。

     この意味において、リストラそのものは経営戦略とはいえません。

   2.リストラはその後の施策とセットで経営戦略になる

     収益悪化の要因は基本的には2つしかありません。

     売上の減少か経費の増大(あるいはその両方)です。

     安易な「リストラ」に走る前になぜそのようなことが起こっているのかを突き詰
     めて考えて、今後の対策を練る必要があります。

     たとえば、売上が減少しているとしたら「商品そのものに魅力がなくなってきて
     いる」、「営業力が低下している」、「強力なライバル企業が台頭した」、「大口
     顧客が減少している」などの理由が考えられます。

     経費の増大については、「資材調達費の増大」、「人件費の増大」、「光熱費な
     どの販売管理費用の増大」などの可能性があります。

     まずはこれらの原因を分析し、問題の本質を明らかにしたうえで、根本的な対
     策を検討しましょう。

     その結果として、どうしてもいったん人員削減を行って企業規模を縮小し、自
     社の得意な分野に資源を集中化していく必要があるといった結論になれば、リ
     ストラは十分に意味のあることになります。

     このようにリストラとはその後の新たな施策とセットで考えてこそ、本来的な意
     味の前向きなリストラクチャリングとなるのです。

     前述の例にあった経営再建中の日本航空では大幅な人員削減を行っていま
     したが、再生のために「強みである国際線の収益力を高める」などの次のス
     テップを見据えていました。

   3.会社の成長プロセスで必要になるリストラクチャリング

     リストラクチャリングは業績が低迷したときのみに行うものではありません。

     会社が成長していくプロセスでは何度も節目がやってきます。

     これは業績低迷という意味ではなく、次のステージに向けて企業体質を強化し
     ていく節目という意味です。

     「現状のやり方でいくらがんばってもこれ以上の成長は見込めない」と思えると
     きがこの節目といえるでしょう。

     このときこそ、現状の事業構造や会社の仕組みを再構築すべくリストラクチャ
     リングを検討する必要があります。

     この際には先にあげた業績悪化の原因を裏返して「いかに商品力を高める
     か」、「いかに大口顧客を数多く獲得していくか」、「売上を伸ばしつつ経費を低
     減する方法はないか」といった前向きな視点で考えればよいのです。
 

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