環境変化に対応するための分析手法
 

  SWOT分析(経営) 

   1.環境分析の項目

     企業などの環境分析手法のひとつにSWOT(スウォット)分析があります。

     SWOT分析では企業を取り巻く環境を2つの視点から分析していきます。

     つまり、

      ヒト、モノ、カネ、情報に代表される、会社のなかにある経営資源
      (=これを内部環境と呼びます)

      経済、法律、政治、文化、自然などの、会社の外から会社を取り
      巻いている社会環境(=これを外部環境と呼びます)

     の2つの視点から分析するのです。

     一般的には、内部環境の分析で限られた人材、資金、商品力、情報量につい
     てそれをいかに効率的に利用する(どこに重点的に資汲を投入する)かを明ら
     かにします。

     内部環境となる対象は、

      「ヒト」は経営者、従業員などの人的資源

      「モノ」は自社の扱う商品、原材料、不動産、生産設備、機械などの資源です
      が、商品力が大きな柱です。

      「カネ」は資金調達力、自己資金、内部で積み立てた過去からの利益など

      「情報」は、ホームページでの情報収集、システム機器の導入を行っている
      か、顧客情報、競合状況、市場状況などをしっかりと把握しているかなどが

     重要です。

     一方、外部環境となる対象には、たとえば、人口動向(人口の減少・増加、男
     女比率、年齢層の分布、学歴、人種構成など)、経済(景気状況、金利水準、
     為替水準、公共投資金額、所得水準など)、政治(政府、法律、自治体など)、
     自然(環境、天候、天然資源、大気など)、文化(流行、価値観、ライフ・スタイ
     ルなど)、技術(先端技術動向、コンピュータ技術など)といった、自分の力では
     どうしようもない社会環境(統制不可能な外部環境)があります。

     また、お客様(購買決定者は誰か、購買するプロセス、購買に影響をおよぼす
     ものなど)、供給者(仕入業者、原材料の仕入先など)、仲介業者(卸、代理店
     など)、競合企業(自社の直接の競合企業、将来競合となる可能性のある企業
     など)、利害関係者(株主の意向、金融機関、債権者、官庁、マスコミなど)と
     いった、ある程度統制可能な外部環境もあります。

   2.SWOT分析の4つの枠

     環境について内部環境、外部環境の2つの視点からとらえた後、内部環境に 
     ついては、

     自社の「強み」(Strength)と「弱み」(Weakness)の2つに整理していきます。

     一方、外部環境についても、

     「機会」(Opportunity)と「脅威」(Threat)の2つに整理していきます。

     SWOT分析とは、この4つの頭文字をとった呼び方です。

     内部環境の「強み」とは、先に分析した自社の経営資源でまさに「強い」ところ
     がどこにあるのかをみつけます。

     「弱み」は自社の経営資源の「弱い」ところです。

     外部環境の「機会」とは、自社にとって有利なビジネス上のチャンスや魅力的
     な環境変化です。

     たとえば、女性の社会進出は、持ち帰りの総菜店や半調理製品の市場にとっ    
     ては「機会」となります(百貨店の地下食料品売り場、いわゆるデパ地下の盛
     況を思い浮かべてください)。

     「機会」は追い風となる環境変化ととらえてください(SWOTのOは「追い風」の
     Oと覚えてください)。

     一方、「脅威」とは外部環境の変化によって自社の事業が「手痛い逆風」となる
     事態です。

     外部環境の望ましくない変化によって会社の業績や経営に手痛い状況を与え
     る要因を指します(SWOTのTは「手痛い逆風」のTと覚えてください)。

     たとえば、先ほどの女性の社会進出は夜7時までしか営業していない商店街
     の精肉店にとっては脅威となります。

     以上の4つの枠で分析する方法がSWOT分析です。

     具体的に例をみていきましょう、

     A社はスナック菓子を製造販売するメーカーです。

     A社の経営体質を分析するために経営幹部から課長層までにインタビューを
     行い、自社のSWOT分析を行いました。

     さらに販売先、仕入先、外注業者にもインタビューを行い、その情報を基にさら
     に詳しいSWOT分析を行った結果、以下のような意見がまとまりました。

     これらのどれがA社のS、W、O、Tであるかを考えてみます。

      1.A社はスナック菓子の新商品開発力は高く、月に2アイテムの
        新製品を発売している。

      2.スナック菓子のマーケティングは、顧客の年齢層を意識した商品
        開発がされておらず年齢層別にターゲットを絞った製品開発を
        すれば事業拡大の可能性がある。

      3.A社の営業は代理店のフォロー中心で御用聞き要素が高く提案力
        に欠ける。

      4.スナック菓子の主要市場である児童の人口が減少して市場全体
        が縮小している。

      5.旧来からの強固な代理店ルートを確立している。

      6.創立者の社長が75歳と高齢であり、意思決定に時間がかかる。

      7.海外への輸出(とくにアジア市場)が前年比10%以上の伸びで
        好調である。

      8.競合他社も多く、価格競争が激化している。

     強みと機会は区分しにくいところがあるかもしれないが、まずは自分の感覚を
     重視して分類してみてください。

     実際にSWOT分析を行うときには、たとえば、5〜6人ぐらいのメンバーで
     SWOTの各項目ごとに1人5〜10項目をあげていき(これで30〜60項目は出
     てきます)、それを整理しながらまとめ上げていく方法が一般的です。

     この方法をとると、参加者の共同作業意識が高まり、SWOT分析の客観性も
     高まります。

     A社のSWOT分析例(8つの分析)はどのようになりましたか? 

   3.SWOT分析

     SWOT分析では、これは必ず「強み」だ、これは必ず「弱み」だということはあり
     ません。

     一般に「強み」と「弱み」は背中合わせであることが多くあります。

     たとえば、全国ネットの強力な修理体制を敷いているメーカーにとって、この修
     理体制は一般には「強み」ですが、過剰なサービスを提供しているとするとコス
     ト面から考えて「弱み」となる場合もあります。

     また、3年前に強みであったからといってそれが現在も強みであるかどうかわ
     かりません。

     たとえば、焼肉店で「和牛」を売り物にしていた場合、その高級感が「強み」で
     あったでしょうが、狂牛病という「手痛い逆風」によって「和牛」が「弱み」になっ
     てしまった時期もあったのではないでしょうか。

     「強み」にも「弱み」にもなる項目については両者に分類しておくことです。

     無理やりどちらかに絞ることは重要な観点を捨ててしまう可能性があるので避
     けましょう。

     また、「追い風」「逆風」は時代の流れ(たとえばトレンドの変化、新しい法律が
     施行されたなど)で変わっていきますので、定期的に見直すことも必要になり
     ます。

     まさにその見直しが環境変化に対応するコツとなります。

   4.SWOT分析から導く戦略

     さて、SWOT分析で4つの枠それぞれに項目が記入したら、次に、このSWOT
     分析表から、 

      ・自社の「強み」をどのようにいかして「追い風」に乗っていく方法があるか

      ・自社の「弱み」を、「追い風」を利用して克服できないか

      ・自社の「手痛い逆風」を「強み」を利用していかに克服するか

     を検討していきます。

     A社の例でみていきましょう。

     まず自社の「強み」をいかし「追い風」に乗っていく戦略です。

     「強み」のなかに「商品開発力がある」という項目があるので、これをいかし「追
     い風」のなかの「年齢別にターゲットを絞った商品開発の可能性」を利用します。

     すると、商品開発力をいかして年齢別のターゲットを絞った商品を開発すると
     いう戦略が浮かんできます。

     さらに、自社の「弱み」を克服する戦略としては、「御用聞き」的な営業を克服
     するため海外市場の拡大を利用して海外に提案営業を行える営業力の強化
     という戦略が見えてきます。

     「手痛い逆風」を克服するためには、たとえば「競争激化」に対応するため商品
     開発力をいかした新商品を高価格で発売する戦略が考えられます。

  □SWOT分析のヒント

   1.内部環境分析の視点

     SWOT分析の一般的なやり方は前項で説明しました。

     実際、自社でSWOT分析を行う際には、あまり堅苦しく考えずに行ったほうが
     よい結果が出ますが、ここでは、内部環境、外部環境について具体的にどの
     ような視点からとらえていけばよいのかを、より具体的にみていきます。

     まずは、内部環境についてです。

     先ほど内部環境はヒト、モノ、カネ、情報がその対象であると述べたが、どのよ
     うな点に注目していけばよいのでしょうか。

     (1)ヒトを分析する視点

       まずはヒトです。

       人的資源ですから経営者、従業員が対象となります。

       経営者の経営知識、経験、従業員の商品知識(たとえば、酒販店の従業員
       に日本酒やワインに対する商品知識がある、青果店が珍しい野菜の調理
       法を知っている、といったことは重要な強みです。

       自社の商品だけでなく業界の動向に詳しい、商品をコーディネートできる力
       がある、などもあげられます)。

       メーカーであれば熟練した技術力、あるいは最新鋭の機械を使うためのノ
       ウハウ、自社商品の商品知識などがヒトを分析する視点となります。

       また、あの従業員は「声が大きくいつも元気だ」「人柄が明るい」といった項
       目も対象にしていきます。

     (2)モノを分析する視点

       次はモノです。

       自社の商品は他社と比べてどこが優れているのか、どこが見劣りするの
       か、それを分析していきます。

       たとえば、食品関係では、自社で生産する食肉はその生産地、飼料まで情
       報を把握している、生産者から直接仕入れており生産者の顔がみえる、な
       どが強みになります。

       自社にしかない商品、あるいは自店にしかない商品(=たとえばプライべー
       トブランド)も強みにつながります。

       自分たちのモノ(製品、商品、サービス)はどこにこだわっているのかが基
       本的な「強み」につながりますし、こだわりが足りない部分、競合他社に負
       ける部分が「弱み」となります。

     (3)カネを分析する視点
       カネは、簡単に考えれば資金があるかないかですが、そればかりではあり
       ません。

       担保力のある資産をもっているか否か、借金できる力があるか、さらには、
       資金計画を作成しているか、キャッシュフロー計算書を作成しているか、経
       営目標を数値化しているか。

       また、事業計画書、中期経営計画があるかといった経営管理能力も視点
       のひとつとなります。

       不動産などの「担保」で資金調達するだけではなく「事業計画」がきちんと
       作成されているかといった将来性も重要な融資条件となっているためです。

     (4)情報を分析する視点

       内部環境の最後は情報です。

       情報の分析となるとシステム導入の状況やインターネットを利用したeコ
       マースの実施状況などが注目されます。

       もちろんこれらの項目が視点の中心になりますが、たとえば、顧客情報を
       もっているか、業界情報を注意して入手しているか、自社の売上の関連指
       標(たとえば、住宅産業にとっての新規住宅着工件数など自社の売上に影
       響をおよぼす指標)がわかっているか、といった基本的な部分も重要です。

       たとえば、顧客リストが100人分あり、そのお客様ごとの購入費目、金額、
       業務内容、今後の成長方向、購買のキーパーソン、今後の提案方向など
       がしっかりと把握されていることは、大きな強みとなります。

       内部環境に関しては、上記のような視点で分析していけばよいでしょう。

       繰り返しになりますが、あまり堅苦しく考えずに実施してみましょう。

   2.外部環境分析の視点

     次に、外部環境分析の視点をみていきましょう。

     ただし、外部環境は業界、時代によって大きく変わっていきますのでこんな視
     点があるという例をあげてみます。

     (1)業界の状況

       自社の属する業界の状況を分析する視点として、構造(Structure)、成果
       (Performance)、環境(Environment)、運営(Conduct)の4点があげ
       られます(それぞれの英語の頭文字をとってSPECという呼び方をします)。

       ●構造
        その業界の企業数、マーケットシェア、参入障壁(その業界に参入
        しようとするとき、たとえば行政の免許がいるなど参入しにくくして
        いるもの)などの「対象業界」の分析を行います。

        次に、原材料供給者の業界での影響力や力関係、お客様との取引
        上の力関係、現在は競合ではないが競合になりそうな参入可能性
        の高い企業の有無、直接には競合品でないが代替品となる商品の
        4つに関する「関連業界」の分析を行います。

       ●成果

        市場規模、市場成長率、利益率、製品別市場規模などの「活動成果」
        とその市場の平均企業の総資産、従業員数、従業員の平均年齢など
        の「投入資源」の2点を分析します。

       ●環境

        ここでは、「社会トレンド」(先端技術の動向、産業構造の変化、国際
        状況、為替状況、人口動態など)および「社会規制」(法律、法改正
        の動向、環境対策、行政指導など)について分析を行っていきます。

       ●運営

        ここでは、どのような仕組みでそのビジネスが成り立っているかを
        分析します。

        その業界で「勝ち残るためのキーポイント」を分析します。

        たとえば、医薬品業界は研究開発がキーポイントですし、シャンプー
        や歯磨きのようなトイレタリー商品は広告宣伝力がポイントです。

        さらに「業界独自のルール」(契約形態、支払サイト、価格の決め方など)
        を分析します。

     (2)トレンド

       次に、外部環境での続行を押さえる視点を考えてみましょう。

       時代とともに移り変わるものですが、昨今の特徴として以下のような視点が
       あります。

       ●女性の社会進出

        女性が職業をもち、家庭にこもることが減ってきています。

        この減少があなたの会社の事業に影響を与えていませんか? 

        たとえば、働く女性を意識し深夜まで営業している託児所にとっては
        「追い風」ですし、夕食の負担を楽にするため総菜の利用が増え総菜
        業界にとっても「追い風」ですが、夕方7時には店を閉めてしまう商店
        街の食品店には「手痛い逆風」です。

       ●国際化

        親会社の中国への生産移管、低価格商品の輸入、情報・流行の国際
        化、海外旅行の日常化、外国人労働者の増加など、国際化もさまざま
        です。

        外国人労働者の増加により特定国の物産を扱っている商店にとって
        「追い風」となることが考えられます。

        中国からの低価格化など「手痛い逆風」が吹き荒れていますが、「中国
        市場」という「追い風」も考えられます。

       ●高齢化

        日本は世界有数の高齢化社会です。

        健康産業や看護・介護産業成長の基盤です。

        他業界においても高齢化社会は何らかの影響をおよぼしている
        はずです。

        たとえば、建築業界においてはバリアフリー化工事が標準化の
        現象が見られます。

       ●少子化

        子どもの数が絶対的に減少しているなか、学校経営は厳しい「手痛い
        逆風」にあります。

        大学の全入可能な時代に備え、生き残りのための差別化を図って
        います。

        一方、子どもの絶対数は減少していますが少子化ゆえに大切にされ
        親、祖父母の6人が子どもにお金を使うことから「6ポケット」といわれ
        る傾向があり、これを「追い風」にしている会社もあります。

       ●余暇時間の増加

        週休2日制、振替休日制度などで余暇時間は確実に増加しています。

        旅行や趣味に費やす時間が増えるなか、消費にも変化が起きています。

        あなたの会社にどのような影響をおよぼしているかを分析していき
        ましょう。

       ●価値観の多様化

        消費者、生活者の価値観が多様化し、大量生産型の製品だけでは
        満足しない層が現れています。

        自分だけという自己表現を満足させる工夫が必要になってきています。

        消費者の多様な要求にどのように応えていくのかも大切な分析の視点
        です。

        ほかに、SPECの分析と重なりますが、景気動向、法律の改正や新法の
        施行、環境問題、政治動向などを視点として分析していきます。

   3.SWOT分析の実例

     SWOT分析の方法については理解できたことと思います。

     SWOT分析でのキーポイントは自社の「強み」が何であるかをしっかりとつか
     むことです。

     どのような例があるかをみていきましょう。

     (1)蜂蜜店

       もともと東京都世田谷区で養蜂業を営んでいた経営者が蜂蜜および菓子
       の販売をしている商店です。

       この店の「強み」はなんといっても蜂蜜に関する専門的な商品知識です。

       花別のオリジナル蜂蜜が30種類あり、それぞれの特徴や説明を記載した
       パンフレットが用意されています。

       たとえば、紅茶に入れるならミカンの蜂蜜、シナモントーストに合うのはそば
       の蜂蜜だそうです。

       養蜂業を営んでいたからこそ知り得た蜂蜜の情報がこの店の「強み」です。

       「弱み」としては土地柄から店舗の規模が限られる、賃貸料が高いなどが
       予想されます。

       一方、外部環境では「追い風」として健康ブームがあります。

       健康志向の女性客が砂糖を使わない蜂蜜入りの菓子に注目しています。

       「手痛い逆風」としては、ほかの健康食品店舗の進出などがあげられます。

       健康ブームという「追い風」を利用して自己の強みを活かす経営スタイルが
       見えてきます。

     (2)食肉店

       食の安全が注目されるなか自社のブランド牛を使用した商品開発に力を入
       れています。

       静岡県の朝霧高原で飼育した「朝霧放牧豚」や「朝霧牛」を使用した特産肉
       を販売し、生産地、飼料などの情報を把握しています。

       ハム、ソーセージなどの自社オリジナル商品の開発も行っています。

       この会社の「強み」は自社育成の安全な食品の提供です。

       食の安全に対する「手痛い逆風」となりかねない動きを「追い風」に転換し
       ています。

       自社のオリジナル商品という「強み」を活かし肉製品の安全性を明確にす
       ることで食品に対する安全性を求める消費者の要望という「追い風」に乗る
       ことができました。

       もちろん安全性が話題になる前から少々高くても品質のよいおいしい食肉
       がほしいという消費者のニーズに対応していることが基本的な「強み」と
       なっています。

     (3)酒販店

       酒の楽しみを提供することができるという「強み」を核にして経営を行ってい
       ます。

       酒販免許の規制が緩和されるという一般酒販店にとって「手痛い逆風」が
       吹く環境下、この東京郊外の酒販店はお客さまに説明が必要な日本酒や
       ワインの知識を「強み」として活用するとともに酒文化を提供することが酒
       屋の生き残り戦略であると環境を読み取り、酒を売るだけでなく、ロシア民
       謡を聴きながらウオッカを楽しむ会や、フランス料理をワインとともに楽しむ
       イベントを、地元の固定客に提供しています。

       自社の「強み」としてしっかりとした顧客リストを作成していたことも成功の
       一因です。

       お酒を飲むだけでなく関連の文化や楽しい時間を過ごしたいという消費者
       の価値観の多様性と時間消費型サービスの要望という「追い風」をうまく利
       用しています。

     (4)化粧ブラシメーカー

       広島県の熊野地方は書道用毛筆の生産地で有名な地域です。

       この広島県に毛筆の製造技術をいかし、女性が化粧をするとき、たとえば
       アイシャドーなどを引くときに使う化粧用ブラシの製造で世界のトップに立っ
       ている企業があります。

       歴史ある毛筆の製造技術を「強み」として活かし、毛筆需要の減少という
       「手痛い逆風」が予想される状況でそれを克服し新たな製品開発に成功し
       た事例です。

       自社の製品、技術が流行から遅れたと嘆くだけでなく、自社の技術の「強
       み」を明確にして環境変化のなかの「追い風」を探すことも大切です。

     (5)ゴーグルメーカー

       目を守る技術に自社の「強み」をみつけ発展している会社が、スキーゴー
       グル市場で50%のシェアをもつ大阪のゴーグルメーカーです。

       もともとこの会社は眼鏡レンズ加工の会社であり、防塵眼鏡、保護眼鏡な
       ど「目を守る」技術で伸びてきた会社でしたが、一般用を狙い自社の「強
       み」をいかしてスポーツ分野へ進出し、スキーゴーグルで高い評価を受け
       ました。

       しかし「手痛い逆風」も吹いてきます。

       それは、スキーブームの衰退です。

       スキー人口は減り、市場規模は半分以下に縮小しました。

       そのような環境を抜け出す戦略は「強み」である 「目を守る」技術を利用し
       た新たなスポーツ分野への進出でした。

       水泳用のゴーグルや野球で使用するゴーグルなどの新商品展開を行い、
       水泳用ゴーグルで60%のシェアを占めるまでに成長しています。

       自社の「強み」をしっかりと押さえて「手痛い逆風」に対応している企業の戦
       略がみえてきます。

  □SWOT分析で会社を強くする

   SWOT分析でわかることは自社の置かれている環境に対してどのように立ち向
   かうのかということですが、環境を分析するだけでは不十分です。

   SWOT分析を利用して会社を強くするためには、以下のフローに示されるような
   手順が必要です。

   自社の内部環境の強み、弱みを知り、外部環境の追い風と手痛い逆風」を分析し
   た後、これらの情報を利用して「自社の強みを利用して追い風に乗る方法」を中
   心に、どのような戦略がとれるかを検討していきます。

   その際に考えるヒントとなるのが上図のフローにある自社の事業額域、事業ドメイ
   ンという考え方です。

   自分のもっている資源には限りがありますから、すべてのお客様を相手に営業す
   ることは事実上困難です。

   自社の戦う領域を明確にすることが重要です。

   その領域のことを事業ドメインと呼びます。

   事業ドメインを的確に設定することが、強い会社になるための重要な方法です。

   ドメインを決定する際には次の3つのことを明確にしていきます。

   第一は「誰に」、すなわちお客さまです。

   あなたの会社のお客様はどのような特徴をもっていますか? 

   年齢、男女別、所得区分、趣味などをキーとして自社のお客様を明確にしていき
   ます。

   生産財メーカーにおいても、たとえば、自社のお客様が自治体である、売上10億
   円以下の建設会社である、関東地区で特殊な加工ができる業者である、といった
   区分でお客様を明確にしていきます。

   第二は「何を」です。

   そのお客様にどのような製品、サービス、技術を提供するのかを明確にします。

   コーヒーとともにゆったりと過ごす時間を提供する、鉄よりも軽く強い加工ができる
   プラスチック素材を提供する、情報に関する問題の解決を提供する、クリーンで安
   価なエネルギーを供給するなど、自社が社会に、お客様に提供するモノ・サービ
   スを定義していきます。

   第三は「どのように」です。

   ここでは他社とどのように差別化した方法で提供するのかを明確にしていきます。

   同じハンバーガーを提供するにしても、提供するまでの時間(スピード)を一番大
   切にして他社と差別化する方法もありますし、時間はかかっても味を一番重視す
   る差別化もあります。

   以上の3点から事業ドメインを明確に決めていきます。

   そのうえで、マーケティング・ミックスを検討します。

   一般にメーカーは「製品」「価格」「販売ルート(チャネル)」「広告宣伝」について、
   小売業やサービス業は「商品の品揃え」「価格」「サービス」「店舗」について、事業
   コンセプトにあった具体的な内容を決めていきます。

   このとき大切なのは一貫性です。

   ハイクラスなお客さまを事業ドメインで設定したのに、具体的な製品は品質よりコ
   スト重視の製品であっては、一貫性がとれません。

   たとえば高所得層をターゲットとした化粧品であれば、「製品」はその機能、たとえ
   ば保水性やお肌をつやつやにするといった機能性とブランドイメージを重視したも
   のが考えられます。

   高級感のある容器に入れ、パッケージのデザインや梱包にも気を配ります。

   「価格」は高価格とし、高級百貨店などの限られた「販売チャネル」で販売していき
   ます。

   「広告宣伝」も、たとえば高額商品の購買者をリストアップし高級感をアピールした
   案内状を送付します。

    このように、事業コンセプトを意識し、

    統一的な、一貫性のあるマーケティング・ミックスをとることで、

    あなたの会社がお客様に何を訴えたいのかが示されます。

   他社と差別化して自社の特徴を明確にする方法がここにあります。

   SWOT分析から始まり、事業コンセプトを明確にして具体的な戦略を組むことが、
   会社を強くするコツです。

   会社を強くするために、まず第一歩として社員を巻き込んでSWOT分析を実施し
   てください。

   そこであげられた項目のなかに重要なヒントと「気づき」が含まれているはずです。

 

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静岡県静岡市のビジネス・ソリューション㈱です。
静岡・愛知県内、東京周辺を中心に中小規模企業の問題解決支援としてマーケティング・業務改善・リスクマネジメント
企業運営に欠かせない3つの仕組みづくりを支援いたします。
経営者にとって重要課題は会社をつぶさないことです。
しかし、毎年1万件以上の中小企業が倒産に見舞われています。
「知っていれば」「対策を講じていれば」倒産せずに済んだはずの企業が数
多くあったことを、私どもは見聞きしております。
少しでも多くの企業が、このような危機に見舞われず、最悪の事態を招く
ことのないよう、私ども専門家集団は事業運営に欠かすことのできない
マーケティング、業務改善、リスクマネジメントについて全力投球で支援
してまいります。

対応エリア
静岡・愛知県内、東京周辺

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2024年4月26日
記事:「保険代理店のプレゼンスキルアップ Ⅰ」 更新しました。
2024年4月25日
記事:「メルマガ709号更新しました。
2024年4月25日
記事:「社内体制の強化なしに会社の存続なし」 更新しました。
2024年4月24日
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2024年4月23日
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