少数採用時代の新人教育

             

少数採用時代の新人教育

  ■最近の若者像を理解する

   最近の若者像を探る場合、本質的な部分では、「バブル期」の頃と「今」を比べて
   も、若者の特徴は変わらないものと思われます。

   「ブランド志向」と呼ばれたバブル期の若者像は不況の影響で多少は影を潜めて
   いるようです。

   各種経済誌やシンクタンクが行ったアンケートの結果をまとめてみると、

   最近の新入社員に「欠けている部分」には、

    ・粘り強さ

    ・社会的な規範や常識

    ・ルールの順守

    ・マナー、礼儀

   が大抵上位を占めており、

   逆にプラス面としては

    ・要領のよさ

    ・協調性

    ・自己アピールのうまさ

   などが挙げられています。 

   これは、多くの会社において、20代の社員全般にみられる傾向でしょう。

   そこで、今必要な新人教育の方針としては、以下のようなものが考えられます。

   (1)社会人としての規範、ルール、マナーを一から教え込み、受け身でない自主
     的な姿勢を育てること

   (2)それには入社時の導入研修から、まず企業人としての「意識の切り替え」を徹
     底させること

   (3)彼らのプラス面である自己PR能力を良い方向に引き出せるよう、個性を尊重
     した教育をすること

   前述した意識の切り替えは多くの企業が必要性を感じるており、それだけ、どの
   企業も重要性を認識しているわけですが、その「やり方」がうまくいっていないので
   はないでしょうか。

   無理に企業人としてのルールやマナー、常識を押しつけても、すぐに嫌気がさし
   てきますし、おきまりの講義方式で説明しても、実感が湧いてこないためか、また
   は講義は寝るものとして定着してしまっているためか、その効果は疑問です。

   何よりも問題なのが、前項で述べたように「現実という困難、プレッシャー」に非常
   に弱いところがあるため、無理強いして意識を変えさせようとしては、逃げ出す恐
   れがあります。

   もちろん、逃げ出すとは「転職」を意味します。

   この問題は新人教育の最大の課題として、もう少し踏み込んで考えてみます。

  □今の若者たち(短期的傾向から)

   親の仕送りで暮らしてきた学生には、多少バイト先が減ったことくらいしか不況を
   肌で感じることはなかったかもしれません。

   しかし、就職活動を通して初めて世間の厳しさを肌で感じたことでしょう。

    東京商工会議所「2017年新入社員の意識調査

   この結果をみると、やはり就職活動を通して不況を肌で感じたのでしょうか、
   「会社は遊ぶところじゃない」という厳しさがうかがえ、企業にとっては「意識改革」 
   の手間がバブル期よりはかからないかもしれません。

   ただし、必要以上に会社生活に夢をなくすのは寂しいばかりで、何事にも極端に
   とってしまう若者特有の実直さが、悪い方向に、つまり、一層やる気をなくして、冷
   めた人が多くなるのではと心配されます。

  □若者たちの傾向と問題点

   「いつも仲間と一緒でなければ不安」といった傾向はこれからもみられるでしょう。

   これは「今の若者だから」というよりも、新入社員は誰もが「不安」だからといえる。

   かつての新人も、きっと知らず知らず集団の中にいたのではないでしょうか。

   ただ、昔と違って、採用数が減ったといっても今の新入社員達には同期の仲間が
   多く、お互い頼る相手に恵まれています。

   従って、余計に目立つのでしょう。

   しかし、新入社員は不安の塊という事実は、新人研修において最も見逃してなら
   ないことで、指導する側が最も理解してやらねばならないことだと思われます。 

   ただでさえ「粘り強さがない」今の若者にとって、人生で初めて一人立ちした瞬間
   が入社時なわけです。

   不安で押し潰されるのもうなずけます。

   そんな時に、

    ・いきなり個性を無視した体育会的合宿研修

    ・意味や意義に触れないマニュアルの押しつけ

    ・OJTと称して何も教えずに仕事をさせるやり方

   などをしていては、新人研修に最も求められる「意識改革」ができないばかりか、
   冒頭で述べた、現実に直面したとたんにやる気を失う結果になってしまいます。

   ここまでに挙げてきた、若者像や新人教育の傾向、問題点は一部の現象かもし
   れませんが、指導者側が現実を不安視する若者をよく理解してやっていないこと
   が、すべての根源に思えるのです。

  □「現実ショック」を和らげる新人教育の留意点

   今の新入社員の導入研修において最も注力すべきことは、

    社会人、企業人としての「意識改革」

   であると述べてきました。

   その一方で、新入社員は現実に直面した際の脆さが問題としてあり、一度困難に
   会うと、

    上司に「やる気がない」「何を考えているかわからない」といわしめるほど、
    なかなか本音を語らぬ、一見やる気のないタイプ

   へと変身してしまいます。

   しかし、入社前の面接では、彼らはとても自己アピールのうまい人達なのです。

   せっかくの資質を伸ばしてあげるためにも、入社時の現実ショックを取り除き、ス 
   ムーズに企業人としての意識改革を施そうではありませんか。

   1.企業としての教育理念の確立

     大半の企業では、新入社員が入社してからすぐに人事部による合宿方式の導
     入研修を行い、その後職場に配属させて現場の上司によるOJT指導が始ま
     り、定期的に人事部による合同研修を半年〜1年にわたって行うのが一般的
     です。

     ここで考えてもらいたいのが、

      人事部の行う合同研修と、職場の上司によるOJTとの2極体制による教育

     の進め方です。

     この体制自体にはもちろん問題はありません。

     いくら不況で仕事が減ったとはいえ、1年間も新入社員を職場に配属させず教
     育するわけにはいきませんので、どうしても「現実」の仕事を通して、業務を覚
     えてもらう必要があります。

     ここで問題ありと指摘したいのは、  

      人事部と職場の間での教育方針の確認作業の有無

     なのです。

     最近、企業理念の明確化が叫ばれていますが、社員教育に関しても、

      全社的な教育理念の明確化と意思統一

     が必要なのではないでしょうか。

     企業人としての教育は決して指導者個人の考えで行うものではありません。

     確かに個性重視の最近の風潮では、教える側も個性でぶつかるのがいいの 
     ではと思われがちですが、最低限の一貫した教育方針が確立されていない
     と、指導を受ける新入社員は一層不安になるばかりです。

     入社したての頃、社員寮で話す話題は職場の上司のことばかりです。

     ささいな事でも報告し合う中で、上司によって、言っていることや教育方針がて
     んでバラバラである、または人事部の合同研修で聞いた話と違う、といったこ
     とが頻繁にあると、さっそく現実に脅えをなすことになります。

   2.新人は本当に白紙か?

     「職場単位による教育方針の統一」の前に、やっておかなければならないこと
     があります。

     それは、

      入社時に行う人事部の導入研修の目的や方針を
      配属先の職場の上司に伝達の上、確認すること

     です。

     職場で指導を受けていく中で、上司から

      「こんなことも知らないのか」

     と怒られるケースはよくあります。

     しかし、こんな時、新人は恥ずかしさより不思議にとることが多いのです。

     なぜなら、人事部の行う導入研修では

      一度、白紙に戻しなさい

     と口酸っぱく指導しており、

      学生時代に吸収した知識や社会の常識はビジネス社会では通用しない
      から、素直に何でも上司、先輩に聞け

     と教えられます。

     ですから、自分なりに答えを持っていても、確認の意味で上司に聞くケースも
     多いはずです。

     その行為を、いきなりバカにされた態度で切り返されたら、恥ずかしさを通り越
     して、不思議がってしまうのです。

     しかし、人事部が導入研修時に新人を白紙に戻すことは当然といえます。

     アルバイトを通して少しばかり実社会を知っている学生が非常に多い今日、会
     社やビジネスに変な先入観を持って入社してくる者こそ扱いにくいものです。

     会社の企業理念や、社風を一から教え、意識改革を行っていくにはまず、こう
     した雑学を捨てさせて白紙にした状態から、指導者が教え込んでいく必要があ
     ります。

     従って、人事部のほうから、

      一度、新入社員を白紙に戻したのだ

     ということを明確に各配属先に伝え、教育理念を相互確認する連携プレーが、
     社内で必要になってくるのです。

     もっとも、

      何でも聞けと言われたら、どんなにくだらないことでも聞いてくる

     のが今の若者の特徴です。

     これは「素直だから」というわけではなさそうです。

     その背景には、

      ○×方式で教育を受けてきたこと

     が挙げられるかもしれません。

     答えは常に一つしかない問題ばかり取り組んできたため、融通性がなく、応用
     力に欠ける傾向にあります。

     しかし、それは今の若者の特徴だと理解してあげましょう。

     理解せずに、頭から彼らの人間性まで否定してしまう叱り方は逆効果です。

     このような理解不足が

      新人に現実ショックを引き起こす

     要因となるのです。

   3.現実ショックとマニュアルの関係

     新入社員が最初に「現実ショック」を受けるのは、実は

      職場に配属された初日

     だと唱える専門家もいます。

     導入時の合同研修には、心強い「仲間」がいますが、配属初日になって、

      初めて「一人」を感じる

     ものです。

     つまり新人にとっての不安はピークに達しているのです。

     期待と不安で職場の上司と初めて直面した時、忙しいことを理由に、まるで小
     包みが届いたかのように扱われたら、その瞬間に「人事部は期待の戦力なん
     て言っていたけど、やっぱりサラリーマンは一兵卒なんだな」と一気にやる気
     が失われてしまいます。

     人事部と職場との連携を深める具体的項目に、

      配属初日の新人社員とのコミュニケーションの取り方

     をある程度マニュアル化する必要があるかもしれません。

     この他、新人が現実ショックを受け、やる気を失う局面を列記すると、

      ・雑用などの多さにイメージしていた仕事とのギャップを感じる時

      ・上司の会社に対する愚痴を聞いて将来に不安を感じる時

      ・マニュアルにない事態に直面した時

     が挙げられます。

     大抵の会社では導入研修の際に仕事の全体像や最低限のビジネスマナーを
     マニュアルで教えることにしています。

     社則も一つのマニュアルです。

     前述したように○×方式で育った若者は融通性があまりなく、逆に教え込まれ 
     たことにはすんなり従ってしまう傾向にあるようです。

     ですからマニュアルが現代の便利な研修教材となりえるわけですが、

      マニュアルに書いてない事態に直面すると逃げてしまう

     ことが問題です。

     ではマニュアル教育がいけないのかというと、それは飛躍のしすぎで、大事な
     ことは、

      マニュアルの内容を考える

     ことです。

     最初からマニュアルに

      雑用まで含んだ仕事の意義と、年々蓄積される「非常事態」の事例と
      対策を組み込んでおけばよい

     のです。

     マニュアルの最大の欠点はそれを放っておくとすぐに陳腐化することです。

     マニュアルが常に生きたものとして、誰にでも使えるようにするには、

     定期的に新しい情報を折り込んでいく作業が大切です。

     
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