ラテラル・マーケティング
 

  ■マーケティングとは

   1.マーケティング

     マーケティングという言葉は、誰もが一度は聞いたことがあるはずです。

     しかし、その意味については「分かったようで、実はよく分からない」という感想
     をもっている方も多いのではないでしょうか。

     マーケティングとは簡単にいうと、

      商売の鉄則である「お客のことはお客に聞け」を、大規模に行うこと

     に他なりません。

     少数の特定の相手とだけ取引するのであれば、言葉どおりにすべての顧客に
     そのニーズを聞くことができる。

     しかし、事業が拡大し、多数の企業と取引するようになると、全員のニーズを
     直接聞くことは難しくなります。

     また、仮に聞くことができたとしても、それはあくまで既存客のニーズであり、ま
     だ接触したことがない見込み客のニーズはわかりません。

     そこでさまざまな手法で顧客全体の要望をキャッチし、それに応えるべく会社
     のあり方を変えていく必要が生じます。

     これが企業に必要なマーケティング活動です。

     また、マーケティングとは最終的な商品そのものだけを対象にした活動ではあ
     りません。

     「製造方法」、「流通経路」、「販売促進」、「企業イメージ」など、会社そのもの
     を顧客の要望に沿った形に変えていくということが求められます。

     たとえば、その商品がどんなに顧客の要望を満たしていても、販売店が限られ
     ていれば顧客はそれを手に取ることはできません。

     また、製造方法に無駄があり、顧客の要望以下の価格を提示できないとその
     商品は売れません。

     さらにその会社が不祥事を起こし、イメージが大きく損なわれれば、やはり顧
     客はその会社の商品を買ってくれない。

   2.「売り込み」とマーケテイングの違い

     マーケティングについてさらに理解を深めるために、「売り込み」とマーケティン
     グの違いについても考えてみましょう。

     売り込みとは自分が優れていると思う商品を顧客にいかに押し込むか、という
     活動と捉えることができます。

     売り込みの発想では、もし売れないときは「こんなによい商品なのになぜお客
     は買わないのか」と顧客に責任を押しつけてしまいがちです。

     一方マーケティングは客のニーズをいかに満たしていくかという活動のこと。

     もし商品が売れなければ、顧客ニーズを読み違えたか、商品の提供方法など
     がまずかったということになります。

     いずれにせよ顧客に責任はまったくありません。

     このように売り込みの出発点があくまで「自分の都合」であるのに対して、マー
     ケティングの出発点はつねに「顧客の都合」にあるということができます。

  □垂直型・水平型のマーケテイング

   1.従来型マーケティングの限界

     マーケティングの有用性は疑う余地はありません。

     すでに世の中にはあらゆる商品が溢れかえっており、万人受けする商品ほど
     他企業との差別化は難しくなります。

     このような状況のなか、多くの企業では特定の顧客ニーズにできるだけ直接
     的に対応するために、

      ・自社商品の販売可能性がありそうな顧客を分類する

      ・分類した顧客のなかでさらにターゲット層を絞り込む

      ・ターゲット層がもつニーズを分析して商品開発する

     という流れで、徹底して市場を細分化する手法を取りました。

     これは図のように川上から川下に向けて垂直方向にターゲットを紋り込んでい
     くことから、垂直型(バーティカル)マーケティング(以下、垂直型マーケティン
     グ)と呼ばれています。

     こうした垂直型マーケティングの実践は確実に顧客を取り込んでいく手法とし
     て、企業にとって不可欠であることは間違いありません。

     緻密な垂直型マーケティングがあるからこそ、ヒット商品・サービスの誕生と育
     成とが可能になります。

     しかし、競合激化で市場の細分化がすでに著しく進んでいる現在においては、
     新たに細分化した市場を獲得しにくくなっています。

     図のように新たな企業Dが細分化によって新たなターゲット層をみつけようとし
     てもその余地はありません。

     また、企業A〜Cにおいてもすでに自分が獲得したターゲット層以外に新たな
     進出を行うことが困難になっているのです。

   2.水平型(ラテラル)マーケティング

     そこで登場してきたのが、水平型(ラテラル)マーケティング(以下、水平型マー
     ケティング)の考え方です。

     これは、

      市場をひたすら「垂直方向に細分化し切り捨てていく」従来型の手法を
      補完し、「水平方向に広げて新しい市場を創出していこうとする」考え方

     です。

     この手法によって、企業Aはこれまで切り捨てていたターゲット層①以外の顧
     客に対しても新たな価値を創造し提案することができます。

      水平型(ラテラル)マーケティングのイメージ

     水平型マーケティングでは、従来のターゲット層の枠組みからいったん離れ
     て、自社の強みをいかしてどのような市場を創出していくかというゼロベースで
     の発想が求められます。

     たとえば、これまで特定の限定されたニーズをもつ法人向けの事業を行ってい
     た会社が、自社の強みをいかして一般消費者向けの事業に進出することなど
     も十分に考えられます。

     このように水平型マーケティングにおいては、豊かで柔軟な発想が求められま
     す。

     この際には、アイデアを列挙していくという「思いつき」に頼るだけではなく、以
     下のようなステップを踏むことで、より効果的・効率的な取り組みが可能になり
     ます。

  □水平型マーケティングの実践事例

   ここでは、水平型マーケティングを進めるうえでの基本的なステップを説明する。

   1.水平型(ラテラル)マーケティングのステップ

     (1)製品・サービスの特定

       対象となる製品・サービスを特定する作業から始めます。

       垂直型マーケティングでは、最終的な顧客を知るところから始めなければ
       なりませんが、水平型マーケティングでは川上寄りの視点から検討を始め
       ます。

       まずは世の中ですでに販売されている製品やサービスや、そのなかでも特
       に苦戦しているものを選んでみましょう。

       なおこの場合でもベースとなるのはあくまで「顧客に受け入れられるかどう
       か」であり、「売り込み」的姿勢は適切ではありません。

     (2)焦点を当てるマーケティング要素の決定

       次に焦点を当てるマーケティング要素を決定します。

       対象となる部分は、顧客ニーズやターゲット、製品用途などの「市場関連の
       領域」と、「製品・サービスそのものの領域」、および流通方法や販売促進
       など「その他のマーケティング要素に関する領域」、という3領域に分類され
       ます。

       ビールを例にすると、ビールを飲む人たちに焦点を当てたのが「市場関連
       の領域」、品質などビールという商品そのものに焦点を当てたのが「製品・
       サービスそのものの領域」、工場から小売店までの流通や広告などに焦点
       を当てたのが「その他のマーケティング要素に関する領域」ということになり
       ます。

     (3)マーケティング上のギャップの抽出

       続いて焦点を当てたところに、マーケティング上のギャップをつくり出す作
       業に入ります。

        水平型マーケティングでは、
        このギャップをいかに創出するかが成否の分岐点になる

       とされています。

       ビールという商品に焦点を当てるのであれば「低カロリー」、「味のキレ」な
       どはすでに、垂直型マーケティングで細分化し尽くされた分類です。

       ここに割って入って新たな市場を創出することは困難です。

       そこで現実的であるかは別にして、たとえば、「目覚めに飲むと頭がすっき
       りして仕事がはかどるビール」といった、通常ではあり得ないギャップをくり
       出します。

       常識にとらわれず、実現不可能と思えるほどの大きなギャップを創出する
       必要がある。

       同様に自動車についてみてみると「速さ」、「乗り心地」などは垂直型マーケ
       ティングからのアプローチですが、たとえば、「観賞用の動かない自動車」
       などの可能性を探ることなどは水平型のアプローチといえます。

     (4)ギャップの解消

       最後にこうして創出されたギャップについて、その解消策を検討して実践し
       ていきます。

       先ほどのビールの例でいえば、まずは完全にノンアルコールであることや、
       カフェインなどを配合した品質設計などが求められるでしょう。

       また、コーヒショップなど新たな販路開拓やインパクトのあるCMなども必要
       になってくるでしょう。

   2.新たなマーケティング戦略の可能性

     前述のように、特に成熟化が進んでいる分野では、競争激化に伴って垂直型
     マーケティングだけでは新たな市場創造が困難な状況にあります。

     緻密なマーケティング計画の立案と実行を進めながらも、提供する新商品や
     サービスが市場からの支持を得られない場合もあるでしょう。

     そうしたときに、テーマに取り上げた水平思考のマーケティングから、商品・
     サービス開発のプロセスを見直してみることも有効ではないでしょうか。

      「垂直型」、「水平型」の特徴

     水平型マーケティングはひとつの物の見方を示すものであり、従来型のマーケ
     ティングを補完する役割を担っています。

     従来型の市場調査などの緻密な方法と、大胆で柔軟な感性を重視する水平
     型マーケティングの視点から、新市場を切り開く力強い製品・サービスが生ま
     れる可能性があるでしょう。

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