自社のファンづくりのポイント
 

  ■自社(店)のファンづくりのポイント

   日々変化する市場環境、個別化・多様化していく顧客ニーズに応える製品を開発し、
   より多くの顧客に販売するために、企業は業界や市場の動向・顧客ニーズの調査など
   に基づいた製品開発や販売促進方法を展開しています。

   一方、市場環境や顧客のニーズは常に変化し続けます。

   市場調査や顧客ニーズの把握、それに基づく自社の製品・サービスの見直しなどを
   おろそかにしてしまい、自社の製品・サービス(以下では商品)を「作りっぱなし」の
   状態にしておけば、たとえ発売当初は市場環境や顧客ニーズに合った商品だっ
   たとしても、時間の経過とともに「顧客ニーズに合わない」製品やサービスになっ
   てしまう恐れがあります。

   そこで、開発当初の状態で放りっぱなしにしておくのではなく、既存の商品が“今の”
   市場環境や顧客ニーズに合っているのかどうかを今一度確認し、改良を加えなが
   ら、さらに顧客に望まれる商品へと成長させていく取り組みが必要になってきます。

  □購入・活用を促進するための手順

   まず、既存の自社商品の「機能」「販売ターゲット」「販売方法」などを改めて把握し
   直します。

   次に、自社の商品を取り巻く市場環境や顧客ニーズの実情を洗い出し、現状を把握
   します。

   把握した既存商品の機能などと、市場環境や顧客ニーズの実情を比較して両者の
   間に差異があった場合は、両者の距離を縮めるため、機能などの改善を行います。

   こうすることで既存の自社の商品が「顧客が本当に望んでいる商品」に近づいていき
   ます。

   また、いうまでもありませんが、自社の商品が顧客に購入されたら、常にアフターフォ
   ローを忘れてはなりません。

   このプロセスを繰り返すことによって、既存の自社商品は常に市場環境や顧客ニー
   ズの実情に即した形となり、結果として顧客により多く購入・活用してもらえる可能性が
   広がります。

  □自社の商品(製品・サービス)の洗い出し

   1.自社の商品を3視点から把握

     まず初めに「自社がどのような商品を、どのような顧客に対して、どのような方法で
     販売しているのか」ということを認識しておかなくてはなりません。

     そこで、これらを把握するための調査を行います。

     この調査は、主に以下の3つの視点に絞って実施します。

      ・What:何を?→既存製品・サービスの機能や性能の洗い出し

      ・Who:誰に?→既存製品・サービスの販売ターゲットの洗い出し

      ・How:どうやって?→既存製品・サービスの販売方法の洗い出し

     以下で、製造業(ジーンズ)のケースを考えてみましょう。

     What(何を?)を洗い出す際には、

      製造部門あるいは製造担当者に対して、製品の機能や性能について調査を
      実施します。

     Who(誰に?)、How(どうやって?)を洗い出す際には、

      営業部門あるいは営業担当者に製品の販売ターゲットや販売方法などを調
      査します。

     こうした調査の際に、逆に、作り手である製造部門あるいは製造担当者に対し
     て「この製品やサービスは誰をターゲットに販売しているのか」「この製品はど
     んな方法で販売しているのか」を調査してみたり、同様に、売り手である営業 
     部門あるいは営業担当者に対して、「自分が営業している製品の特徴やセー
     ルスポイント」を調査したりもします。

     作り手が「誰のための製品なのか全く知らない」「どんな方法で販売している製
     品なのか関知していない」などという状態では、顧客により多く購入・活用して
     もらえる製品が生み出される可能性は低いといえます。

     また、売り手が「製品の長所も弱点も知らない」などという状態では、販売力が
     十分とはいえません。

   2.What(何を?):機能や性能の洗い出し

     自社商品の機能や性能について洗い出し、現状を分析します。

     方法として「SWOT分析」を用います。

     具体的には、自社商品にはどのような長所(強み)と欠点(弱み)があり、自社
     商品の今後の市場における可能性(機会)にはどのようなものがあるのか、そ
     して自社商品の今後を脅かすのはどのような外的要因(脅威)があるのかを
     分析し、把握しようというものです。

     例えば、藍染めを取り入れたり、ベルベットやフェルトなどの面白い素材を活
     用したデザイン性に優れたジーンズの専門店があるとします。

     この企業の自社の製品・サービスをSWOT分析すると、次のようになります。

   3.Who(誰に?):販売ターゲットの洗い出し

     次に、自社では商品(製品やサービス)を、いったい誰に対して販売しているの
     かを把握します。

     商品を販売する際、販売ターゲットを絞らずに漠然と販売しているケースは考
     えにくいでしょう。

     例えば服飾品の場合は「10代後半〜20代前半の若い女性をターゲットにして
     いる」「30代以降の男性で富裕層をターゲットにしている」などがあるでしょう。

     食料品では「ターゲットは30代〜40代で、働き盛りのビジネスパーソンの晩酌
     のつまみ」、あるいは人材紹介の場合は「ターゲットは医療関係機器を製造販   
     売している中堅・中小企業」などのようにです。

   4.How(どうやって?):販売方法の洗い出し

     自社商品の販売方法あるいは提供方法を確認します。

     店頭販売か・インターネットを通じた通信販売かあるいは訪問販売かなど
     です。

     また、販売方法を洗い出す際には、店頭での販売・インターネットによる販売
     などの「販売の手段」だけではなく、「顧客管理を徹底し、それに基づいて季節
     ごとにDMを送付している」「プリントアウトするとクーポン券になるメールマガジ
     ンを定期的に発信している」「地元の情報誌に広告記事を掲載している」「定期
     的に訪問して活用方法や活性化策を提案している」といったような「販売促進
     方法」も併せて洗い出しておく必要があります。

  □市場環境・顧客ニーズの実情の洗い出し

   1.業界・市場の動向や顧客のニーズは常に把握

     自社商品の洗い出しを実施したら、次に業界の動向や実際に自社商品を購入
     している顧客のニーズや特性などを洗い出します。

     自社の商品を気持ちよく購入・活用してもらうためには、業界の動向や顧客が
     何を望んでおり、どのように活用しているのかという実情を把握しておかなくて
     はなりません。

     「どのような機能の商品が消費者に支持されているのか」「どのような商品を販
     売している会社が伸びているのか」などをとらえておくことによって、自社の既
     存の商品を見直したり、販売促進する際のヒントを得ることができます。

   2.業界・市場の動向や顧客ニーズを把握する

     業界や市場の動向、消費者のニーズなどを把握する方法には、一般的に以 
     下の方法があるといわれています。

      ・質問法  ・観察法  ・実験法

     質問法とは、顧客に対して自社の商品(製品・サービス)について質問し、その
     回答によって顧客ニーズなどを把握するものです。

     質問法には、実際に顧客と相対して面接形式で実施する方法や電話で実施 
     する方法、アンケート調査用紙を作成して顧客に郵送し、回答を記入してもら
     うなどの方法があります。

     観察法は、顧客の購買行動や商品の動きなどを観察し、その動きを分析する
     ものです。

     例えば自社の店舗での顧客の購買行動、商品がどのようにして動いているの
     かを観察するほか、自社だけではなく同業他社の店舗に「どのような顧客が来
     店し、どのような商品を購入しているのか」などを観察します。

     そのほか、展示会や見本市、新製品の説明会などで顧客に注目されている製
     品などを観察するのも有効でしょう。

     自社の商品のみならず、業界においてどのような商品がどのような顧客に望
     まれているのか、といった業界の特徴を知ることができます。

     実験法は、地域などを限定して実験的に開発した新商品を投入し、その成果
     によって顧客のニーズを把握するものです。

     あるいは、既存の製品のある機能をリニューアルさせたり、商品は既存のまま
     で販売方法を変えて市場に投入し、変える前と後で購入された数や金額、購
     入した顧客の属性、販売方法の有効性などを比較検討するなどの方法も考え
     られます。

   3.業界・市場の動向や顧客ニーズの把握例

     SWOT分析、質問法、観察法、実験法を活用して、先のジーンズ専門店での
     顧客ニーズを探ってみましょう。

     まず、自社商品の機能や性能の洗い出しの際に実施したSWOT分析によって 
     業界動向には、

      ・ジーンズの活用シーンが拡大している

      ・ジーンズそのものに対する需要が増加している

      ・低価格で高品質な品ぞろえを実現する量販店が台頭している

     などの特徴があることが分かります。

     次に、質問法や観察法などによる顧客ニーズの把握の方法を考えます。

     質問法では次のような項目が考えられます。

      ・どんなシーンでジーンズを活用しますか?

      ・ジーンズを購入する際にはどのようなポイントに注目しますか?

      ・こんな規格のジーンズがあったらいいなと思う例を挙げてください。

      ・当店で購入したジーンズでお気に入りの商品はどのようなジーンズですか?

      ・当店を知ったきっかけは何ですか?

     上記項目のような「購入ポイント・活用シーン・要望」あるいは「自社の商品に
     対する感想」などの質問をする場合は、どの顧客がどのような要望を抱いてい
     るのかを把握して顧客管理に生かすようにするためにも、顧客の顔が見える
     面接形式や記名制のアンケート調査などを実施するとよいでしょう。

     また、「自社商品のお気に召さない点、購入して失敗した点を教えてください」
     といったように、あえて「既存商品に対する顧客からのクレームを引き出す」こ
     とも、顧客ニーズを知るための重要なポイントとなります。

     よく知られている例ですが、衣料品販売の大手ユニクロでは顧客ニーズを探り
     製品開発・改良に生かすために、「ユニクロの悪口を言って100万円をもらお
     う」という「悪口コンテスト」を実施しました。

     顧客の本音を聞きだし、「悪口」として挙がってきた点を改善していこうという試
     みです。

     「悪口を言って100万円をもらえる」という逆説的な面白さにつられた一般消費
     者から数多くの「悪口」が寄せられ、顧客ニーズの把握におおいに役立ったと
     いわれています。

     観察法では、平日、休日、時間帯などによって来店する顧客層や顧客の店内
     での動き、実際に購入に至るまでの顧客の動線などを観察します。

     定点観測用のカメラを設置し、捕えた映像によって顧客の動線を分析する
     ケースもあります。

     先のジーンズ専門店では、質問法と観察法を実施して、以下のような結果が
     得られました。

      ・休日に来店する顧客の中には若い世代の家族連れが多いものの購入に
       は至らない

      ・フォーマルなシーンでジーンズを活用したいとする顧客が増加している

      ・店頭に陳列されているジーンズを活用したコーディネートを店員に相談
       する顧客が多い

      ・ベルベットなどの厚手の素材を取り入れたジーンズは暑い時期には敬遠さ
       れる

  □自社の商品と実情の距離感を短縮

   1.距離感の短縮が自社商品の購入・活用のチャンスへつながる

     自社の製品・サービスと、市場環境や顧客ニーズの実情を洗い出した結果と
     を比較して、その距離を縮める方法を検討します。

     両者の距離を縮めることができれば、自社の商品が市場環境や顧客ニーズに
     則したものとなり、購入・活用されるチャンスは必ず拡大します。

   2.距離感を短縮する方法を検討

     距離を縮めるための方法として、次のような3つの方法が考えられます。

      (1)機能や性能の改良

        これは、自社の製品・サービスの機能や規格そのものに改良を加えリ
        ニューアルしていくものです。

        例えば掃除機や洗濯機などの電化製品の場合には、省エネ機能や地球 
        環境に優しいエコ機能などを付加するケースがあるでしょう。

        また、機能をリニューアルするのではなく、デザイン性を追求してカラーバ
        リエーションを増やすなどの改良方法も考えられます。

      (2)販売ターゲットの改良

        これは、自社の商品の販売ターゲットを変更する方法です。

        例えば、ビジネス街で法人向けに昼食の訪問販売を実施していた業者
        が、販売ターゲットを大学や高校に変更したり、福祉施設向けにホームヘ
        ルパーなどの人材を派遣していた業者が、ホームヘルパーの派遣先を高
        齢者がいる個人宅に変更する例などが考えられます。

      (3)販売方法の改良

        これは、店頭販売、インターネット販売、訪問販売といった「販売方法」 
        や、顧客へのDM送付、定期的な訪問による活用提案、懸賞やノベル
        ティーの活用といったような「販売促進方法やアプローチ方法」を改良す
        るものです。

        小規模な総菜屋さんが、地域限定でインターネットによる冷凍総菜の販
        売を始めたり、スーツとのコーディネートを提案して販売促進していたネク
        タイ製造販売業者が、シーンごとの贈答品としてネクタイを活用して喜ば
        れる方法を提案して販売促進を実施するなどの例が考えられます。

      これら3つの方法は、個別に実施するだけではなくうまく組み合わせて実施
      するとより効果が期待できるでしょう。

      例えば、「販売ターゲットを中高年層に設定し、機能性に優れた実用的な冷 
      蔵庫を製造販売していたが、最近では20代の若い単身者の間でデザイン性
      を追求したおしゃれな冷蔵庫に対する需要が増加している。

      販売ターゲットとする年齢層を若い世代に下げると同時に、カラーバリエー
      ションを増やすという規格の改良を実施した」などのようにです。

      以下では先に挙げたジーンズ専門店を例に、機能や性能の改良、販売ター
      ゲットの変更、販売方法の改良についてみていきます。

   3.機能や性能の改良の例

     ベルベットなどの厚手の素材のジーンズは暑い時期には敬遠されがちで、実 
     際に夏場には売り上げが減少してしまいます。

     そこでベルベットを素材を活用しながら、通気性に優れている、あるいは色合
     いなどを改良し「暑苦しく見えないジーンズ」に改良して販売するなどの方法が
     考えられます。

     また、このジーンズ専門店ではカジュアルシーンでの活用を念頭に製品ライン
     ナップを整えていましたが、フォーマルシーンにおけるジーンズの活用が増加
     していることから、ジーンズの形を細身でシルエットが美しく見えるものに改良
     して「ちょっとキレイなジーンズ」の販売を始めるなども考えられるでしょう。

   4.販売ターゲットの改良の例

     家族連れも来店していることから、10代〜20代の男女だけではなく販売ター
     ゲットを家族連れなどにも拡大し、子供用ジーンズや「30代以上の大人が楽し
     むジーンズ」を陳列するなどの方法が考えられます。

     ただし、販売ターゲットを改良する場合は、自ずと製品やサービスの機能や性
     能を改良する必要が出てきたり、店内の様相や販売促進方法なども併せて改
     良することも考えなければなりません。

     なぜなら販売ターゲットとする年齢層を改良するのなら、デザイン性より機能
     性を重視したジーンズ販売に改良したり、奇抜さを控えて着こなしやすいジー
     ンズに改良する必要があるかもしれないためです。

     同様に、販売ターゲットを家族連れなどにも拡大する場合には、従来は10代
     〜20代の若い世代のみを対象にして趣向を凝らした内装を、製品の見やすさ
     や順路の分かりやすさを念頭においた内装にする必要があるかもしれませ
     ん。

   5.販売方法の改良の例

     店頭に陳列されているジーンズのコーディネート方法を店員に相談してくる顧
     客が多いことから、陳列してあるジーンズを店員に着用させ「動くコーディネー
     トの手本」として店員が販売促進に一役買う方法を取り入れたり、フォーマル
     シーンでのジーンズの活用が増加していることから、常連顧客に対して冠婚葬
     祭などの改まった場でのジーンズの着こなしについて画像付きのDMを送付し
     て提案するなどの方法が考えられます。 

     そのほか、家族連れの顧客が増えていることにも着目し、家族で共通で使え
     るポイントカードを発行したり、家族のうちの誰かの誕生月には、ほかの家族
     もジーンズの価格が割引になるサービスなどを取り入れるのも面白いかもし
     れません。
    
  □アフターフォローを充実させる

   既存の自社の製品・サービスに改良を加え、より多く購入・活用してもらえるように
   なったからといって、「売りっぱなし」であってはなりません。

   購入・活用してもらった後の顧客に対するアフターフォローを充実させることは、より
   一層の購入・活用を促すことにつながります。

   電話やDM、定期的な訪問などで、「自社製品を購入していただいてありがとうご
   ざいます。使い心地はいかがでしょうか?」「既存の製品の新しい活用方法をご提
   案します」「先日ご購入していただいた製品の新色バージョンが登場したのでご案
   内します」などのフォローは欠かせません。

   また、こうしたアフターフォローは、製品やサービスの販売促進につながるだけでは
   なく「製品・サービスの改善点の発見」「自社の顧客管理」に役立つという効果があり
   ます。

   そしてアフターフォローによって得られる効果として最も大切なのは、アフターフォ
   ローを充実させることによって、顧客に「購入後もこんなにアフターフォローを親身  
   に実施してくれるなら、またあそこで何か買おうかな」と思ってもらえるようになるこ
   となのです。

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