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ヒューマンエラーの原因と対策 |
■ヒューマンエラー 近年、運輸機関における大事故や、金融機関におけるシステム障害や誤発注、医療 これらの事故は、さまざまな要因がそれぞれ複雑に影響し合って発生しています。 しかし、その根底には、ヒューマンエラー(人間の誤認識や誤動作によって引き起こさ このように、ヒューマンエラーによる事故はさまざまな分野で起こり得ます。 また近年では、企業における機械化・IT化の進展により、一人の人間の作業により これにともない、ヒューマンエラーによって引き起こされる事故および損害の規模も 1.必ず発生するヒューマンエラー ヒューマンエラーへの対応を検討する上で、常に念頭に置かなくてはならない もちろん、「ヒューマンエラーを起こさない」という意識を持ち、また、さまざまな しかし、人間は必ず何らかのミスを犯すため、ヒューマンエラーの発生を完全 ヒューマンエラーへの対応としては、 (1)ヒューマンエラーの発生の芽をつみとる (2)ヒューマンエラーが発生した場合、迅速に検知する (3)ヒューマンエラーによる事故が発生した場合、迅速に対応する という、ヒューマンエラーの発生を想定した対策を講じることこそが重要なのです。 人間の情報処理のプロセスとエラーは ①入力のプロセス(情報を自身の中に取り込むプロセス) ②媒介のプロセス(取り込んだ情報を判断するプロセス) ③出力のプロセス(判断に基づいて行動を決定、実行する の3つに大別することができます。 以下に、それぞれのプロセスにおけるヒューマンエラーについて具体的に 情報を入力するプロセスで発生するエラーです。「見落とし」「見間違い」 例として、 ・操作中の機器が異常発生を知らせる警告を表示していたにもかかわ ・設計図中の寸法の数字を見間違えたため、欠陥住宅を建築してし ・顧客の見積もり依頼に関する仕様を聞き間違えたため、規格に沿わ などが考えられます。 情報を媒介するプロセスで発生するエラーです。「誤った知識」「経験へ 例としては、 ・新入社員が、商品に関する誤った知識のため、不当に低い見積価格 ・電車のベテラン運転士が、自身の経験を過信するあまり機器の危険 ・「あまり重要ではないだろう」という思い込みにより、顧客からのク などが考えられます。 判断によって決定された行動を出力するプロセスで発生するエラー。 ○「やり忘れ」 「やり間違い」「勘違い」などにより、計画通りに正しく実行できない 例としては、 ・顧客に依頼されていた調査を行うことを忘れてしまった ・自動車の運転で、ブレーキとアクセルを誤って操作してしまった ・パッケージがいつも使用している薬剤と似ていたので、中身を確認せ などが考えられます。 なお、各プロセスにおける一つひとつのエラーが軽微なものであっても、一 ヒューマンエラーへの対応を検討するには、ヒューマンエラーに関する情報を収集し、 1.ヒューマンエラーへの対応の検討プロセス (1)情報収集 ・過去の事例の情報 ・ユーザーからの報告に基づく情報 ・社内からの報告に基づく情報 ・自主的な調査から得られた情報 ・当該ヒューマンエラーの要素、要因について検証する。 ・当該ヒューマンエラーが、どのような事故につながったか(または、つなが ・分析に基づき、ヒューマンエラー防止対策を決定する。 ・ヒューマンエラー防止対策に関するガイドライン、チェックリストを作成。 まず、ヒューマンエラーに関する情報を収集します。 上記の通り、ヒューマンエラーにはさまざまな種類があります。 また、複数のヒューマンエラーが相互に関係することにより、さらに新たなエ こうしたことを判別するために、できるだけ多くの情報(事例)を集めることが重 加えて、ヒューマンエラーには至らなかったものの、それにつながる可能性が これらは、ヒューマンエラーを「芽」の段階でつみとるための非常に重要な情報 次に、これらのヒューマンエラーに関する情報を分析します。 ヒューマンエラーは、発生するプロセスやその要素、要因により大きく異なります。 それぞれのヒューマンエラーを分析によってタイプ別に分類し、各タイプの特 (1)ヒューマンエラー発生の防止 前述の通り、ヒューマンエラーは「必ず発生するもの」です。 しかし、さまざまな防止対策を講じることによって、ある程度発生を防止す 次に、各プロセスにおけるヒューマンエラー防止対策を説明します。 入力エラーは、情報を正しく知覚、認知できないエラーです。 具体的な防止対策としては、 ・見落としを防ぐために、機器や周辺状況について指差し確認などを ・見間違いを防ぐために、細かい数字や大量の数字などについて ・聞き間違いを防ぐために、情報は文書化して伝達する などが考えられます。 媒介エラーは、情報が正しく判断されないエラーです。 具体的な防止対策としては、 ・機器の操作や業務内容についての正しい知識を教育する ・判断基準を統一し(マニュアル作成など)、この基準に基づいて判 ・上司によるチェックなど、複数のチェックポイントを設定すること などが考えられます。 出力エラーは、行動が実行されない、もしくは行動が正しく実行されな 具体的な防止対策としては、 ・ToDoリスト(やるべき事柄をまとめたリスト)などを作成し、動作の ・落ち着いて、一つずつ作業や操作を行う ・作業、操作に際しては、目視などによる確認を行う などが考えられます。 なお、出力エラーは、無意識の行動において発生しやすい特性をもっ ヒューマンエラー防止対策によってもヒューマンエラーを防ぐことができな ヒューマンエラーの検知では、 ことが重要となります。 従って、具体的な対策としては、 ・エラーを発見しやすい仕組みをつくる ・チェックリストを作成する ・複数の担当者によりダブルチェックを行う などが考えられます。 ヒューマンエラーを防ぐことができず、またそれを検知することができずに事 ヒューマンエラーによる事故への対応では、 ・事故による損害の拡大を防ぐ ことが重要となります。 従って、具体的な対策としては、 ・高所からの転落を想定して、安全ネットなどを張る ・伝票処理ミスや検品漏れによる目減りを想定して、ロス予算を計上する ・自社の製品により食中毒が発生した場合を想定して、迅速に被害者に対 などが考えられます。 このように、ヒューマンエラーへの対応では、 エラー発生の防止⇒発生したエラーの検知⇒発生した事故への対応 という3つが、それぞれ適正に機能することが重要です。 過去に発生したヒューマンエラーによる事故を検証してみると、「決められた手順通り これらの多くは、 ・指差し確認が面倒だったので、「安全と思われる」作業の確認を省略した ・システム上、エラーの警告が出たが、「問題ないと判断して」作業を続けた ・自分で「念入りに確認をした」ので、ダブルチェックをしなかった といった担当者の主観的な判断により、防止対策がしっかりと実行されなかったことに このため、担当者の主観的な判断によってこれらのチェックポイントを排除してしまっ 従って、防止対策を運用する際に最も重要なのは、 ・いかなる場合でも、防止対策で定められている原則・ルールを順守し、実行さ ことです。 ・社内に「ヒューマンエラー防止対策委員会」といったチェック機関を設置し、 などの施策が有効です。 ただし、防止対策が実行されていたとしても、それが事実上形骸化していては意味が このような場合、長い期間を経るにともない防止対策が形骸化してしまい、結果として このため、各人に、 ・その行動によって、どのようなヒューマンエラーが起き得るか ・そのヒューマンエラーによって、どのような損害が起き得るか ということを十分に理解させ、防止対策を実行する重要性を認識させることが必要 このためには、 ・社内の各部署で発生した「ヒヤリ・ハット事例」について検証する「ヒヤリ・ハット などの施策が有効です。 ヒューマンエラーは、もちろん発生させないに越したことはありません。 しかし、その発生を完全に防ぐことができない以上、「ヒューマンエラーにともなう
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