保険代理店の労務管理・福利厚生 


  保険代理店における自社(店)の労務管理、福利厚生は一般企業のそれと比較して整備
  が遅れています。

  労務管理の中でも、時間外労働や休日労働に関しては労働基準法第36条でその内容が
  規定されています。

  この条文に基づいて協定を結ぶことにより残業をさせることができるとしたことから、この
  労使協定を三六協定といいます。

  労働者に時間外・休日労働を命じるには、三六協定が締結されており、かつ、労働協約、
  就業規則、労働契約のいずれかに超過労働の義務規定を置く必要があります。

  また、時間外・休日労働は、協定事項として規定された「延長する時間数の上限」を超えて
  はいけません。

  時間外・休日労働を命じられる労働者とは、原則として役員を除いた全従業員をいい、
  管理者、アルバイト、パートなどを含みます。

  ただし、18歳未満の労働者については、三六協定は適用されないため、時間外労働を
  させることができません。

  □時間外の目安時間は1ヵ月45時間、年間360時間

   三六協定については「一定期間についての延長時間」を協定することが必要ですが、
   これに関しては指針(平成4年労働省告示第72号)が示されています。

   当該指針の目安時間は、次のとおり。

    ○一定期間について週又は月を単位とする場合

      1週間 15時間    2週間 27時間

      4週間 45時間    1ヶ月 45時間

      2ヶ月 81時間     3ヶ月 120時間

      1年間 360時間 

  □フレックスタイム制

   1.フレックスタイム制とは

    出退勤の時間を従業員の自由裁量に任せる
    制度です。

    就業規則に定め、労使協定のもとであれば、
    会社側が任意に対象となる部門や職種を
    決定し、フレキシブルタイムやコアタイムなどを設定することができます。

   2.フレックスタイム制

     (1)労働に対して能動的な姿勢が生まれること

     (2)プライベートと仕事の充実が図れること

     (3)労働時間の効率的な活用が図れる

    などのメリットがあります。

   3. 導入の際の留意点 

     (1)制度の対象として適正な部門や職種を選定すること

     (2)就業規則に定め、労使協定であること

     (3)就業を義務付けられる時間数と実際に就業した時間数の差額を精算
       することなどが求められます。 

    <労働時間の精算について>

     ・フレックスタイム制では、就業を義務付けられる時間数と実際に就業した
      時間数とを精算することが求められます。

     ・精算期間の限度は1ヶ月とされ、その範囲内で定める一定の期間に
      ついて精算が行われます。

     ・就業を義務付けられる時間は標準時間に基づいて算定されます。 
      算定した結果、実際の就業時間が上回った場合、その月内において残業 
      賃金を支払わなければなりません。

     ・また、逆に不足した場合、その月内で処理してもよいし、翌月に繰り越して
      不足分を解消してもかまいません。

     ・不足分の処理方法としては、その時間数分を、

      (1)給与カットする

      (2)賞与の査定に響かせる

      (3)全て免除する

     の三通りが考えられます。

     いずれの方法でも法律的には問題ありません。
 
□裁量労働制

 1.裁量労働制は、成果重視の新たな労働管理形態

  労使協定のもと、業務の遂行方法や時間配分を個人の裁量に委ねることを定める
  とともに、労働時間の算定にあたってはその協定で定めた時間を労働したものとみ
  なします。

 2.業務の遂行方法や時間の使い方を個人の裁量に任せた方が成果が上がる業
   務
もあります。

   法律で裁量労働制が適用される対象業務が定められています。

 3.裁量労働制の導入に際には

   (1)労使協定のもと手続きをきちんと行うこと

   (2)業績評価制度や給与制度など周辺の制度が整備されていること

   (3)従業員がどこで何をしているのか上司がきちんと把握できる管理体制が整っ
     ていることが大切です。

 営業社員を中心とする代理店は裁量労働の対象にはなりません。

 しかし、今後組織規模が拡大し、事業経営に関わる企画業務等も兼務するようにな
 れば、対象とされる場合が考えられます。

 <適用対象業務>

  研究開発業務  プロデューサー・ディレクター業務  情報処理システム業務 

  公認会計士・弁護士等のプロフェッショナル業務  デザイナー業務 

  事業経営に関わる企画業務

 <留意点>

  ①裁量労働の手続き(労使協定で対象業務と労働時間を定める)

  ②業績評価制度の整備(能力や業績に応じた評価制度、給与制度の整備が必要)

  ③従業員の管理体制の整備(従業員がどこで何をしているのか上司が管理
   できる仕組みが必要)

  □休日の種類

   1.休日にはいろいろな種類があります。

     週の定期的な休日(いわゆる週休日)として日曜とか週休2日制の土曜休日
     のほか、国民の祝日、年末年始または会社が独自に定める休日(創立記念日
     など)などがあります。

   2.法律で定められた週1日の休日を法定休日、週休2日制の場合の土曜日や祝
     日などの休日を法定外休日と呼びます。

   3.「代休」と「振替」の大きな違いは、休日の事前に申告しているか、事後に申告
     しているかどうかです。

     事前に他の日を休日として指定している場合は「振替」、休日出勤した後に他
     の日を休日にする場合は「代休」となります。


   <仕事の進め方、コスト面からも「代休」ではなく「振替」をとらせるようにする>

    ・代休は、「忙しかったので日曜日に出勤した。
     その代わり次の金曜日に休ませてほしい」というような申し出があった
     場合です。  
     日曜日という休日に出勤した事実があるため、金曜日に代休をとったと
     しても休日労働の割増賃金を支払う必要があります。

     (例)日給10,000円で働いている人が休日(割増35%のとき)である
        日曜日に出勤した場合の賃金が、

         10,000円+3,500円=13,500円

        となります。

        その代わりに金曜日に休みを取った場合は、10,000円は相殺され
        ますが、3,500円は残り、この割増賃金については支払いが必要に
        なります。

    ・一方、振替の場合は、単に働く日と休日が入れ替わったに過ぎず、割増
     賃金の問題は発生しません。
     ただし、事前に振り替える休日を指定することが要件になります。

    ・仕事を計画的に進めることで突発的な休日出勤をさせないことがコスト的
     にも効率的です。 (詳細は社会保険労務士にご相談ください)

  □休日と休暇

   休日とは、

    法律で必ず休みにしなければいけないと定めた週1日の休日(法定休日)と週
    休2日制で土日が休みの場合の土曜日や祝日(法定外休日)を指します。
    (労働基準法などの休日についての規定は、すべて法定休日についてのみ
     適用されます)


   休暇とは、

    休暇は正式には「年次有給休暇」といいます。
    文字通り、休暇をとってもその間の賃金が差し引かれることなく、支払いが
    保証される休暇のことを指します。

  □社会保険や労働保険について

   社会保険には健康保険と厚生年金保険、労働
   保険には労災保険と雇用保険があります。

   この4つの保険制度をまとめて社会保険制度というのが一般的です。

   健康保険は、被保険者が業務あるいは通勤以外の事由で病気、ケガ、休業、出産、
   死亡などの保険事故に対して給付されるものです。

   一方、業務上や通勤途上での病気やケガであれば労災保険が給付されます。

   厚生年金保険は、老齢、障害、死亡などの保険事故遭遇したときに年金給付を中心
   とした長期の保険給付を行うものです。

   雇用保険は従業員が失業した場合に必要な給付を行います。

  □上記の保険対象者

   役員は、健康保険、厚生年金保険の対象となりますが、労災保険、雇用保険につい
   ては原則として加入できません。

   労災保険と雇用保険は、あくまでも雇われて働く人を対象とした制度と位置づけられ
   ています。

   ただし、中小企業の社長では、社長自らが現場に出て機械を操作するケースや、保険
   代理店主に多い営業兼務の社長など、事故や災害に巻き込まれる可能性が一般の従
   業員と変わらない場合は、特別に労災保険に加入できることもあります。

  □委任型使用人や派遣社員

   委任型使用人の場合は、雇用関係が発生する労働契約を結んでいる訳ではないの
   で、「退職」や「解雇」といった表現は使いません。

   「委任契約の終了」と表現します。同様に、派遣社員も「派遣契約の終了」と言います。

   契約期間中に途中で委任契約を解除する場合は、そのような事が起こりえる旨を事
   前に契約内容に記載しておく必要があります。

  解雇について

   企業には稼ぎ頭となっている部門(または従業員)もあれば足を引っ張る不採算部門
   (または従業員)も存在します。

   現在の厳しいビジネス環境では利益の出る部門に力を入れざるを得ません。

   業績が右肩上がりの時代であれば多少の余剰人員も吸収できましたが、そのような
   体質の現在は許されません。

   やむを得ず、解雇という手段で存続を図らなければならない状況もあり得ます。

   もしも倒産すれば、多くの従業員の人生を狂わすことになるからです。

   しかし、倒産は最悪の事態だからといって、なりふりかまわずリストラを行うことは許さ
   れません。 

   解雇や雇用調整はあくまで最終手段です。まず、そのような経営体質にした経営者自
   身が反省し、責任を取らなければいけません。

   最終的な手段を回避できるよう、労使双方であらゆる努力をすることが必要です。

  助成金制度

   助成金というと、手続きが複雑で面倒ということで法人代理店の経営者は、無関心で
   あったり存在を知らないこともありました。

   しかし、長引く不況の中、企業にとって返す必要のない助成金は魅力的で関心も高ま
   っています。

   ますます進む高齢化社会、一方での若年労働者の激減は、高齢者や女性の採用を
   後押ししています。

   そして、中小企業にも及ぶ年功序列給与体系の崩壊に対する、 能力や成果に応じ
   た給与制度の構築とは、人材の有効活用と積極的な教育を前提とするものです。

   国や自治体はこれらを推し進める企業に対して、助成金を用意しています。

   法人代理店の中には「中小企業雇用創出人材確保助成金」や「中小企業高度人材確保
   助成金」等を獲得したケースもあります。

   ただし、助成金制度は国が管理するものや自治体が管理するものと色々あり、「ど
   んな制度が身近にあるのか?」といった疑問や、組織規模や経営環境などの条件が
   いろいろあることから、「自社(店)にはどの制度が適用されるのか?」といった疑問
   の声が多くあがります。

   まず、より多くの情報を体系的に知っておくと、条件が合えば、複数の助成金を獲得
   できます。

   また、助成金の獲得の実績が積みあがると信用力も高まり、交付される可能性がよ
   り高まるメリットもあります。

   情報は「最新」である必要があります。

   なぜなら、制度の名称や内容及び条件が度々変更されることが少なくないからです。

   インターネットなどで制度の種類や最新の情報を確認することができますが、助成金
   制度を活用するのが初めてであったり、時間に余裕がない場合は、社労士などの
   専門コンサルタントを活用するのも一つの方法です。

  □育児・介護休業制度

   育児や介護のために一時的に休業をとって、その後継続して仕事をできるようにと、
        「育児・介護休業法」により導入が義務付けられた休業制度です。

   育児休業の場合、申し出は1ヶ月前までに行い、子供が満1歳の誕生日を迎えるまでの間
   の連続した期間です。

   一方、介護休業の申し出は2週間前までに行い、期間は3ヶ月が限度です。

   休業中の賃金・賞与は法律の定めがなく、任意事項となっています。

   ほとんどのケースが無給のようですが、無給で
           あることも前もって規定に定めておく必要があります。

  □育児・介護に関する助成金

   従業員の仕事と育児・介護との両立を支援する事業主に対して、以下の助成金・
   奨励金制度が設けられています。

    ☆育児・介護費用助成金
      (労働者が育児または家族の介護に必要なサービスを利用した場合、その費
      用を負担した事業主に対して費用の一定割合を助成するもの)

    ☆育児・介護休業者職場復帰プログラム実施奨励金
      (育児休業または介護休業を取得した労働者の円滑な職場復帰のために、
      職場適応性や職場能力の低下を防止し、回復を目的とした「職場復帰プログ
      ラム」を実施する事業主に対して支払われる)

    ☆育児休業代替要員確保等助成金
      (育児休業取得者が、育児休業終了後、原職に復帰することを前提に、育児
      休業取得者の代替要員を確保した事業主に対して支給される)

    ☆事業所内託児施設助成金
      (労働者のために事業所内託児施設を設置、運営または増築する事業主に対
      し、その費用の一部が助成される)

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