荷物の安全輸送(企業編)

           

荷物の安全輸送〜企業編(1)


  ■荷物の安全輸送に向けて

   「輸送品質」という言葉があります。

   輸送サービス一般をふつうの商品と同じようにとらえ、その質的な向上を図るために導入された
   概念ですが、経済の停滞が長引き、全体的な売上げが伸び悩む中で、荷主の運送業者を見る
   目が一層厳しくなっていることは確かです。

   荷主が運送業者を選ぶ際の判断ポイントは、さまざまですが、一に運賃水準の高低、二に輸送の
   安全・確実性です。

   ほかに輸送以外の付帯サービスが充実しているかどうか、融通がきくかどうかと言ったポイントも
   あるのですが、この二つがダントツと言ってもいいでしょう。

   これら二つはいわば運送のサービス内容そのものですから当たり前ですが、輸送の安全・確実性
   への強い要請が、在庫を余り持たないなど荷主の商売の仕方の変化からきていることを、
   忘れてはいけません。

   こうした荷主の要請に応え輸送の安全性・確実性、別な言葉で言うと「輸送品質」の向上を図って
   いくことが、これからの運送業者の競争力を大きく左右していくでしょう。

  □取組みの基本

   事故防止にまず必要なことは、社内の意思結集を図ることと具体的な成果をあげるための
   道筋をつけることです。

   いうまでもなくこれには色々な方法がありますが、まず次の対策ができていなければ、
   きちんとした取組みは現実にはできないでしょう。

   その意味でこれらは取組みの基本ともいうべきものです。

   1.現状の把握

    自分の会社の事故がどんなふうに起きているのか、分かっているようで案外分かって
    いないものです。

    そこで、過去何カ年か遡って、事故がどのように起きているのか、できれば統計的な形で
    確認してみてください。

    事故が増えているのか、減っているのか。

    どんなタイプの事故が減り、どんなタイプの事故が増えているのか。

    今まで感覚的に捉えていたものと案外違った実態なり傾向がそこに浮かび上がって
    きているかも知れません。

    こうすることによって事故の実態が捉えられると同時に、会社にとって何が問題か漠然かも
    しれませんが浮かんでくると思います。

    ここからが事故防止活動のスタートです。

   2.基本方針の確立

    事故防止に何よりも必要なのがこれです。

    事故が起きるというのは、とりも直さず荷扱い作業に問題があることを意味します。

    これに対し精神的な呼び掛けを行うだけでは恐らく何も解決できないでしょう。

    交通事故の安全スローガンの実効性を考えてみれば分かると思います。

    ところが企業が行っている実際の事故防止活動は、洗練度に多少の違いは あっても
    この段階で止まっているケースが少なくありません。

    具体的な成果をあげるためには、会社としての方針を「目標」の形でできるだけ具体的に
    定め、それを分かりやすく社員に伝える必要があります。

    ただ、目標を定め、それを発表するだけでは何の意味もありません。

    目標に説得的な意味を持たせ、社員一人ひとりがそれに納得し、自分の課題として取り込もう
    とする態度を生み出すようになっていなければ、本当の意味で方針を確立したことに
    なりません。

    そのためには繰り返しになりますが、目標は分かりやすく、具体的になものである必要が
    あります。

    また説得力を持つためには、現実性も十分持っていなければなりません。

    理想に傾けば傾く程、響きは美しくなりますが、響きとは裏腹に説得力を失います。

    ないほうがましになってしまいます。

    「何のためにいつまでに何をやる。」です。

    そして係数的に達成度合いが検証できる。

    難しいですが、そんな目標設定ができるよう努力してみてください。

    この作業がうまくできれば、別な言い方をすれば、目標に求心力を持たせることができれば、
    事故防止はある意味で半分できたも同じです。

    ついでに言うと、こうした目標は、会社の「理念」の延長にあれば言うことなしです。

    サービス分野で優れた業績をあげている会社は、おしなべて社員に受け入れられている
    明確な企業理念をもち、その理念に裏打ちされた目標をもっています。

   3.管理体制の整備

    上で触れた事故防止上の問題点の把握をし、それに基づいて事故防止の対応方針を
    定めそれに向かって社員のベクトルを一つに揃えていくこと。

    こうしたことを継続的かつ効率的に行っていくためには、これらの進捗度合を常にモニターし、
    予定どおり順調に進捗していない場合には、必要な措置を折々に講じ、全体の進捗を
    目標に向けて管理していく、そういった組織がどうしても必要といえます。

    勿論会社規模等の関係で、こうした事務を専門的に所管する部署を設けることが難しい
    場合もあります。

    しかし、ここでの課題をより細かく見ると、問題は、部署を設けるかどうかではなく、そうした
    管理を進めていく機能を会社に持たせることができるか、どうかだといえます。

    その意味で、専門部署を設けるのが難しい場合には、その機能を担う人材を特定するなど
    して対応すれば問題はないでしょう。

    要は、会社の事故実態を把握し、経営者とも連携しながら継続して問題への対応措置を
    打ち出していく機能、そうした機能を会社に持たせることが体制整備の実質的な意味と
    言えます。

  □取組方法の実際

   さて、明確な目標や体制の整備ができたら次は、その実現のためにどんな手法をとるか、
   です。

   以下に、このためにできる事を書き出してみます。

   それぞれの運送会社ごとの実態が必ずしも同じではないため、どれもが参考になるとは
   思えませんが、どれをやってどれをやらないか。

   自社の実情に照らし合わせ、自分の会社ではどんな取組みができるか、あるいはできて
   いるかチェックしてみてください。

   1.事故防止運動(キャンペーン)期間の設定(取組重点項目の設定とその改善)

    過去の事故調査をもとに改善を要するポイントを取組重点項目として設定し、その改善を
    期間を限って強調していくものです。

    取組成果が係数的に評価できるものについては、表彰制度を併設することも考えられます。

   2.事故防止に係る年次方針の策定、年間取組結果の統括・成果確認と次年度方針の策定

    当たり前ですが事故防止は“言うは易く行うは難し” です。

    そのためあらゆる事に取り組んでもすべて中途半端ということも考えられます。

    事故が起こる背景は決して単純ではありません。

    それだけに短兵急に成果を急ぐことは避けなければなりません。

    じっくり取り組む必要があります。

    仕事の進め方についてプラン・ドゥ・チェック・アクション(PDCAサイクル)がよく使われます。

    しかし何故か、事故防止については目先の成果を追うあまり、これが余り顧みられない
    ように思います。

    事故防止に係る年次方針の策定、年間取組結果の総括・成果確認と次年度方針の策定は
    まさにこのPDCAサイクルのスタート地点そのものですが、施策を総花的に羅列する
    のではなく、やる事を絞り込み計画的に進めることが、遠回りのように見えますが、結果として
    全体的な事故防止の一番の近道になるものと思います。

    こうした方策はいわば品質管理そのものと言えます。

    事故防止とどう取り組むかについて大変参 考となるので、少々面倒ですがこの品質管理の
    手法について以下に書き出してみます。

    ついでに現在の自社の取組みがこうした形になっているか、チェックしてみてください。

    (1) 問題点を把握し、目標を設定する。問題点は極力データで把握する
      (問題点が係数的につかめ、改善の傾向が統計的手法で把握できる)。

    (2) 改善のための組織を作る(どこに、どのような組織を作るか決める)。

      @特別のチームを作るか

      Aスタッフによるか

      BQC(クォリティコントロール;品質管理)サークル(小集団)によるか

      C現行の職制によるか

    (3) 改善計画を立てる(実施事項、担当者、日程などを決める)。

    (4) (問題の)要因を列挙する。

    (5) (問題の)要因を解析する。

    (6) 改善案を作る。作業規程・標準などの改訂を行う。

    (7) 新作業規程・標準に基づき作業する。

    (8) 結果の確認を行う。

   3.事故率の管理(目標値の設定)

    事故に関し係数的な目標を設定し、これとの関係を継続的にチェックし活動の成果、
    進捗状況を正確につかんでおくことは、自社のサービス品質水準の把握や取組みそのもの
    の在り方を検証するためにも是非とも必要です。

    また、社内で事故防止に向けた指導を行うにしても、こうしたものがないと説得力を持たない
    のは言うまでもありません。

   4.優績店所・個人の報奨

    年間あるいは数年間の事故発生率等を基準に、その水準ないし改善が顕著なお店や個人を
    報償することを通じ事故防止へのインセンティブ(誘因)にするものです。

    実際に実施している会社は少なくありませんが、あまり極端な報奨内容とすると報償を
    受けられない支店・個人を中心に逆の効果を生む恐れがあり、公平な評価を行うことと
    合わせて、こうした点に十分留意していく必要があるのは言うまでもありません。

   5.社内の検査体制の整備

    検査規準などの作成を通じ、ターミナルなど現場の作業レベルを定期的にチェックし、
    問題点の指摘および改善の勧告を行うものです。

    もちろんそのための組織および基準が整備されていればベストですが、そうなっていなければ
    できないというものでもありません。

    要は、日常性の中で見えにくくなっている現場の問題点を、言わば第三者的立場から
    気が付かせてあげることがここでのポイントですので、こうした仕組みをとることだけでも
    いいでしょう。

    第三者がチェックするということで、マンネリに陥る事を防ぎ、現場の注意レベルもそれなりに
    維持されることが期待されます。

    これに関しては、ターミナルでの作業内容を中心にチェックのポイントをまとめた
    「荷物事故防止チェックシート」の資料をご覧ください。

   6.個別問題店所・個人との協議・指導

    どこでも会社全体の水準から見て、問題や弱点を抱えている個人や会社はあるものです。

    その解決をそれぞれの自主性に任せるのもひとつの手ですが、こうした場合何が真の問題で、
    どう解決していけばよいか気が付きにくくなっているケースが少なくありません。

    その解決を図る手立てがこれです。

    こうしたケースを個別問題としてとらえ、専門的な立場からアシストできるスタッフが、
    協議ないし指導していくことにより、問題の早期解決を図るそんな制度を持つ会社も少なく
    ありません。

   7.品質管理技法(作業標準化、TQCの推進)の導入、実践

    事故防止には様々な手法がありますが、運送業だけでなくさまざまな産業分野で試みられ、
    確立さしてれているのが作業標準化とTQC(トータルクオリティコントロール)の推進です。

    どちらも本格的に行うには、作業手順を確立したりマニュアルを整備したり、更にはそのための
    組織作りを進めたりで相当の手間と覚悟を必要としますが、会社の仕事の在り方そのものを
    土台から変えることにより、事故防止や人材育成にも大きな効果を期待できるものです。

    それだけに時間もかかりますが、大きな成果を得るために研究してみる価値はあります。

   8.事故防止提案制度の設置

    衆知を集めて実態を改善していくものとして、TQCより気軽にできるので検討しても良い
    方法です。

    事故防止というと、つい大掛かりな取組みを想定しがちですが、基本的には身の回りの
    細かい問題の改善とその集積がものをいいます。

    その意味でTQCといった大掛かりな装置を考えることが大切かも知れませんが、この方法で
    手近なところから始めてみる方が実際的かも知れません。

   9.荷主との事故防止提携関係の強化

    事故防止は運送会社だけの問題ではありません。

    現実には運送会社サイドで解決すべき問題が多いのは事実ですが、運送会社だけで解決を
    図るより、荷主との提携関係の中で梱包や荷扱いの在り方に関し「共通の問題」として
    解決を図っていくほうが望ましいケースも少なくないといえます。

    そのようなケースが現実になければ別ですが、ある場合には積極的に取り組むことを
    おすすめします。

    事故で損害を被り困っているのは賠償負担を余儀なくされている運送会社ばかりでは
    ないからです。

    まじめな荷主であればある程、そうした取組みを歓迎してくれるはずです。

    こうした取組みが荷主との信頼関係を深め、営業的にも資する点が少なくないのは言うまでも
    ありません。

   10.高頻度事故発生荷主の事故防止具体策の策定および実施

    事故頻度が高いケースについては何等かの個別的な理由があり、理論的にいえばその点を
    改善できれば一定の成果につながるはずです。

   11.事故防止情報の提供(社内外)

    情報を色々な面でどう活用するかは、企業活動の行き着くところを大きく決めていくものですが、
    事故に関する情報も同じです。

    事故に関する一つの情報は、同時に事故を防ぐための一つの方法を示唆しているかも
    知れません。

    ここで忘れていけないのは、実際に事故を防止軽減していくのは、店所長などの管理職
    ではなく実際に荷物を取扱う各社員だという点です。

    これら各社員が、事故防止の意義、必要性さらにはその問題点に気付き、事故防止意識に
    目覚めてくれなければ、事故の軽減は望むべくもありません。

    「事故を減らせ」という一方的な呼び掛け、指示だけでは、社員は十分納得し、自主的に
    事故防止に臨んではくれないでしょう。

    そのためには、下記の点を含め、日頃からのきめ細かい情報提供を欠くことはできません。

    もちろんどんな情報でもいいという訳ではありませんが、通達でも、掲示でもいいでしょう。

    必要な情報を的確に流し、関係者で共有する中で全員が事故と向き合うことの意味をもっと
    考えていいように思われます。

    (1)事故の発生状況をグラフなどで分かりやすく表示し、何が問題なのかについて
      社員各位の理解を得やすくすること

    (2)事故防止の目標数値から見た現況を同様にグラフなどで分かりやすく表示する

    (3)事故と関連の深い指標、例えばスキャン率、付保率などについても上記と同様の
      表示を行う

    (4)他支店、他社などの取組状況などを解説を添えて簡単に掲示する

    共有する範囲は社内だけに限る必要はありません。

    運送業もサービス業として、荷主への情報提供を積極化すべきでしょう。

    提供先を荷主まで広げる事には難しい点が少なくありませんが、こうしたサービスができる
    事もこれからの運送会社の差別化策として大切な要素になっていきます。

   12.事故処理方法の確立と社内徹底

    事故後の処理が悪いと、必要以上に荷主との関係を悪化させることがあります。

    事故はある程度やむを得ないとしても、事故後の処理は人為そのもので、処理が悪いのは
    その会社の怠慢そのものと映るからです。

    あなたの会社では事故処理の体制、つまり事故が起きたとき何をどうするか明確になって
    いるでしょうか。

    また社員全体にこのことが徹底しているでしょうか。

    心もとない場合には、マニュアルなどを整備し早急に改善を図ってください。

   13.荷主アンケートの実施

    自社のサービスの欠点というものは、なかなか自身では気がつきにくいものです。

    このため最近では「顧客満足調査」を、お客様に直接自社のサービス内容を評価してもらい、
    これをもとに業務の改善を図ろうとする会社が増えてきています。

    さらに取引先に社員一人一人の仕事ぶりを評価してもらい人事考課に反映させている会社
    さえあります。

    こうした調査は、お客様の本音を十分引き出せるか難しい面もあるのですが、自社の実態
    をつかむ上である程度参考にして良いものであることは間違いありません。

    どんなポイントについて調べるかについては、例えば「日経ロジスティクス(1990〜1995)」
    の荷主満足度調査の調査項目が参考となるので掲載しておきます。(この調査では全10項目
    について非常に良いから、良い、ふつう、悪い、非常に悪いまでの5段階で評価することに
    なっています。)

     ・運賃が安い

     ・配達までの時間が短い

     ・集荷時刻・配送時刻をきちんと守る

     ・貨物の正確な輸送状況を提供してくれる

     ・受発注・運賃請求などのシステム化が進んでいる

     ・荷物の破損・誤配送などの事故が少ない

     ・事故があった時迅速に対応する

     ・会社が必要とする輸送ルートに強い

     ・運転手や営業所員のマナーがよい

     ・業務の改善要求を出すとすぐとり入れる

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