出張手当の見直し

             

出張手当の見直し

  ■出張手当

   社員が支社に出向いたり、遠方の会社へ商談に赴いたりと、企業活動をするうえで出張は
   不可欠です。

   出張旅費規定に基づいて交通費や宿泊費、出張手当を支給している会社は多いと思いますが、
   定期的に規定の見直しを行っている会社は少ないようです。

   企業活動のあらゆる場面においてコスト削減が求められるなか、出張旅費も例外ではありません。

   過去の出張を検証し、無駄はないか、変更したほうがよい点はないかといった視点から出張旅費規定
   を見直してみましょう。

   1.出張手当とは

    社員が出張をした際、移動にかかった交通費や宿泊費とは別に、出張手当(日当)を支給
    している会社も多いと思います。

    そもそも出張手当とはどういうものなのでしょうか?

    移動距離や出張日数にもよりますが、出張には交通費、宿泊費、食事代、その他必要経費
    がかかります。

    出張手当とは、

     ・交通費、宿泊費以外の費用の全部または一部の補填

     ・出張に伴う精神的・肉体的疲労に対する慰労

     ・みなし労働における時間外手当の代わり

    などの意味合いで支給される手当です。

    税法上は給与として扱われず、社会通念上妥当な範囲に限って非課税とされています。

   2.出張旅費規定の必要性

    出張先や目的によって移動手段や出張日数もまちまちですが、出張に関して一定のルールを
    設けておかないと、そのつど個別に判断しなくてはならなくなり対応が煩雑になります。

    そこで、効率的に事務管理をするために必要となるのが出張旅費規定です。

    出張旅費規定に定める内容は、

     ・対象となる出張の定義と範囲

     ・会社が負担する旅費(交通費、宿泊費)の取り扱い

     ・出張手当の有無

    などですが、それと同時に「出張旅費精算書」などの社内書式も整備し、速やかに精算できる
    体制づくりも不可欠です。

    なお、税務調査において出張旅費が調査対象となることがありますが(カラ出張や不当に高額
    な出張旅費を支給していないかなどを調査)、その場合、出張旅費規定はもちろん、出張命令書、
    出張報告書、旅費精算書なども厳しくチェックされますので、きちんと運用・管理することが
    重要です。

    出張手当については、出張先(移動距離)、出張日数、出張する者の職位などによって
    支給基準を定めるのが一般的ですが、給与とみなされ課税されないようにするためには、
    次の点に注意して金額を設定する必要があります。

     ・役員および社員のすべてを通じて適正なバランスが保たれている
      基準によって計算されたものであること

     ・同業種、同規模の他社と比べて相当と認められる金額であること
                           (所得税基本通達9−3:要約)

   3.労働法からみた出張

    出張とは、業務命令(出張命令)によって労働する場所を一時的に変更し、命じられた場所で
    命じられた業務を行う行為をいいます。

    基本的には事業場外での労働なので、事業場外労働のみなし労働時間制が適用されます。

    つまり、所定労働時間または通常必要とされる時間労働したものとみなします。

    出張中の移動時間については、原則として会社や上司の指揮命令が及ばず、日常の
    通勤時間と同じと考えられるため、労働時間とはみなされません。

    よって、所定休日に出発する出張も時間外労働、休日労働にはなりません(その日の宿泊は、
    業務に対応するためのものなので、宿泊費は会社の負担となります)。

    ただし、以下のような拘束性がある場合には、移動時間が労働時間とみなされる場合も
    あります。

     ・重要書類や商品、機材を運搬している場合

     ・会社に立ち寄ることを命じられている場合

     ・移動そのものを業務としている場合

    なお、出張途中の災害については、労災保険が適用されます。

  □出張旅費規定の見直し

   出張手当を見直すということは、すなわち出張旅費規定を見直すということです。

   その際に注意しなくてはならないのが、出張手当の見直しが社員にとって不利益変更に
   あたらないかどうかです。

   ただし、不利益変更であったとしても、その変更に合理的な必要性がある場合(会社の財務
   状況の改善など)や、与える影響が少なく保護に値しないような場合は変更可能です。

   しかし、出張手当の見直しで出張コストを下げることができたとしても、社員が出張に対して
   不満をもち、出張での成果に影響が出てしまうようでは本末転倒です。

   コスト削減を考慮しつつも、いかにして社員のモチベーションを下げないようにするかを念頭に
   おきながら、出張旅費規定を見直しましょう。

   前項のポイント(出張手当の支給基準、みなし労働時間制の適用など)を踏まえて、実際の規定
   を例に、変更する際の注意点と条文案をみていきす。

   1.出張手当の見直し

    (1)注意点 

      @出張手当を減額するのはOK

       出張手当の減額は、社員にとっては不利益変更にあたりますが、
       合理的な必要性が認められ、かつ影響が少ない場合には、可能です。
       ただし、出張手当の本来の目的(時間外手当の代替的意味合い)も
       考慮し、世間相場を保った減額にとどめるようにします。
       なお、トラブル防止のためにも、減額に際しては社員への十分な説明と
       周知徹底を行うようにします。

      A出張手当を廃止するのはNG

       出張手当には時間外手当の代わりという意味合いもあるため、ほかに
       善後策を講じずに廃止をすることは、社員に対する一方的な不利益変更
       となります。

    (2)条文案

   2.日帰り出張の見直し

    出張先が遠距離であっても、新幹線や飛行機をうまく使えば、日帰りも不可能ではありません。

    日帰り出張のルールを見直すことで、宿泊費を削減することができます。

    (1)注意点

      @日帰り出張の範囲を追加するのはOK
        一般的に日帰りが可能な距離であれば追加も可能です。
        業務内容によって日帰りが困難になることも想定し、例外を設けて
        おくようにしましょう。

      A出張手当を廃止するのはNG
        出張手当には時間外手当の代わりという意味合いもあるため、ほかに
        善後策を講じずに廃止をすることは、社員に対する一方的な不利益
        変更となります。

    (2)条文案 

   3.宿泊費の見直し

    宿泊費の定額支給には、支給額が機械的に決まって事務効率がよいというメリットが
    ありますが、宿泊費を高めに設定している場合、実際の宿泊料金よりも多く支給している
    といったケースもみられます。

    コスト削減の観点から、宿泊費の実費支給を検討してみます。

    (1)注意点

      宿泊費を定額支給から実費支給にするのはOK

      実費支給にする場合には、上限金額を定めておくようにします(世間相場を参考に設定)。

      ただし、お盆などの時期には、宿泊料金が割高になったり、満室などの理由からホテルを
      変更せざるを得なくなったりすることもあるので、例外を設けておくようにしましょう。

      なお、トラブル防止のためにも、変更に際しては社員への十分な説明と周知徹底を行う
      ようにします。

    (2)条文案

  □出張そのものを見直してみる

   出張旅費規定を見直すとともに、出張そのものを見直してみることも重要です。

   出張にかかるコストを下げることができたとしても、無駄な出張や無理な出張が恒常的に
   行われているとすれば、生産性の向上にはつながりません。

    ・必要のない出張が慣習的に行われていないか

    ・出張の内容に無駄はないか
     (1人でも十分な出張を複数人でしていないか、適切な移動手段であるかなど)

    ・社員の健康を考慮せずに無理な行程の出張を命じていないか

    ・1回の出張で効率をさらに高めることはできないか

   など、費用対効果の観点から過去の出張を検証し、不要な出張の削減にもつなげて
   いきましょう。

   なお、出張の前と後に次のようなプロセスを組み入れ、運用を徹底するだけでも、出張に対する
   社員の意識が向上し、生産性がより高まることが期待できます。

   1.出張の事前準備を万全に行う

    生産性や仕事のクオリティーを高めるためには、出張の事前準備を万全に行うことが
    重要です。

    まずは、出張の目的を明確にし、出張先の打ち合わせで行うべきこと、出すべき結論を事前に
    まとめておきます。

    交渉における質疑応答も想定して、必要と思われるものはすべて準備をしてから出張する
    ようにします。

    そうすれば、出張先での打ち合わせが予定より短時間で終わり、さらに別の商談をする時間
    が生まれるかもしれません。

    出張の事前準備が不十分で、再度、日をあけずに出張しなければならない事態にでもなれば、
    それは時間と出張費と人件費の無駄遣いです。

    出張前の準備を徹底するよう働きかけましょう。

   2.速やかに出張報告書を提出させる

    出張でやり取りした内容は、社内の関係者には必ず知っておいてもらわなくてはなりませんし、
    社内の関係者は先方の反応がどういったものであったのかを理解しておく必要があります。

    その際、出張報告書がしっかりと機能していれば、たとえ他部署の人が同じ出張先に出向いた
    としても、先方の要望に的確に応えることができ、また、先方が難色を示しているポイントでの
    交渉においても慌てることなく対応することができます。

    出張報告書の仕組みを見直し、出張後1日以内に提出するような体制づくりを整備しましょう。

    出張の多い部門および社員は社内でもある程度限定されるため、前述の検証はそうした
    部門を中心に進めるのがよいと考えられますが、実際に出張旅費を管理するのは管理部門です。

    コスト削減という視点から、管理部門の協力は不可欠です。

    管理部門は、出張旅費規定の見直しだけでなく、交通費や宿泊費のコスト削減案(割引チケットの購入、
    ホテルや旅行代理店との値引き交渉など)も積極的に提案しつつ、出張の多い部門との調整を
    図りながら、自社にとって最適な出張の形を確立していくことが大切です。

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