会社を成長させるための投資の考え方

            

会社を成長させるための投資の考え方

  ■投資が経営体質を強くする

   業績好調な中小企業の多くの社長は「我が社はここ数年きちんと利益を出し続けている」と
   胸を張って語ります。

   確かに連続して利益を上げていることは素晴らしいことです。

   しかしながら、この社長が「毎年少しでも利益を上げ続けること」のみを目標に経営していた
   としたら、話は違ってきます。

   毎年の利益の積み重ねだけでは会社は本当には強くなりません。

   それだけでは長期的な会社の存続は約束されないのです。

   そこで、ここでは会社の成長のための投資の考え方について解説します。

   1.投資することで会社は成長する

    企業経営では会社の成長のための投資が欠かせません。

    投資のための原資は資本金や借入金、そして毎年稼いだ利益などです。

    多くの社長は利益を出すために必死の努力をしていますが、稼いだ利益をどのように投資
    していくかということについて、明確な考えをもっている人は少ないようです。

    また、必死になって稼いだ利益を失敗するかもしれない投資に回すことに消極的な社長も
    います。

    しかし、これでは会社を成長させることはできません。

    資本金1000万円で会社を始めるということは、1000万円を元手に投資をしていくことに
    ほかなりません。

    最初は投資できる金額は小さいですが、利益が積み重なっていけば、投資可能金額も大きく
    なっていきます。

    また、信用が高まれば借金もできるようになります。

    逆にいうと会社成長のための投資額を大きくするために利益を稼いでいるととらえることも
    できます。

    そして、その投資を上手に行える会社、つまり稼いだお金を上手に使える会社が、さらなる
    利益を生み、投資可能金額も膨らむという好循環のなかで成長していくのです。

   2.目先の黒字のみを目標にしない

    たとえば、次のようなケースを考えてみましょう。

    最近退職者が何人かでて営業マンが不足しています。

    このままいけば決算は何とか黒字になりそうな見込みが立っていますが、新規に採用すれば
    人件費分だけ赤字になることがわかっています。

    黒字決算を優先して採用を控えるべきか、あるいは今後の投資として赤字になっても人を
    採用すべきでしょうか。

    別のケースもみてみましょう。

    業績は順調で今期は黒字決算を見込んでいます。

    来期以降のことを考えると早めに設備投資をしておきたいと思う一方で、今、設備投資を
    行うと赤字になってしまいます。

    設備投資は行うべきでしょうか。

    ここで改めて確認したいのは、会社を成長させていくということと、毎年利益を出し続ける
    ということは全く別物であるということです。

    会社を成長させていくプロセスのなかで、結果として毎年利益が出続けるのは大変好ましい
    ことですが、そのことを第一優先にして、将来のための投資を行わないのは、長期的な視野
    から考えれば非常に危険なことです。

    もちろん、毎年赤字が続けば経営そのものに行き詰まることになりますが、少なくとも資金的
    に安定していて、根拠のある投資をする場合は、その期が赤字になってしまっても全く問題
    ありません。

   3.毎年黒字の落とし穴、たんにラッキーの連続だったら

    会社を成長させていくということは、多少のアクシデントが発生しても会社倒産の危機に
    追い込まれないように、適切な投資によって経営体質を鍛えていくことでもあります。

    たとえば、非常に幸運な状況に恵まれて、ほとんど新たな努力なしに何年か黒字が続く
    こともあります。

    このような状況が続くと、社長は経営体質がまったく強化されていないのに、数字だけを
    みて「我が社は順風満帆」だと勘違いしてしまうこともあります。

    そしてある日突然、強力なライバルの出現や顧客ニーズの急変などのアクシデントが発生し、
    自社の脆弱な経営体質では到底対応できないような事態に陥ってしまうことも考えられます。

    毎年の数字だけで会社の力を判断するのは非常に危険なのです。

    会社の力はあくまで経営体質がどれだけ強化されているかで判断しなければなりません。

    幸運が重なり利益だけ出続けて経営体質が強化されていないのは、じつは非常に危険な
    状態なのです。

   4.投資の決断をするのは社長の役割

    そうはいっても、赤字覚悟で大きな投資をするのはたしかに勇気が必要です。

    周囲からの反対もあるでしょうし、「もし失敗したら会社が潰れるのではないか」という不安も
    つきまとうでしょう。

    幹部陣と入念に相談するなど慎重な検討が必要なのはいうまでもありませんが、あらゆる
    角度から検討して、それが自社の経営体質の強化につながると判断される場合は、社長自身
    が最終的に決断するしかありません。

    そのような困難な意思決定ができるのは社長だけだからです。

    先のケースでいえば、営業マンの新規採用については、残ってくれている営業マンに負担を
    かけ続けることはさらなる退職増加につながり、会社の営業機能が維持できなくなる可能性が
    あります。

    また、優秀な営業マンを育てるためには一定の期間がかかることを考えると、早めに新規
    採用に踏み切るべきでしょう。

    また、設備投資についても、商品の販売増のめどが立っており、現設備では対応しきれない
    場合や、現在の商品が陳腐化の兆しをみせており、新商品の開発が不可欠と判断される
    場合は導入を決定すべきです。

    単年度の黒字にこだわるあまり、必要な先行投資を控えた会社は、その後大きく成長する
    ことはありません。

    会社成長のためには、自社の経営体質が確実に強化されているかをつねに把握し、必要な
    投資は確実に行っていくことが大切なのです。

  □直接投資と間接投資

   1.投資には2つの種類がある

    投資には工場などでの設備投資のようなすぐに収益につながる可能性がある「直接投資」と、
    社員教育や研究開発のようなすぐには収益に直結しない「間接投資」があります。

    例えるなら、前者はワールドカップの日本代表が目前の大会で勝つための強化費用、
    後者は日本のサッカー全体のレベルを上げていくために、アマチュアクラブ制度を全国的に
    普及させるための費用のようなものといえます。

    このように考えるとどちらの投資も重要であることがわかります。

    間接投資で次代を担うような技術や人材を育て、それを具体的な成果に結びつけるために
    直接投資を行うという2種類の投資が必要なのです。

    直接投資と間接投資の例.bmp     

   2.間接投資を軽視しない

    社長のなかには、工場の設備投資(直接投資)には積極的でも、社員教育や研究開発
    (間接投資)に対しては消極的な人もいます。

    日々の業務のなかでも社員は徐々に仕事を覚えていきますが、それはあくまで現状ベース
    の仕事を覚えていくだけです。

    社員に投資して新たな知識や能力を吸収させない限り、会社は次のステージに上がれません。

    毎年少しずつでも社員に投資をしている会社と全くそれをしない会社とでは、5年後には
    大きな差がつくことは明らかでしょう。

    社長は「直接投資」だけではなく、「間接投資」の積み重ねでいかに人材力を高めていく
    べきかにも知恵を絞る必要があります。

    「直接投資」で得られる効果は、たとえば、設備投資であればその設備の稼働能力以上に
    高まることはありません。

    しかし、「間接投資」がうまくいけば、投資金額の10倍、100倍に匹敵する効果、つまり
    会社の収益構造を一変させる効果を生む可能性もあるのです。

  □投資の具体的な考え方

   1.現状の延長線で考えてみる

    実際の投資を検討する際にはいくつかの考え方があり、そのうちもっとも基本となるのは、
    現状からの延長線で検討することです。

    具体的には、次のような手順で考えます。

    a.現業の強化

     現在の市場(顧客)に現在の商品をさらに浸透させるための投資です。
     現商品のための増産体制整備、シェア拡大のための販促費用などが該当します。

    b.新商品の展開

     現在の市場(顧客)に対して新たな商品を提供するための投資です。
     既存商品が将来低迷することに備え改良商品を開発したり、既存商品
     とは全く異なる商品を開発して新たな需要を獲得するための開発費
     などが該当します。

    c.新市場への展開

     現在の商品をこれまでと異なる市場(顧客)に販売していくための投資
     です。  
     小売店を通じて販売していた商品をインターネットで直販するための
     システムの開発費用などが該当します。
     また、商圏を広げて新たな地域で販売を開始する際の出店費用なども
     これに該当します。

    d.新市場・新商品の展開

     新しい商品を新しい市場(顧客)に販売していくための投資です。
     これまでの商品や市場(顧客)に頼らずに全くの未知の分野を開拓して
     いくやり方です。
     有望分野に参入することによって収益構造が劇的に向上することも期待
     できますが、ゼロからのスタートですので失敗する確率も高まります。

   2.現業が好調なときこそ新規投資の検討を

    投資のタイミングとしては「困ってから行うのではなく、現業が好調なときにあらかじめ
    投資しておく」ことが非常に重要です。

    たとえば、前述の投資の類型のなかの「b.新商品の展開」であれば、既存商品が売れなく
    なってからではなく、将来的には必ず売れなくなることを見越して、あらかじめ新商品開発
    のための計画的な投資をしておくことが大切です。

    現業の低迷が続き、窮余の策として一発逆転を狙って投資するケースと、前もって
    計画的に投資しておくケースを比較するとどちらのほうが成功確率が高いかはいうまでも
    ないでしょう。

   3.失敗することを恐れない

    いくら緻密な検討を行ったとしても、それが「投資」である以上、失敗をする可能性は当然
    あります。

    設備投資を行い新製品を製造したけれども全く売れない、あるいはずっと目をかけて投資
    し続けた社員が他社に引き抜かれた、こういったリスクは避けては通れません。

    しかし、会社を成長させるためにはそれでも投資を続けなければなりません。

    一度の失敗にひるんで投資を止め、利益を現金として貯め込んでいるだけでは、その時点
    で会社の成長は止まってしまいます。

    投資で失敗しても、失敗した原因をきちんと分析していけば、勝算と得られる効果は次第に
    上がっていくものです。

    会社として一定の利益を出すことは、仕組みさえできてしまえば、幹部社員に任せることが
    できますが、稼いだお金をいかに使うか、将来のためにどのように投資していくかの判断は
    社長が行う以外ありません。

    失敗を恐れず、また、失敗してもそれを糧として投資のセンスを磨いていくことは、会社を
    成長させるための社長の重要な役割なのです。

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