配置転換を行う際の留意点

             

配置転換を行う際の留意点


  ■配置転換とは

   配置転換とは、会社内における職務内容や勤務場所の長期にわたる変更(人事異動)のことを
   いいます。

   勤務場所の変更に際してよく使われる転勤も、配置転換のひとつです。

   配置転換は、次のような目的で行われ、上手に活用すればメリットのある方法です。

    ・社員に多くの職場・仕事を経験させることによって人材育成ができる

    ・会社のなかで人員配置を調整することで、解雇することなく雇用を維持できる

    ・人材を適材適所に配置することで事業を効率的に運営できる

   一般的に、会社は就業規則に「社員を配置転換させることができる」旨を定め、それを根拠として
   配置転換命令を行います。

   この場合、会社の正当な人事権の行使である限り、社員はこれに従う義務が生じます。

   ただし、配置転換は、社員にとって著しい不利益を伴う可能性があり、むやみに行使すれば、
   権利の濫用として訴えられるなど、思わぬトラブルに発展する恐れがあります。

   このため、会社が社員に配置転換を命じる際は、さまざまな点に留意して慎重に行う必要が
   あります。

   次項からは、配置転換(転勤を含む)を行う際の留意点について解説します。

  □配置転換を行う際の留意点

   1.就業規則に規定されているか

    就業規則や労働協約に「配置転換を命じることがある」といった旨の定めがある場合に、
    一般的に会社には配置転換を命令する権利が認められます。

    この定めがない場合は、配置転換させる命令権がないと考えられますので、まずは、
    就業規則に規定があるかどうか確認しましょう。

   2.勤務地や職種が限定されているか

    就業規則などで配置転換をする旨が規定されていたとしても、その社員との雇用契約において、
    勤務地や職種を限定する合意がある場合には、定められた範囲でしか変更は認められません。

    このため、雇用契約において、勤務地や職種が限定されているかどうかを確認する必要が
    あります。

    雇用契約の際に、勤務地や職種を限定することが約束されている場合には、会社の一方的な
    命令によって配置転換を命じることはできず、社員の合意が必要となります。

    ただし、勤務地や職種が限定されているかどうかについては、あいまいなままになっている
    ケースも多く、会社は「限定した」つもりはなくても、配置転換を命じた社員から「限定されていた」
    との主張がなされることがあります。

    採用時には、一般的に働いてほしい勤務地で、働いてほしい職種について募集し、面接する
    ことが多いため、「将来的には配置転換の可能性がある」ことを特に説明しないままに採用
    してしまうところに原因があると考えられます。

    「限定されていた」との主張がなされた場合に、過去の判例では、次のような点から総合的に
    判断されています。

    ・採用までの経緯
     ……本社採用か現地採用か、募集時に示された条件、採用試験の内容、採用
        後に従事する職種の内容およびそれに関する説明など

    ・社内規定の内容や運用
     ……処遇についての規定や運用方法、過去において配置転換されたことがあ
       るか否かなど

   3.業務上の必要性があるか

    会社が社員を配置転換させるには、業務上の必要性が求められます。

    業務上の必要性のない配置転換命令は、権利の濫用とされます。

    (1)配置転換を行う業務上の必要性

      過去の判例では次のような事由で検討され、会社の合理的な運営に役立つ事由が
      認められる限りは業務上の必要性があると判断されています。

       ・人員の適正配置・業務の能率向上・勤務意欲の高揚

       ・能力開発や向上・業務運営の円滑化

    (2)人選の合理性 

      人選の合理性については、判例において、会社の裁量が広く認められる傾向があり、
      その配置転換がその人以外にないといった高度の必要性までは求められないと
      されています。

   4.不当な動機や目的がないか

    会社が行った配置転換命令に不当な動機や目的がある場合は、権利の濫用と考えられます。

    不当な目的や動機がある場合とは、次のような事由があげられます。

     ・社員を退職させるために行われる配置転換命令

     ・会社に対して批判的な考えをもっている社員に対する配置転換命令

    なお、過去の判例では、不当な目的や動機があるかどうかは、具体的な配置転換の内容や
    配置転換に至るまでの経過など客観的な事情から判断されます。

   5.社員に著しい不利益を負わせるものでないか

    配置転換によって社員に通常甘受すべき程度を著しく超えるような不利益を負わせるもので
    ある場合は、権利の濫用になると考えられます。

    不利益として問題とされることが多い事由としては、次のものがあげられます。

     ・家族の介護を行っている社員や転居が困難な病気を家族が患っている場合

     ・転勤に伴い単身赴任を余儀なくされる場合

     ・通勤に長時間を要する場合

    なお、配置転換による不利益が争われた過去の裁判では、次のように判断される傾向が
    あります。

    

   6.法律に違反いないか

    会社が行った配置転換命令が、強制的に適用される法律に違反している場合は無効と
    なります。

    たとえば、その配置転換が労働組合活動の妨害を目的とするような不当労働行為に該当する
    場合(労働組合法7条に抵触)や、思想信条による差別にあたる場合(労働基準法3条に抵触)
    は無効とされます。

    また、育児・介護休業法では、次の条文で、配置転換を行おうとする会社に配慮を求めています。

    

    配慮にあたる内容として、次の例示がされています。

     ・その社員の子の養育または家族の介護の状況を把握すること

     ・社員本人の意向を配慮すること 

     ・就業場所の変更を行う場合は、子の養育または家族の介護の代替手段の
      有無の確認を行うこと

    これは、社員が配置転換を拒んでいる場合に、育児や介護の負担がどの程度なのか、
    これを回避するためにはどうしたらよいかを、会社が誠実に検討して対応することを求めている
    ものです。

    すでに配置転換を決まったものとして強行に行使しようとする場合は、法律の趣旨に反し、
    その配置転換命令が権利の濫用として無効とされることがありますので留意が必要です。

  □トラブル防止のポイント

   1.就業規則の点検を行う

    会社の就業規則に「配置転換を行うことがある」旨がきちんと規定されているかどうかを
    確認しましょう。

    記載されていない場合は、社員と話し合ったうえで、その旨を盛り込んでおいたほうが
    よいでしょう。

   2.社員の意向を確認し、十分な配慮を行う

    配置転換は、就業規則の定めがあれば、会社が命令することができますが、社員にとっては、
    大きな負担や不利益となる可能性があることを念頭におく必要があります。

    そこで、一方的に命令するだけでなく、事前に社員に意向確認をすることが大切です。

    併せて特に転居を伴う配置転換を行う場合は、転居費用の支援など、負担を軽減する措置を
    行う配慮も有効です。

   3.配置転換を行う必要性および人選の理由を明確にする

    社員に対して配置転換を命じる必要性と社員の被る不利益を比較し、必要性が不利益を
    上回る高度のものであると認められる場合には、権利濫用とされる可能性は低くなると
    考えられます。

    このため配置転換を行う必要性を明確にし、できる限り具体的に整理しておくことが
    ポイントです。

    また、配置転換を命じる社員に対して、その必要性を丁寧に説明することも有効です。

    また、労働契約法においても次のように定めています。

    この点からも配置転換など労働条件が大きく変わる場合は十分な説明は必要といえるでしょう。

     

   4.雇用契約書を見直す

    雇用契約において、勤務地や職種が限定されている場合には、配置転換を一方的に
    命じることはできません。

    会社の意図とは違って、「自分は勤務地限定(職種限定)で採用された」と社員が勘違い
    しないように、雇用契約書や労働条件通知書に「将来的には配置転換の可能性がある」
    ことを明記しておくことは大切です。

    労働基準法では、会社は社員を雇用する際に、労働条件の重要部分について書面で明示
    することを義務づけていますが、この場合に採用時の内容を記載すればよいとされているため、
    社員に誤解を与えてしまう可能性があります。

    採用面接や採用をする際に「配置転換の可能性があること」についても説明しておくことが
    重要です。

  □書式例

   1.就業規則規定例

    配置転換を就業規則に定める際の規定例を示します。

   2.雇用契約書例(一部抜粋)

    配置転換を行う可能性がある場合の雇用契約書(一部抜粋)への記載例を示します。


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