財務諸表

          

財務諸表


 ■財務諸表

  「財務や経理などの煩わしいことには関わりたくないので、税理士や経理担当にすべて
  任せている」という中小企業経営者の方もいるかもしれないが、そのような意識で数字を
  避けていては適切な経営は覚束(おぼつか)ないと言わざるを得ません。

  税理士や経理担当者と経営者では役割や関心事が異なるのは当然であり、会社の現状を
  把握して経営戦略を立案したり、方向性を定めるのは経営者に求められる役割です。

  このような観点から、財務や経理に関することについても経営者本人が関与することは
  不可欠であり、税理士等の他人に任せ切りにしてはならないと言えます。  

  面倒な財務のことは税理士や経理担当者に任せて自分は営業に専念したいという経営者が
   少なくありませんが、それは危険な兆候です。

   健全な経営を実現するには、経営者自らが経営状況を表す財務諸表を常にウォッチ
   する姿勢が欠かせません。

   経営者が財務面に気を配ることにより、目標達成・業績向上に向けた打ち手が見えて
   くるのです。 

  利益を上げる

   「利益を計上すると税負担が増してしまうので、節税のためには経費を多めに計上して
   利益を上げないほうが得だ」と考える社長もいるかもしれません。

   また、「税負担を軽減するために多額の黒字を計上しないようにしましょう」と言う税理士や、
   「正直に申告して税金を納めるのは馬鹿らしい」などと公言してはばからない中小企業経営者が
   いることも事実です。

   しかしながら、目先の税負担ばかりを気にして実態以上に悪い業績を示す決算を続けていると、
   中長期的には弊害が目立ってきます。

   金融機関の融資姿勢は従前と比較して厳しさを増しており、赤字決算を続けたことにより
   借入残高を維持できずに資金繰りが破綻する企業もあるという実態を認識し、自社の
   中長期的な経営戦略を講じていくことが必要です。

  財務諸表の種類

   商法では「計算書類」、証券取引法に基づく財務諸表規則では「財務諸表」と呼ばれますが、
   実質的にはほとんど重複するので両者をともに「財務諸表」と総称することもあります。

   非上場の中小企業の場合、ほとんどのケースでは商法上の「計算書類」を作成すれば
   良いので、キャッシュフロー計算書は作成を義務づけられていません。

   財務諸表は原則として総勘定元帳などの会計帳簿を基に作成されますが、「営業報告書」は
   例外であり、以下の諸項目について記載することが定められています。
    (→商法計算書類規則第45条)

  各種財務諸表の必要性

   図は、
    1.期間中の企業の活動成果を端的に示すものが損益計算書 ⇒ [収益−費用=利益]

    2.期末時点における企業の財政状態を示すものが貸借対照表 ⇒ [資産=負債+資本]

    3.期間中の資金の流出入を示すものがキャッシュフロー計算書 ⇒ [収入−支出=キャッシュ
     フロー(現金等純増額)]
    

   財務諸表は会社の状況について財務的な側面から端的に示すものであり、目的・用途に
   合わせていくつかの形式で作成されます。

   最も重要視されるのが貸借対照表と損益計算書であり、近年はキャッシュフロー計算書への
   注目度も高まってきています。

   損益計算書は、期中の収益と費用を表示して、その差額を企業の活動成果ともいえる
   利益額(もしくは損失額)として計算するものです。

   貸借対照表は、期末時点における資産ならびに負債・資本の額を明示して、企業の財政
   状態を一覧するものです。

   キャッシュフロー計算書は、期中の収入と支出の額を明示して、期中におけるキャッシュ
   (現金および現金同等物)の増減額を大きく3つの活動区分に分けて計算するものです。

  損益計算書

   損益計算書は、期中に発生した収益とそれに対応する費用を表示して、収益から費用を
   差し引いた額を利益(もしくは損失)として計算する書類です。

   「期中に発生した」という部分が重要で、前期以前の活動にともなう収入(入金)や翌期以降
   の活動に関わる支出(出金)等については当期の損益計算に含めません。

   標準的な形式は図示したとおりであり、本業との関わりの度合いに応じて大きく3つの
   区分で収益と費用を集計します。

   純粋な営業活動の成果を示すのが営業損益の部で、営業収益(≒売上高)から営業費用
   (売上原価+販管費)を差し引いたものが営業利益です。

   営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を控除して求めるのが経常利益で、企業に
   おける通常の反復・継続的な活動の成果と位置付けられます。

   経常利益に特別利益と特別損失を加減して計算されるのが税引前当期利益であり、
   ここから法人税等を控除して最終的な経営成果ともいえる当期純利益が求められます。

   損益計算書におけるポイントは

    1. 期中の収益からそれに対応する費用を差し引くことで、期中の経営成果とし
      ての利益を測定するもの

    2.資金流出入の事実にしたがうキャッシュフローと異なり、収益と費用を「発生
      主義」で捉える点が特徴的

    3.「発生主義」は「現金主義」に比べて客観性の面で劣るが、期間業績を正しく
      把握すると言う面では優れている

  貸借対照表

   図で示しように、
    1. 資金調達源泉を示す貸方(負債・資本の部)と、その資金の運用形態を示す
      借方(資産の部)の関係により企業の財政状態を表すもの

    2.貸方の総額と借方の総額が常に一致することから、バランスシートと呼ばれる

    3.経営悪化により資本の部がマイナスになってしまうと、負債(債務)が資産額
     を上回るので「債務超過」と呼ばれる

   貸借対照表は、期末時点における企業の財政状態を表すものであり、企業を人に
   例えるならば、定期健康診断のカルテのようなものだと位置づけることができます。

   資産の部については短期間で現金化しやすい順に並べる流動性配列を用います。

   未収金や貸付金等の債権に関しては全額回収できない可能性もあるので、貸倒引当金を
   適宜マイナスで表記します。

   負債の部も同様に流動性配列にしたがって資本の部の上に記載します。

   資本の部は、資本金、法定準備金(資本準備金および利益準備金)、剰余金に大きく
   3区分できますが、計算上剰余金がマイナスとなる場合には欠損金として表示されます。

   純資産(資本の部合計額)がマイナスとなった状態を「債務超過」と呼び、純資産はプラス
   であっても欠損金が発生している状態を「資本欠損」と呼びます。

   いずれについても財務の健全性が損なわれた状態だと言えますので、収益性改善策や
   増資を通じた健全性回復が求められます。

  キャッシュフロー計算書  

   キャッシュフロー計算書は、期中における資金流出入の実態を「営業活動」、「投資活動」、
   「財務活動」の3つに区分してキャッシュ(現金および現金同等物)の増減を計算する
   ものです。

   損益計算書と貸借対照表については作成過程である程度企業の意思が反映される
   (減価償却方法を選択できる点など)のに対して、キャッシュフロー計算書は資金流出入の
   事実のみに基づいて作成されるという点が特徴的です。

   キャッシュフローの作成は上場企業等の大会社のみに義務づけられていますが、
   作成義務を負わない中小企業においても資金の流れを把握することは重要なので、
   自主的に作成されることをお勧めします。

   キャッシュフロー計算書は、英語で「Cash Flow Statement」ということから「CS」「C/S」と
   表記されることがあります。

   ◎ポイント
    1. 期中のキャッシュ(現金および当座預金等の現金同等物)の流出入を計算するもの

    2.大きく「営業活動」、「投資活動」、「財務活動」に3区分してそれぞれの純増額を計算する

    3.通常は「投資活動によるキャッシュフロー」はマイナスとなり、業績不振でなければ
    「営業活動によるキャッシュフロー」はプラスとなる
 

  減価償却

   減価償却とは、長期にわたって効果を発揮する有形固定資産(土地は除く)の取得原価を
   取得時点における一時の費用とせずに複数年度に按分して費用化する仕組みです。

   発生主義にしたがって正しく期間損益を計算し、期末の資産価値を適切に評価するために
   必要な手続きだと言うこともできます。

   税法基準に則った減価償却費は損金に算入して課税所得に含めないことができ、
   税法では定額法と定率法の2種類の償却方法から選択することが認められています。
   (建物については定額法の適用が義務づけられています)

   定率法を選択すると損金を前倒しで計上できるので納税繰延効果が得られ、定額法を
   選択すると費用計上を繰り延べることで利益の前倒し計上が可能になります。

   なお、合理的な理由があれば税法基準によらない減価償却方法も適用可能ですが、
   その場合には税法基準を超えて償却する部分は損金不算入で課税所得とみなされるので、
   実務上の手間が大きく、採用されるケースは稀です。

   ◎ポイント
    1. 多年度にわたって効果を発揮する固定資産については取得時に全額費用
      計上せずに複数年度に按分して費用と認識する ⇒ 減価償却

    2.固定資産の価値は時間の経過にしたがって減耗していくと考え、期中の減耗
     額を減価償却費として計上する ⇒ 支出をともなわない費用

    3.減価償却の方法としては、税法の規定により「定額法」と「定率法」の2つが認
     められている(建物は「定額法」のみ)

  課税所得と税引前利益はどこが異なるのか

   会計上の損益計算と税法上の所得計算は必ずしも一致しません。

   損益計算書では期中の収益と費用の差を求めて利益としますが、所得計算においては
   益金から損金を差し引くこととされるので、収益と益金、費用と損金の差異がある場合には、
   税引前利益と課税所得が一致しないことになります。

   また、所得計算上の赤字決算となった場合はそれより5事業年度に限って複数期間における
   損益通算が認められることから、税引前利益と課税対象額が大幅に乖離することも
   あり得ます。

   ◎ポイント
    1. 会計上の利益と税務上の所得は一致しない部分があるため、税務申告時に
      は会計上の利益を基に調整して所得を計算する必要がある

    2.税務上の損金と認められない費用については課税対象となるので、それが
      多ければ会計上の利益に対する実効税率は高まってしまう

    3.損金不算入とされる費用として交際費の一部、寄付金の一部などが挙げら
      れ、逆に受取配当等の一部は益金不算入となる

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