経営の多角化

             

経営の多角化

  多角化する意義

   企業活動を将来にわたって発展、存続させていくための手段として、経営の多角化が
   あげられます。

   近年、経営環境の変化はますます大親模、かつ大変な速さで進展しています。

   こうした変化に適応するために自社の事業構造、能力を変革していくことは、企業にとって
   非常に重要です。

   その手段として、多角化経営は有効な経営手法です。

   経営の多角化を行なう意義、目的はおもに次の3点にあります。

    a.事業構造の変革

    b.リスクの分散

    c.未利用資源の活用

   以下、順説明します。

    a.事業構造の変革

     事業は時の流れとともに、衰退、陳腐化していきます。

     そのため次代の基幹事業を模索していくことが求められます。

     事業の方向性を分析する手法としてH・T・アンゾフの事業拡大マトリクスがあります。

     このマトリックスでは新製品を新市場に投入することを多角化と定義しています。

    b.リスクの分散

     現在利益を生み出している成長企業もいつかは衰退する可能性があります。

     つまり、単一の事業のみを営み続けることは非常に大きなリスクになります。

     多角化経営は、全体収益の柱となる事業を複数もつことで、事業の衰退リスクを小さく
     することを可能にします。

     しかしその一方で、多角化による新しい事業分野への進出は、事業失敗のリスクも
     発生させることになります。

     ここで大切なのは、各リスクを適切に評価しながら多角化の必要性を探っていくことです。

    c.未利用資源の活用

     長年の経営活動の結果として、企業には技術やノウハウ、生産設備などさまざまな
     経営資源が蓄積しています。

     蓄積された経営資源で利用されていないものがある場合、経営の多角化によりこれを
     有効活用します。

     また

       現在利用している経営費源を経営の多角化に併用することで、
       シナジー効果(相乗効果)を得ることも可能になります。

     シナジー効果を得る具体的手段としては、次の方法が考えられます。

      ・生産シナジー……新親事業と既存事業の生産ラインを共有化することで、          
                  相乗効果を導く方法

      ・販売シナジー……新規事業の製品・サービスの販売を、既存の営業部隊
                  で行なうことにより相乗効果を導く方法

      ・流通シナジー……新規事業の製品・サービスの流通を、既存事業の流通 
                  経路を利用することにより相乗効果を導く方法

      ・管理シナジー……新撰事業の管理業務を、既存の管理部門で執り行なうこ
                  とにより相乗効果を導く方法

     多角化経営を考える場合、可能な限りシナジー効果を利用することが大切です。

     逆にシナジー効果を発揮しない多角化は、自社が将来にわたって成長・存続していく
     ための長期的戦略とは適合しないことが多く、再検討の余地が十分にあるといえます。

  □多角化の類型

   新製品を新市場に投入することが多角化戦略であり、その行為には通常大きなリスクが
   伴うことば前項で解説しました。

   しかし、多角化を対象顧客と技術の面でさらに細分化すると、4つの類型が存在することが
   わかります。

   次にその類型の特徴を掲げます。

   a.水平的多角化

    蓄積された生産技術を活用し、既存と同様の顧客を対象にして新製品を投入
    する多角化です。

     例) ・オートバイのメーカーが乗用車分野に進出

        ・大手スーパーがコンビニエンスストア事業に進出

   b.垂直的多角化

    エンドユーザーは変えずに、流通チャネルの川上から川下、または川下から
    川上へと多角化するものです。

     例) ・繊維メーカーがアパレル業に進出(川上から川下への多角化)

        ・ファミリーレストランが食品加工業に進出(川下から川上への多角化)

   c.集中的多角化

    技術、対象顧客のどちらか、もしくは両面で関連性を有する多角化です。

     例) ・酒造メーカーがバイオ関連事業に進出(技術面の関連)

        ・文具メーカーがOA機器分野に進出(対象顧客の関連)

   d.集成的多角化

    技術、対象顧客の両面でまったく関連性をもたない分野に進出する多角化です。

     例) ・銑鋼会社が半導体事業に進出

        ・機械メーカーがレジャー産業に進出

   それぞれの類型により、多角化展開に伴うリスクは大きく変化します。

   一般的には、aからdに進むにつれてハイリスク・ハイリターンとなります。

   できる限り、既存事業の技術力や販売力などを有効活用できる分野で多角化を進める
   ことが理想です。

   しかし企業が成長していく過程においては、リスクを覚悟で思い切った多角化を推し進め
   なければならないときもあります。

   その際に、リスクを最小限に抑える展開方法を考える必要があります。

  □多角化の展開方法

   多角化経営を展開する際には、その類型にかかわらず大きなリスクが伴います。

   そうしたリスクを最小限に抑えるためには効果的な展開方法を策定し、その展開方法が
   合理的に機能するための組織を編成する必要があります。

   次にその展開方法と、望ましい組織の形態をご紹介します。

   (1)自社の経営資源のみを活用する展開方法

     a.プロジェクトチームの編成

      社内の各部門から適任者を横断的に選出し、新規事業を対象とした
      プロジェクトチームを編成します。

      このプロジェクトチームでは、独自にチームリーダーを選任し、既存の
      部門や業務とは権限・責任の面で完全に独立していることが前提と
      なります。

     b.社内ベンチャー

      自社内に仮想のあるいは実際の会社を作り、多角化に取り組む形態です。

      プロジェクトチームと異なるのは、利益責任が生じることです。

      また、これを子会社として独立ざせて事業の展開を行なうことをスピンアウト
      といいます。

     c.事業部制

      各事業部門別に独立した組織を形成し、各々に利益責任をもたせる方法です。

      一般的な方法ですが、過度のセクショナリズムが間接部門や投資資金の
      重複を引き起こし、「逆シナジー効果」が機能することも考えられ、多角化
      にはあまり向いていない組織であるといえます。

   (2)社外の経営資源を活用する展開方法

     a.アウトソーシング、OEM

      事業の一過程を、他社に委託する(外注する)展開方法です。

      この場合、他社とは「契約」の関係にとどまるので、販売力や技術力、資金
      力などを十分に調査する必要があります。

       例) ・ある事業の製造過程を他社に委託する

          ・ある事業の販売過程を他社に委託する

      こうした外部資源の活用による多角化の展開は、非常に効率的です。

      しかしその半面、「自社内には事業のノウハウが蓄積しにくい」という欠点
      も存在します。

     b.事業提携

      新たな事業を展開するとき、その事業について実績のあるほかの企業と
      事業提携をする展開方法です。

      これにより、多角化に伴う投資のリスクを軽減することが可能となります。

     c.M&A
      進出しようとしている事業分野において、すでに実績のある企業を吸収
      合併する方法です。

      効率的で事業ノウハウも蓄捺されますが、膨大な資金需要が生じるため、
      多角化のリスクが高まる側面もあります。

      ある調査によると、

       多角化に成功した企業が成功要因の第一位にあげるのはタイミングである

      としています。

      自社の経営資源を正確に把握し、可能ならば他社の力を利用することも必要です。

      また、自社の技術を活用することはできても、新たな市場によっては既存組織では
      うまく適応できない場合があります。

      たとえば、既存の事業において官公市場を主体にしていた会社が、一般市場を
      相手にする場合などです。

      こうしたケースでは、社内ベンチャーや子会社形態をとり、いままでの組織とは別に
      活動したほうがスムーズにいきます。

  □多角化経営のコントロール

   多角化経営を展開することにより、経営全体のバランスの舵取りが非常に難しくなります。

   各事業の成長性や収益性、健全性、さらには他事業とのバランスをつねに管理し、
   適切なコントロール(統制活動)を行なう必要があります。

   また、時にはその事業からの撤退を決断しなければなりません。

   前述したように、各事業は時の流れとともに衰退、陳腐化していきます。

   こうした変遷のサイクルをPLC(Product Life Cycle)といいます。

   このPLC図における、A製品事業とB製品事業を例として多角化経営のコントロールについて
   ご紹介します。

   a.経営資源の効率的配分

    PLC図によると、A製品事業はまさに成長期にあり、この分野に集中的に
    経営資源を投資していく戦略をとります。

    逆にB製品事業は衰退期にあるため、この事業への経営資源の配分は
    最小限にとどめます。

    企業が活用できる経営資源は限られています。

    その限られた経営資源は、成長性のある事業に対して効率的に配分する
    必要があります。

   b.既存事業の活性化

    PLC図によるとB製品事業は衰退期にありますが、それはたんに時の流れに
    よるものでしょうか。

    たとえば、標的市場(対象顧客)を変えてみることで、収益力が回復するかも
    しれません。

    このように既存の事業において成長力や収益力が低下している場合、その
    原因を分析し新たな活性化策を施すことも必要です。

   c.シナジーの測定

    A製品事業とB製品事業との間で、どれだけのシナジーが発揮されているか
    を測定します。

    シナジー効果が十分でない場合は、製造ラインで共有化できる部分はないか、
    同様の流通経路を利用できないか、などシナジーを発揮できる方法を模索します。

   d.撤退戦略

    B製品事業の採算性に限界が生じ、どんな活性化策もシナジー効果もなくなっ
    た場合、思い切って撤退の決断をします。

    撤退戦略の決断が遅れると会社の経営全体に大きな影響を及ぼしかねません。

    とくに日本の企業は、この撤退戦略の意思決定が遅い傾向にあります。

    環境変化のスピードは非常に速いため、事業の成長性を正確に見抜き、迅速
    かつ的確な意思決定をする必要があります。             

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