中小企業のディスクロージャー

                          

中小企業のディスクロージャー

   ■中小企業のディスクロージャー

    1.情報開示の利点

     株式会社には、貸借対照表またはその要旨を官報や日刊新聞紙上で公告する
     ことが義務づけられています(商法第283条第4項)。

     公共性の高い会社組織はその内部だけではなく、取引先や株主、顧客など外
     部に存在する利害関係者の権利をも尊重した経営を進める必要があります。

     貸借対照表の公告に関する義務は、そうした企業経営のもっとも基本的な要
     件を満たすために設定された約束事です。

     中小企業のなかには、積極的なディスクロージャー(情報開示)を進め、経営 
     状況のみならず、経営者の理念や長期的な戦略の詳細などについて明確に
     示しているところも少なくありません。

     その一方で、情報開示がそれほど進んでいない企業群も存在します。

     決算公告にかかる費用に対し、それを直接目にする外部利害関係者が少な
     いという事実も中小企業の積極的な情報開示活動を阻害する要因になってい
     るといわれます。

     しかしながら法律上の義務である点にとどまらず、企業経営の実態をより多く
     の人に開示しようとする姿勢は、すべての企業に強く求められます。

     平成14年4月に施行された改正商法では、株式会社の情報開示に関する競
     走が変更されました。

     すなわち、

      株式会社は官報または日刊新聞紙上での公告に代えて、
      インターネット上で計算書類を公報できるようになりました。

     その背景には、中小企業のディスクロージャーをより一層進めようとする国の
     政策的な視点が存在します。

     まず、中小企業にとって情報開示活動が進めやすくなった事実を認識しておく
     必要があります。

     企業がディスクロージャーを進めることの利点を図に示します。

     インターネット上で決算公告をするなどの積極的な情報開示活動は、義務的
     な側面だけではなく当該組織の長期的な戦略からも推進されます。

     一連の情報開示活動は「情報の非対象性」を解消します。

     これは、企業が保有する情報と外部組織や個人が保有する情報の差を小さく
     する効果があるという意味です。

     また、企業内部でも経営陣と現場従業員との情報格差が是正される場合もあ
     ります。

     こうして組織の外部・内部双方の個人や組織の便益が増大し、最終的な結果
     として「信用力の増大と戦略の精緻化」がもたらされます。

     つまり、取引先や金融機関との関係がより良いものとなり、新規取引開始の可
     能性も高まります。

     また、従業員のモチベーション(動機づけ)が高められ、組織全体での長期的
     な経営戦略の立案と実行に対して好影響を与えます。

     以上のように、ディスクロージャーは企業の成長にとって必要かつ有効な行動です。

     しかもインターネットを活用すれば、低コストで情報開示活動の幅を広げることが可能です。

    2.インターネットを活用したディスクロージャー

     続いて、インターネット上で自社の計算書類を開示する手順についてみていきます。

     経営陣が長期の戦略的な観点に基づき、自社の経営状況を公告するという意
     思決定をしたならば、取締役会を開催して決議をとります。

     インターネット上に開示する情報の内容については、貸借対照表の要旨だけ
     ではなくその全文を掲載する必要があります。

     また、5年間以上継続して掲載することが要件となります。

     すでに自社のホームページを開設しているのであれば、コンテンツ(内容)のな
     かに独立した「決算情報」などの項目を新たに設けます。

     ホームページをもっていない場合には、ディスクロージャー政策の一環として
     新規に作成します。

     決算書類をスキャナーで読み取り画像形式で公開する方法もありますが、場
     合によっては読みにくくなることもありますので、一般的なソフトウェア上で開け
     る形にしたほうが望ましいといえます。

     URL(自社ホームページのアドレス)は商業登記所にて登記する必要があり、
     登記免許税が3万円(本店所在地の場合)かかります。

     将来自社のURLを何らかの理由によって変更することがあるかもしれません
     が、その際には改めて登記し直さなければなりませんので注意が必要です。

     なお、自社のホームページを作成せずにインターネット上に計算書類を掲載す
     る方法もあります。

     全国中小企業団体中央会が実施する代行掲載サービスを利用する方法です。

     ホームぺージを作成する計画がない時には、このようなサービスを利用する
     のも良いと思われます。

     インターネットを活用した情報開示活動は、「低コスト」と「効率性の良さ」という
     2つの異なる要素をバランスよく実現します。

     長期にわたって正確なディスクロージャー活動を継続するところから、その成
     果が明確な形となり現われてくるでしょう。

      ◎全国中小企業団体中央会のホームページ(計算書類の公開支援)

    3.差別化要因になりうる情報開示を

     『MBA講座経営(経営学者ロバート・F・ブルナー)』において「会計上の現実
     は、本当の経済的事実を抽象的に表わしたにすぎないことを理解しておくべき
     である」と主張しています。

     投資家や債権者は、財務諸表だけから企業の実態を把握するのは困難であ
     るとする立場です。

     たしかに企業の財務諸表が示すのは、経営状態のいわば近似であるといえる
     かもしれません。

     しかし、その近似内容を可能な限り正確に計算書類として作成し、より多くの
     外部利害関係者に提示する作業は、企業の社会的責任に該当する行為です。

     そのような観点に立てば、株式会社のみならず、計算書類の公開が義務づけ
     られていない有限会社や個人企業であっても、積極的な情報開示活動を手が
     けることが、競合他社との差別化要因にもなり得るのではないでしょうか。

     情報開示活動と関連して、中小企業における会計の仕組みも変革していくこと
     が望まれます。

     2002年6月には中小企業庁から「中小企業の会計に関する研究会報告書
     が公表され、資金調達先の多様化を目指す企業にとっての望ましい会計のあ
     り方が示されました。

     さらに、同年12月には日本税理士協会連合会が、中小企業庁の報告書内容
     を「中小会社会計基準」へと発展させ公表しました。

     そのなかに計算書類の開示に関する項目がありますが、

      「計算書類の利用者のニーズ等を勘案し、資金調達の多様化や取引先の
      拡大を図るためにも、商法上の公告として義務づけられている範囲以上
      の情報を積極的に開示することが望ましい」

     とする見解が明示されている点に注目したいところです。

     自社の実態をより知ってもらおうとする企業の姿勢、そして正確で緻密な計算
     書類を作成するための取り組みは、競争優位をもたらすひとつの要因にもなります。

     ディスクロージャーは計算書類の公告だけではなく、経営陣や従業員を通じ
     て、あるいは商品・サービスを通じて、非常に幅広い観点から実施されるべき
     行動です。

     改正商法によるインターネットを活用したディスクロージャーは、そうした広範
     囲にわたる情報開示の取り組みをより効率的で深みのあるものへと変えてく
     れることでしょう。

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