マトリックスで事業・商品を考える

           

マトリックスで事業・商品を考える

  ■事業・商品には寿命がある

   1.商品の寿命は消費者ニーズに左右される

    消費者が新しい商品を追い求めるスピードは、時代とともに速くなっているように感じられ
    ないでしょうか。

    過去の一時期には女子中学生や高校生がかならずといってよいほどもっていたポケベルは
    携帯電話に取って代わり、いまではスマホへSNSにとって代わりました。

    あれほど流行した「たまごっち」も見かけることはないでしょう。

    女子高生の「ルーズソックス」などもそうです。

    こうした、いわゆる流行商品だけではなく、一般の商品にも寿命はあります。

    スピード重視の技術進歩に依存するパソコンの世界では、半年ごとにモデルチェンジや
    性能の改善がなされて、古い性能のパソコンは廃棄されていきます。

    自動車にしても、ある時代はファミリーカーがニーズを満たし、ある時代はスポーツカーが
    時代の要請であったり、ある時代はファミリーワゴン車が求められたりするなど、時代ごとに
    消費者のニーズは変化しており、商品の寿命もそれに左右されます。

    したがって、企業には、

     消費者のニーズを敏感にとらえながら、
     寿命の終わった商品を市場から退場させ、
     新たな商品を市場に投入する知恵

    が求められるのです。

    なかには何十年も生き抜いている長寿商品もありますが、じつは、これらも消費者の嗜好に
    合わせて微妙に変化をつけるということがなされています。

    「何十年も変わらぬ味」のお菓子も、甘さの調整や大きさの変化などをつけ長寿商品として
    生き残っている例が一般的です。

    サンリオの人気キャラクターである「ハローキティ」の顔も、時代時代で微妙に変化して
    いるそうです。

    また、たとえばハンバーガー業界では、普通のハンバーガーだけでは成熟してしまうため、
    チーズハンバーガーやテリヤキバーガーなどの新しい商品を投入して、ハンバーガー
    自体の寿命を延ばす工夫がなされています。

   2.製品のライフサイクルとは

    自社の商品の寿命がどのあたりにあるかを知ることは戦略的に大切なことです。

    この商品の寿命のことを、「製品のライフサイクル」という言い方をします。

    商品の誕生から陳腐化して市場を去るまでを、人の一生と同じように、生まれてから死ぬ
    までのサイクルに区分する考え方です。

    一般には、

     (1)導入期

     (2)成長期

     (3)成熟期

     (4)衰退期

    の4つに区分して、商品がライフサイクルのどの段階にあるかをとらえていきます。

    自社の数ある商品のそれぞれがライフサイクルのどこにあるかを知り、それによって
    その商品に対する戦略を区分していくという考え方をとることがポイントです。

    4区分の特徴は次のとおりです。

    (1)導入期

      商品が市場に導入されたばかりの状態です。

      事例として、1990年代に発売されたプラズマテレビをイメージしてみます。

      売上はまだ小さく、一般に利益は赤字の状態でした。

      戦略的には、商品をお客さまに知っていただく=商品認知が戦略の中心となります。

      お客様は、新しいもの好きであったり冒険心が高く、人と違ったことが好きで、リスクを
      好む経済的な余裕のある人(革新者、イノベーター)となります。

      競争はほとんどない状態であり、いかに市場を拡大するかが大切なため、マーケティング
      のための支出は大きくなります。

    (2)成長期

      商品が急速に売れる状態です。

      DVD再生機器の普及をイメージしてください。

      売上の伸びに従って利益もプラスとなります。

      戦略的には市場を広めるとともに、自社ブランドをお客さまに知ってもらうことが重要です。

      したがって、競合企業と共同で市場拡大のためのマーケティング活動を行なうことも
      あります。

      利益があがることに注目して他企業の参入も増加します。

      お客さまも、革新者だけでなく、多数のマスのお客さまとなっていきます。

      競合他社と争いながら市場を拡大させ、自社ブランドを知ってもらうことが重要で、
      マーケティングの支出も高いレベルが維持されます。

    (3)成熟期

      売上がほぼ頂点に達し、伸び率が止まる状態です。

      CD再生機器のように、ほぼ普及が一巡した状態が成熟期となります。

      競合企業が多数存在し、利益の取り合いとなるため、利益は減少する械向となります。

      自社ブランドを愛好してもらう、つまり、いわゆるブランドロイヤルティーを高めることが
      戦略の中心となります。

      商品開発では他社との差別化に力が入れられ、自社のマーケットシェアをいかに維持す
      るかが焦点となります。

    (4)衰退期

      需要が衰退して売上が下降する状態です。

      利益はゼロに近くなります。

      現状の生産設備でコストダウンを図り生産性を向上させるか、仕入れを効率化する
      といった視点が重要となります。

      合理化という視点からとらえた戦略が中心となってきます。

      成熟期から衰退期に入った商品は、どのように差別化してライフサイクルを延ばすか、
      あるいは、どのようにして商品を廃棄するかが重要なポイントとなります。

      こうした分析は、事業という視点からもとらえることができます。

  □注力する事業・商品を探すマトリックス

   製品のライフサイクルを事業に応用して、自社の事業に対する戦略的な位置づけを明確に
   していく方法があります。

   歴史の長い企業などでは、従来の事業だけに依存して新しい事業展開を怠っている場合
   が少なくありません。

   前項の分類でいう衰退期の事業・商品ばかりだと、いつ需要がなくなるかということを心配
   しなくてはなりません。

   自社のもっている事業・商品がどのような位置づけにあるのかを知ることが必要です。

   外装補修材のメーカーであるK社は、先代が築いた事業である旧来の接着法による法人
   向けの外装補修を中心に事業を展開してきましたが、建築不況により大きく需要が減りました。

   さらに、手のかかる現場補修ではなく、パネルタイプの簡易施工方法が新工法として浸透する
   ようになり、旧来の法人向け外装補修事業は赤字事業となってしまいました。

   新たに次世代を支える事業を探るために、自社でもっている事業の見直しを行なう必要性に
   迫られ、その際に利用した図のマトリクスです。

   縦軸に市場の成長率、あるいは自社にとってのその事業・商品の魅力の程度をとります。

   横軸に市場における相対的マーケットシェア、あるいは自社の競合ポジションをとります。

   それにより4つの事象が表現されます。

   それぞれの事象の特徴を見ていきましょう。

   (1)事象A:「問題児」

     事象Aは市場成長率が大きく魅力的な市場ですが、自社のシェアが低い市場です。

     一般的にはライフサイクルの導入期の事業・商品が位置します。

     成長させるためにコストをかける、将来の芽となる事業・商品です。

     もっとも、今後成長するかどうかを慎重に見極める必要もあります。

     このように、一般に事象Aにある事業・商品は、育成か撤退かの戦略的な意思決定を
     求められますので、「問題児」と呼ばれます。

   (2)事象B:「花形」

     事象Bは成長期の事業・商品が入るポジションで、市場成長の勢いがあり、売上も大きい
     市場です。

     しかしながら競争も厳しく、広告費や投資の費用もかかるという特徴があります。

     つまり、事象Bはいまを盛りと拡大している事業で、この事象にある事業・商品は集中的に
     資源を投資すべき事業です。

     そこで、「花形」という名称がつけられています。

   (3)事象C:「金のなる木」

     事象Cは成熟期の事業・商品が位置づけられます。

     市場自体の成長率は低いため売上は大きく伸びませんが、すでに投資は一巡しており、
     多額の宣伝は必要でないため、全休的には会社の資金源となっています。

     事象Cにある事業・商品は、収益をあげるいわば利益の稼ぎ頭です。

     事象Bの「花形」が一番利益をもたらしそうですが、「花形」であるだけに投資や維持の
     ために費用がかかり、収益はあまり多くないのです。

     むしろ、投資があまり必要ではない事象Cにある事業・商品が利益を稼ぎ出します。

     そのため、名称は「金のなる木」です。

   (4)事象D:「負け犬」

     事象Dは衰退期の事業・商品です。

     市場も成長が終わっています。

     つまり、事象Dにある事業・商品は撤退などを検討すべき位置づけで、「負け犬」という
     名称がつけられています。

     ライフサイクルの視点から見ると、事業・商品は事象A「問題児」で発生して、成長しながら
     事象B「花形」となり、やがて市場の成長率が落ちるとともに事象C「金のなる木」に
     移っていきます。

     最後には衰退して事象D「負け犬」となり、市場から姿を消していくことになります。

      収益の源泉は事象Cの「金のなる木」ですから、
      ここであげた利益を将来の自社を支えるはずの事象A「問題児」に
      投入する投資方法や、事象Cであがった利益を研究開発に投資して
      新たな「花形」を作り出す投資方法が、一般的とされています。

     個々の位置づけについて考えると、まず、「金のなる木」である事象Cに位置づけられる
     事業・商品は、市場を維持しながら現在のポジションを維持しようとする戦略がとられ
     ます。

     「花形」の事象Bについては、市場の支配力を高めるための積極的な戦略が有効です。

     そして「問題児」である事象Aに位置づけられる事業・商品に関しては、今後積極的な
     投資を行ない、ライフサイクルの成長期にもっていき「花形」へと育成するか、あるいは
     撤退させるかといった戦略的に重要な決定がなされます。

     そして「負け犬」である事象Dについては、いかに撤退するか(売却や縮小も含む)が
     検討されます。

     K社の法人向け外装補修事業の位置づけについて、このマトリクスを利用して各事業・
     商品のとるべき戦略を考えてみます。

     K社では「問題児」である事象Aにどのような事業・商品があるかを探しました。

     その結果見出した事業が、各地における文化財などの復旧工事の業務でした。

     職人のノウハウを利用して文化財の復旧事業が各地で展開されていることを発見し、
     K社のみがもっている長い施工の歴史を活かせるこの業務を、次世代を支える事業と
     位置づけました。

     そして、この事業を戦略的に支援することで、見事に「花形」である事象Bの事業へと
     育成することに成功しました。

      自社の事業・商品をこのマトリックスに位置づけることによって、
      現在自社のもっている事業や商品のバランスが見えてきます。

     現在の事業が事象C〜事象Dに位置づけられる事業ばかりで、将来を支える事業・
     商品となる「問題児」の事象Aに位置づけられるものがなかったり、「花形」の事象Bに
     位置づけられる、将来の資金源になるもの(「花形」は市場の成熟とともに成長率が
     落ち、事象Cの「金のなる木」になっていくはずです)がなかったりする場合は、将来を支
     える事業・商品を開発していくことが求められます。

     つまり、全体にバランスよく事業・商品をもっているかを確認することが重要であり、
     そのために前述のようなマトリクスを利用していくのです。

  □簡単なマトリックスの利用法

   『注力する事業・商品を探すマトリックス』の項で挙げたマトリクスは、事業・商品の相対的
   なシェアを調べる必要がありますので、自社のシェアなどがわからない事業などには単純
   に適用できません。

   ぞこで、

    より簡単なマトリクスを利用して、
    戦略的な事業・商品として重視する分野を見つける方法もあります。
    売上の伸びと絶対金額に注目するマトリクスです。

   縦軸にその事業・商品の前年比あるいは数年前と比較した売上の伸び率をとり、横軸に
   売上の絶対値をとります。

   これもおおまかに4つの事象が現れてきます。

   ここでも先ほどのマトリクスと同じような意味づけがなされます。

   事象Bの事業は成長率も高く売上税模も大きいため、主力の事業・商品として注力すべき
   位置づけです。

   事象Cは、売上兢模は大きいのですが成長性が鈍っている事業です。

   市場自体が縮小している可能性があり、将来 は売上が減少することが予想されます。

   事象Dは今後とも継続するかどうかを考えるぺき事業です。

   そして事象Aに位置づけられる事業が、次世代を支える事業となる可能性を秘めた事業・
   商品となります。

   この分野については慎重に育成するか否かの戦略を考える必要があります。

    自社のもっている事業・商品のライフサイクルを意識しながら、
    どのようなバランスの配置となっているのかをマトリックスを利用して
    知ることが、次世代を支える事業・商品を絶やきないコツとなります。 

 

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