中小製造業における産学連携の取り組み

             

中小製造業における産学連携

  ■産学連携の現状

   近年、企業と大学が共同研究を行い新製品や新技術の開発を進める産学連携
   に、製造業の期待が高まっています。

   企業を取り巻く環境が変化するなか、競争力を維持していくための施策が必要と
   されており、特に中小企業においては、限られた経営資源で経営革新を行ってい
   くための手段としても産学連携が注目されています。

   また、最近では従来の企業と大学の連携である産学連携に行政が加わり産学官
   連携となるケースも多いようです。

   産学官連携では、行政が大学・研究機関と企業を結びつけたり、共同で技術開発
   を行ったりしています。

   文部科学省「平成16年度民間企業の研究活動に関する報告書」によると、資本
   金10億円以上の企業において産学官の共同研究や委託研究、受託研究などに 
   よって研究成果情報を入手したことがある企業は全体の半数以上にのぼっています。

   平成11年度の調査では約36%であったことから、確実に増加しています。

   中小企業における産学連携が注目されてきているものの、すでに取り組んでいる
   企業は大企業に比べると少なく、中小企業の約2割から4割程度と考えられます。

   東京商工会議所の「中堅・中小製造業における産学連携の取り組み状況に関す
   るアンケート調査結果」によると、産学連携の経験がある企業は18.2%となって
   います。

   また、近畿経済産業局の「近畿地域における中小企業の公設試験研究機関の利
   用実態と技術支援の充実化方策について」によると、近畿地域の中小企業のうち
   公設試験研究機関または大学を利用したことがある企業は32.7%となっています。

   資本金や売り上げ、従業員親模が大きい企業になるほど産学連携に取り組んで
   いる企業の割合が高くなる傾向にあります。

   全体として産学連携が進んでいる背景には、平成10年に制定された「大学等に
   おける技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」(通
   称、大学等技術移転促進法)の存在が大きいと考えられます。

   同法は、大学などによる研究成果をT LO(技術移転機関)を介して産業界への移
   転を促進し、産業技術の向上や新規産業の創出を図るとともに大学などにおける
   研究活動の活性化を図ることを目的としています。

   大学発ベンチャーが平成28年に2200社を突破したことを考えると、一定の成果
   をあげているといえるでしょう。

   また、平成16年4月に国立大学が法人化されたり、それ以前に公的研究機関が
   独立行政法人に移行されたことは、産学連携のさらなる発展につながるものとし
   て期待されています。

   実際に、企業からは法人化により

    ・国立大学が産学連携に組織として対応するようになった

    ・民間のニーズに沿った研究が行われるようになった

    ・共同研究や委託研究を行いやすくなった

   という声も聞かれています。

   さらに、文部科学省では独立行政法人科学技術振興機構のホームページ
   「産学官の道しるべ」を開設しています。

   同サイトでは企業が大学などの技術を検索したり、直接研究室や産学連携窓口
   にアクセスすることができるようになっています。

   また、産学官連携に特化した情報のみが抽出されるようになっています。

   このように、産学連携に取り組む企業にとっては、良好な環境が整いつつあります。

  □産学連携の効果

   1.産学連携の効果

    産業連携に取り組むメリットには、

     ・自社単独では困難な技術・製品の開発ができる

     ・高度かつ専門的な技術やノウハウ、知識が導入できる

     ・自社にはない設備が利用できる

     ・人材育成に効果がある

     ・国や自治体などの補助金を利用することができる

    などがあげられます。

    では、実際に、産学連携が企業業績に結びつくのでしょうか。

    産学連携に取り組んだ企業から、実際に事業化に成功し収益があがるように
    なったり、新技術や新製品を開発したなどの成果が報告されています。

    産学連携を開始してから3年未満で具体的な成果をあげる企業も少なくないよう
    ですが、5年以上して成果がでるという場合もあり、今後も産学連携による実績
    は増えていくものと考えられます。

                       産学連携の取り組み効果(東京商工会議所)

    また、企業のイノベーション力をはかる意味で特許出願についてみたところ、産
    学連携の成果を知的財産化したという企業も多くみられます。

    特許出願そのものは、直接的に企業の業績に結び付くものではないものの、企
    業の成長に貢献しているといえるでしょう。

   2.産学連携の取り組み

    産学連携に取り組む中小企業では、実際にどのように大学などの研究機開を
    活用しているのでしょうか。

    以下では、産学連携によって成果をあげた企業の事例をご紹介します。

    【事例1】

     金型製造加工業のA社は、光ファイバー通信用のプラスチック製多芯フェルー
     ル(光軸合わせ用部品)の量産化に成功したものの、歩留まりを向上させるこ
     とが課題となっていた。

     課題を解決するために、プラズマCVM(化学気化加工)を開発したB大学およ
     び同技術を応用展開しているC社と連携することにした。

     産学連携により、A社は非接触で高精度のバリ取りができる装置を開発し、高
     精度で安定した本格的な一貫生産ラインを構築した。

     なお、プラズマCVMは、大気圧高周波プラズマを利用し、化学反応により加工
     する超精密加工法である。

     プラズマCVMにより、光ファイバーを挿入する微小な挿入内面のバリ取り仕上
     げを高精度にかつ安定して生産できるようになる。

    【事例2】

     廃蛍光管処理業およびガラス器製造業のD社は、蛍光管のリサイクルを事業
     化するために、E大学と共同研究を行った。

     ガラス質の安定化や蛍光管をリサイクルするにあたり各種素材を分離させる
     技術などについてE大学より技術供与を得たことで、事業化するまでの時間を
     大幅に短縮させることができた。

    【事例3】

     自動車用品メーカーF社は、従来より付加機能のある自動車シート用クッショ
     ンの製造・販売をしている。

     新商品を開発するにあたり実施したマーケティング調査で、腰痛に悩むドライ
     バーが多いことがわかり、地元のインキュベーション(新規事業・起業家育成
     支援)事業者に相談したところ、G美術大学を紹介され共同開発を行うことと
     なった。

     産学連携により、人間工学や心理学などを取り入れ、腰への負担を軽減した
     自動車シート用クッションを開発した。

     クッションは大ヒットし、某自動車雑誌でグランプリを受賞するなどの評価を得た。

     また、トラックメーカー3社で純正のオプション品として採用された。

  □産学連携の課題と留意点

   1.産学連携の課題

    最近では数々の成果が報告されている産学連携ですが、一方では課題もあり
    ます。

    産学連携を経験した中小企業の経営者からは、特に、

     ・研究開発のスピードに対する意識に違いがある

     ・大学側とテーマにズレがある

     ・研究開発に要するコスト意識に違いがある

    など、基礎研究を重視する大学は市場化への意識が薄い傾向にあり、意識や
    テーマに対する相違があげられています。

    このことから、

     「いかに共同研究のビジネス的な成果をあげるか」という点で
     大学研究者の協力を得られるよう努力することが必要となります。

    また、産学連携に取り組むにあたっては、

     ・産学連携ノウハウについての情報不足

     ・研究シーズについての情報の入手が難しい

     ・大学などの相談窓口がわからない

     ・公的支援・施策の整備が進んでいない

    などの課題があげられています。

   2.企業主導の産学連携

    大学発ベンチャーの多くが大学の研究機関主導でできたものです。

    また、大学内の研究者がもつ特許技術や研究シーズをもとに事業化を図ること
    を目的とした機関がT LOであり、T LOは、大学側の立場から事業化する際に
    パートナーとしてふさわしい企業を選ぶという発想であることは否めません。

    したがって、中小製造業側が自社の技術革新や新製品開発を目的に、協力し
    てくれる大学の研究者を探すという場合、TLOを訪ねても、求めている研究者が
    いるとは限らず、いくつものTLOを訪ね歩くことになります。

    このような状況のなか、中小製造業はどのような点に留意しながら大学研究者
    との共同研究に取り組めばよいのかをみていきます。

    (1)大学・研究者を選ぶ

      研究テーマが決まったら、どの大学が自社のニーズに応えてくれるか、とい
      う視点で大学を探すことになります。

      このとき、知名度を基準にするべきではありません。

      有名ではなくても、優れた知識やノウハウをもち、ユニークな研究を行ってい
      る大学はたくさんあります。

      多くの大学は、研究者とその研究内容、特色や研究成果をインターネットな
      どを使って公開しています。

      地道ですが、公開資料を見て、いくつかの大学に的を絞り、産学連携の窓口
      に相談してみる、ということからスタートしなければなりません。

      さらに何人かの大学研究者に絞り込み、何度か協議をし、人柄や能力を見
      極めながら交渉を進める必要があります。

      これは一般的な企業間連携や社員採用のときに相手を選ぶのと同じです。

      「大学教授は敷居が高い」というイメージもありますが、最近では大学側も産
      学連携の必要性を認識しています。

      人物にもよりますが、こちらの研究目的や趣旨をきちんと説明すれば、「門前
      払い」といったことはおそらくないでしょう。

    (2)経営的視点を理解してもらう

      大学研究者はあくまでも研究の視点しかもっていません。

      しかし、企業主導の産学連携とは、大学研究者に立派な研究論文を書いて
      もらうのが目的ではありません。

      その研究が事業化できるか、自社にとってプラスになるかどうか、といった経
      営的視点で産学連携を進めなければなりません。

      したがって、研究目的と目標、納期や進行管理のあり方などをあいまいにし
      たまま共同研究に着手するのではなく、

       事前協議のうえ、こちらの意図を納得してもらうことが重要になります。 

 

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