激変する卸売業の姿

          

激変する卸売業の姿

  ■卸売業をめぐる環境

   経済産業省の「商業統計表」によれば、2002年の小売店数は約130万店と、前
   回調査(1999年)から10万店以上も減少しました。

   規模別に見ると、就業者数50人以上の大規模事業所が増加している一方、中小
   規模の事業所は減少を続けており、とくに就業者数4人以下の小規模事業所は9
   万店以上も減少しています。

   また、年間販売額についても、小規模事業所の大幅な減少が目立ちます。

   1.川下からの淘汰

    小売業の就業者規模別事業所数および年間販売額の推移

    こうした中小小売店の減少は、卸売業にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

    2016年の卸売業者数は全国で約36万事業所となっていますが、そのうち従業
    員100人以上の企業はわずか3397事業所にすぎません。

    つまり、卸売業者のほとんどが中小規模の企業だといえます。

    これらの中小卸売業者が顧客としているのは、おもに中小規模の小売店です 
    が、その中小小売店がわずか数年で10万店以上という驚くべきペースで減少し
    ているのです。

    同様に、中小規模の飲食店やサービス業も、競争が激化するなかで倒産や廃
    業が急増しています。

    すなわち、

     中小の小売店・飲食店・サービス業を主要取引先とする卸売業にとって、
     現在は、自らの経営努力だけでは既存取引先数の減少を止められない
     という「非常事態」

    にあるのです。

    また、倒産や廃業に追い込まれなかった中小規模店も、この不況下で売上を減
    少させていることから、一取引先あたりの取引額(顧客単価)も減少が続いています。

    さらに、取引先からの値下げ要請が厳しくなっているため、粗利益率も低下して
    います。

    とくに大手取引先については、他社との競合が激しく、まったく利益の出ない状
    態になっているケースも少なくありません。

    一方、取引先が減り、売上・粗利益が減少するなかで、大手取引先を中心として
    無理な要望が増えてきており、販売コストは増加しています。

    たとえば、小口高頻度配送を要求する取引先が増えていることから物流費が高
    騰しているほか、協賛金や売り場支援の要請なども強くなってきています。

    さらに、配送センター使用料などの販売管理費もかさんでおり、卸売業の多くが
    利益率の低下に苦しんでいます。

    そのほか、取引先の小売店や飲食店などが顧客ニーズに合った業態へと転業
    や業態転換を行なうといった動きもあり、それに伴って取引する卸売業者を限
    定、変更するケースも目立ちます。

    たとえばアメリカでは小売店の50%がFC(フランチャイズチェーン)店であるとい
    います。

    日本でもすでにその傾向が進み、酒小売店を中心にF C加盟によるコンビニエ
    ンスストアへの業態転換は、すでにご存じのとおりです。

    これに伴い、従来の取引先であった卸売業者からフランチャイズ本部が指定す
    る卸売業者へとすでに取引先を変更する店も出ています。

    このように、流通の川下である小売業などの変化は、その上流に位置する卸売
    業者(とくに中小規模の卸売業者)に多大な影響を与えているといえるでしょう。

   2.川上からの淘汰

    一方、流通の川上に目を向けると、メーカーの取引制度の見直しやそれに伴う
    リベートの廃止が進んでいます。

    価格を維持し商品の供給ルートを閉鎖的に支配するメーカーの流通政策は、こ
    れまで日本の流通機構の特徴のひとつと指摘されてきました。

    具体的には建値制度を中心に特約店制度を敷き、リベートを保証することで流
    通全体を囲い込み、価格をコントロールしてきたのです。

    そして、こうしたメーカーの主導により形成された互恵的な流通システムに参加
    することで、卸売業者は自らの存続を安定させてきました。

    しかし最近では、

     メーカー自身が建値制度を崩壊きせるような動き

    をしています。

    この背景には、モノ余りの時代になり価格決定権が消費者に移ったことに加え、
    再販価格の見直しなどに見られるように独禁法の運用が強化されていること、
    大店法の運用緩和・廃止などにより小売店間の競争が激しくなったことなどがあ
    ります。

    それにより低価格化が進行し、これに対応できるよう小売業者が流通ルートを
    集約化しはじめたことを受け、メーカーも流通政策の転換を余儀なくされたとい
    えるでしょう。

    また、低価格化が進むなかで、自らの利益を確保するために

     小売店とメーカーが直結する動き

    も出てきています。

    このように、川下である小売業者の影響を受ける形で川上のメーカーも従来の
    販売政策を見直しはじめたことにより、流通全体の構造が大きく様変わりしてき
    ました。

    めまぐるしい変化のなか、卸売業者も真剣にそのあり方を見直さなければなら
    ない状況になっているのです。

    今までのようにメーカーの流通政策に頼ったままでは厳しい環境に適応していく
    のは困難です。

  □求められる卸売業とは

   1.消費者寄りの卸売業になる

    これからの卸売業者にまず必要なのは、

     これまでのようなメーカー寄りの姿勢を改め、消費者寄りの視点をもつこと

    です。

    いうまでもなく、卸売業の基幹機能のひとつはメーカーから商品を仕入れ小売
    店へ卸す機能です。

    しかし、これまでの卸売業はメーカーの流通政策に従うばかりで、ともすれば、 
    取引先や消費者のニーズを汲み取る努力を忘れがちになっていました。

    これでは顧客満足度を高めることはできません。

    現在は、モノ余りの時代であり、価格の決定権はメーカーから消費者に移ってい
    ます。

    メーカーの価格政策に従っているのではなく、流通の川下に目を向け、積極的
    に消費者のニーズをつかむことが卸売業者にも必要となっているのです。

   2.卸売業の位置付けと機能の見直し

    消費者寄りに視点を移し、新しい時代に対応できる卸売業者になるためには、
    もう一度卸売業の位置づけと機能を見直す必要があります。

    流通を段階的に見てみると、メーカーで開発・生産された商品は卸売業者によっ
    て小売店に卸され、そこで消費者に販売されます。

    これからの卸売業者は、この流通の各段階の機能のいずれかを従来の機能に
    付加し、その機能を強化することが重要となります。

    こうした、今後の卸売業者に求められる機能としては、以下のものがあげられます。

    <卸売業者に今後求められる機能>

     ・メーカー機能

     ・本来の卸売業の機能(強化)

     ・小売機能

    以下では、これらの方向性について事例を交えながら具体的にご説明します。

    (1)メーカー機能の付加、強化

      メーカーの機能といえば商品の開発・生産を指しますが、卸売業者がこの機
      能を強化する方法のひとつとして、プライベートブランド(PB)商品の開発が
      挙げられます。

      どこの卸でも扱うナショナルブランド(NB)商品を卸すだけでは取引先との関
      係強化は困難です。

      商品開発力を磨き、他社にはない魅力ある商品を提供することができれば、
      取引先にとってなくてはならない卸売業になれるのではないでしょうか。

      そこで、自社独自のP B商品の開発を進める卸売業も目立ちます。

      大手のNBと同一の分野に自社で開発した低価格商品をもって参入している
      卸売業者もありますが、今後はNBが比較的浸透していない分野に的を絞っ
      たPB商品の開発が妥当と考えられます。

      これは、大手NBが参入している分野では大手小売業者のPBも含めた激し
      い競争が展開されているからです。

     ◎自社ブランド商品開発を積極的に進める「ワタナベ」  

       ワタナベは1975年に、カメラマンだった渡部社長が助手2人を伴って開業
       した化粧品卸売業です。

       同社は、海外の有名ブランドのフレグランス(香水類)の卸売業からスター
       トし、業務用のヘアケア商品を一般の小売店に卸す事業で大きな成功を納
       めました。

       卸売事業が好調であったにもかかわらず、仕入れた商品を小売店に販売
       するだけの卸売業には限界があると危機感を持っていた渡部社長は、自
       社のオリジナル商品の開発に進出しました。

       卸売業者が商品開発をする際にネックになるのが技術力ですが、ワタナベ
       はOEM契約で商品を開発することでこの課題をクリアしています。

       同社は、化粧品メーカーで自然化粧品開発を担当していた技術者が独立
       して興した会社とOEM契約し、自社ブランド商品「パーソナルゲート」を開
       発しました。

       技術力はあるものの流通ルートを持たない新興メーカーと契約することで、
       オリジナル商品を開発することができたのです。

    (2)本来の卸売業の機能の強化

      先にも述べたように、卸売業の基幹機能のひとつは、メーカーから商品を仕
      入れ小売店へ卸す機能です。

      とくにメーカーの数、商品の種類が多い分野では、メーカーと小売業者が直
      接取引をするのは非効率になるため両者を結ぶ卸売業者の役割は重要に
      なります。

      ただし、低価格志向が定着した現在は流通コストをできる限り抑える必要が
      あり、卸売業にも効率性が求められます。

      その方法のひとつとして、キャッシュアンドキャリーの展開を進める卸売業も
      増えています。

     ◎キャッシュアンドキャリー業態で成長した「トーホー」

      業務用食品卸の株式会社トーホーは、1987年から業務用スーパー「A−プ
      ライス」を手掛けています。

      業務用スーパーとは、中小の飲食店や小売業者などの事業者向けに卸し売
      りを行なっている商品持ち帰りの現金問屋です。

      支払い方法が現金(キャッシュ)で、顧客が自分で持ち帰るため(キャリー)、
      「キャッシュアンドキャリーとも呼ばれます。

      同店では和・洋・中あらゆるジャンルの業務用食材を店舗形態で現金卸販売
      しており、おもに注文単位が小さく配送コストがかかる食堂や居酒屋など小
      規模業者のニーズを取り込み、さらに珍しい食材や低価格を売りに一般客
      の需要も取り込んでいます。
 
    (3)小売機能の付加、強化

      これまで卸売業者の小売業への進出は、取引先である小売業者との摩擦を
      考慮し、あまり行なわれていませんでした。

      しかし、製販同盟などにより卸売業者もその存続が危ぶまれている時代にお
      いては、これまでの方針を見直し、通常の小売店より低い原価率を生かし 
      て」小売業への進出も考える必要が出てきているといえるでしょう。

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