サラリーマン法人

           

サラリーマン法人

  ■サラリーマンが会社になる

   会社は人件費を抑えるために、これまで契約社員や派適社員、パート、アルバイ
   トなど、様々な雇用形態を利用し、会社の発展に努めています。

   しかしながら、「100年に一度の不況」ともいわれるように、景気の低迷が続く中
   で、多くの会社が利益を確保することが困難な状況が続いています。

   そこで、やる気のある社員にとってもメリットのある企業内起業支援として、社員
   のサラリーマン法人化を検討してみるのも一つの手です。

  □「サラリーマン法人」とは

   「サラリーマン法人」とは、簡単にいうと、会社員が法人成りして自営業者に変わ
   ることをいいます。

   つまり、社員は会社との雇用契約をいったん白紙に戻し、サラリーマン法人化し
   た「元」社員が「元」勤務先の会社と改めて業務委託契約を結び、社員時代の仕
   事をこれまでと同じまま、会社と契約だけ変えて勤務することをいいます。

   会社は、雇用契約した社員である個人に給料を払うのではなく、業務委託した社
   員、すなわち法人に業務委託費を払うといった形態になり、会社や社員に様々な
   メリットが生まれます。

   ◎雇用形態

    社員の雇用形態が変わるだけですので、対外的には従来と何ら変わりはありません。

    では、一般的に会社や社員にとってどういったメリットがあるか、デメリットがある
    としたら何かを具体的にみてみましょう。

  □会社のメリット・デメリット

   ◎メリット

    1.サラリーマン法人化による、優秀な人材の流出の防止

      雇用契約だと優秀な社員は、いつでも退職する可能性があります。

      委託契約は雇用契約と異なり、契約期間を3〜5年に定めることも可能です
      ので、優秀な人材のつなぎ止めの方策となります。

    2.社会保険料等の会社負担の軽減

      社員を一人雇用すれば、社会保険料、給与、法定福利費、教育訓練費、事
      務費、備品費など様々な経費がかかってきます。

      それを雇用契約から業務委託契約に変えることで、いわゆる人件費などのコ
      スト削減はもちろん、事務負担の軽減にもつながります。

    3.消費税の軽減

      業務委託契約により、支払い費用は従来の給与である人件費から業務委託
      費に経理処理上変わりますので、いわゆる「課税仕入れ」となり消費税額の
      軽減となります。

    4.より優秀な人材の確保

      人件費などコスト削減分を委託費に加算して支払うことで社員にインセンティ
      ブが働き、より優秀な人材をコストアップ無しで確保できるようになります。

    5.生産性の向上

      年収アップにともない、社員のコスト意識やプロ意思が高まり、生産性の向
      上が期待できます。

   ◎デメリット

    1.会社イメージのダウン

      人件費カットなどといった会社側のリストラ策として、外部および社員に受け
      取られる場合があります。

      リストラ策として受け取られないように、サラリーマン法人化を全社的に一斉
      に始めるのではなく、有能な管理者や優秀な技術者など業務実績が把握し
      やすい社員・職種から始めるようにするのがいいでしょう。

    2.会社への忠誠心の希薄化

      社員は形式的にも独立した会社の社長となるため、元社員であった会社より
      も自分の会社に目が向くようになり、元の会社に対する忠誠心が希薄になります。

      この希薄化にともなうトラブルの発生などを抑えるため、契約事項・内容等の
      諸規定や業務運営上のケアなどに留意する必要があります。

  □社員のメリット・デメリット

   ◎メリット

    1.収入がアップする

      「元」勤務先が負担していた社会保険料や退職金の掛金を上乗せしてサラリ
      ーマン法人に払ってもらい、生活コストの一部を法人の経費に移転させたう
      えで、本人が受け取る役員報酬を課税最低限あたりまで減額すれば、所得
      税や住民税・国民健康保険料もぐっと安くなります。

    2.必要な経費(交際責、交通兼、家賃)の計上ができるようになる

      サラリーマン法人では、自宅を会社にすれば家賃の一部を会社の経費とし
      て控除できます。

      車もリース契約にすれば、使用割合に応じて経費で処理することができ、通  
      信費や携帯代、資料費・パソコンなどの購入費も経費にできます。

      また、得意先との飲食やゴルフも接待交際費として会社経費に含めることが
      可能です。

   ◎デメリット

    1.終身雇用ではなくなる

      雇用契約ではない点が一番のデメリットになります。

      雇用契約であれば、勤務先が従業員を解雇する場合には解雇予告(1カ月
      前の解雇通知、あるいは通知が1カ月に満たない場合には満たない日数の
      賃金支払)を行う必要があるなど、比較的リスクの小さい立場にいると言えま
      すが 、サラリーマン法人ではそのようにはいきません。

      経営がうまくいかなければ、そのまま職を失う危険性も否定できません。

    2.銀行借り入れが不利になる

      住宅ローンをこれから組む場合、借り入れ審査などがサラリーマン時代と比
      べて不利になることがあります。

    3.将来の年金の支給額が減る可能性がある

    4.納税手続きを自ら行うことになる

      納税手続きは、従来は会社が全て行っていましたが、サラリーマン法人化後
      は自らサラリーマン法人の会計処理と決算申告を税務署に毎年提出しなけ
      ればならなくなります。

      また、税金面以外でも、お金の使い道を誤れば会社側の偽装請負ということ
      にもなりかねないのでお金の使い方に細心の注意が必要となります。

    5.業務運営以外のコストが掛かる

      サラリーマン法人を設立するコスト、将来サラリーマン法人をやめる(解散)
      するコストを想定しておかなければならなくなります。

  □事例:ある中堅メーカーの場合

   中堅メーカーで営業企画部に所属するSさんの年収は約800万円です。

   厚生年金と健康保険の合計で、年収の約2割にあたる160万円ほどが天引きさ
   れています。

   Sさんは、今度の販売促進プロジェクトが終了したら、次のプロジェタトからは「サ
   ラリーマン法人」として担当させてもらえるよう上司に相談をし、承諾を得ました。

   仕事の内容も労働条件も同じ、販売促進計画の企画からプロジェクトの進行、実
   際の販売促進活動までを行い、これまでどおりに会社に出社して年収800万円を
   得ます。

   唯一変わったのが、会社との契約を業務委託契約に変えてもらったことです。

   Sさんは自分ひとりだけが社員の「株式会社S」を設立し代表取締役となり、元社
   員であった会社とは業務委託契約で結ばれることになりました。

   様々な書類提出など会社設立のために1カ月ほどかかりましたが、これだけのこ
   とでAさんの家計はぐっと楽になりました。

   なぜなら、手取りの収入が増えたからです。

   年収800万円のサラリーマンから、同じく年収8百万円の自営業者となり、国民年
   金の保険料を年間32万円、国民健康保険は約20万円を自ら負担しなければな
   りませんが、サラリーマンだったときは年金と保険で160万円も払っていたので、
   差し引き100万円以上もトクをする結果となりました。

   一方、Sさんがサラリーマン法人に変わったことでSさんが元社員であった会社も
   大きなメリットを得ました。

   通常会社は社員を厚生年金や健康保険に加入させる義務を負い、社員と折半で 
   保険料を支払います。

   そのために会社は実際にはSさんに年収の約1.5倍の1200万円ほどの給与を
   支払っていました。

   しかし、今回Sさんが法人化してSさんの厚生年金や健康保険の負担がなくなった
   ので、会社全体としての保険料負担が大きく減り、人件費に余裕が生まれました。

   このケースにあるように、サラリーマン法人化というのは社員にも会社にも利点が
   あるアイデアだといえます。

   しかしながら、今のところほとんど普及していません。

   会社と「正社員」の雇用関係にあるサラリーマンなどはこの不況下、それを業務委
   託契約に変えるほどの勇気がないのかもしれません。

  □サラリーマン法人化に向けて

   会社には業種や機能に応じて営業や企画、総務など様々な部署があり、そこで 
   働く社員も正社員や派遣社員、契約社員など、雇用形態・契約形態も様々だと思
   います。

   なかには、サラリーマン法人にはなじまない担当業務・形態の方もあるでしょう。

   全社一斉にサラリーマン法人制度を導入することが難しいようでしたら、業務実績
   が把握しやすい経営サイドの部長職級や、プロジェクト化しやすい企画部門、専
   門性の高い技術職などから始めるのがおすすめです。

   いずれにせよ、サラリーマン法人化は経営者側と社員側とで双方に誤解が生じな
   いよう、十分に分話し合いがなされてはじめて進めることができる制度です。

   社員からすれば、正社員が正社員でなくなることについて、その後の人生への不
   安を大きく駆り立てる事件でもあります。

   やる気のある社員、業績のよい社員をいかに活用し会社発展の糧とできるか。

   真に経営者の腕が試される課題でもあります。

   ◎サラリーマン法人設立手順

    まず、社内の社員独立奨励制度、つまり人事制度を見直すことから始めます。

    そして次のステップとして、どういう条件のもとで独立できるのか、業務委託に関
    する契約内容、法令等遵守(コンプライアンス)の徹底など、会社と社員との明
    確なルール作りが必要不可欠となります。

    一般的には、次のような手順で進められます。

     1.社内で意識調査アンケートの実施
              ↓
     2.アンケート結果の公開
              ↓
     3.社内研究タスクフォースの設置(勉強会)

       メンバー:各部署の管理者クラス、または人事経理部署
              ↓
     4.一般社員向け説明会(毎月1回など定期的に開催)

       現在から将来の社会保険制度、税制の解説も必要。
              ↓
     5.「サラリーマン法人」参加希望者向け説明会(税理士、社会保険
       労務士等専門家も参加) 

              ↓
     6.「サラリーマン法人」対象者決定
              ↓
     7.「サラリーマン法人」実施者向け説明会(税理士、社会保険労務士等
       専門家も参加)

       具体的な手続きの勧め方など。
       新会社法施行により有限会社が廃止された今、新たに合同会社
       という会社形態が加わり、株式会社、合同会社、合資会社、合名
       会社の4つの会社組織がある。
        ↓
     8.「サラリーマン法人」設立

       設立後に経理実務(帳簿作成など)に関する研修会も実施。

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