在宅勤務制度導入の留意点

             

在宅勤務制度の導入

  ■在宅勤務制度とは

   在宅勤務制度とは、会社に毎日は出勤せず自宅で勤務する制度で、週1回在宅
   勤務など部分的なものを含め、近年、導入を検討する企業が増えています。

   その背景には、

    働き方改革における政府支援、パソコン(インターネット)や携帯電話の
    普及により、会社にいなくても仕事ができるようになったこと

   があげられます。

   そのほかに、仕事と生活の調和を意識した多様な働き方(WLB:ワーク・ライフ・
   バランス)への関心が高まるなかで、時間や場所にとらわれることなく能力を発揮
   できる働き方のひとつとして、また、重大な災害時においても事業を継続するため
   の対策のひとつとしても注目されています。

   在宅勤務はテレワークとも呼ばれ、「情報通信技術:ICT(Information and
   Communication Technology)を駆使し、遠く離れた勤務先と連絡を取りなが
   ら働く」ことを意味し、政府も「働き方改革」を提唱する中で、在宅勤務の浸透を支
   援しています。

   テレワークには在宅勤務のほか、サテライトオフィス勤務や営業などで移動しな
   がらの勤務も含まれます。

   政府は平成19年にテレワークの円滑な導入を促進するため「テレワーク人口倍
   増アクションプラン」を策定したほか、「仕事と生活の調和推進のための行動指
   針」にテレワーク人口増加の数値目標を掲げるなどの取り組みを実施してきました。

   「テレワーク人口倍増アクションプラン」のなかでは、テレワークを導入するメリット
   としておもに次の点をあげています。

    ・小子高齢化への対応

    ・ワーク・ライフ・バランスの充実

    ・地域活性化の推進

    ・環境負荷の軽減

    ・有能・多様な人材の確保による生産性の向上

    ・営業効率の向上

    ・コスト削減・災害などに対する危境管理

    ◎参照URL

      「テレワーク人口倍増アクションプラン

      「仕事と生活の調和推進のための行動指針

   国土交通省の「平成30年度 テレワーク人口実態調査」によると、雇用型就業者
   のうち、テレワーカーの割合は前年度の14.8%から16.6%に、また、自営型就
   業者のうち、テレワーカーの割合は前年度の22.2%から24.0%となり、テレワー
   クを活用して働く人の割合はいずれも上昇傾向にあるが、課題あるようです。   

   課題として、

    「会社のルールが整備されていない」、「テレワークの環境が社会的に
    整備されていない」といった、ルールの整備に関する課題

   を挙げている

   企業側においても、

    労働時間の把握や本人の評価をどうするかなど、制度を
    導入するに当たっての課題が多い

   ことが考えられます。

   在宅勤務制度を上手に導入することで、優秀な人材の確保や経営の効率化を図
   ることを検討してみましょう。

  □在宅勤務制度導入のプロセス

   在宅勤務制度の導入プロセスは複数考えられますが、次のような手順を踏んで、
   内容の検討を進めていくとよいでしょう。

  □在宅勤務制度導入の留意点

   1.導入に当たっての留意点

    (1)会社と従業員の認識のすり合わせ

      在宅勤務制度導入に当たっては、会社と従業員の認識が一致していること
      が重要です。

      あらかじめ、

       ・導入の目的

       ・対象となる兼務

       ・対象となる従業員の範囲

       ・在宅勤務の方法

      などについて十分に納得のいくまで話し合うことがポイントです。

      そして、協議した内容については、文書で保存しておくとよいでしょう。

    (2)業務内容および遂行方法の明確化

      在宅勤務制度の対象となる従業員(以下、在宅勤務者)が業務を円滑かつ
      効率的に遂行するためには、業務内容や遂行方法などをマニュアルや在宅
      勤務規定などの文書によって明確にすることが重要です。

      また、あらかじめ通常または緊急時の業務連絡方法について、会社と従業
      員の話し合いにより取り決めておくとよいでしょう。

   2.労働時間についての留意点

    (1)労働時間管理の方法

      労働時間の全部または一部について在宅勤務を実施する場合の労働時間
      の考え方は次のとおりです。

      @原則

       会社が在宅勤務者の労働時間を適正に把握できる場合は、通常の
       労働時間制が適用されます。

      A例外

       会社が在宅勤務者の労働時間を算定することが困難な場合には
       「事業場外みなし労働時間制」を適用することが可能となります。

       「事業場外みなし労働時間制」とは、「所定労働時間」働いたもの
       とみなす制度ですが、次の要件をいずれも満たす場合は在宅勤務
       にこれを適用することができます。

        ・業務が、起臥寝食など私生活を営む自宅で行われること

        ・会社の指示で、情報通信機器などを常時通信可能にして
         おかなければならない状況ではないこと

       「事業場外みなし労働時間制」を適用した場合は、就業規則などで定めら
       れた「所定労働時間」労働したものとみなします。

       ただし、通常は「所定労働時間」を超えて労働することが必要となる場合に
       は、「通常必要とされる時間」労働したものとみなされます。

       また、書面による労使協定があるときには、その協定で定める時間が「通
       常必要とされる時間」とされます。

       なお、労使協定は労働基準監督署長へ届け出ることが必要です。

    (2)割増賃金の算定について

      在宅勤務制度において、「事業場外みなし労働時間制」を適用した場合で、
      割増賃金の支払いが必要なケースは、次のとおりです。

       ・「事業場外みなし労働時間制」で「通常必要とされる時間」が法定
        労働時間を超える場合

       ・深夜・休日に労働した場合

    (3)「事業場外みなし労働時間制」が適用され場合の深夜・休日労働について

      「事業場外みなし労働時間制」が適用されている従業員が、深夜または休日
      に業務を行った場合であっても、次の要件などを満たせば、割増貸金の支払
      いは必要ありません。

      就業規則などに「深夜または休日に業務を行う場合には事前に申告し、会
      社の許可を得なければならない、かつ、深夜または休日に業務を行った実
      績について事後に会社に報告しなければならない」と規定されている状態に
      おいて、深夜若しくは休日の業務について従業員からの事前申告がなかっ
      た、または、事前に申告されたが許可を与えなかった場合で、従業員から事
      後報告もなかったという状況があり、そのうえで、次の1)〜3)のすべてに該
      当する場合は、労働基準法上の労働時間に該当せず、時間外労働となりません。 

      1)深夜または休日に労働することについて、会社から強制されたり、
        義務づけられたりしていないこと

      2)従業員の当日の業務量が過大である場合や期限の設定が不適切で
        ある場合など、深夜または休日に労働せざるを得ないような会社
        からの圧力がないこと

      3)深夜または休日に従業員からメールが送信されていたり、深夜または
        休日に労働しなければ生み出し得ないような成果物が提出されたり
        しているなど、深夜または休日労働を行ったことが客観的に推測
        できるような事実がなく、会社が深夜・休日の労働を知り得なかったこと

    【注意ポイント】

    上記の時間外労働や深夜労働の事前許可制および事後報告制については、
    次のいずれも満たす必要があります。

     ・従業員からの事前の申告に上限時間が設けられ、実態どおりに申告
      しないよう会社から働きかけや圧力があったなど、事前許可制が実態を  
      反映していないといった事情がないこと

     ・深夜または休日に業務を行った実績について、従業員からの事後の
      報告に上限が設けられ、実績どおりに報告しないよう会社から働き
      かけや圧力があったなど、事後報告制が事実を反映していないといった
      事情がないこと
 
   3.その他の留意点

    (1)制度適用に当たっての留意点

      従業員に在宅勤務制度を適用する際には、制度にのっとって当然に適用す
      るだけでなく、できる限り本人の意思を確認してから適用することが望ましい
      とされています。

    (2)安全衛生に関する留意点

      在宅勤務者に対し、雇い入れ時および定期の健康診断を行うとともに、必要
      な安全衛生教育を行う必要があります。

      また、会社は在宅勤務者に対し、パソコンなどの作業をさせる際は、定めら
      れた作業のガイドライン(VDT作業における労働衛生管理のためのガイドラ
      イン)などに留意するとともにその内容を周知し、適切な作業ができるよう必
      要なアドバイスを行うようにしましょう。

      ◎参照URL

       厚生労働省「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン
 

    (3) 業績評価などの留意点

      在宅勤務者が職場に出勤しないことなどから、業績評価などについて疑問を
      もつことのない適正な評価制度、賃金制度を構築することが大切です。

      また、業績評価や人事管理に関して、在宅勤務者について通常の従業員と
      異なる取り扱いを行う場合には、あらかじめ在宅勤務を選択しようとする従
      業員に対して、取り扱いの内容を説明し、理解を得ることが必要です。

      なお、在宅勤務者について、通常の従業員と異なる賃金制度などを定める
      場合には、その部分の就業規則を作成・変更し、届け出なければなりません。

    (4)情報セキュリティに関する留意点

      会社が在宅勤務者に情報通信機器を貸与する場合には、パソコンはシンク 
      ライアント型(画面表示および画面操作はできるが印刷や保存ができないも
      の)とし、社内システムへのアクセスは、VPN(バーチャル・プライベート・ネッ
      トワーク)(※)を構築することなどが必要となります。

      また、情報取り扱い規定を設けて、個人情報や会社情報の保護のルールを
      取り決めておくことがポイントです。

       ※ 公衆回線などを用いて、公共に提供されているネットワークをあたかも
          自社内で構築した専用線であるかのように扱うネットワーク構築手法
          のこと

    (5)費用負担の留意点

      在宅勤務における通信費や情報通信機器などの費用負担については、会
      社と在宅勤務者のどちらが行うか、また、会社が負担する場合における限度
      額、さらに従業員が請求する場合の請求方法などについては、あらかじめ十
      分に話し合い、就業規則などにおいて定めておくようにしましょう。

    (6)業務遂行上の留意点

      在宅勤務時の業務について、「在宅勤務計画書」や「在宅勤務実施報告書」
      といった報告様式を準備し、提出させることで、在宅勤務者の業務の遂行状
      況を適切に把握できるようにしておくことがポイントです。

       「在宅勤務計画書兼実施報告書」ひな型

    (7)社内教育の留意点

      在宅勤務者については、OJTによる教育の機会が少ないことで、能力開発な
      どにおいて不安を感じることのないよう、出社しての社内教育やインターネッ
      トを通じた教育など、その充実を図るとよいでしょう。

 

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