アンケート調査の設計方法

           

アンケート調査の設計方法


  ■調査設計の手順

   1.目的の明確化

    アンケートの設計にあたっては、まずはその目的を明確化することが何よりも大
    切です。

    その際には、「このアンケートは何のために行うのか」、「アンケートによってどん
    な情報を知りたいのか」といった基本事項に加えて、

      アンケートの分析結果を自社の次の行動にどのようにつなげるか

    というレベルまで掘り下げておくことが必要です。

    アンケート調査は経営の意思決定の有力な判断材料として行うべきものです。

    苦労してアンケートを設計・収集・分析したとしても、それが「興味深い結果と
    なった」という感想レベルの効果しかもたらさないとしたら、あまり意味はありません。

    たとえば、若い女性向けの商品を開発するためのアンケート調査であれば、「若
    い女性のライフスタイル全般」について尋ねるだけでは、なかなか次の行動に
    結びつきません。

    実際に自社が開発しようとしている商品を踏まえたうえで、「どの程度ニーズが
    ありそうか」、「どのような改良点があるか」などがわかるような質問も必要です。

    このようにアンケート調査設計においては、次の施策につながるような明確な目
    的設定を行うことが非常に重要です。

   2.調査方法の決定

    調査方法は、(1)観察法、(2)実験法、(3)質問法と、大きく3つに分類されます。

    (1)観察法

      観察法は、対象となる人や環境を目視などで観察する方法です。

      たとえば店舗の前を通行する人のうち、どのくらいの割合の人が入店する
      か、入店した人が売り場をどのように回遊し、レジへ向かうかなどの調査が
      あります。

    (2)実験法

      実験法は、複数のグループに対し異なる扱いをし、影響を与えうる変数をコ
      ントロールしたうえで、扱いに対する結果を調査する方法です。

      たとえば、Aグループには事前に商品の説明をしたうえで使ってもらい、Bグ
      ループには説明なしで使ってもらって、AとBの満足度の違いを比較すること
      などがあげられます。

    (3)質問法

      質問法は、質問票を用いたアンケート調査や、グループインタビュー、ごく少
      人数を対象にし、深層心理にまで踏み込むデプスインタビュー、電話法(テレ
      マーケティング)、インターネット調査といったものが含まれます。

      調査方法は、調査の目的や調査したいテーマに合わせて、適切なものを選
      択することが重要です。

      なお、ここでは調査方法のなかでも、もっとも一般的な、(3)質問法について
      説明します。

   3.調査項目の決定

    たとえば、「シティーホテルについての消費者ニーズ調査」の場合、ターゲットと
    なるコアユーザーのニーズを把握するということが重要になるため、利用経験、
    利用頻度からコアユーザーをフィルターにかけたうえで、具体的な利用動機や、
    利用金額、各サービスの利用意向などを調査できるよう調査項目を設計します。

    また、競合に対する調査が必要な場合は、競合の認知度、利用経験、満足度と
    いった項目を入れ、具体的な消費者のニーズとして抽出します。

    図にある「デモグラフィツク」とは、年齢、性別、社会的・経済的地位(収入や学
    歴)などの要因で分類したもの(属性)を指します。

    また、「ビールのブランド調査」のように、多種多様なブランドのなかで、何が評
    価されているか、評価されている点は何か、今後の購入意向などを調査したい
    場合には、多くのブランドを網羅的に配置する必要があるため、広告認知度、評
    価ポイント、購買経験などを簡潔に調査することができるよう項目を設計する必
    要があります。

    以上のように、調査票を設計する際には、いきなり質問文を書き始めるといった
    ことはせず、調査すべき項目を体系的に整理し、調査項目を明確に絞り込んで
    おく必要があります。

   4.調査量の決定

    通常、調査の分量は調査にかけられるコストと、適切な分量を勘案して決定します。

    何度も調査をするのは予算の関係で難しいため、一度にできるだけ多くの項目
    を調査したいところですが、あまり調査の分量が多すぎると回答の信憑性が低く
    なります。

    適切な調査分量の目安は、回答時間を基準に考える場合、インターネット調査
    や電話調査の場合は5〜10分程度、個別に訪問して調査目的や回答方法を説
    明のうえ留め置き(質問票を置いてくる)する場合には、60分程度が限度と考え
    られます。

    また、適切な調査量を調査票の枚数で考えた場合、B5用紙で8枚(B4用紙2枚
    を折り返した冊子)程度が限界でしょう。

  □質問票作成の際の留意点

   1.質問文作成(ワーディングの検討)

    調査項目や調査量が決定したら、質問文の作成にとりかかります。

    質問文は、回答者に誤解を与えないよう、誰が読んでも同じように解釈できるよ
    うに作成する必要があります。

    また、質問文が回答者を誘導してしまうことがないよう、客観的な内容としなけ
    ればなりません。

    質問文作成時に、留意すべき点はおもに以下のようなものです。

    (1)あいまいな質問

      @あいまいな質問となっていないか?

       ×「あなたの収入はいくらですか?」
      →○「あなたの昨年1月から12月までの年間の税込み世帯収入はいくらですか?」

      Aあいまいにしか答えられないものではないか?

       ×「あなたは普段どれくらいクリーニング店を利用しますか?」
      →○「あなたは最近1カ月で何回クリーニング店を利用しましたか?」

    (2)ダブルバーレル質問

      @1度で複数の論点について聞いていないか?

       ×「説明書の表現や操作方法が、不便もしくは分かりにくいと思いますか?」
       → 表現と操作方法、不便さと分かりにくさのように種類の違う複数の項目
          を聞いています。

      A前提としている論点はないか

       ×「あなたは病気にならないよう、いつもビタミンを取っていますか?」

       → ビタミンを美容のために取っている人には、答えられない質問となっています。

    (3)誘導質問

      @同調圧力をかけていないか?

       ・意見分布の提示

        ×「多くの人がマリファナを吸うことを有害だと思っていますが、
          あなたはどう思いますか?」

       ・心理的負荷の高い言葉の使用

        ×「広告は無駄使いを勧めるものだという豊畳起いますが、
          あなたは賛成ですか、反対ですか?」

       ・現状維持の強調

         ×「この州では今日まで賭博が非合法でしたが、
            賭博を合法化することについてどう思いますか?」

      A情報の開示は公平か?

       ・一面的な情報開示になっていないか(長所のみ開示する)
        ×「A社の豆乳には、若さを保つピタ「ミンEが多く含まれており、
          健康と美容によいといわれていますが、試してみたいと思いますか?」

   2.回答方法の決定

    質問法による調査でよく使用される回答方法には、2件法、3件法、4件法以上
    の多肢選択法、評定法、一対比較法などがあります。

    また、定性的な調査では、文章完成法や自由記述法も利用価値の高い方法です。

    どの回答方法を選択するかは、調査目的とともに、回答者の年齢、質問項目数
    などを勘案して決定します。

    ◎各回答方法のメリット・デメリット

     @2件法

       「はい」「いいえ」、「賛成」「反対」など2つの選択肢から、1つを選択する方
       法です。
       評定がおおまかになるというデメリットがありますが、回答時間が短く、多く
       の項目を実施することができます。
       また、低年齢の子どもに実施する場合には、もっとも利用しやすい方法とい
       えます。

     A3件法

       2件法に、「ふつう」「どちらともいえない」といった中間項も入れて、1つを選
       択する方法です。
       基本的には2件法と同じですが、中間項に回答が集中するために回答の
       分析を難しくする場合があります。
       「ふつう」には、満足から不満足への心理的な連続性が存在しているのに
       対して、「どちらともいえない」の回答には「わからない(知らない)」というそ
       もそも回答のないものも含まれますので注意が必要です。
       たとえば、自社商品の使用感について質問する際には、「どちらともいえな
       い」という感想には、「実際に使ってみたが、良いとも悪いともいえない」とい
       う答えと、「使ったことがないので、(判断できないため)どちらともいえない」
       の2種類の意味合いが含まれることになります。
       なお、レストランでの接客評価のような実際に来店した顧客のみを対象にし
       たようなアンケートではこの心配はありません。

     B4件法

       「満足」「やや満足」「やや不満」「不満」といった4つの選択肢から1つを選
       択する方法です。
       満足か不満かのようにどちらかに分けることができるので、傾向をつかみ
       やすいというメリットがあります。
       一方で中間項がないために、本当に「良くも悪くもないと感じている」回答者
       の感想を吸い上げられないというデメリットもあります。

     C5件法

       5つの選択肢から1つを選択する方法です。4件法に中間項を加えた聞き
       方で、アンケート調査でもっとも一般的に行われている方法です。
       中間項についての留意点は3件法と同様です。

     D非対称な5件法

       選択肢は通常、中間項を中心に左右対称にしますが、意図的に非対称の
       5件法を用いる場合があります。
       たとえば、社会問題の関心を問う質問など、社会的な望ましさがあり、回答
       が偏ってしまう場合には、非対称の選択肢を用意し、本当に関心がある層
       を抽出することもあります。

   3.質問順序の決定

    アンケート質問の順序は、回答結果に大きな影響を及ぼします。特定の回答を
    誘導するような質問文にしてはいけないのと同様に、質問順序にも注意しなけ
    ればなりません。

    (1)順序効果

      質問と関連する情報の順序によって、回答結果に影響が出る場合があります。

      たとえば、製品コンセプト調査で購入意向を検証する事例で、調査対象を2
      つのグループに分け、長所と短所に関連する情報を順序を入れかえて提供
      した場合、短所となる情報を先に提供されたグループは、長所となる情報を
      先に提供したグループより購入意向が低くなることが分かっています。

      これを心理学では、最初に提供する情報が印象に残ってしまう「初頭効果」と
      呼んでいます。

      どのような順序を選択すべきということはありませんが、このような影響があ
      るということは理解しておく必要があります。

    (2)キャリーオーバー効果

      質問文自体で直接回答を誘導していない場合でも、質問票のなかでネガティ
      プな情報を提供することによって、回答を誘導する場合があります。

      たとえば「食品添加物使用食品の賛否」を回答者に問う質問の前に、「食品
      添加物の危険件に関する知識の有無」を問う質問を配置している場合は、回
      答が大きく歪むことが予想されます。

    (3)コンテクスト効果

      「何について調査しているか」という調査全体の性格によっても、回答が大き
      く歪むことがあります。

      たとえば、「ビールの購買頻度」を聞く場合でも「グルメ調査」のなかで聞く場
      合と、「生活習慣病に関する意識調査」のなかで聞く場合では回答数値が変
      わることがあります。

      以上のように、回答結果を歪めてしまう質問順序にならないよう注意して設
      計するとともに、設計上仕方のない場合は、回答が歪む影響を考慮したうえ
      で、結果を読み取る必要があります。

  □デモグラフィツク分析とライフスタイル分析

   アンケート調査では、回答結果そのものだけではなく、「どのような人が回答した
   か」という回答者の特性も合わせて分析することが重要です。

   以下では回答者の特性を把握するための属性(デモグラフィツク)分析とライフス
   タイル分析について紹介します。

   1.デモグラフィツク(属性)分析

    回答者の性別、年齢、職業といった個人属性を調査する項目は、分析する際に
    ターゲットをセグメント化して僚向を把握する必要性から、どのような調査にも
    入っています。

    年齢や職業の選択区分については、調査の目的によって異なりますが、最終的
    な分析において意識や行動が異なると想定される単位とすることが望ましいとさ
    れています。

    また、何歳で意識や行動が異なるか見当がつかない場合は、回答者に「○歳」と
    直接記載してもらう方法もあります。

    職業や年収は、回答者によって捉え方が異なったり、誤解を与えたりしないよ
    う、曖昧な点を排除することが必要です。

    たとえば、収入を調査する場合では、「税込みor税抜き」「年収or月収」「本人収
    入or世帯収入」「何年度のものか」といった点を明確にする必要があります。

    また、「年金」「家族からの仕送り」を収入に含めるか否かという点も、必要であ
    れば明記します。

   2.ライフスタイル分析

    属性分析だけではなく、どんな価値観に支えられて、どんな生活をしているかと
    いった包括的な視野で捉えていくライフスタイル分析も重要です。

    たとえば、属性分析では「高齢者」とひとまとめにされる層でも、若者顔負けにア
    クティブに活動している人もいますし、また所得水準が高くても「食」にはまったく
    興味がなく、食費はできるだけ節約したいと考えている人もいます。

    ライフスタイル分析では、このように属性分析ではわからない、食や社交、趣
    味、仕事といった生活を構成するさまざまな要素についての価値観や意識を問
    うことになります。

    この価値・意識に関する質問によって消費者をセグメントで分け、そのセグメント
    ごとに消費特性や、行動特性を調査するというのが、ライフスタイル分析の一般 
    的な手法になります。

    また、ライフスタイル分析の目的として、流行を牽引する「イノべ−ター」(新商品
    などを周囲に影響されずに自ら進んで受け入れる人達)層を抽出し、彼らに対
    する効果的なアプローチ手法を明確にするということがあげられます。

    この「イノベーター」を抽出する方法は、「イノベーター」に特徴的な価値観や行
    動特性をあげ、その傾向に当てはまるかを質問するというのが一般的です。

    たとえば、「流行は比較的早く取り入れるほうだ」や、「新製品について人に話し
    たり教えたりする」といった質問文を用意します。

    1問だけでは回答が偏ってしまうことが考えられるため、最低3間は用意するこ
    とが望ましいでしょう。

    また、製品の普及状況をより詳細に把握したい場合は、アンケート対象をイノ
    ベーター層だけではなく、さらに「中間層」や「保守層」などに分ける質問を行っ
    たうえで、それぞれの層での製品の利用経験を分析することで、どのセグメント
    に受け入れられているかを分析することができます。

 

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