天災は忘れた頃に… 事業継続計画策定を

                 

天災は忘れた頃に… 事業継続計画(BCP)策定を

  ■事業継続計画(BCP)

   1000年に一度の規模ともいわれる東北地方太平洋沖地震は、東北地方を中心
   に壊滅的な被害を与えました。

   多くの方が命を落とされ、ライフラインも各地で寸断されました。

   私たちはこのような想定外の災害に対して、万全な準備をしておくことは非常に困
   難です。

   しかし、だからこそ想定し得る範囲については、日頃からできるだけの対策を講じ
   ておくことが大切であるといえるでしょう。

   2011年3月11日、あれから8年の歳月がたち、「天災は忘れた頃にやってくる」
   の言葉にあるように、記憶が薄らいでくる前に対策を講じることをお勧めする。

   BCPの策定状況は、従業員規模が小さくなるほど進んでいない。

   ここでは、企業が緊急事態のなかでもその披害を最小限に抑え、早期復旧を図っ
   ていくための事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan。以下、BCP)に
   ついておさらいの意味も含め解説します。

   1.BCPとは

    BCPとは、企業が自然災害、大火災、感染症などの緊急事態に遭遇した場合に
    おいて、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるい
    は早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業
    継続のための方法・手段などを取り決めておく計画のことです。

    BCPがあらかじめ策定されていないと、緊急時に「何から着手してよいかわから
    ない」、「指示・命令系統が途絶え、社内が大混乱する」という事態に陥りかねま
    せん。

    災害の発生直後には操業が完全にストップすることもあります。

    また、その後の回復のスピードが遅ければ、競合他社に顧客を奪われ、最悪廃
    業に追い込まれる可能性もあります。

    <BCPの概略>

     ・災害後に活用できる資源に制限があると認識し、継続すべき重要業務を
      絞り込む

     ・重要業務のそれぞれについて目標復汀1時間を設定する

     ・重要業務の継続に不可欠で、再調達や復旧に時間や手間がかかり、
      復旧の制約となりかねない
      重要な要素・資源(ボトルネック)を洗い出し、それらに重点的に対処する

     ・つねに最新の企業の情報を反映するようにするため、定期的な更新、
      経営層による見直しなどを行う

   2.BCPと防災計画

    BCPと似たような意味合いで使われる言葉に「防災計画」があります。

    防災計画では災害そのものを起こさないこと、被害を最小限に抑えることに力
    点が置かれているのに対して、BCPではそれに加えて、事業を早期に復旧し、
    企業を存続させることを目的としています。

    被災時には人・物・金などの経営資源が大幅に減少します。

    そのような状況のなかでも限られた経営資源を活用して、自社の重要業務を遂
    行する必要があります。

    BCPは被害最小化への事前対策であるとともに、被災時の危機的な状況のな
    かで、まず何をどうやって始めるかを示す手引き書ともいえます。

   3.BCP策定が取引条件に

    BCPは自社のみで完結するものではありません。

    大災害が発生した場合は、自社だけではなく仕入れ先・販売先などの取引先企
    業も大きな被害を受けます。

    たとえば、自社がBCPによって早期に操業体制を回復したとしても、重要部品の
    仕入れ先企業の操業が停止したままであれば、自社の製造ラインを動かすこと
    はできません。

    同様に自社の製品の販売先企業が営業していなければ、納品不可能となり、在
    庫の山を築いてしまうことにもなりかねません。

    つまりBCPは自社だけではなく、川上・川下企業においても策定されている必要
    があります。

    このような理由から、特に大手企業においては取引先企業にBCPの策定・充実
    を求める傾向が強まっています。

    これは素材調達から最終製品販売に至るサプライチェーン全体を通じて、BCP
    をより高いレベルで準備しておこうという狙いによるものです。

    今後は取引先との関係の維持・強化のためにBCP策定の重要度がますます高
    まっていくことだけは確かです。

   4.CSR上の意義

    大規模災害時にはインフラがストップするなど国民生活にも大きな支障が生じ
    ます。

    BCP策定によって会社機能を維持できていれば、地域住民への支援拠点として
    活用することができます。

    これは企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)を果た
    すうえでも、大変重要です。

    日頃からこのような姿勢を打ち出しておくことで、企業イメージが向上し、結果と
    して企業存続の基盤が強化されると考えられます。

  □BCP策定・運用の手順

   以下にBCP策定・運用の大まかな流れを解説します。

    1.BCP策定宣言と事業継続方針の決定

    2.重大災害とその被害の想定

    3.自社の存続にかかわる重要業務の確認

    4.重要業務の精査

    5.事前対策の検討・実施

    6.目標復旧時間の設定

    7.緊急対応マニュアルの策定と共有

    8.訓練・計画の見直し

   1.BCP策定宣言と事業継続方針の決定

    社長自らが自社でBCP策定に取り組むこと、策定の意義などを全社員に対して
    説明します。

    BCP策定には全社員の協力が不可欠であり、社長自らが宣言することで、社員
    の理解を深めることが大切です。

    宣言後は幹部社員と話し合いながら、BCPの根幹となる事業継続方針を定めます。

    事業継続方針とは、緊急時に企業が取るべき行動の優先順位を示すものです。

    企業の業種や理念などによって異なりますが、一般的には次のような事業継続
    方針が定められます。

    <事業額続方針の例>

     ・従業員とその家族の安全を守る

     ・顧客への供給責任を果たす

     ・地域や顧客の復興を支援する

     ・業務を正常レベルに戻す

    この例では緊急時の限られた経営資源について、まずは従業員とその家族の
    安全のために使い、その次に顧客への供給責任の全うに取り組むということに
    なります。

   2.重大災害とその被害の想定

    企業が直面する重大災害には、その地域全体で懸念される大地震、風水害、
    感染症などの自然災害や、その企業単独で起こり得る火災や事故などがあります。

    このうち地震や洪水などの被害予測については、国土交通省のウェブサイトか
    ら確認することができます。

    また、都道府県や市町村の防災担当部署では、より細かい単位でハザードマッ
    プを策定している場合があります。

    まずは自社所在地について、どのような災害の可能性があり、どの程度の被害
    がありそうなのかを確認します。

    さらに自社の周辺地域や重要な取引先の所在地の状況も確認します。

    <参考URL>

     国土交通省/ハザードマップ(※)ポータルサイト

      ※ ハザードマップとは自然災害による被害を予測し、その被害範囲を地図化したもの

   3.自社の存続にかかわる重要業務の確認

    災害によって大きな被害を受けた場合、通常はベストの業務を行うことはできま
    せん。

    そこで、優先して対応すべき重要業務を選定します。

    まず業務を取引先別と製品別に整理します。

    あるメーカーが甲、乙、丙社に対して自社製品A、B、Cを販売しているとすると、
    業務は以下のように@〜Hに分類されます。

    たとえば、@は「甲社に対して製品Aを製造し、納品する業務」ということになります。

    次にそれぞれの業務の自社経営への影響度を以下のような基準で一つひとつ
    評価していきます。

    各基準の評価をした後で、総合的な判定を行います。

     ※1 自社が製品を供給しないことで取引先が操業停止に陥るなど取引先に与える
         影響を評価

     ※2 建設業におけるインフラ普及業務、小売店における食料販売業務などは社会的
               要請が高い

    これにより@〜Hの業務の優先度を評価し、その結果を分析表に記入します。

    ここでは以下のような結果になったとします。

    表中の高、中、低は前述の評価結果一覧の総合判定結果を示したものです。

    この評価結果では@「甲社に対して製品Aを製造し、納品する業務」、A「甲杜
    に対して製品Bを製造し、納品する業務」、F「丙社に対して製品Aを製造し、納
    品する業務」の重要度が高くなっています。

    したがってこのメーカーにとっての重要業務は@AFとなり、災害時にはこの3
    つの業務に経営資源を優先的に投入することになります。

    特に甲社向けの業務が2つあるため、納品のためのトラックなど物流の割り当
    ては甲杜を優先する必要があります。

   4.重要業務の精査

    特定した重要業務のフローを分析し、業務遂行に必要な要素を整理します。

    たとえば、前述の(D「甲社に対して製品Aを製造し、納品する業務」について
    は、以下のような要素が必要です。

    <業務@遂行ために必要な要素>

     ・原材料

     ・工場設備

     ・作業者、管理者

     ・電力などのインフラ

     ・情報システム

     ・納品のための物流

    地震などによってそれぞれの要素がどの程度のダメージを受ける可能性がある
    のかを検討します。

    特に工場設備の損壊など、復旧に時間がかかりそうな要素については漏れなく
    チェックします。

   5.事前対策の検討・実施

    重要業務の要素への被害を最小限にするための対策を検討し、実施します。

    対策のなかには工場躯体の耐震性強化など一定の時間と費用のかかるものも
    ありますが、転倒防止器具の取り付けや重要情報のバックアップ、防災用備蓄
    品の設置など比較的簡単にできるものもあります。

    できることはすぐにでも実施することが大切です。

    また、長期的に進める対策については、資金面の手当ても含めて、いつまでに
    完了させるかの計画を定めます。

   6.目標復旧時間の設定

    災害によって停止してしまった業務について、どの程度の期間で通常レベルに
    再開するかについて目標時間を設定します。

    大震災によって工場のすべての生産ラインが停止してしまった場合などは、重
    要業務にかかわるラインを優先して回復していきます。

    前述の例では重要業務のひとつに@AFがあげられていましたので、まずはこ
    れらの業務回復に努めます。

    その際には自社の目標復旧時間について、取引先から合意を得ておくことが大
    切です。

    たとえば、

    @「甲社に対して製品Aを製造し、納品する業務」については、あらかじめ甲社と
    話し合って「災害から2週間で50%、lカ月後に100%」などの条件を決めておき
    ます。

   7.緊急対応マニュアルの策定と共有

    実際に被災した際にはパニックに陥り、どのように対応すればよいかわからず、
    初動が遅れることもあります。

    そこで、災害発生時に「誰が何をするか」という行動レベルのマニュアルを策定
    し、全社員がその内容を共有しておく必要があります。

    マニュアルのポイントとしては以下のようなものがあげられます。

    <緊急対応マニュアルのポイント>

     ・BCP発動基準と方法

     ・情報拠点の確保(本社や営業所が使えない場合は、社長宅など)

     ・指示・命令系統の確立(社長が執行不能の場合はA専務、A専務も執行
      不能の場合はB部長など)

     ・従業員の安否確認(連絡先リスト、連絡手順など)

     ・取引先の状況把握と支援要請の有無の確認

     ・自社施設(本社、営業所、工場など)の被害状況把握(特に重要業務に
      関連する施設・設備)

     ・自社施設が原因で起こる二次災害予防

     ・自社周辺地域住民・施設・インフラ等の被災状況把握

     ・帰宅困難者への対応

     ・重要業務遂行状況の把握(誰がどのように把握するか)

     ・重要業務復旧のための初動

     ・財務面に与える影響把握、公的な緊急融資制度等の利用検討

   8.訓練・計画の見直し

    上記の緊急対応マニュアルを確実に実践するためには、日頃から訓練を積ん
    でおくことが不可欠です。

    災害の想定を毎回変更するなどして、臨機応変な行動力を高めていくことが大
    切です。

    また、社内外の経営環境の変化によって、BCP策定時に定めた当初の「重要業
    務」が変わることもあります。

    そのため、状況変化に応じてBCPを更新していくことが必要です。

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