職場におけるメンタルヘルス対策

             

職場におけるメンタルヘルス対策


  ■職場におけるメンタルヘルスの現状

   1.メンタルヘルス問題の原因と現状

    経済状況が厳しさを増すなか、労働者一人ひとりにかかる負担も増大しています。

    同時に、成果主義による人事評価制度や、社内IT化、英語の社内公用語化な
    ど、職場環境も人きく様変わりし、新たなストレスを生み出しています。

    こうした状況のなか、職場には余裕のない労働者が増え、他者との協調も生ま
    れにくくなり、孤立を深めてしまうといった問題が生じています。

    厚生労働省の「平成29年 労働者健康状況調奄」によると、労働者の6割近く
    が「仕事でのストレスがある」と回答しています。

    その原因のトップ3は「職場の人間関係」、「仕事の質」、「仕事の量」となってお
    り、メンタルヘルスの不調により連続1カ月以上の休業または退職に至った労働
    者がいる事業所は全体の7.6%にのぼっています。

    近年、「メンタルヘルスの不調は仕事が原因だ」と考える労働者が増え、精神障
    害等による労災の請求件数も年々増えています。

    仕事上の過度な負担やストレスによる病気も労災の対象として認められるよう
    になったことによるものですが、年代別にみてみると30歳代がトップで、もっとも
    ストレスを感じている世代だといえます。

    メンタルヘルスの問題は、もはや労働者個人だけではなく、会社全体の問題で
    あり、メンタルヘルス不調者を出さない職場づくりがいま求められています。

   2.メンタルヘルスの問題が会社に与える損失

    メンタルヘルスの問題は、労災の請求だけでなく、民事訴訟に発展するケースも
    増えています。

    業務との因果関係を厳格に審査したうえで認定の可否を決める労災認定に対
    し、民事訴訟は労働者の過失なども考慮したうえで損害額を算定するため、結
    論が異なることも珍しくありません。

    民事訴訟における損害賠償額は、企業規模や支払能力に関係なく決定し、高
    額化の傾向もみられることから、場合によっては会社の存続にも影響を及ぼし
    かねません。

    不幸にも労働者が過労死や過労自殺をしてしまった場合、非常に重い賠償責
    任を問われる可能性があることを想定しておかなくてはなりません。

    職場内でメンタルヘルスの不調を訴える労働者が増加すれば、業務の生産性
    が低下するだけでなく、さまざまなリスクが生じてきます。

    おもなリスクは次のとおりですが、メンタルヘルスの不調を訴える労働者が減れ
    ば、これらのリスクが減るだけでなく、労働者も安心して生産性を上げることがで
    きます。

    メンタルヘルス対策を放置することは、会社の損失を甚大にすることにもつなが
    ります。

   3.メンタルヘルス対策への取り組み

    厚生労働省の「平成29年 労働者健康状況調査」で、実際にメンタルヘルス対
    策に取り組んでいる事業所の割合をみてみると、労働者1000人以上の事業所
    では9割を超えているものの、全体では58.4%にとどまっており、50〜99人規
    模で83%、30〜49人規模で67.0%、10〜29人規模で50.2%となっています。

    その具体的な取り組み内容としては、「労働者のストレスの状況などについて調
    査票を用いて調査(ストレスチェック)」(64.3%)、「メンタルヘルス対策に関す
    る労働者への教育研修・情報提供」(40.6%)、「メンタルヘルス対策に関する
    事業所内での相談体制の整備」  (39.4%)の順になっています。

    なお、メンタルヘルス対策に取り組んでいない事業所は、「専門のスタッフがい
    ない」(44.3%)、「取り組み方がわからない」(42.2%)といった問題点をあげ
    ています。

    調査の結果から、いかにして労働者からの相談に対応するか(専門スタッフとの
    連携など)がメンタルヘルス対策のカギといえますが、社内での対応が難しい場
    合には外部の専門機関による支援も視野に入れて体制を整備していくことが重
    要です。

   4.まずは法令遵守の体制整備から

    訴訟リスクを低くするには、法令を遵守した社内ルールづくりが大切です。

     ・就業規則に書かれている内容は最新の労働基準法に対応できているか

     ・労働基準監督署に「時間外・休日労働に関する協定書」を届け出ているか

     ・労働安全衛生法で義務づけられている産業医や衛生管理者、衛生委員会
      や安全委員会を設置しているか

    などを確認してみましょう。

    訴訟に発展した場合、会社側がメンタルヘルス対策を講じていたかが争点とな
    るわけですが、法令違反が指摘されれば状況は不利になってしまいます。

    まずは、法令を遵守した体制を整備することが重要です。

  □メンタルヘルス対策の4つのケア

   メンタルヘルス対策には、国の指針で示されている「4つのケア」と呼ばれる考え
   方があります。

    1.セルフケア

    2.管理監督者によるケア

    3.社内の産業保健スタッフ等によるケア

    4.社外の専門機関によるケア

   1.セルフケア

    セルフケアとは、労働者自らがストレス状態に気づき、適切に対処するための
    知識と方法を身につけて自分自身でケアすることをいいます。

    セルフケアで重要になるのが「気づき」です。

    ストレス状態に置かれていることに労働者自らが気づき、不調に陥らないよう早
    期に対処することがポイントになってきます。

    そのために会社が取り組むべきことは、

     ・労働者に対してメンタルヘルスに関する正しい知識の教育研修と情報提供

     ・労働者が利用できる相談窓口の整備や周知、専門機関に関する情報提供

     ・労働者が自分でストレスチェックできる機会の提供

    などです。

    また、2006年、労働安全衛生法が改正され、過重労働(働きすぎ)の労働者に
    対して医師による面接指導を一部義務化するなど、職場におけるメンタルヘル
    ス対策が−段と強化されました。

    残業の多い労働者に対しては、疲労蓄積度をチェックしてもらい、医師による面
    接指導が必要かどうかを見極めるようにしましょう。

    <参考> セルフチェックに使えるウェブサイト

      ・職業性ストレス簡易評価ページ(中央労働災害防止協会

      ・こころの病気のセルフチェック(UTU−NET

      ・労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(安全衛生情報センター

   2.管理監督者によるケア

    管理監督者は、部下と身近に接しているため、不調にも気づきやすい立場にあ
    ります。

    一方、パワハラやセクハラなど、管理監督者の言動に問題があって不調をもた
    らしているケースもあります。

    こうしたことから、管理監督者に対するメンタルヘルス教育が重要になってきます。

    「4つのケア」のなかでも要となるのが管理監督者によるケアともいえます。

    会社として取り組むべきことは、

     ・管理監督者に対してメンタルヘルスに関する正しい知識の教育研修と
      情報提供 (管理監督者の役割、いつもと違う部下の把握と対応、相談
       への対応など)

     ・部下とのコミュニケーションについての研修(部下への声かけ、傾聴
      訓練など)

     ・職場環境の評価、ストレス要因の把握、職場環境の改善

    などです。

    <参考>

     管理監督者向けの研修として活用できるウェブサイト

      ・メンタルヘルス対策(こころの耳

   3.社内の産業保健スタッフ等によるケア

    社内の産業保健スタッフ等とは、産業医、衛生管理者、保健師、人事・労務担当
    者を指します。

    産業医や保健師等はおもに医学的な見地からの助言や指導を行い、衛生管理
    者や人事・労務担当者はおもに管理監督者によるケアのフォローをします。

    ストレスの原因が職場にある場合、上司や同僚に相談することができずにストレ
    スを抱え込み、症状が悪化してしまうこともあります。

    そういった場合、社内に専門スタッフがいることで、労働者も安心して相談をす
    ることができ、より適切な対応が可能となります。

    社内の産業保健スタッフ等によるケアを行うに当たり取り組むべきことは、

     ・産業医による毎月1回の社内巡視、教育研修、面接その他の助言・指導
      の実施

     ・相談窓口の設置(プライバシー保護に重点をおき、場合によっては電子
      メールでの相談も)

     ・保健師によるメンタルヘルス不調者への面接や相談、保健指導の実施

     ・産業保健スタッフ等による職場環境の改善・指導

    などです。

   4.社外の専門機関によるケア

    メンタルヘルス問題が悪化した場合、社外の専門機関の支援を受けることも必
    要です。

    具体的には、メンタルクリニックや精神科、心療内科など専門の医療機関の情
    報を把握しておき、状況に応じて協力を求める体制を構築しておきます。

    メンタルヘルス対策は、専門スタッフの確保や費用の問題などもあり、すべてを
    社内で取り組もうとすると大変です。

    そこで、まずは無料で利用できる専門機関を活用できないか検討してみましょう。

    また、メンタルヘルスの分野には「EAP(従業員支援プログラム)」というメンタル
    ヘルスケアの対策手法を専門に提供する企業もあり、メンタルヘルス対策につ
    いてのコンサルティングや研修などの提供も行っています。

    そういった専門サービスを利用してみるのも方法のひとつです。

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