匿名組合

              

古くて新しい匿名組合

  ■匿名組合の仕組み

   「匿名組合」という不思議な仕組みがあります。

   この仕組みは、源をたどれば、10世紀のイタリアの地中海沿岸都市の海上貿易
   における「コムメンダ(comenda)」契約にあります。

   この仕組みは、時と場所を隔てて、わが国の商法においても古くから法制度化さ
   れていましたが、長らくは活発に使われていたとはいえませんでした。

   しかし、近年、さまざまな場面で活用されるようになっています。

   匿名組合とは、当事者の一方(匿名組合員)が相手方(営業者)の営業のために
   出資をなし、その営業より生じる利益の分配を受けることを約束する契約形態を
   いう。

   たとえば、バブル崩壊後の不良債権を金融機関が処理するにあたって利用され、
   近年では、投資ファンドが多数の投資家から資金を集めて運用する投資スキー
   ムにおいても使われています。

   ここでは、この「匿名組合」の仕組みを説明します。

   1.匿名組合の意義と機能

    (1)沿革

      匿名組合の起源であるコムメンダ契約は、本国にとどまる資本家が企業家
      である船長に、金銭、商品、船舶を委託し、企業家が海外貿易で利益をあ
      げ、帰国後に本国で委託者である資本家と利益を分配するという内容のも
      のでした。

      冒険的な航海から組織的な貿易への発展、貿易のみならず多様な企業へ
      の援用により、コムメンダ契約は展開していきました。

      やがて、資本家と企業家の両者が共同事業者として対外的にあらわれる形
      態と、企業家のみが対外的にあらわれ資本家は表にあらわれない形態とに
      分化して、前者は合資会社に、後者が匿名組合へと、それぞれ発展しました。

    (2)意義

      わが国の商法に規定された匿名組合は、当事者の一方(匿名組合員)が相
      手方(営業者)のために出資をなし、相手方がその営業から生ずる利益を分
      配すべきことを約する契約です。

      匿名組合は、あくまで有償双務の契約の法形式をとりますが、経済的には共
      同企業組織を形成する仕組みです。

      そして、匿名組合は、実質的には、営業者と匿名組合員の共同企業ですが、
      この契約は両当事者の内部的な契約にすぎないので、対外的には、営業者
      の個人企業としてあらわれ、営業者のみが営業の主体となります。

      匿名組合は、2当事者間の契約です。

      同一営業者に対して複数の出資者たる匿名組合員が存在する場合は、その
      匿名組合員の数だけ、匿名組合契約が存在していることになります。

      匿名組合契約と類似の制度として、源を同じくする合資会社があります。

      したがって、平成17年改正前は、匿名組合の規定は商法会社編の合資会
      社に関する規定を準用していましたが、同年の会社法制定を受けた改正商
      法は、その準用部分が匿名組合に合わせて新たに書き下ろされ、規定の明
      確化が図られました。

匿名組合2.bmp
   (3)近年の利用方法

      バブル崩壊後の不良債権を金融機関が
      処理するにあたり、匿名組合形式が利用されました。

      すなわち、新たに設立された特定目的会社(SPC)を営業者とし、機関投資
      家を匿名組合員として、匿名組合契約が締結され、金融機関は関連企業の
      有する多額の不良債権を小口化し波動化することができました。

      この特定目的会社は、平成10年の「特定目的会社による特定資産の流動
      化に関する法律」により新しい社団法人として法制化され、同法は平成12年
      に改正されて「資産流動化に関する法律」と改称されています。

      近年では、投資ファンドが多数の投資家から資金を集めて運用する投資ス
      キームにおいても、匿名組合が使われてきました。

      商品ファンドや上記の債権流動化にあたって、匿名組合の機能が見直され
      ましたが、匿名組合は、本来的には多数の投資者を集めるための仕組みで
      はなく、匿名組合を利用した投資スキームにより、旧来の証券取引法の諸規
      定が潜脱(法令等による規制を、法令で禁止されている方法“以外”の方法
      により免れること。)されるという問題点がありました。

      そこで、証券取引法の改正と改称による金融商品取引法では、ファンドの持
      分(集団投資スキーム持分)は、民法上の組合、匿名組合、投資事業有限責
      任組合、有限責任事業組合といった法形式を問わず、組成が国内か海外か
      を問わず有価証券とみなされ、有価証券取引規制、たとえば不公正取引の
      禁止などが、ファンド持分に適用されることになりました。

   2.匿名組合契約の効力

    (1)内部関係

      匿名組合員は、契約に定めた出資の義務を負います。

      この出資は、金銭その他の財産出資に限られます。

      匿名組合員の出資はすべて営業者の財産に帰属します。

      匿名組合員は、営業に関与してその業務を執行する権利義務を有しません
      が、営業者の営業および財産の状況を検査し、また、重要な事由があるとき
      は、いつでも、裁判所の許可を得て、営業者の業務および財産の状況を検
      査することができます。

      なお、ここに、業務執行権を有しない社員の業務財産状況調査につき裁判
      所の許可を不要とした持分会社に関する改正との相違が生じています(持分
      会社の社員は原則として業務執行権を有しますが、匿名組合員は原則とし 
      て業務執行権を有しないとの制度上の差異が根拠として指摘されます。

                                        出所:web六法全書

      匿名組合員は営業者に対し、その営業から生じた利益の分配を請求する権
      利を有します。

      出資が損失によって減少したときは、その損失をてん補した後でなければ、
      匿名組合員は、利益の配当を請求することができません。

    (2)対外関係

      対外的には、匿名組合員は、営業に関与する権限を有せず、また営業者の
      行為につき、第三者に対して権利義務を有しません。

      しかし、匿名組合員がその氏・氏名を営業者の商号中に用い、またはその商
      号を営業者の商号として用いることを許諾したときは、その使用以後に生じ
      た債務については、営業者と連帯して責任を負います。

      ただし、第三者が悪意の場合には、匿名組合員は責任を負う必要はありま
      せん(通説)。

   3.匿名組合の終了

     匿名組合は、契約の一般終了原因のほか、次の特有の原因により終了します。

     すなわち、匿名組合契約をもってその存続期間を定めなかったとき、またはあ
     る当事者の終身間存続すべきことを定めたときは、各当事者は6カ月前の予
     告をもって営業年度の終わりに解約することができ、やむをえない事由がある
     ときは、各当事者はいつでも解約することができます。

     また、組合の目的たる事業が成功し、またはその成功が不能となった場合、営
     業者が死亡し、または後見開始の審判を受けた場合、営業者または匿名組合
     員が破産手続開始の決定を受けた場合には、匿名組合は当然終了します。

     なお、匿名組合が終了したときは、営業者は匿名組合員にその出資の価額を
     返還しなければなりません。

     ただし、出資が損失によって減少したときは、その残額を返還すれば足ります。

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