従業員の転籍

          

従業員の転籍

  ■転籍とは

   転籍とは、これまで在籍していた会社(以下、転籍元)との労働契約が終了し、異
   なる会社(以下、転籍先)との労働契約を締結して籍を移すことをいいます。

   転籍以外で籍を移す形態としては出向がありますが、出向は出向元に在籍して 
   社員としての地位を維持しながら、出向先にも在籍しその指揮命令の下で働くこ
   とをいいます。

   転籍と出向の違いを図で示すと次のようになります。

   転籍は、出向元と出向先の両方に在籍する出向と異なり、転籍元との労働契約
   が終了し、社員としての身分を失うことが最大の特徴です。

   また、転籍や出向を行うには社員の同意が必要ですが、出向が就業規則による
   過半数組合や労働者代表による包括的な同意でも行えるのに対して、転籍は個
   別の同意が必要となります。

   したがって、会社が一方的に転籍を命令することは認められません。

   具体的に転籍を行う状況としては次のようなケースが考えられます。

    ・企業間の個別の人事異動として行われる転籍

    ・事業の譲渡とともに労働契約が譲渡されることによる転籍

    ・部門を独立させて別会社にするなど企業組織再編に伴う転籍

   いずれのケースでも転籍には、社員の個別の同意が必要となりますが、会社分
   割という方法で行う場合は、分割会社の権利義務が労働契約も含めて承継会社
   に承継されるため、社員の個別の同意は必要ありません(この点については、会
   社分割に伴う転籍についての項で説明します)。

  □転籍における留意点

   1.同意について

     前述のとおり、社員を転籍させるには、本人の同意が必要です。

     口頭による同意でも有効ではありますが、無用なトラブルを避けるためにも、
     書面による同意書を作成しておいたほうが確実です。

     この場合、転籍元への退職届および転籍先の雇用契約書でも構いませんが、
     通常は、転籍元から転籍先に転籍を同意する旨、転籍先の労働条件をひとつ
     の書面に盛り込んで同意書を作成することが多いようです(書式例について
     は、次項を参考にしてください)。

     万が一、同意が得られなかった場合は、転籍をさせることはできません。

     また、そのことを理由に解雇することもできません。

   2.労働条件の変更について

     転籍に際して、転籍元と転籍先で労働条件が変更されることがあります。

     企業間の個別の人事異動として行われる転籍では、転籍元を退職し、転籍先
     との新たな雇用関係が生じるということですので、労働条件は変更されても不
     利益変更にはあたりません。

     ただし、事業譲渡や組織再編の場合は、転籍元の労働条件をそのまま転籍
     先に引き継ぐのが原則なので、転籍によって当然には労働条件を変更するこ
     とはできません。

     しかしながら、労働条件についても社員の同意を得ることで変更が行われるこ
     とが多いようです。

     すなわち、転籍および労働条件の変更の同意をとり、転籍先では新しい労働
     条件の下、雇用されることになります。

     いずれにせよ重要なのは、転籍先での労働条件を明示して十分に説明し、納
     得のうえで同意してもらうことです。

     この点をあいまいにしてしまうと、後日、「こんなはずではなかった」などと社員
     から取り消しを求められるといったトラブルに発展する可能性があります。

   3.退職金の扱いについて

     企業間の個別の人事異動として行われる転籍では、転籍元を退職する時点
     で、転籍元の退職金規定に基づいて退職金を支払うことになります。

     一方、事業譲渡や組織再編に伴う転籍では、転籍先を退職する際に、転籍元
     と転籍先の勤続年数を通算し、転籍先の退職金規定に基づいて、退職金を支
     払うことが多いようです。

     退職金の支払いについて、あいまいなままだと転籍の同意も得にくく、また、
     後日トラブルに発展することもあります。

     同意書や、転籍元と転籍先の間の契約書に記載するなどして明確化しておく
     ことが望まれます。

     なお、転籍への同意を得やすくするため、転籍一時金などの名称で、退職金
     の加算を行うケースが多くみられます。

  □書式例

   1.転籍に関する同意書

     転籍には対象者となる社員の同意が必要です。

     口頭でも有効ですが、後日のトラブルを避けるためにも書面にしておくことが
     重要です。

     次に転籍に関する同意書の書式例を記載します。

   2.転籍に関する契約書

     同意書を交わすだけでなく、転籍元と転籍先の会社間で、転籍に関する契約
     書を交わしておくと誤解やトラブルを防ぐことができます。

     次に契約書の書式例を記載します。

  □会社分割に伴う転籍について

   会社分割とは、株式会社または合同会社(分割会社)が、その事業に関して有す
   る権利義務の全部または一部を、分割後に他の会社(承継会社)または分割によ
   り設立する会社(設立会社)に承継させることをいいます。

   承継する会社が分割により新しく設立される場合を「新設分割」といい、既存の会
   社が承継する会社となる場合を「吸収分割」といいます。

   この会社分割という方法をとる場合には、分割契約書等に定めるところにより、分
   割会社から承継する会社に権利義務関係が包括的に承継されます。

   労働契約についても、そのまま承継されるので、分割される業務に主として従事
   する社員については、個別の同意なしに転籍させることができます。

   ただし、労働契約の承継については、労働者に与える影響が大きいため、労働者
   保護の観点から「会社分割に伴う労働契約の承継に関する法律」(労働契約承継
   法)が定められ、その取り扱いについて規定しています。

   労働契約承継法のおもな内容は次のとおりです。

   詳しくは、厚生労働省のサイト

    「会社分割に伴う労働契約の承継に関する法律(労働契約承継法)の概要

   をご参照ください。
 

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