福利厚生のあり方

          

福利厚生のあり方

  ■福利厚生のあり方を考える

   多くの社長は福利厚生について「世間並みの水準」を確保していれば十分という
   認識であり、さまざまなほかの経営課題と比べると優先順位が低いのです。

   しかしながら、社員の福利厚生への関心は社長が思っているよりもずっと高いの
   が現実です。

   場合によっては自社の福利厚生への不満がきっかけとなって、優秀な社員が転
   職してしまうケースもあるのです。

   ここでは、魅力ある福利厚生制度を「本気で」考えるためのポイントについて解説
   します。

   1.福利厚生の本当の目的

    そもそも福利厚生とは、給与とは別に会社が社員やその家族の生活向上を目
    的として設ける諸制度のことです。

    社員の側からみれば「本来の給与のほかに会社から受ける利益」ということに
    なります。

    福利厚生には、法律によって企業に実施が義務づけられている、社会保険など
    の「法定福利」と、住宅手当など会社の裁量に任されている「法定外福利」の2
    種類があります。

    ここでは、法定外福利厚生制度について考えていきます。

    なぜ、会社は限られた収益のなかから、給与以外に福利厚生という形で社員に
    利益を与えるかといえば、そのおもな目的は、

     ・既存の優秀な社員の流出を抑制する

     ・優秀な社長の採用を促進する

    ことにあるのは明白です。

    もちろん、社員とその家族に「もっと幸せになってほしい」というシンプルな気持
    ちから福利厚生を捉えることも大切ですが、それだけでは「できたらいいな」とい
    う願望でとどまってしまう可能性もあります。

    魅力ある福利厚生制度づくりは、自社の将来を託す人材を確保するための方
    策であり、人材戦略の重要な課題のひとつとして、社長自身が「本気で」考える
    必要があるのです。

    世間並みの制度をつくっておけば十分ということではありません。 

    また、福利厚生制度の運用には当然ながら資金が必要です。

    会社資金の使用に当たっては、そのすべてにおいて目的が明確になっていなけ
    ればなりません。

    「方針なき福利厚生」、「何となくやっている福利厚生」は会社資金の無駄遣いと
    も考えられるのです。

   2.他企業の水準を確認する

    自社の福利厚生制度の充実を考える前に、まず世の中の会社が、「どのくらい
    の金額」を「何に対して」福利厚生費として使っているのかを確認してみましょう。

    (1)金額

      (社)日本経済団体連合会(経団連)の「福利厚生費調査結果報告 2018年
      度」によると、従業員規模別の法定外福利厚生費は次のようになっています。

      同調査結果によると、従業員1人1カ月当たりの法定外福利厚生費は、回答      
      企業全体平均で、2万3452円となっています。

      また、従業員規模別にみると、会社規模が大きくなるにつれて金額が高く
      なっているのがわかります。

      大企業になればなるほど充実した福利厚生を実施できる資金的余裕がある
      ことが読み取れます。

      ただし、もっとも金額が低い500人未満の会社でも、従業員1人1カ月当たり
      1万7880円、年間で約21万円の福利厚生費を掛けています。

      決して少ない金額ではありません。

    (2)内訳

      次に費用の内訳(全回答企業平均)をみると、もっとも金額が高いのは、住
      宅、持家援助などの「住宅関連」であり、全体の約半分を占めています。

      次いで給食、保険、財産形成などの「ライフサポート」、「医療・健康」、「文化・
      体育・レクリエーション」などが多くなっています。

      もっとも金額の高い「住宅関連」では、回答企業全体の平均で1カ月当たり1
      万1436円、年間で約13.7万円の費用を掛けていることがわかります。

      ここまで紹介した各種のデータは、あくまで一般的な会社の福利厚生の状況      
      であり、必ずしもそれをめざす必要はありません。

      ただし、「世の中の会社は、優秀な社員の流出を抑制するため、そして、優
      秀な社員の採用を促進するために、このようなことをしている」という認識は
      もっておくべきでしょう。

  □福利厚生充実のためのステップ

   自社の福利厚生制度の充実を図る際には、次のようなステップで進めるのが効
   果的です。

    1.社長自身が重要度を認識し宣言する(ステップ1)

    2.求めている人材像に適した充実策を検討する(ステップ2)

    3.社員へのアンケート調査を行う(ステップ3)

    4.新しい福利厚生制度を設計する(ステップ4)

   まずは社長自身が福利厚生について「本気で」考えることから始めましょう。

   1.社長自身が重要度を認識し宣言する(ステップ1)

    冒頭で述べたように福利厚生制度の充実は、将来の自社を託す人材を確保す
    るための方策であり、人材戦略の重要な課題のひとつです。

    もちろん社長自身が細かい制度設計などをする必要はありません。

    しかし、少なくとも方針決定や基本的な枠組みづくりは社長主導で進めるべきで
    しょう。

    そして、自分が自社の福利厚生に対して真剣に考えていることを社員に宣言す
    ることが大切です。

    通常、社員は自社の福利厚生に不満をもっていても、なかなかそれを口にする
    ことはできません。

    そんなことを言えば「その前にもっとしっかり働け」と怒られると思っているからです。

    社長自身が重要性を感じていることをきちんと示すことで、社員も福利厚生制度
    の充実に向けた提案をしやすくなります。

   2.求めている人材像に適した充実策を検討する(ステップ2)

    限られた経営資源のなかで魅力ある福利厚生制度を設計するためには、まず
    は「どんな人たち」にとって魅力的にするのかを考える必要があります。

    そして、ここでいう「どんな人たち」というのは、当然ながら「自社が求めている人
    材」(ターゲット層)ということになります。

    優先的に充実すべき、ターゲット別の福利厚生としては、たとえば、以下のよう
    な内容が考えられます。

    また、看護師など女性が多い職場では、「育児支援」に関する福利厚生に特に
    力を入れています。

    多くの看護師は仕事に慣れた頃に出産・育児の時期を迎えます。

    その際に退職せずに働き続けられるように、各病医院は充実した保育環境を提
    供することで看護師の流出防止を図っています。

   3.社員へのアンケート調査を行う(ステップ3)

    魅力ある福利厚生制度を設計するためには、社員向けのアンケートを行い、ど
    のような層の社員が、どのような福利厚生を希望しているのかを把握することも
    有効です。

    また、アンケートを行うこと自体が、会社としての福利厚生制度の充実への積極
    性を示すことになります。

    アンケート項目としては次のような内容が考えられます。

    (1)回答者の属性

      年齢、勤続年数、既婚・未婚、持ち家の有無、子どもの有無(いる場合は数、
      年齢)。

    (2)現状の福利厚生制度の理解度

      現状の福利厚生制度を列挙して、それぞれの制度について存在自体を知っ
      ていたか、実際に利用したことがあるかどうかを質問します。

    (3)現状の福利厚生制度の満足度

      現状の福利厚生制度への満足度を5段階程度で評価してもらいます。

      なぜその点数をつけたかの理由についても記入欄を設けます。

    (4)充実してほしい制度

      今後、どのような福利厚生制度を充実してほしいと思うかを質問します。

      あらかじめ次のような項目を列挙しておき、3つ程度を選択させます。

      ステップ2で想定した「求めている人材像に適した充実策」についても選択妓
      に盛り込むことで、想定が正しかったかどうかも検証します。

       @家賃補助 A持ち家支援 B育児支援 C家族手当  D特別休暇付与

       E人間ドック  Fメンタルヘルス支援  G自己啓発支援  H介護支援

       I結締や出産の祝い金  など

   4.新しい福利厚生制度を設計する(ステップ4)

    アンケート結果も踏まえたうえで、新しい福利厚生制度を設計します。

    まずは限られた経営資源のなかでどの分野に重点をおくかを決めることから始
    めます。

    制度実行に当たって必要となる資金や手間などの現実的な問題も考慮しなが 
    ら、どの程度までなら実施可能なのかを検討します。

    そして、重点分野以外の制度についても、現状のままでよいのか、他社との比
    較上、一定程度は充実させるべきかなどを決めていきます。

  □新制度を運用・アピールする

   制度は策定するだけでは意味がありません。

   新しい制度を社員にきちんと説明して実際に活用しもらうこと、採用活動で自社の
   特徴としてアピールしていくことが大切です。

   1.福利厚生ガイドを作成する   

    新しい制度の概要・狙い・特徴などを社員に説明するためのガイドブックを作成
    します。

    社員の家族にも見てもらえるように冊子(紙べース)として配布するのが好まし
    いでしょう。

    わかりやすくするためには、たんに各制度の内容を羅列するのではなく、社員
    や家族のどんなニーズに応えられるのか、どんなときに使えるのかなどを具体
    的なケースごとにまとめることです。

    たとえば、育児支援に力を入れる場合は、出産から始まり、子どもの成長に応じ
    たどのような段階でどのような支援策があるのかを説明します。

    また、実際に活用するために必要な手続きなども詳しく示します。

    朝礼の場などで、ガイドブックを使った説明を行うことも有効でしょう。

   2.活用を促進する

    実際に制度が活用されるような「環境整備」も大切です。

    たとえば、「上司に休暇申請をしにくい雰囲気がある」部署では、長期休暇制度
    などは定着しづらいかもしれません。

    福利厚生制度は要件を満たす社員すべてを対象にしたものですので、部署に
    よって活用度合いが異なることは大きな問題です。

    部署ごとに福利厚生制度活用促進のための検討会を行うこと、上司が福利厚
    生制度への理解を深めること、社長は定期的に部署ごとの制度活用状況を確
    認することなどが大切です。

   3.採用活動で活用する

    募集広告や応募者への面談などにおいては、自社の福利厚生制度の特徴を十
    分に説明します。

    社内での実際の活用状況などをデータとして示すのもよいでしょう。

    「自社の福利厚生制度に込められた社員への思い」や、「社員が制度を使って
    いきいきと働き、プライベートも充実させている姿」をアピールします。

    応募者に渡す会社案内には、制度の内容を必ず盛り込むようにしましょう。

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