交際費等の基礎と課税措置への対応策
 

  ■交際費等に該当する費用

   「冗費」、「濫費」として社会的に批判を受けがちな交際費等は、税法では原則とし
   て課税されることになっており、税金を含めた実質の負担はかなり大きいものに
   なっています。

   交際費等はほかの費用との区分が難しいため、本来ほかの費用に計上すべきも
   のまで交際費等として計上されている場合があります。

   このような費用をきちんと交際費等と区別して、課税されないようにすることが、
   税金対策になります。

   まず、交際費等とは何かについて説明します。

   交際費等とは、

    得意先や仕入先、その他事業に関係ある者(※)に対して
    接待、慰安、贈答などの行為をするために支出する費用

   を指します。

   ※「その他事業に関係ある者」には、取引関係のある者だけでなく、その法人の
     役員、従業員、株主も含まれます。 


   交際費等に含まれる費用をあげてみます。

    ・来客を接待するための飲食費、手みやげ代

    ・取引先への餞別、見舞金、お祝いなど

    ・ゴルフの接待など、取引先との親睦費用

    ・取引先の担当者に対して、取引の謝礼として支払う金品

    ・会社の創立記念などの行事での交通費、宴会費、記念品代

    ・中元や歳暮の贈答費用

    ・特約店会議などに伴う宴会費

    ・得意先に対して景品付き販売を行った場合の景品費用

    ・得意先開拓や、特約店・代理店となるための運動費用

    ・新規出店に際し、周辺の商店や住民の同意を得るための運動費用

   もっとも、これらのすべてが交際費等に該当するわけではありません。

   たとえば、「会社の創立記念などの行事での費用」は、飲食などに係る費用が通
   常社内で行う場合と同程度で、社員のみを対象として行われた場合は、「福利厚
   生費」として扱われます。

   また、このほかにも交際費等に含まれないケースがあります。

   ほかの費用との区分について、詳しくは『交際費等とほかの費用との区分』の項
   で説明します。

  □交際費等への課税措置

   交際費等は、会社の事業活動に必要な経費支出です。

   しかし、「冗費」、「濫費」というイメージが強いことからもわかるように、飲食や遊
   興に使われることが多いため、法人税の計算では、原則として、支出した全額を
   必要経費として損金に算入できないと定められています。

   したがって、交際費等を支出した場合、その支出額に対して法人税等が課される
   ことになります。

   ただし、

    資本金または出資の額が1億円以下の中小企業については、政策的
    理由から、例外として、一定限度までの交際費等の支出については、
    損金に算入できる

   とされています。

   なお、支出した交際費等のうち、相手先の名前を明らかにしないもの(いわゆる使
   途秘匿金)については、特別な課税(その支出額の40%相当額を法人税に加算)
   が行われます。

   法人税等の実質税率は約30%ですから、資本金または出資の額が1億円超の
   企業において、100万円の交際費等の支出は実質的には130万円の負担となり
   ます。

   ただし、個人事業では、支出したことが取引の記録として残っており、業務の遂行
   上直接必要であったことが認められる交際費等は、全額を必要経費に算入する
   ことが認められています。

   また、交際費等とは別に、1人当たり5000円以下の飲食費(役職員の間の飲食
   費を除く)については、損金算入が認められます。

    経済産業省(P25)

     交際費課税の特例措置は、2018年度税制改正により、適用期限を
     2020年3月末まで延長 

   詳しい要件等は次項で説明します。

  □1人当たり5000円以下の飲食費

   1.1人当たり5000円以下の飲食費であるかどうかの判定

     交際費等の範囲から除かれる飲食費は、次の算式で計算した1人当たりの金
     額が5000円以下の費用が対象となります。

     個々の得意先が飲食店等においてそれぞれどの程度の飲食等を実際に行っ
     たかどうかにかかわらず、単純に当該飲食等に参加した人数で除して計算し
     た金額で判定することになります。

   2.1人当たりの飲食費が5000円を超えた場合

     交際費等の範囲から除かれる飲食費は、1人当たりの金額が5000円以下の
     費用それ自体が対象となることから、1人当たりの金額が5000円を超える費
     用については、その費用のうちその超える部分だけが交際費等に該当するも
     のではなく、その費用のすべてが交際費等に該当することになります。

     1人当たりの飲食費のうち5000円相当額を控除するというような方式ではあ
     りません。

   3.飲食等が複数にわたって行われた場合

     1次会と2次会など連続した飲食等の行為が行われた場合においても、それ
     ぞれの行為が単独で行われていると認められるとき(たとえば、まったく別の
     業態の飲食店等を利用しているときなど)には、それぞれの行為に係る飲食
     費ごとに1人当たり5000円以下かどうかの判定を行って差し支えありません。

     しかしながら、それら連続する飲食等が一体の行為であると認められるとき 
     (たとえば、実質的に同一の飲食店等で行われた飲食等であるにもかかわら
     ず、その飲食等のために要する費用として支出する金額を分割して支払って
     いると認められるときなど)には、その行為の全体に係る飲食費を基礎として1
     人当たり5000円以下であるかどうかの判定を行うことになります。

   4.「支出する金額」に係る消費税等の額の取り扱い

     飲食費が1人当たり5000円以下であるかどうかは、その飲食費を支出した法
     人の適用している税抜経理方式または税込経理方式に応じ、その適用方式
     により算定した金額に基づいて判定します。

     したがって、その「飲食等のために要する費用として支出する金額」に係る消
     費税等の額については、税込経理方式を適用している場合には当該支出す
     る金額に含まれ、税抜経理方式を適用している場合には当該支出する金額に
     含まれないこととなります。

   5.会議に際して、1人当たり5000円超の飲食費が生じた場合

     会議に際して、1人当たり5000円超の飲食費が生じた場合、交際費に該当す
     るものとして取り扱われるのでしょうか。

     交際費等に該当していた飲食費(社内飲食費を除きます)のうち1人当たり
     5000円以下のものを、一定の要件のもとで一律に交際費等の範囲から除外
     しています。

     したがって、従来から交際費等に該当しないとされている会議費等(会議に関
     連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要す
     る費用など)については、1人当たり5000円超のものであっても、その費用が
     通常要する費用として認められるものである限りにおいて、交際費等に該当し
     ないものとされます。

   6.保存書類への記載事項

     交際費等の範囲から1人当たり5000円以下の飲食費を除外する要件として、

      飲食等のために要する費用について「の飲食等に参加した得意先、
      仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびの関係」
      を記載する

     必要があります。

     これは、社内飲食費でないことを明らかにするためのものであり、飲食等を
     行った相手方である社外の得意先等に関する事項を、「○○会社・□□部、
     △△△△(氏名)、卸売先」というようにして記載する必要があります。

     なお、氏名の一部または全部が相当の理由があることにより明らかでないとき
     には、記載を省略して差し支えありません。

     したがって、通常の経理処理等に当たって把握していると思われる自己の役
     員や従業員等の氏名等まで記載を求めているものではない。

     では、一定の書類の保存要件としての記載事項について、注意すべき点には
     どのようなものがあるのでしょうか。

     記載に当たっては、原則として、相手方の名称や氏名のすべてが必要となり
     ますが、相手方の氏名について、その一部が不明の場合や多数参加したよう
     な場合には、その参加者が真正である限りにおいて、「○○会社・□□部、
     △△△△(氏名)部長ほか10名、卸売先」という表示であっても差し支えありま
     せん。

     また、その保存書類の様式は法定されているものではないので、記載事項を
     欠くものでなければ、適宜の様式で作成してよいとされます。

  □交際費等とほかの費用との区分

   交際費等には、さまざまな隣接費用があります。

   これまで交際費等として支出してきた経費を適切な隣接費用にすることで、税金
   対策ができます。

   隣接費用と交際費等との区分をみてみましょう。

   1.福利厚生費

     自社の従業員(親族を含む)に対して、慶弔禍福の際に、一定の基準にした 
     がって祝金や見舞金を支給する場合は、福利厚生費として取り扱われます。

     しかし、社外の者に対してこれらの金品を支出する場合は、次のように取り扱
     われることになります。

     (1)得意先など、社外の者に対して支出する場合

       得意先など、社外の事業関係者に対して支出する祝金・見舞金は、交際費
       等として取り扱われます。

       したがって、得意先の役員の葬儀に際して香典・花輪を供与した場合、そ
       の費用は交際費等とされます。

       なかには、「香典は、得意先ではなくその役員の親族に渡しているのに、な
       ぜ交際費等になるのだろう」と思う人もいることでしょう。

       しかし、税務上、その香典などの支出は、取引関係があったために支出し
       たとみなされるのです。

       ただし、

        事業上の関係ではなく、自社役員の個人的な関係から見舞金などが
        支払われた場合には、その役員に対する給与(賞与)とみなされます。

     (2)下請企業の従業員に対して支出する場合

       特約店のセールスマン(またはその親族など)の慶弔禍福や自社の工場な
       どにおいて、

        下請企業の従業員が業務の遂行に関連して災害を受けた場合
        などに、自社の従業員に準じて支払う見舞金などは、福利厚生費   

       として取り扱われます。

       また、一般的に福利厚生費と考えられている費用には、実際には交際費等
       に該当するものもあります。

       次のように、全社員が対象となっていなかったり、社外の人間が対象となっ
       ている場合、特別にお金をかけている行事などは、福利厚生費でなく、交
       際費等になるので注意が必要です。

        ・会社の行事で、社員だけでなく得意先も併せて招待した場合

        ・社員旅行であっても、「通常要する費用」以上のお金をかけた場合

        ・「役員だけ」など、特定の社員だけで新年会などを行った場合

   2.寄付金など

     その法人にとって功績の大きい役員が死亡した場合には、法人が主催して社
     葬を執り行うのが通例となっています。

     しかし、税務上、

      社葬費用が単純に損金とされるのは、死亡した役員の経歴、地位、
      法人の規模、そのほかの事情からみて、社葬を行うことが相当と
      認められる場合

     に限られています。

     もし、役員の死亡に際し、法人が社葬を行うことが妥当でないと判断された場
     合には、法人から遺族に対して贈与が行われたものとみなされ、寄付金に区
     分されることになります。

     この場合、遺族もその法人の役員であるならば、役員に対する給与(賞与)と
     されることになります。

     一方、利益を供与された遺族の側は、法人から贈与を受けたとみなされ、一
     時所得(または役員賞与)となります。

   3.旅費交通費

     (1)接待のための付随費用の範囲

       接待のために要した費用(交際費等)のうち、飲食費のほかに、得意先を
       送るためのタクシー代などの交通費や、店に支払うチップなども交際費等
       に含まれます。

       また、出張旅費が交際費等とみなされる場合もあります。

       たとえば、得意先などを温泉地に招待して接待する場合、社員が温泉地ま
       で出かけることになります。

       このような場合、税務上の交際費等の取り扱いから考えて、

        得意先を接待するためだけに出張するとみなされた場合、
        その出張旅費は交際費等に該当する

       ことになります。

       このようなケースに該当する場合は、海外旅行であっても、渡航旅費や
       宿泊費が同様に交際費等として取り扱われます。

     (2)祝賀会などに出席する場合の交通費

       法人の役員などが祝賀会に出席する場合、持参する祝金は交際費等に該
       当します。

       しかし旅費などについては、出席者は接待を受ける立場であることから、一
       般の業務と同様に、旅費交通費として取り扱い、交際費等には当たらない
       とされています。

   4.会議費

     得意先との商談の後、打ち上げと称して会食などを行う場合、

      通常会議を行う場所で、昼食程度の飲食物を供与する場合は会議費

     とされ、「昼食程度」の範囲を超える部分は交際費等となります。

     「昼食程度」の範囲は、おおむね1人当たり3000円程度といわれています。

     なお、アルコールが提供された食事は昼食として認められないというわけでは
     ありません。

     ビール1本程度ならば、会議費として認められます。

     また、旅行や観劇などに招待し、併せて新製品の説明などの会議を開催した
     場合は、会議に通常要する費用を会議費とすることができます。

   5.販売促進費

     ここでは、販売促進費と交際費等を区分するポイントを4つあげます。

      ①売上高、売掛金の回収高に比例して(または売り上げの一定額ごとに)、
       得意先に金銭や事業用資産、少額物品(※)を供与する場合は、その
       費用を売上割戻として販売促進費に含めることができます。

      ②売上割戻を上記で定めた形で支払わず、高額な物品を供与、または
       旅行等に招待する場合は、売上割戻と同様の基準で計算されていても、
       交際費等として取り扱われます。

      ③商品券など、引換商品の種類が特定されていない物品を供与する
       場合は、購入単価が3000円以下であっても交際費等となります。

      ④得意先に対する売上割戻として計算されたものであっても、その額を
       支払わずに積み立て、積立金が一定額に達したときに得意先を旅行
       等に招待する場合は、その招待等を行った事業年度の交際費等と
       なります。

      ※事業用資産とは、得意先で棚卸資産(または固定資産)として販売(使用)する
        ことが明らかな物品を指します。また、少額物品とは、その購入単価がおおむ
        ね3000円以下である物品を指します。


   6.広告宣伝費

     ここでは、広告宣伝費と交際費等を区別するポイントを3つあげます。

      ①宣伝を目的として、不特定多数の一般消費者を対象に金品を交付
       する場合は、広告宣伝費とされます。これに対し、取引先など特定の
       者に対して、おもに贈答、謝礼の目的で金品を交付する場合は、交際
       費等として取り扱われます。

      ②得意先などに対する贈答であっても、カレンダー、手帳、扇子、うちわ、
       小額の金券(クオカードなど)を贈答するために通常要する費用は少額
       広告宣伝費となり、交際費等には該当しません。

      ③得意先など、特定の者に対して景品付き販売を行う場合、その景品
       費用は原則として交際費等となります。ただし、その景品などの物品が
       少額物品や事業用資産に該当し、かつ、その物品の種類、金額などを
       交付する側で確認できる場合には、広告宣伝費(景品費)として取り扱う
       ことができます。

  □交際費等の削減例

   ここでは、交際費等を隣接費用に転換させた事例を3つ紹介します。

    例1:広告主伝費に転換

       A社は、毎年取引先を観劇や旅行に招待していたが、今年から広告宣伝用
       の自動車を交付することにした。その結果、交際費等から広告宣伝費に転
       換され、交際費等としては課税されなかった。

       車体の大部分に一定の色彩を塗装して、広告宣伝を目的としていることが
       明らかな自動車を贈与した場合、その広告宣伝用自動車の取得費用を繰
       延資産に計上したうえで、一定期間(その資産の法定耐用年数の7割、た
       だし最長5年)内に全額を償却することができます。

       たとえば、ある電器メーカーが自社のステレオの宣伝を車に表示し、その
       車を取引のある会社に贈与した場合、「自社製品(ステレオ)を宣伝してい
       る」ということになります。

    例2:売上割戻に転換

       B杜は、得意先に商品券を配布していたが、今年から売上割戻規定にした
       がって、金銭を交付することにした。その結果、交際費等から売上割戻に
       転換され、全額を損金に算入することができるようになった。

       製造業者または卸売業者が、その販売した商品などの販売業者に対し、そ
       の売上高もしくは売掛金の回収高に比例して、または、売上高の一定額ご
       とに支出する金銭や事業用資産の価額は、交際費等として取り扱わないこ
       とになっています。

        ・売上高もしくは売掛金の回収高に比例して、または売上高の一定額
         ごとに支出する金銭は、売上割戻とする

        ・販売量に応じて、一定の割増率により支給する商品は、その販売した
         商品を含めたところで販売したものとする

       なお、売上割戻は営業地域の特殊性や協力度合を加味して支給すること
       もできますが、明確な基準がない場合には、交際費等とされることになります。

       したがって、恣意的でないことを立証するために、「売上割戻規定」を作成
       しておく必要があるでしょう。

    例3:旅費交通費、会議費に転換

       C社は、毎年取引先を温泉旅行に招待していたが、今年から、特定の取引
       先の社長をC社の相談役として受け入れ、温泉旅行ではなく、相談役会議
       を開催することにした。その結果、これまで交際費等として処理していた経
       費支出の一部が旅費交通費、会議費に転換され、損金に算入することが
       できるようになった。

       ある得意先の社長を日本各地から熱海に呼び寄せ、宴会を開催したとします。

       通常ならば、これに要した一切の費用は、交際費等に該当することになり
       ます。

       しかし、その得意先の社長が自社の相談役であったらどうでしょうか。

       熱海に集まった主たる目的が、宴会ではなく相談役会議にあるとすれば、
       相談役を呼ぶための航空券代やホテル代は旅費交通費として処理するこ
       とができます。

       この場合、相談役会議が会議としての実態を備えていることはもちろん、相
       談役に就任してもらうことに相当の理由があることが前提となります。

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