顧客満足向上のポイント
 

  ■顧客満足発生のメカニズム

   多くの企業では顧客満足度向上を最重要課題のひとつとして捉えています。

   そのためにさまざまな施策に取り組んでいる企業も多いでしょう。

   顧客満足度を着実に向上させ、それを実際の業績拡大につなげていくためには、
   漫然と取り組むのではなく、「どうすれば効率的に満足度を上げることができるの
   か」、「そもそも何のために満足度向上を図るのか」といった合理的・目的的な視
   点が必要になります。

   ここでは、顧客満足度向上の具体的なポイントについて解説します。

   1.顧客満足の源泉

     顧客満足度とはその言葉通り、顧客が自社の商品やサービスを購入し、実際
     に使用してみて満足できたかどうかを示す尺度です。

     そして、顧客が「満足した」という感情をもつためには、使用後の評価が購買時
     の事前期待以上であることが基本的な条件になります。

     前記の図で「①事前期待>評価」のときには、期待以下の満足感しか得られ
     なかったわけですから、「裏切られた」という不満が発生します。

     「②事前期待=評価」では、期待通りですから一定の満足感はあるでしょう。

     そして、「③事前期待<評価」では予期せぬ満足も発生し、顧客に大きな満足
     感を与えることになります。

     このように顧客満足を得るためには、最低でも「②事前期待=評価」の状態が
     必要であり、さらに満足度を向上させるためには「③事前期待<評価」をめざ
     すことが求められます。

   2.高まる事前期待に応えていく

     ここで注意すべきは、顧客の事前期待は時間と共に自然と高まっていくという
     ことです。

     たとえば、80点の事前期待をもっている顧客に対して90点の商品を提供した
     場合、事前期待以上ですから最初は顧客も満足してくれるでしょう。

     しかし時間がたつにつれて、顧客にとって90点の商品はもはや当たり前にな
     り、事前期待そのものが90点に高まっていきます。

     ここでさらに顧客満足度を高めるためには100点の商品を投入する以外あり
     ません。

     そして、さらに時間がたてば顧客満足度向上のためには、110点、120点の
     商品が求められることになります。

     これは非常に大変なことではありますが、高まり続ける顧客の要求水準を上
     回る商品を提供し続けることは、競合企業との決定的な差別化要因になります。

     たとえば、A、B、Cの3つの競合する飲食店があって、ある顧客がたまたま訪
     れたB店で大きな満足度を得た場合、その顧客は次もB店に行きたいと考えます。

     そして、実際にまたB店に来店して事前期待を上回る料理やサービスが提供
     され続ければ、その顧客に「食事をするなら絶対にB店」という気持ちが生まれ
     ます。

     たとえA店、C店が強力な販促策を打ち出したとしても、この顧客の気持ちは
     簡単には揺らぎません。

     ここまでみてきたように顧客満足度を向上させていくための基本的な要件は、

      ・顧客の事前期待以上の評価を得られる商品を提供すること

      ・競合企業を上回る事前期待をもってもらうこと

     にあるといえるでしょう。

  □顧客の事前期待を理解する

   1.期待事項に沿った改善が不可欠

     顧客満足度を向上させるための基本は、顧客の事前期待を正しく理解するこ
     とです。

     この部分が明確になっていないと、商品やサービスの品質をどのような方向
     性で改善していけばよいのかがわかりません。

     満足度向上につながらない部分に注力することは単なる自己満足であり、収
     益圧迫要因にしかなりません。

     たとえば、飛行機のエコノミークラスとビジネスクラスの客がもっている事前期
     待に大きな違いがあることは容易に想像できます。

     前者は「目的地までできるだけ安く到着する」という経済性にもっとも大きな期
     待をもっています。

     もちろん快適であるに越したことはありませんが、そのために運賃が高くなるこ
     とには納得してくれません。

     逆に快適さを意識したサービスを前面に出しすぎると、「その分を削ってもっと
     運賃を安くしてくれ」という感情をもつかもしれません。

     これに対しビジネスクラスの客がもっている最大の期待は「目的地まで快適に
     過ごす」ことであり、より快適に過ごせるのであれば運賃が多少上がっても構
     わないと考えています。

     つまりエコノミークラスの客を対象にした顧客満足度向上の最大のポイントは
     「経済性」であり、ビジネスクラスのそれは「快適性」ということになります。

     同様に機能性が重視されるビジネスホテルのロビーに、高価な絵画を飾ること
     などは顧客からみればまったく無駄なサービスであり、満足度も高まりません。

   2.事前期待を階層化する

     では実際にどのような視点で、雇客の事前期待を捉えてそれに応える商品や
     サービスを強化していくべきなのでしょうか。

     顧客の事前期待は3つの階層に分解することで理解しやすくなります。

     (1)ベースとなる期待

       自社が提供している商品やサービスに対する顧客のもっとも基本的な期待
       です。

       飲食業であれば安全な食べ物を提供してくれること、製造業であれば仕様
       書通りの製品を納品してくれること、運送業であれば目的地まで確実に荷
       物を届けてくれることなどがそれに該当します。

       いずれも「当たり前」の話ですが、会社側の手抜きや不注意でこの部分を
       維持できていないケースもあります。

       実際に食品会社が産地を偽装したり、消費期限をごまかすといった事件は
       今も起こっています。

       また、基本的な部分であるがゆえに、社長は「全社員が当然できているだ
       ろう」と考えて、大きな問題に発展するまで気づかない可能性もあります。

       自社が「○○業」と名乗るにふさわしい商品やサービスを提供できているか
       については、つねに確認しておく必要があります。

     (2)自社の強みに対する期待

       次にあげられるのが、競合他社に比べて自社が優れていると顧客が考え
       ていることによる期待です。

       たとえば、「競合に比べて短納期で対応できること」を強みとしている製造
       業者に対しては、顧客は当然ながらその強みを期待して注文します。

       ここで実際に短納期対応ができれば、顧客は満足しますし、逆に競合他社
       と同レベルの日数がかかってしまえば、大きな不満を招きます。

       自社の強みを打ち出すことは顧客への宣伝であり、顧客との約束でもあり
       ます。

       自社が打ち出している強みに見合う商品・サービスを提供できているかどう
       かについての確認が大切です。

       また、前述のように顧客は時間経過と共に、より高い事前期待をもつように
       なります。それに応えていくためには強みに磨きをかけていくことが必要に
       なります。

     (3)個別対応に対する期待

       顧客は自分に対する個別対応も期待しています。

       標準的な商品やサービスを提供してくれるだけではなく、自分自身に何をし
       てくれるかという期待です。

       自分の抱える個別具体的な問題を解決してくれることへの期待と言い換え
       ることもできます。

       個別対応に関する期待はさらに、「①自分の特性に対応してくれる期待」と
       「②自分の状況変化に対応してくれる期待」に分けることができます。

       まず、「①自分の特性に対応してくれる期待」です。

       たとえば、飲食店の常連客のなかには特定の食材を苦手としていたり、肉
       の焼き加減にこだわる人もいます。

       このようなお客様に対して、店側が「Aさんはガーリックが苦手で、肉はウエ
       ルダンが好き」ということをわかっていれば、顧客からいちいち頼まれなくて
       も、顧客の特性に応じてアレンジした料理を提供することができます。

       顧客は「この店は自分のことを理解してそれに応じた対応をしてくれてい
       る」という満足感をもちます。

       たんにガーリック抜きのメニューも選択肢としてあるということではなく、黙っ
       ていても顧客の好みに応じた料理が自動的に提供されるというのがポイン
       トです。

       次に、「②自分の状況変化に対応してくれる期待」です。

       たとえば、通常は「100個の部品を2週間で納品している」顧客から、事情
       があって「200個の部品を1週間で納品してほしい」という依頼があったとし
       ます。

       顧客は無茶な注文であることは自覚していますが、「緊急事態であり何とか
       してほしい」という期待をもっています。

       このような期待に何とかして応えようという姿勢をみせること、そして、実際
       にできるだけ雇客の要望に近い形で納品することで、顧客満足度は大きく
       上がります。

       「あの会社はどんなときでも頼りになるパートナーである」という信頼感を勝
       ち得ることができるのです。

       ただし、特に「②自分の状況変化に対応してくれる期待」に十分に応えるた
       めには、会社側に求められる負担も大きくなります。

       次項で紹介するように特に注力すべき顧客の重要度を見極めることなどが
       必要になります。

  □組織的な顧客満足度向上活動

   顧客満足度向上活動は特定の社員が自主的に取り組んで、結果として全社の満
   足度が上がっていくという流れではなく、会社全体として「どのような目標に向かっ 
   て」、「いつまでに」、「どのように」改善していくかという計画的な取り組みが必要
   になります。

   1.顧客を分類する

     一般に既存顧客は「ロイヤルユーザー」、「リピーター」、「トライアルユーザー」
     に分けることができます。

     そして、それぞれの層に対して効果的かつ効率的な満足度向上策を講じるこ
     とで、「ロイヤルユーザー」の数を増やしていくことが顧客満足度向上活動の
     最終的な目標となります。

     それによって、

      ・ロイヤルユーザーからの安定受注が拡大する

      ・ロイヤルユーザーからの紹介による新規顧客を獲得する

      ・顧客満足度を高める活動を通じて自社の経営力を高める

     ことなどが可能になります。

     「ロイヤルユーザー」

     …多数の購買履歴があり自社に対して十分な信頼をもっている。自社の対応
       に余程の不手際がない限り、競合他社へ乗り換えることはない。

     「リピートユーザー」

     …2回以上の購買履歴がある。自社に対して一応の評価はしているが、ロイ
       ヤルユーザーほどの信頼感はもっていない。

     「トライアルユーザー」

     …自社から1何だけ購入したことがある。リピートオーダーするか迷っている、
       あるいはリピートせずに他社に乗り換えた。

     「見込み客」

     …自社に関心があるが、まだ利用したことがない。

     「潜在顧客」

     …自社を知らない、あるいは関心がない未利用客。

    このように自社の顧客を分類し、

     ・ロイヤルユーザーやリピートユーザーをいつまでに何社増やすかを決める

     ・そのためにどのような施策を展開するかを計画する

    ことが顧客満足度向上施策の根幹になります。

   2.顧客層分類に応じた施策を検討する

     自社の顧客を分類できたら、それぞれの層に向けどのような満足度向上施策
     を展開していくかを検討します。

     その際には前項で示した、顧客が自社に対してもっている「(1)べースとなる
     期待」、「(2)自社の強みに対する期待」、「(3)個別対応に対する期待」に分
     けて、顧客は具体的にどのような事前期待をもっているか、それに対して十分
     な対応ができているかどうかを考えます。

     そのうえで、満足度向上のためにそれぞれの顧客層に対してどのような施策
     を展開するのかを検討していきます。

     本来であればすべての層の顧客に対して◎の対応をすることが好ましいので
     すが、たとえば、「③個別対応に対する期待」への対応について、トライアル
     ユーザーにまで万全を期していくことは企業にとって大きな負担になります。

     そこで、絶対に手放してはならないロイヤルユーザーに対しては手厚く接する
     など顧客層に合わせて施策に強弱をつけていくことが大切になります。

     ただし、トライアルユーザーのなかでも会社の規模や成長性などから判断し
     て、将来的に特に重要になると考えられる顧客に対しては、早い段階から特
     別な対応をしていくことが求められます。

   3.部門計画・個人計画に落とし込む

     ここまでの段階で自社の顧客満足度向上に対する基本方針が明らかになった
     ことになります。

     これを全社員に徹底させるために、現在抱えている顧客に対して具体的にど
     のような活動を行っていくかを計画させます。

     その際には、「自分が担当しているAという雇客は現在リピートユーザーの段
     階であり、これを3カ月後にロイヤルユーザーにするためにこのような施策
     を行う」ということを個人レベルまで徹底させます。

     たんなる努力目標として、「日々の活動によって満足度を向上させていく」とい
     う漠然としたスタンスではなく、「いつまでにどのような施策でステップアップさ
     せる」ということを計画として明確に意識させることが大切です。
 

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