フィードバック面談
 

  ■フィードバック面談の進め方

   フィードバック面談とは人事考課の結果などを、考課者(上司)が被考課者(部下)
   に対して説明するための面談です。

   部下にとっては自分の長所や短所を確認できる絶好の機会であり、上司にとって
   も、部下のモチベーションアップや能力開発を図るための非常に有効な手段とい
   えます。

   1.「下り」のプロセスは軽視されがち

     人事考課制度を導入している会社では、期末時点でまずは社員が自己評価
     を行い、直属の上長による一時評価など何段階かの評価を経たうえで、社長
     が最終的な評価を決定しています。

     そして、多くの会社では自己評価から最終評価までの「上り」のプロセスには
     多大な手間をかけています。

     しかしながら、最終結果が出た後に、それを本人に戻すまでの「下り」のプロセ
     スについては、十分な注意を払っている会社は少ないようです。

     会社として、社員の来期の処遇を決めるためには、「人事考課結果」を出す必
     要があります。

     そして、その精度をできるだけ上げるために、多段階の評価も行います。

     しかし、いったん結果が出てしまえば、それを賃金などに自動的に反映させて
     人事考課は終了としているのです。

     これでは社員本人は自分が会社からどのように評価されているのかを、賃金 
     の増減などのわずかな情報からしか推測することができません。

     自己評価が正しかったのかどうかもわかりません。

   2.フィードバック面談のおもな目的

     そこで重要になってくるのが、人事考課の「下り」のプロセスの柱ともいえる
     フィードバック面談です。

     適切なフィードバック面談を行うことで、初めて「双方向の人事考課」が実現す
     るのです。

     フィードバック面談のおもな目的を整理すると以下のようになります。

     (1)最終的な人事考課結果を納得させる

       たんに最終評価の結果を伝えるだけではなく、評価基準と照らし合わせな
       がら丁寧に説明します。

       自己評価と最終評価に差異がある場合は、その理由についてもきちんと理
       解してもらうようにします。

       また、総合評価だけではなく、評価項目ごとの内訳も明確にします。

       会社として厳正な評価をした結果であることを納得してもらうことが大切です。

     (2)改善すべき点や期待事項を共有する

       人事考課によって明らかになった、部下の改善すべき事項について明確に
       します。

       本人が気付いていない欠点についても指摘して、行動修正を促します。

       また、さらに伸ばしてほしい能力、達成してほしい業績など、上司として部
       下に期待している事項を明確に示します。

     (3)モチベーションを高める

       面談は部下のモチベーションを高める場でもあります。

       評価結果を淡々と説明するだけでは、部下の心は動きません。

       また、部下の欠点を感情的に叱責するような姿勢も慎まなければなりません。

       上司はつねに部下の気持ちを汲み取りながら話を進めます。

       部下からの質問に対しても丁寧に答えて、最後は部下に本心から「頑張り
       ます」と言ってもらわなければなりません。

   3.上司教育の場でもある

     フィードバック面談の目的として見落とされがちなのが、「上司の職務遂行とマ
     ネジメント力向上」です。

     つまり、フィードバック面談を行うことは、部下のためだけではなく、上司のため
     でもあるのです。

     上司は当然ながら「部下育成」という職務を負っています。

     そして、高いレベルでその職務を遂行していくためには上司自身のマネジメン
     ト力を磨いていかなければなりません。

     フィードバック面談は部下育成のために不可欠であり、上司がそれを怠ること
     は職務放棄と見なされます。

     また、効果的なフィードバック面談を行うためには、上司は部下の成長と真剣
     に向き合わなければなりません。

     周到な準備や話し方・聞き方などのトレーニングも必要です。

     このようにフィードバック面談は上司のマネジメント力を向上させる格好の場と
     もなるのです。

     社長は、フィードバック面談を通じて、上司自身がどのように成長しているかに
     ついても、確認する必要があります。

   4.こまめな実施が効果的

     ここまでみてきたように、フィードバック面談はたんなる評価結果の「伝達」では
     なく、部下と上司双方の成長を促します。

     期末に1回のみ行うのではなく、よりこまめに行うことが望まれます。

     少なくとも半期に1回、できれば四半期に1回の実施を検討しましょう。

     たとえば、3月決算の会社であれば、次のようなスケジュールが考えられます。

     第1四半期と第3四半期に行う面談は、特に「考課」を意識するのではなく、期
     初に立てた業績目標や能力開発の進捗管理を目的とした簡易面談で構いません。

     日常的なマネジメントのなかでも「個々の業務」の進捗管理は行われているは
     ずですが、フィードバック面談ではあくまで「年間の業績目標全体」、「年間の
     能力開発計画全体」に対する進捗を確落することが目的です。

     半期面談では目標の進捗確認に加えて、実際の人事考課基準を使った上長
     による半期評価結果も踏まえた内容にします。

     つまり、上半期のままのペースで行けば、期末の正式考課結果はこの程度に
     なりそうだという見込みを示すのです。

     芳しくない結果が出そうな場合は、下半期に向けての具体的な改善方法を指
     導することになります。

     期末面談においては、最終的な人事考課結果も踏まえ、能力開発と動機づけ
     を行います。

     具休的な進め方については次項に紹介します。

  □面談の進め方

   期末のフィードバック面談は基本的に次のような手順で進めます(それ以外の時
   期の面談では、考課結果の説明を省略して進めます)。

   面談場所については落ち着けるクローズな空間を準備します。

   面談時間については一人につき30分程度は確保します。

   効果的・効率的な面談を行うためには、話すべきポイントの整理、進め方の設計
   など十分な事前準備が必要です。

   1.事前準備

     (1)人事考課結果の確認・理解

       一般的に人事考課は、本人が「人事考課シート」に自己評価を記入し、直
       属の上長による一次評価、部長クラスによる二次評価などが加えられ、社
       長が最終評価を行うという流れで進められます。

       上長は最終評価まで記載された人事考課シートの内容を事前に確認する
       ことが不可欠となります。

       特に自分の行った一次評価の結果について、二次評価以降に修正が加え
       られている場合には、その理由を理解しておく必要があります。

       フィードバック面談はあくまで最終評価に基づいて行うものであり、上長自
       身が納得できていなければ、部下に説明することはできません。

       どうしても腑に落ちない場合は、上位の評価者から評価修正に関する説明
       を聞く必要もあるでしょう。

     (2)「面談設計書」の作成

       人事考課シートの記載内容を確認したうえで、面談の進め方や部下に話す
       べき事項を整理するための「面談設計書」を作成します。

       記載すべき事項は次のとおりです。

       部下に対して「このように育ってほしい」という希望ではなく、「自分(上司)
       がこのように育てていく」という主体的な意思(計画)を記載します。

   2.導入(アイスブレイク)・趣旨説明

     あいさつの後、前述のアイスブレイクフレーズを使って、面談の雰囲気を整え
     ます。

     そして、当日の面談の趣旨・進め方・時間配分などについて説明します。

     たんに人事考課の結果を理解してもらうだけではなく、

      「あなたの成長について一緒に考える場にしたい」という点を強調します。

     趣旨説明の後に、最終評価まで記載されている人事考課シートを部下に渡し
     ます。

   3.部下による自己評価説明

     人事考課シートに従って、部下から自己評価の結果および根拠、今期の活動
     全般を通じた総括についての説明を聞きます。

     その際は、相づちを打つなどして、自分が相手の話をきちんと聞いていること
     が伝わるように心掛けます。

     さらに話の内容だけではなく、声のトーン、表情、しぐさなどから相手の感情を
     読み取ります。

   4.人事考課結果の伝達と説明

     上司の側から最終評価の結果とその根拠について説明します。

     自己評価と最終評価に差異がある場合は、その理由をきちんと伝え、全社共
     通の評価基準に従った公平・公正な評価結果であることを理解してもらう必要
     があります。

     部下の反応を観察して、納得できていないと思われる部分はどこかを探りなが
     ら説明します。

   5.意見交換による合意形成

     最終評価について部下がどのように受け止めたかを質問します。

     このとき上司が威圧的な聞き方、投げやりな聞き方をすれば、部下は「この人
     に言っても仕方ない」と心を閉ざしてしまいます。

     自己評価よりも低い最終評価に対して、すぐに納得する部下はまずいません。

     何かしらの不満は感じているはずです。

     部下からの不満が一切出ないフィードバック面談はむしろ失敗です。

     不満を引き出したうえで、それを解消するのが上司の役割であり、本当のマネ
     ジメント力が試される場面でもあります。

     部下には納得がいかない点について、そう思う理由をあげてもらいます。

     その理由について頭ごなしに否定するのではなく、いったんは「そういう見方も
     あるね」と受け入れます。

     そのうえで、「ただし、君の○○の件に対する行動をみると……」、「全社的な評
     価基準に照らし合わせて考えると……」という具合に最終的な評価に至った合
     理的な根拠を説明します。

     この説明をスムーズに行うためにも事前準備の段階で、部下の最終評価に対
     して上司がきちんと理解しておくことが大切です。

     十分な意見交換をしても、部下の不満の一部は解消されないこともあります。

     しかし、その場合でも「次回からはこのように評価する(評価される)」という今
     後に向けた合意は形成できます。

     面談前と比較すれば、部下との相互理解は大きく進んでいるはずです。

   6.目標設定

     評価結果に対する合意形成ができたら、それを踏まえた今後の目標について
     設定していきます。

     その際には、部下の成長の志向性(マネジメント志向・専門志向など)につい
     ても確認したうえで、「3年後までに職能資格等級を2等級上げる」、「5年後に
     課長になる」など、できるだけ具体的な将来像を描きます。

     また、そこに至るまでのマイルストーンも設計します。

     事前に面談設計書で部下の育成方針・育成方法について自分(上司)の考え
     方をまとめておくことが大切です。

     そして、来期については、より詳細な業績計画や能力開発計画を策定します。

     たんに「専門知識を向上させる」といったスローガンではなく、「何を、どれだ
     け、いつまでに、どうやって」という具体的で進捗管理可能な計画を策定します。

     また、その計画が達成された場合には、人事考課の結果が今期に比べてどの
     程度上がる見込みであるかについても伝えます。

   7.部下への期待表明・まとめ

     フィードバック面談は部下のモチベーションが高まった状態で終了する必要が
     あります。

     「君には本当に期待している」、「いつもムードメーカーになってくれて感謝して
     いる」など、上司としての期待と賛辞の言葉を贈って面談を終了します。
 

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