飲食業のパートアルバイトを戦力化
 

  ■パートアルバイトは正社員と同等の存在

   飲食業は他の業種と比較して従業員に占めるパートアルバイト(以下P/A)の比
   率が非常に高く、多くの飲食店にとってP/Aは欠かせない存在となっています。

   接客や調理など、店のほとんどの業務にP/Aは関わっています。

   お客様を直接もてなす機会も多く、その質の良し悪しは店の業績さえ左右しかね
   ません。

   こうしたことから、「飲食業は教育産業である」といわれることがあります。

   接客などにおいて従業員の質がサービスに大きく関係するため、そのP/Aのレ
   ベルを上げるためには人材教育が飲食店成功のカギとなるのです。

    P/Aの戦力化がその店のレベルを引き上げることを
    十分に認識し、そのための教育を行う

   ことが重要です。

   社長のなかには「せっかく採用したのにすぐ辞めてしまう」「無断で店を休む」 「遅 
   刻ばかりする」「やる気が感じられない」と思っている方も多いようですが、ではど
   うすればP/Aをその店の核となる存在に育成できるのでしょうか。

   それには、P/Aを単に一時的で補助的な存在と考えず、その能力に期待して教
   育に力を注ぐことです。

   そして、

    仕事の結果を評価し、次の目標を与えるようにすることによって、
    P/Aはやりがいを感じ、仕事の質も向上するでしょう。

   飲食店のP/Aは雇用形態が異なるだけで、接客サービスに求められることは正
   社員と同じです。

   これからの飲食店においてはP/Aを正社員と同等に教育する姿勢が求められます。

   では飲食店においてP/Aをきちんと教育し戦力化するには、どのようなステップ
   が必要となるのでしょうか。

   まずは、P/Aを含めた全従業員の作業レベルを均一にするための、業務の標準化
   (マニュアルの作成)が必要となります。

   次にそれにもとづいたP/A教育を行います。

   さらに技術面だけではなく、P/Aの精神面への働きかけ、具体的にはP/Aのや
   る気を引き出す仕組み作りが必要になります。

   以上のことが整備されてはじめて、P/Aの戦力化が実現するのです。

  マニュアルの重要性

   マニュアルとは「現場での各作業を標準化し単純化することにより、合理的、効率
   的な業務運営を行うための具体的な作業指示書」ということができます。

   従業員のレベルを均一にするためには、マニュアルを整備し、それに基づき教育
   を行うことが有効です。

   接客サービスに特色のある店としてお客様からの支持を集めている店のなかに
   は、「接客サービスの基礎」と「業務の心構え」といった2種類のマニュアルを作成
   し、新規従業員が店に出る前には、丸3日間もの研修を行っているところもあります。

   こういった店の接客レベルは、徹底したマニュアルによる教育によって保たれてい
   るのです。

   次に、具体的にマニュアル作成上の留意点について解説していきます。

   すでにマニュアルを整備している場合も、今一度、自店のマニュアルを見直して
   みてください。

   1.マニュアルは誰にでも理解できるもの

     マニュアルとはあくまで“現場”レベルで考案された実効性のあるものでなくて
     はなりません。

     いくら立派なマニュアルを作っても、現場の実態からかけ離れたものでは意味
     がありません。

     したがって、

      マニュアルを作る際には、
      現場の実務担当者が集まり、各作業の検討をし、もっとも良いやり方に
      決定します。

     各作業は新人P/Aでもできるように分かりやすい方法・手順・道具を選び簡
     素化した仕組みにすることが必要です。

     また、作業時間の目安が明らかなもの、たとえば清掃作業や仕込み作業など
     は各作業の適正時間(標準時問)も設定しておくとよいでしょう。

     このように現場担当者が作業を標準化したら、それをマニュアルとして整理し
     ます。

     マニュアルに記載する表現はできるだけ短くし、箇条書きを基本とします。

     そのうえで、絵や写真などを活用し、より分かりやすいように工夫することが必
     要です。

      いったんできあがったマニュアルは即全店に導入するのではなく、
      まず一部の店舗でテストを行ってみます。

     このテストは新人など教育をあまりしていないスタッフで行うようにします。

     新人スタッフでもマニュアルに沿って業務を進めることができなければ、マニュ
     アルとしての意味がないからです。

     そしてテスト段階でわかりにくい点、不備な点などがあればこれを改善し、マ
     ニュアルを完全なものとしていきます。

   2.マニュアルは人事考課にも役立つ

     P/Aはマニュアルによって自社の正しい作業手帳をマスターしていきます。

     基本的にマニュアルに定める以外の方法や手順は認められません。

     したがって、各P/Aがマニュアル通り作業を行っているかどうかをチェックし、
     その結果を人事考課に反映することも可能となります。

     マニュアルという基準を作ることで、店長はP/A各個人の能力を評価でき、そ
     の結果を時給や手当に反映させることができるのです。

     また、定期的に人事考課を行うことにより、P/A各個人の得意分野、不得意
     分野が明確となり、より現実的、具体的にトレーニングを行うことができるた
     め、店全体のレベルアップにもつながります。

     また、店長が人事考課の結果を受けて、マニュアルに基づき再度P/Aを指
     導・育成することもできます。

     したがって、

      マニュアルは指導育成のツールとしてだけでなく、
      人事考課のツールとしての役割も担っている

     わけです。

   3.マニュアルはつねに見直す

     マニュアルは、作成した時点における作業上の必要事項を網羅したものです。

     つまり、店の状態や社会環境などが変化すれば、そのマニュアルは陳腐化し
     てしまいます。

     たとえば、POSレジを導入すれば、伝票の処理作業が変わりますし、メニュー
     が変われば商品説明も変わります。

     また店もレベルアップしていかなければならないわけですから、それに合わせ
     たマニュアルのレベルアップも必要となるでしょう。

     現実には、マニュアル作成後、マニュアルの見直しが行われず、各項目が現
     場レベルとかけ離れてしまい、マニュアルが使われなくなってしまう店も少なく
     ないようです。

     これではマニュアルの意味がありません。

     マニュアルはつねに現状を踏まえた内容にリニューアルしていくことが必要な
     のです。

  □P/A教育の手順

   マニュアルができあがったら、次はそれをP/Aに教え込む仕組み作りが必要に
   なります。

   1.教育プログラムの作成とトレーナーの訓練

     マニュアルが整備されている大きなチェーン店でも、教育トレーニングがうまく
     実施できていないところがあります。

     この原因の大半は、トレーニングプログラムの整備不足とトレーナーが正しい
     トレーニング方法を知らないために起きています。

     こうならないためには、P/Aに対しどのような順番で、誰がどのように教える
     かを明確にする「教育プログラム」が必要です。

     教育プログラム作成にあたっては、マニュアル同様に現場でのミーティングを
     重ね、店長などがまとめ役となって作成することが大切です。

     また、実際に新人P/Aの指導にあたるトレーナーの教育も必要です。

     ロープレ(ロールプレイング)を行いどのようにP/Aを指導するのか、言葉や
     動作を確認することも大切です。
       
   2.オリエンテーション(企画)の実施

     新人P/Aが入店するとすぐトレーニングを実施しがちですが、その前に自店
     の経営理念や仕事の使命、会社の歴史、職場のルールなどを分かりやすく説
     明します。

     これが新人にどこまで「動機付け」できるかのポイントとなります。

     このようにオリエンテーションは、P/Aのやる気を左右する重要なものですの
     で、できれば社長自ら、少なくとも店長が行う必要があります。

   3.マニュアルに沿ったOJT の実施

     具体的な作業のトレーニングは、マニュアルを使用してOJTで行います。

     トレーナーは新人P/A(トレーニー)に自己紹介し、これから行う作業の店内
     での位置づけや目的、具体的な作業の流れを説明します。

     次に、トレーナー自身が正しい作業のやり方の手本を示します。

     また、「なぜそのような手順で行うか」といった理由もマニュアルをもとに説明し
     ます。

     次に同じ作業をトレーニーにやらせてみます。

     そして、間違った箇所を具体的に手直しし、再度トレーニーに同じ作業をできる
     まで繰り返しやらせます。

      この段階で重要なことはマニュアル通りに正確に行うことです。
      スピードは慣れてくれば自然に身に付いてくるものですので、
      じっくり、ゆっくり教育する姿勢が求められます。

   4.P/Aの能力に見合った教育を

     P/Aにはそれぞれ能力差があります。

     マニュアルは最低基準を表したものですが、基準に達したらあとは各個人の
     能力に見合った教育が必要になります。

     このレベルになると、トレーナーはトレーニーと少し距離をとり、接客が終了し
     た時点などに、ワンポイントアドバイスを与える程度でよいでしょう。

     また、事例をもとに、トレーニーに解決策を考えさせることも効果があります。

   5.トレーナーの教育

     ベテランの従業員になると、マニュアルを無視したり、勝手にやり方を変えてし
     まうことも多いようです。

     そこでP/Aを教育するトレーナーには、ベテラン社員やベテランP/Aがあた
     るようにすると、この問題も解決されます。

     トレーナーになると、つねに基準を正しく繰り返し新人P/Aに教えなければな
     らないため、マニュアルに定められたサービスレベルや商品管理、店舗管理
     の基準を自分が守らなければならなくなるからです。

  □P/Aのやる気を引き出す仕組み作り

   以上、おもにP/Aを技術面から戦力化する視点についてみてきましたが、これら
   と同等に大切なこととして、

    P/Aを動機付けし、いかにやる気を引き出すか

   ということがあげられます。

   それにはまず、P/Aがどういった理由で働きたいと思ったのか、その志望動機を
   理解する必要があります。

   では、P/Aは働くことに何を求めているのでしょうか。

   まず第一に「お金」が考えられます。

   しかし、P/Aの時給を上げても、一時的にはやる気を見せるものの、しばらくたつ
   とやる気が感じられなくなった、という経験をお持ちの社長も多いのではないで
   しょうか。

   P/Aであっても、お金のためだけではなく、将来を見据えて働き「自分のステップ
   アップにつながる何かを得たい」と考えている場合も少なくありません。

   ですから、ただ単に時給を上げるのではなく、キャリアアップに従って時給も上が
   ることを明示し、P/Aのやる気を引き出すようにすることが重要です。

   仕事面からP/Aのやる気を引き出すには、仕事の内容を徐々に高度にしたり、
   多様な業務を経験させるなど、キャリアアップの仕組みを作り、P/A自身がス
   テップアップを実現できていると感じることができるようにします。

   キャリアアップの仕組みを作るときには貸金体系も連動させて作り、能力のある
   人や頑張った人が適切に評価されるようにすることも重要です。

   また、P/Aは職場を社会との接点として捉え、働く仲間達とふれあい、コミュニ
   ケーションを取ることで社会的欲求を満たしている場合も少なくありません。

   そのため、店としては明るく楽しい職場作りを目指す必要があります。

   たとえば、歓送迎会や忘年会などを開催するのもよいでしょう。

   その際の運営にP/Aから幹事を選出するとさらに仲間意識が高まり、職場に楽
   しい雰囲気が生まれます。

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