運送業の安全確保

  ■運運送業の安全管理

   厚生労働省の「平成29年における労働災害発生状況」によると、陸上貨物運送
   事業(以下、運送業)における労働災害による死傷者数(死亡および休業4日以
   上)は、平成21年で1万4706人(うち死亡者数は、137人)となっています。

   また、同省の「平成21年における死亡災害・重大災害等発生状況」によると、運
   送業における死亡事故の6割は交通事故(以下、交通労働災害)によって占めら
   れています。

   交通労働災害は、従業員である運転者自身だけでなく、一般の市民も巻き込んで
   しまうことが多いことから、運送事業者には、「絶対に事故を起こさない」という社
   会的な責任が課せられており、災害の減少に取り組む必要があるといえます。

  □安全管理体制の整備

   1.管理者の選任

     運送事業者は、交通労働災害の防止を図るため、積極的な安全管理体制を
     確立しなければなりません。

     運送業では、交通労働災害の防止に関係する管理者(安全管理者、運行管
     理者、安全運転管理者等)を選任し、その役割、責任、権限を定めることが必
     要です。

     なかでも運行管理者は、運送業における交通労働災害防止にとって重要な役
     割を担います。

     運送業では、自動車運行の安全確保に関する業務を行わせるため、試験を受
     けて運行管理者資格者証の交付されている者のなかから、運行管理者を選
     任し、各営業所の所在地を管轄する陸運支局長に届け出なければなりません。

     運行管理者は、営業所における自動車台数に応じて一定人数以上を選任しな
     ければなりません。

     選任しなければならない運行管理者数(国土交通省)は次のとおりです。
      *30車両以上は1+(車両数÷30)=運行管理者数(端数切捨て)

        ※1 被牽引自動車とは、貨物自動車の形態のひとつ

        ※2 運行車とは、集貨された貨物を積み合わせて運送する経路に
            配置する車両のこと

                              出典:国土交通省

   2.安全衛生に関する方針の表明、目標設定、計画実施

     運送事業者は、会社全体の安全意識を高めるため、交通労働災害防止の観
     点から安全衛生に関する方針を表明し、従業員に周知することが求められます。

     この方針に基づき、労働災害防止対策を組織的に実施するため、目標を設定
     し、一定期間に達成すべき到達点を明らかにすることが大切です。

     そして、目標を達成するため、次の事項を盛り込んだ具体的な安全衛生計画
     を作成し、確実に実施するとともに、内容を評価(チェック)、改善していくように
     しましょう。

      ・適正な労働時間等の管理および走行管理等に関する事項

      ・教育の実施等に関する事項

      ・交通労働災害防止に対する意識の向上等に関する事項

      ・健康管理に関する事項

   3.安全(衛生)委員会等の設置

     安全(衛生)委員会等(労使で話し合う会議)において、交通労働災害の防止
     に関して調査し、審議することが必要です。

     また、安全委員会等のなかに交通労働災害防止部会を設置することにより、
     交通労働災害の防止について、重点的に取り組むことが望ましいとされています。

     なお、安全委員会は、道路貨物運送業・港湾運送業では50人以上、それ以外
     の運送業では100人以上で設置、衛生委員会はいずれの運送業でも50人以
     上で設置が義務づけられています。

  □現場における安全管理

   交通労働災害事故を発生させないためには、現場における徹底した安全管理が
   必要です。

   以下に具体的な内容を解説します。
 
   1.労働時間等の管理

     運送業では、拘束時間(労働時間および休憩時間(仮眠時間を含む)の合計
     をいう)が長くなりがちなため、疲労の蓄積による交通労働災害を防止すること
     が重要です。

     そのためには無理のない運転時間を設定した走行計画を作成することによ
     り、運転者の十分な睡眠時間の確保に配慮した労働時間管理および走行管
     理を行うことが大切です。

     走行開始または終了の地点と運転者の自宅の間の移動に要する時間を考慮
     し、十分な睡眠時間を確保するため、必要に応じて、より短い拘束時間の設
     定、宿泊施設の確保等の措置を講じることがポイントです。

     運送業における拘束時間を適正化するため、厚生労働省では「自動車運転者
     の労働時間等の改善のための基準」というガイドラインを定めており、運送事
     業者はこれを遵守しなければなりません。

     表は、トラック運転者の基準(全日本トラック協会)です。

   2.乗務前後の対面点呼の実施

     運転者の乗務前および乗務後に、運行管理者は対面による点呼を行い、その
     状況を点呼記録簿に記録し、1年間保管しておく義務があります。

     ただし、長距離の運行で乗務前、乗務後のいずれも対面点呼ができない場合
     は、乗務の途中に少なくとも1回、電話や運転者と直接対話できる方法で点呼
     を行い、健康状態について報告を求め、安全を確保するために必要な指示を
     しなければなりません。

     また、2011年4月より対面点呼時に飲酒の有無を確認する際には、目視等に
     よる確認のほか、アルコール検知器を用いて行わなければならなくなった。

   3.安全衛生教育の実施

     (1)雇い入れ時等の教育及び作業内容変更時の教育

       運送事業者は、運転者に対して、雇い入れ時および作業内容変更時に、
       次の事項を含む教育を行わなければなりません。

       また、必要に応じて、安全運転の知識や経験が豊富な運転者が添乗する
       ことにより、実地指導を行うことが大切です。

        ・交通法規、運転時の注意事項、乗務前点検の励行等の運転者が
         遵守すべき事項

        ・「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の遵守、運転
         日前日の十分な睡眠時間確保、飲酒による運転への影響、睡眠時
         無呼吸症候群等の適切な治療、体調の維持等の必要性

     (2)日常教育

       運送事業者は、運転者に対して、安全な運転を確保するため、社内教育の
       実施や関係団体が実施する講習会への参加により、次の事項について指
       導することが必要です。

        ・「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の遵守、運転日
         前日の十分な睡眠時間確保、飲酒による運転への影響、睡眠時
         無呼吸症候群等の適切な治療、体調の維持等の必要性

        ・警察等からの交通事故発生情報、交通事故の危険を感じた事例、
         デジタル式運行記録計の記録、ドライブレコーダーの記録等から
         判明した安全走行に必要な情報

        ・情報や記録に基づいて判明した危険な個所、注意事項等を示した
         交通安全情報マップの提供・交通労働災害に関する法令等の改正
         に関する行政機関からの情報

     (3)交通危険予知訓練

       運送事業者は、運転者に対して、実際の運転場面を想定したイラストシー
       ト、写真等を用いて、潜在的危険を予知させ、その防止対策を立てさせるこ
       とにより、安全を確保する能力を身につけさせる交通危険予知訓練を継続
       的に行うことが必要です。

   4.健康診断等の実施

     運送業における労働時間は長時間になりがちです。

     健康障害を防止するためには、健康診断等により、健康状況を総合的に把握
     したうえで、適切な保健指導を行うことが重要です。

     (1)健康診断の実施

       雇い入れ時および1年以内ごとに1回、定期に健康診断を行うことが義務
       づけられています。

       また、深夜に乗務する運転者に対しては、6カ月以内ごとに1回、定期に健
       康診断を行うことが義務づけられていますので注意が必要です。

     (2)面接指導等

       長時間(1カ月100時間)にわたる時間外や休日労働を行った運転者に対
       しては、医師による面接指導等を行い、必要がある場合には、労働時間の
       短縮等の適切な措置を取ることが大切です。

     (3)運転時の疲労回復

       運転者の疲労による交通労働災害を防止するため、走行経路の途中で、
       肩、腕および腰部のストレッチや体操等により、運転時の疲労回復に努め
       るよう指導するようにしましょう。

   5.交通労働災害防止のためのチェックリスト


                      お問合せ・ご質問はこちら

                       メルマガ登録(無料)はこちらから

お問合せ・ご相談はこちら

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
054-270-5009

静岡県静岡市のビジネス・ソリューション㈱です。
静岡・愛知県内、東京周辺を中心に中小規模企業の問題解決支援としてマーケティング・業務改善・リスクマネジメント
企業運営に欠かせない3つの仕組みづくりを支援いたします。
経営者にとって重要課題は会社をつぶさないことです。
しかし、毎年1万件以上の中小企業が倒産に見舞われています。
「知っていれば」「対策を講じていれば」倒産せずに済んだはずの企業が数
多くあったことを、私どもは見聞きしております。
少しでも多くの企業が、このような危機に見舞われず、最悪の事態を招く
ことのないよう、私ども専門家集団は事業運営に欠かすことのできない
マーケティング、業務改善、リスクマネジメントについて全力投球で支援
してまいります。

対応エリア
静岡・愛知県内、東京周辺

お気軽に
お問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

054-270-5009

 (コンサルティング部門 直通<柴田>)

新着情報

2024年4月18日
記事:「メルマガ708号」 更新しました。
2024年4月18日
記事:「保険代理店 法人マーケットの攻略」更新しました。 
2024年4月17日
記事:会社を育てる」更新しました。
2024年4月15日
記事:「タイムマネジメント Ⅱ」 更新しました。
2024年4月11日
記事:「メルマガ707号更新しました。
  • 詳細はこちらへ

ビジネス
ソリューション
仕組み構築

住所

〒422-8067
静岡県静岡市駿河区南町
2-26-501