経営課題の解決手法
 

  ■まずは分解して考える

   1.わからないことはまず分解して考えてみる

     経営課題の解決手法を身に付けるにあたっての第一歩は、わからないことは
     まず分解してみるということです。

     日々起こる問題を漠然として捉えるのではなく、なぜそうなっているのかをさま
     ざまな可能性に分解して考えてみるのです。

     たとえば、「3ケ月連続で利益が対前年比割れしている」という事態が生じた場
     合、単純に「利益が落ちている」ということを問題として捉えるだけでは、その
     課題としては「利益を上げる」ということになってしまい、先に進みません。

     このような場合に「ロジックツリー」というツールを使うと問題の原因を触り下げ
     て考えていくことができます。

     ロジックツリーとは、起こっている問題の本当の原因を探るために、問題を何
     段階にも網羅的・体系的に掘り下げていくためのツールです。

     事例では4階層になっていますが、状況に応じてさらに掘り下げる必要も生じ
     ます。

     たとえば「新規顧客」が減っている場合、小売店であれば、来店客数が減って
     いるのか、来店客数は減っていないが実際に買ってくれる客が減っているの
     か、といったことも掘り下げるべきポイントになります。

     問題が発生するたびにこのようなロジックツリーを作ってもいいのですが、過
     去に起こったさまざまな問題を整理して、あらかじめ自社にとってもっとも有効
     なロジックツリーを作っておけば、問題の早期発見と迅速な解決につながります。

     たとえば、顧客数の変動が激しい業種では、顧客分析に関するロジックツリー
     は広くかつ深くなりますし、仕入れ変動の大きい業種では原価に関するロジッ
     クツリーは広くかつ深くなるでしょう。

     また、同一の業界であっても、最適なロジックツリーは会社の置かれている状
     況によって、異なってきます。

     自社に適した実践的なロジックツリーを作ることが大切です。

     なお、現実には次から次に新しい問題が発生しますので、いったん作ったロ
     ジックツリーがずっと有効なわけではありません。

     新たな問題が発生したらロジックツリーを必要に応じて修正することが必要です。

   2.管理指標の活用で問題を事前に回避する

     あらかじめロジックツリーを作っておくメリットは、問題が発生したときに、解決
     の道筋が早く見つかるということだけではありません。

     むしろロジックツリーを活用することによって、大きな問題になる前に事前にそ
     れを回避できるメリットのほうが大きいのです。

     たとえば、小売店で女性客が主要ターゲットの店の場合、女性客の来店数、
     購買単価などがロジックツリーの重要な管理項目になります。

     管理項目が決定したら、業績の変動に関係なく、その項目を管理指標として設
     定し、データを定期的に取り続けます。

     データを定期的にチェックし、来店数の減少傾向などが見てとれた場合には、
     販促策を立てるなどによって大きな売上ダウンを事前に回避できます。

   3.事業拡大の検討材料としても活用できる

     事例として紹介したロジックツリーは「利益の減少」という問題を掘り下げるた
     めの例ですが、逆に「利益を拡大するためにはどうしたらいいか」といった、プ
     ラス方向を考える際にも活用できます。

     この場合には第2階層が「売上の拡大」「経費の削減」となり、第3階層には
     「顧客数の拡大」「客単価の上昇」などが、第4階層には「新規顧客数の拡大」
     「既存顧客の囲い込み」といった項目が並ぶことになります。

     そして「やはりうちの店はお得意様を大事にすることがもっとも大事だ」という
     結論になれば、既存顧客の囲い込み策をどうするかといった施策を検討して
     いくことができます。

   4.「問題」と「課題」の違いを理解する

     ここまで「問題」と「課題」という言葉を混在して使ってきましたが、実はこの2つ
     の言葉には明確な違いがあります。

     「問題」は、あるべき姿と現状のギャップのことであり、「課題」はそのギャップ
     を埋める方策のことです。

     前述の例でいえば、ロジックツリーを使う前の問題は「売上の減少」、課題は
     「売上の回復」という非常に抽象的で手の打ちようがないレベルのものです。

     これをロジックツリーを使い分解して掘り下げることで、たとえば問題は「女性
     客の減少」であり、その解決のための課題として「女性向けの少量商品を開発
     する」などの施策を設定することができるのです。

  □緊急性と重要性に分解して考える

   1.問題を「緊急性」と「重要性」で評価する

     会社経営にはさまざまな問題が次々に発生します。

     放っておくとあっという間に問題が山積みという状況になってしまいます。

     手当たり次第に対応していたのでは全部の問題にはとても対処できません。

     そこで、対応する問題に優先順位をつける必要が出てきます。

     そのようなときのひとつの方法が問題を「緊急性」と「重要性」に分解して評価
     してみることです。

     ◎「問題」を緊急性、重要性で評価する

      「緊急性の高い問題」

       今すぐ対応しないとデメリットが生じる問題。

       問題対応に必要な迅速性の評価

      「重要性の高い問題」

       対応しないと大きなデメリットが生じる問題。

       デメリットの大きさを評価

         このように評価した結果、緊急性も重要性も高い問題、つまり
       「今すぐ対応しないと大きなデメリットが生じる問題」に対して、
       最優先で取り組むことになります。

   2.評価結果をマトリクスで考える

     では実際に評価結果をマトリクス(表)にしてみましょう。

     縦軸が緊急性、横軸が重要性を示しています。

     それぞれ矢印の方向へいくほど、対応すべき度合いが高いことを表しています。

     緊急性、重要性ともに高い領域、つまりマトリクスの右上の太線で囲まれた領
     域に属する問題は、最優先で、できれば社長自身で対応すべき問題ということ
     になります。

     問題が発生したら頭の中でこのマトリクスを描いて、優先度に大体の検討をつ
     けると、問題対応の方針を決定することができます。

     上記の例では「大口顧客からのクレーム」を最優先の顔域に入れていますが、
     もちろん個々の会社の状況によって、優先順位の付け方は変わってきます。

     自社にとっての「緊急性」「重要性」の評価のポイントを考えて、それにふさわし
     いマトリクスを作成しましょう。

   3.課題の優先順位付けにも活用できる

     このマトリクスは、「問題」の優先順位付けだけではなく、「課題」に対する優先
     順位付けにも活用できます。

     ◎「課題」を緊急性、重要性で評価する

      「緊急性の高い課題」

       今すぐ対応するとメリットが生じる問題。問題対応に必要な迅速性の評価

      「重要性の高い問題」

       対応すると大きなメリットが生じる問題。メリットの大きさを評価

      このように評価した結果、緊急性も重要性も高い課題、つまり「今すぐ対応す
      ることによって大きなメリットが生じる問題」に対して、最優先で取り組むこと
      になります。

      たとえば新規取引先との詰めの交渉などは、マトリクスの右上の領域に属す
      ることになるでしょう。

      また、会社の事業計画の策定などは、今日明日という緊急性はありません
      が、策定することによって将来的に会社に大きなメリットをもたらすということ
      で、マトリクスの右の中段あたりに属することになります。

  □効果と難易度に分解して考える

   ここでは実現までに長期間を要するような比較的大きな課題解決の考え方を事
   例を使ってご紹介します。

   ここでもやはり基本は「分解して考える」ことになります。

   『事例』

    玩具製造会社A社の業績は、ここ数年で大きく悪化し、営業利益率は前期比で
    5%も下落している。抜本的な打開策を打ち出したい。

   【STEP1:問題の掘り下げ】

    A社の営業利益率が悪化している原因を探ります。

    ご紹介したロジックツリーを使って、問題点を掘り下げていきます。

    営業利益率悪化の原因を掘り下げていくと、10個の問題(a〜j)に
    細分化することができました。

    これら10個の問題を解決するために、それぞれの個別課題を設定します。

    ここでは細分化のレベルを10個に抑えましたが、たとえば「営業力が低下」
    という問題を「営業マンの人手が不足」「営業マンの能力が不足」「営業マン
    のやる気が不足」等々、さらに細分化することが可能です。

    もっとも、細分化はある意味では際限がありません。

    そのため、個別課題の具体的施策が提示できるレベルまでが細分化の
    目安となります。

   【STE P2:具体的施策の設定】

    個別課題それぞれについて、具体的施策を提示していきます。

    実際には、1つの個別課題に対して複数の施策が提示されますが、
    ここでは施策を1つに省略しています。

   【STEP3:施策を『効果』と『難易度』に評価】

    STE P3で提示した個別課題に対する施策をそれぞれ評価していきます。

     評価のポイント(評価項目)として、以下のようなものが考えられます。

     (効果の評価)

      ・どれだけの効果が期待できるのか?               …A

     (難易度の評価)

      ・その仮説を実行するだけの余力(経営資源)はあるか?     …B

      ・その仮説を実行した場合のリスクはどの程度か?       …C

      ・その仮説は素早く(スピーディーに)実行に移せるか?     …D

     ここでは、評価項目として上述のA〜Dを用います。

     評価項目は解決すべき課題の性質によりそれぞれ異なります。

     評価の基準は、あくまで「個別課題を解決できるか?」という点である
     ことに注意します。

      具体的施策案の効果と難易度による評価

     (判断結果)

      a:現実性に乏しく、具体的な仮説を立てることができないため却下。

      b:A社が将来にわたり生き残っていくためには、市場ニーズを反映
        した魅力ある商品の開発が不可欠である。開発チームを編成し、
        長期的な視点で商品開発を行っていく必要がある。

      c:e〜jを包含する仮説。より具体化されたe〜jの評価に委ねる。

      d:現状よりは効果が上がるかもしれない。実行する価値はある。

      e:共同仕入の実現性は乏しいが、仕入先との価格交渉は実行する
        価値がある。

      f:外注部分の内製化は、現状の生産ラインを増設しない限り不可能。
       増設に伴う資金的余裕はない。ただし、外注先との価格交渉は実行
       する価値がある。

      g:生産現場には、まだまだ効率化の余地がある。3人1チームでQC
       活動を展開し、効率化に寄与したチームには報奨金を支給する制度
       を導入すれば、従業員のモラールアップにも効果がありそうだ。

      h:リストラとも受け取られかねない。従業員の反発は必至である。

      i:パンフレットを必要とする取引先は多く、たとえ廃止しても効果は小さい。

      j:効果は小さいが、従業員のコスト意識を高めることに一役買いそうだ。

   【STE P4:実行策の選択】

    STE P3までは設定した個別課題を解決できるかという視点で検討して
    きましたが、最終的に実行策を選択する際には、それらを総合して「利益
    率低下を脱するための打開策立案」という総合的な視点で行います。

    そしてどのくらいの期間でどのような体制で行うかという基本プランを策定
    していきます。

    結局A杜では表のような6つの基本プランが策定されました。

   社内に生じるさまざまな課題を解決するための手法として活用をお勧めします。
 

            お問合せ・ご質問こちら

           メルマガ登録(無料)はこちら

 

お問合せ・ご相談はこちら

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
054-270-5009

静岡県静岡市のビジネス・ソリューション㈱です。
静岡・愛知県内、東京周辺を中心に中小規模企業の問題解決支援としてマーケティング・業務改善・リスクマネジメント
企業運営に欠かせない3つの仕組みづくりを支援いたします。
経営者にとって重要課題は会社をつぶさないことです。
しかし、毎年1万件以上の中小企業が倒産に見舞われています。
「知っていれば」「対策を講じていれば」倒産せずに済んだはずの企業が数
多くあったことを、私どもは見聞きしております。
少しでも多くの企業が、このような危機に見舞われず、最悪の事態を招く
ことのないよう、私ども専門家集団は事業運営に欠かすことのできない
マーケティング、業務改善、リスクマネジメントについて全力投球で支援
してまいります。

対応エリア
静岡・愛知県内、東京周辺

お気軽に
お問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

054-270-5009

 (コンサルティング部門 直通<柴田>)

新着情報

2024年3月29日
記事:代理店の営業力強化」更新しました。
2024年3月28日
記事:「メルマガ705号」 更新しました。
2024年3月27日
記事:「新規事業開発成功のポイント」更新しました。
2024年3月25日
記事:「タイムマネジメント Ⅰ」 更新しました。
2024年3月22日
記事:保険代理店 業務の標準化」更新しました。 
  • 詳細はこちらへ

ビジネス
ソリューション
仕組み構築

住所

〒422-8067
静岡県静岡市駿河区南町
2-26-501