社内提案制度
 

  ■社内提案制度の概要

   厳しい経営環境が続くなか、会社の維持・成長に向けての社員一丸となった取り
   組みがこれまで以上に重要になってきています。

   社内提案制度はそのための有効な施策であり、すでに導入済みの中小企業もた
   くさんあります。

   しかし、導入当初は活発な提案があったものの、次第に社員の関心も薄れ、制度
   自体が形骸化しているといったことも多いようです。

   ここでは、社内提案制度を成功させるためのポイントについて紹介します。

   1.目的

     社内提案制度は社員から会社の業績向上や業務改善などに向けた提案を広
     く募集する制度です。

     社長や経常幹部が気づかない現場独自の発想や、若手ならではのユニーク
     な視点など、社内にいるすべての「人財」の英知を使って経営力を高めていこ
     うとする活動です。

     社内提案制度の目的を整理すると、

      <社内提案制度のおもな目的>

       ・会社業績への直接的な貢献(売上拡大・経費削減など)

       ・社員の経営参画意識の向上、一体感の醸成

       ・社員の問題解決意識・問題解決能力の向上

       ・社員のやる気、自立心の向上

     つまり、社内提案制度導入によって「直接的な業績貢献」のアイデアを得るだ
     けではなく、そのプロセスを通じて社員のさまざまな意識や行動を変えていくと
     いう効果も狙えるのです。

     たとえば、電気代節約のために「オフィスをエリアごとに区切ってこまめに照明
     を消す」というアイデアも、それが「社長指示」である場合と「社員からの提案」
     である場合は、その後の実践度合いに大きな差が出ることは容易に想像がつ
     きます。

     社員は自分たちからの提案だからこそ、「きちんとルールを守ろう」、「もっと節
     約できないか」といった意識が高まっていくのです。

   2.提案の種類

     社内提案制度で募集する内容としては、

     <提案内容のおもな種類>

      ・新規事業進出

      ・新商品開発

      ・社内制度改革

      ・顧客満足度向上

      ・現場レベルでの業務プロセスの改善(工数削減、品質向上、
       作業安全性向上など)

      ・経費削減

      ・社長のやる気や能力向上

      ・その他、全社の経営向上に役立つと思われる提案全般

     また、提案のレベルにも種類があります。

     たとえば、新規事業進出であれば、「こんな事業は有望なのではないか」と
     いった「思いつきレベル」のものから、実現までのステップやシミュレーションな
     ども含めた「事業プラン」までさまざまです。

     制度を活発化させるためには提案のためのハードルは低くしておき、より緻密
     なプランを提案した者についてはそれにふさわしい丁寧な評価を行うというス
     タンスが好ましいでしょう。

     なお、提案制度開始直後などには制度の主旨についての周知不足などから、
     たんなる要望(休日を増やして欲しい、福利厚生を充実して欲しいなど)が寄
     せられることがあります。

     これらに対しては頭ごなしに「提案拒否」するのではなく、「その要望を実現す
     るためにはどうすればよいのか、君にも考えて欲しい」といった、要望を提案に
     変えていくための指導も求められます。

   3.提案の単位

     提案の単位は「個人」と「グループ」の両方が考えられます。

     個人については正社員だけではなくパートやアルバイトなどからも募集するこ
     とで提案の幅が広がります。

     また、グループでの提案を奨励することで社員同士の連帯感を増す効果も期
     待できます。

     グループのなかに必ず他部門のメンバーを入れることで斬新なアイデア創出
     につなげることに成功しているケースもあります。

     <提案の単位>

      ・個人(パート・アルバイト含む)

      ・部門ごと(原則として部門全員が参加、リーダーは当該部門の
       上長とは限らない)

      ・部門内の有志(部門内の有志が参加)

      ・部門の枠を超えた有志(全社的な発想、斬新な発想が期待できる)

     なお、協力会社と密接に業務を行っている会社では、協力会社から自社への
     改善提案を受け付けているケースもあります。

     提案実現によって双方のコストダウンなどを図ろうという狙いです。

   4.提案の期間

     提案期間には「通年募集型」と募集期間を定めた「キャンペーン型」があります。

     幅広いテーマを通年で募集し、特定のテーマについてはキャンペーン型で集
     中的にアイデアを集めるといった方法が考えられます。

     なお、通年募集型にする場合でも、最低でも1カ月単位程度で周期をつくり、
     「○月提案分」として、集計・評価・発表を行うことが必要になります。

     提案した社員は自分の提案が会社にどのように受け止められているのかを気
     にしています。

     できるだけ短い周期でそれに答えることで社員のさらなる提案意欲は高まります。

     提案をしてくれた社員に対しては、受付後直ちに「あなたの提案は確かに受け
     付けた、評価結果発表は何月何日に行う」という通知をすることが必要でしょう。

     また、提案のなかには費用や準備が不要ですぐにでも始められるアイデアも
     あるはずです。

     これらのアイデアを長期間寝かせないためにも迅速な対応が求められます。
 
   5.提案の提出先

     提案の提出は大規模な会社であれば総務部門などが一括して受け付けて、
     予備評価後社長に渡すということもありますが、中小企業では社長自らがす
     べての提案を受け付けることが好ましいでしょう。

     「自分の提案に対して社長はどう思うのか」ということは社員にとって非常に気
     になるところです。

     社長自身が真っ先にすべての提案に目を通すとはっきり示すことで、社員の
     提案意欲も高まります。

     前述のように、提案のなかにはたんなる「要望」や「苦情」に近いレベルのもの
     が含まれていることもあります。

     提案制度の主旨からはこれらへの対応に社長の時間を割くことは非効率です。

     しかし、「要望」や「苦情」は社長が日頃聞けない「社員の生の声」でもあります。

     「提案」には値しないとしても、これらに社長自身が目を通すことで現場の状況
     や個々の提案者の気持ちを理解することにつながります。

     また、全社のためになる前向きな内容でありながら、直属の上長にとっては自
     分のマネジメントを否定されたように感じる「耳の痛い」内容もあるでしょう。

     社員が遠慮して提案をやめてしまわないためにも、上長が部下に提案内容に
     関する偏った圧力をかけてしまわないためにも、提案の提出先は少なくとも直
     属の上長は避けたほうがよいでしょう。

  □評価方法

   社員から集まった提案については次のようなステップで評価するとよいでしょう。

   なお、すべての提案に社長自身が目を通すことが重要ですが、予備評価の要件
   をクリアしているかどうかのチェックは担当部長などに任せても構いません。

   1.予備評価

     内容が「提案」としてふさわしいものかどうかを判断します。

     稚拙な内容であっても提案者の前向きな姿勢が感じられるものについては本
     評価の対象とします。

     予備評価の段階で外すべき提案としては次のようなものがあります。

     <予感評価の段階で外すべき基準>

      ・個人に対する批判

      ・公序良俗に反する内容

      ・匿名による提案

      ・要望のみで改善のための具体策がない提案

      ・過去にまったく同じ内容の提案があった提案(環境変化
       などで提案の意味合いが変わっている場合は検討可)

     なお、予備評価で外した場合でも、なぜそのようになったのかの理由を提案者
     にフィードバックする必要があります。

     特に「要望」や「過去の同一提案」の場合などについては、どのようにすれば
     「提案」として認められるのかを指導して次回捏案に向けた動機づけを図るこ
     とが大切です。

   2.本評価

     予備評価を通過した提案について本評価を行います。

     本評価対象となった提案は件数としてカウントし、すべて報奨の対象とします。

     本評価は社長だけではなく、役員クラス、部長クラスで構成した「評価委員会」
     でさまざまな角度から議論します。

     本評価では提案の効果や必要となる費用など、複数の視点で各項目ごとに3
     段階程度にポイントをつけて、合計点数によって最終的な評価をします。

     ◎本評価の評価基準例

      ①効果性

       提案が実現した場合の効果を評価します。

       売上増・経費削減など直接的な効果の他、業務効率性アップ
       や社員のやる気向上なども効果として扱います。

       効果が大きいものは高い評価になり、効果が小さいものは
       低い評価になります。

       なお、効果性は評価のなかでもっとも重視すべき基準であり、
       ほかの評価項目よりも高い配点を与えます。

             
      ②適用範用

       提案を適用できる範囲を評価します。

       全社で適用できるものなど適用範囲が広いものは高い評価
       になり、限定部門や狭い職種にしか適用できないものは低い
       評価になります。

            

       ③準備期開

       提案開始までに必要な準備期間を評価します。

       ほとんど準備なしで始められるものは高い評価になり、さまざま
       な段取りや業務設計の見直しが必要になるなど準備期間が長い
       ものは低い評価になります。

            

      ④必要資金

       提案実現に必要な初期投資やランニングコストを評価します。

       効果性との兼ね合いもありますが、現在の社内の資金状態に
       照らし合わせて、少ない資金で対応が可能であれば高い評価
       になり、多大な資金が必要なものは低い評価になります。

            
      ⑤難易度

       提案実現のために必要な新技術の難易度や、熟練者だけでは
       なく誰でも一定のトレーニングを積むことによって対応可能か
       などを評価します。

       難易度が低ければ高い評価になり、難易度が高ければ低い
       評価になります。

            

     ⑥提案実施による悪影響

       提案実現によって他部門やほかの業務にマイナス面が生じない
       かどうかを評価します。

       まったく悪影響がない(簡単な対応で回避できる)場合は高い
       評価になり、避けがたい相応のマイナスが生じる場合は低い
       評価になります。

            
      ⑦独創性

       着想や手法の独創性を評価します。

       これまでにない独創的な提案は高い評価になり、過去の延長
       線上の提案は低い評価になります。

            

      ⑧現在の職責との関係防係

       提案内容が提案者の現在の職務に直接関連しているかを評価
       します。

       関連が低い内容であれば職責以外にも広い視野があることを
       認め高い評価となり、関連が高ければ本来の職責遂行の一環
       とみなし低い評価になります。

            

  □報奨方法

   1.報奨制度

     提案者に対してはその労をねぎらうとともに次回の提案につなげるために報
     奨を行います。

     報奨制度としては次のようなものが考えられます。

     (1)月間(年間)最優秀提案賞

       当月度の提案のなかで本評価のポイントがもっとも高かった提案に最優秀
       賞を与え、2位、3位についても優秀賞として評価します。

       さらに、年間を通じてもっともポイントの高かった提案は年間最優秀賞とし
       て評価します。

     (2)月間(年間)最多提案賞

       本審査に進んだ提案はすべて1件としてカウントし、誰がもっとも多くの提
       案をしたかの「量」を評価します。

       提案内容は稚拙であっても、前向きな姿勢を評価するものです。

       同様に年間を通じてもっとも提案件数の多かった者は年間最多提案賞とし
       て評価します。

     (3)業績貢献賞

       提案内容が実現され、顕著な効果が生じた場合に、その度合いに応じて報
       奨を与えます。

       提案者だけではなく、提案実践に中心的な役割を果たしたメンバーもあわ
       せて評価します。

   2.報奨内容

     提案制度の報奨内容としては次のようなものが考えられます。

     (1)金一封支給

       評価ポイントの合計によって金賞、銀賞、銅賞などのランクをつけて、それ
       ぞれ数千〜数万円程度の金一封を支給します。

       年間最優秀賞にはさらに高額な賞金を支給することも考えられます。

       また、「提案と認められれば、ポイントに関係なく1件につき500円」というよ
       うに最低支給基準を設けておくことも有効です。

     (2)人事考課上の加点

       優れた提案や数多くの握案をした者に対しては、人事考課において加点評
       価を行います。

       社員にはあらかじめそのような扱いをすることを周知させておきます。

     (3)賞状やトロフィーなどの授与

       朝礼など全社員の集まる場において、社長自らがねぎらいの言葉とともに
       賞状やトロフィーなどを授与します。

     (4)事業推進者として抜擢

       新規事業などで特に優れた提案があり、提案者が自らその事業の立ち上
       げを希望し、かつ本人の資質も認められる場合には、「社内起業」として提
       案者を新規事業推進責任者として抜擢することも考えられます。

       提案者には開発予算や必要な人材などを与え、事業推進にあたらせます。

  □提案制度を活性化するために

   提案制度を導入当初だけの一時的な盛り上がりに終わらせずに、確実に社内に
   定着・活性化させていくためには次のような点に留意する必要があります。

   1.提案に対して迅速かつ丁寧に対応する

     社員が提案を行っても、それが長期間放置されていれば、やる気は急速に失
     われてしまいます。

     提案制度導入に際しては、評価方法、結果発表日などのルールを告知して、
     ルールどおりに運用していくことが絶対条件です。

     また、結果発表で終わらせずに、採用された提案を実際にどのように実現して
     いくかという計画をはっきりと示すことも重要です。

     なお、ピント外れのような提案をしてくる社員に対しても、少なくとも前向きでま
     じめな提案であれば、次回に向けて丁寧な指導をする必要があります。

     自分の提案に対して「バカにされた」という印象を受けた社員は二度と提案を
     してこなくなります。

   2.ハードルを下げる

     社員に気軽に提案してもらえるように、提案のためのハードルを下げることも
     有効です。

     たとえば提案書のフォーマットは「提案事項」、「提案理由」、「期待効果」の3項 
     目だけの記入で済むようにしておけば、社員の負担は軽くなります。

     より緻密な提案をしたい社員に対しては添付資料などでそれを説明してもらう
     ようにする。

     また、特別なフォーマットを用意しなくても、日報や週報などに「提案欄」を設け
     て、前述の3項目を記入してもらう方法もあります。

     さらに紙ベースだけではなく、社内メールに提案のための専用アドレスを設定
     して、気軽に投稿できるようにする方法も考えられます。

   3.提案ガイドを作成する

     特に制度導入当初には社員が提案にあたってどのような心構えで臨んで、具
     体的にどのように提案すればよいかのガイドを作成して配布する。

     ガイドには以下のような内容を分かりやすく記載します。

     <提案ガイドの内容>

      ・提案制度導入に至った背景

      ・制度導入で期待している効果

      ・提案の締め日、提出方法、提案の種類、評価方法、報奨などに
       関するルール

      ・提案書の記入例
 

 

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