営業力アップのための顧客管理
 

  ■顧客管理の目的

   1.顧客の全体像を把握する 

     顧客管理の目的は自社の顧客ニーズや購買履歴、クレームなどさまざまな情
     報を管理して、顧客がもたらす収益を長期的・継続的に最大化していくことに
     あります。

     一般に顧客は「ロイヤルユーザー」、「リピーター」、「トライアルユーザー」、「見
     込み客」、「潜在顧客」などに分けることができます。

     顧客管理ではこれらの顧客情報を正確に把握して、より上位の顧客に育成し
     ていくこと、途中での離反を防ぎ定着させること、見込み客・潜在顧客の裾野
     を広げていくことなどが重要になります。

     ◎管理すべき顧客の全体像

      <ロイヤルユーザー>
        多数の購買履歴があり自社に対して十分な信頼をもっている。

        自社の対応に余程の不手際がない限り、競合他社へ乗り換える
        ことはない。

      <リピーター>
        2回以上の購買層歴がある。

        自社に対して一応の評価はしているが、ロイヤルユーザーほどの
        信頼感はもっていない。

      <トライアルユーザー>
        自社から1回だけ購入したことがある。

        リピートオーダーするか迷っている、あるいはリピートせずに他社に
        乗り換えた。

      <見込み客>
        自社に関心があるが、まだ利用したことがない。

      <潜在顧客>
        自社を知らない、あるいは関心がない未利用客。

   2.層別と個別に捉える

     実際に顧客を分類するためには、自社のビジネスに即した形で、自社にとって
     のロイヤルユーザー、リピーターなどの定義を明確にしなければなりません。

     さらに、既存顧客がどのグループに属しているかを分類することも必要になり
     ます。

     ◎自社にとっての各グループの定義と既存顧客の分類

      (1)それぞれのグループの定義を明確にする
        たとえば、自社の商品が消耗品である場合と生産財である場合では、ロ
        イヤルユーザーとするための購入頻度や購入金額の基準は当然異なっ
        てくるでしょう。

        また、法人相手のビジネスを行っている場合には、取引の金額や回数だ
        けではなく、「双方の社長同士の信頼関係」、「妥当な支払い条件」、「約
        束通りの支払い実績」なども要件になってくるかもしれません。

        ロイヤルユーザーは現時点での自社の収益を支えてくれている最重要顧
        客層であり、がっちりと囲い込んでおかなければなりません。

        そのためには、他の顧客に比べて優遇策を講じるなどの必要もあります。

        リピーター、トライアルユーザーについては、ロイヤルユーザーになる可
        能性が高い有力顧客層です。

        さらに「見込み客」、「潜在顧客」についても、販促手法の工夫などで、ま
        ずは購入してもらうための働きかけをすることが大切です。

        このように顧客層に応じた適切な施策を講じていくためにも、まずは自社
        の状況に応じた顧客層の定義が必要になります。

      (2)既存顧客を分類する
        さらに、すでに取引のある個々の顧客をそれぞれのグループに分類します。

        ここでロイヤルユーザーと呼べる顧客がほとんどいない場合などは、その
        育成が急務になります。

        また、たとえば、「A社とC社はロイヤルユーザーといえるが、B社は現段
        階ではリピーターに過ぎない」という判断がなされた場合には、B社に対し
        て今後どのような働きかけを行えばロイヤルユーザーになってもらえるか
        を、個別具体的に考えます。

        ここまでみてきたように、自社の状況に即した顧客のグループ化を行い、
        さらに既存顧客をそれぞれのグループに分類していくことで

         ・それぞれの層(ロイヤルユーザー、リピーターなど)に対して
          どのような活動をすべきか
         ・それぞれの顧客に対して個別にどのような活動をすべきか

        が明らかになります。

  □顧客情報の収集と管理

   適切な顧客管理を行うためには、顧客ごとのさまざまな情報を迅速に入手し、い
   つでも分析可能な状態にしておかなければなりません。

   ABC分析やRFM分析、与信管理などを行うためには、あらかじめどのような情報 
   が必要であるかを明確にしておく必要があります。

   その際には購入実績などの定量的なデータだけではなく、「先方を訪問した営業
   マンの感想」といった定性的な情報も併せて入手することが大切です。

   <情報収集の具体的方法の検討>

     ・収集すべき情報の選定
     ・情報収集の手段

   <情報収集に必要なツールの準備>

     ・アンケート用教

     ・顧客管理台帳(パソコン上でデータベース化する)

   <情報収集のための標準化話法の開発>

     ・セールスマニュアルの整備

   <情報収集の教育>

     ・訓練の実施

     ・ロールプレイングの実施

   収集すべき情報の種類によっては、顧客に直接アンケート用紙を送付して記入し
   てもらう方法も考えられますが、一般的には営業マンが顧客との会話のなかで行
   います。

   したがって、営業マンが収集すべき情報が何かを整理し、それをスムーズに聞き
   出せるか、その話法を体得するための教育訓練をどのように実施するか、といっ
   たことが整備されている必要があります。

   また、顧客から情報を収集する方法を身につける一方で、自らも積極的に情報を
   与えていくことも非常に重要です。

   そうすることにより、顧客との信頼関係が強まり、営業力のアップにつながります。

   1.情報の入手

     ◎入手すべき顧客情報

      <基本情報>

       代表者名、住所、連絡先、業績、会社規模、創業からの経緯など

      <業績情報>

       売上、利益、資産の状況など(できれば過去3カ年分の貸借対照表、
       損益計算書を入手)

      <代表者情報>

       年齢、能力、経験、人柄、事業への熱心さ、趣味、家族構成など

      <自社との取引情報>

       初回受注から現在までの受注時期・金額・支払い状況、クレーム
       情報(頻度と重要度)、自社に対する満足度など

      <競合他社との取引情報>

       自社の競合となる企業との取引状況(先方企業における自社の取引
       シェアを把握)

      <営業マンの訪問時の感想>

       先方のニーズ変化に関する情報、新規事業への参入・既存事業
       からの撤退情報、与信管理に反映させるべきマイナス情報(先方
       担当者のモチベーション低下、退職者の急増、経理担当者の頻繁な
       変更、事務所の汚れ・乱れなど)

   2.情報の管理・分析

     収集した情報を有効活用するためには、それらが使いやすく整理されており、
     更新されていることが必要です。

     取引履歴、支払い履歴、営業マンの訪問履歴などを確実に記録し、いつでも
     最新の情報がわかるようにしておきましょう。

     顧客台帳などを使った紙ベースでの管理も可能ですが、今ではシステム上に
     顧客情報のデータベースを構築しておきましょう。

     データベースの構築・運用においては、その効果を十分に発挿できるように、
     次のような点に留意しましょう。

      ・受注書、納品書、請求書などと連動させることで更新がしやすい
       ように設計する

      ・適切なパスワード付与によって必要な人が必要なときに自由に
       閲覧し分析できるようにする

      ・「一定期間取引がない」、「クレーム回数が許容範囲を超えた」、
       「売掛金額が急増している」といった要警戒情報を自動的に表示させる

      ・ABC分析、RFM分析、与信管理などの定型分析を行いやすいように
       設計する。
       データベース構築後はそれらの分析を定期的に実施し、状況把握・
       改善に活用する

      ・個々の顧客だけではなく顧客全体での売れ筋商品の変化などが
       わかるようにする

      ・営業マンの日々の活動を通じて得た定性的な情報を入力しやすい
       ように設計する 

       ◎ABC分析

         参考例にあるように売上高の内訳を調べると、一般的には、
         少数の顧客が全体のなかで大きな比率を占めています。
         「ABC分析」は、これを数字やグラフで分析する方法です。
         まず、顧客を取引金額の大きい順に並べ、各顧客の取引額が
         全体(合計)に占める比率を算出します。
         さらに次表のように、累計比率が全体の7割程度の売り上げを
         占める上位顧客をAランク、全体の7割超から9割程度を占める
         顧客をBランク、9割超を占める顧客をCランクと位置づけます。
         こうしてランクづけされた顧客グループ別に営業戦略を検討します。
         たとえばBランクのなかの有力企業をAランクに上げるために、
         当該企業への訪問回数やアプローチの仕方を見直すなどです。

       RFM分析

         RFM分析とは、顧客を最終購入日、累計購入回数、累計購入金額
         の3つの視点で分類・評価し、それぞれの顧客に対してどのような
         施策が必要かを検討する手法です。

          R(recency 最終購入日) いっ買ったか、最近購入しているか
          F(rrequency:累計購入回数) どのくらいの頻度で買っているか
          M(monetary:累計購入金額) いくら使っているか


         RFM分析はおもに購入頻度が高い商品を扱っている飲食店や小売店
         などの個人顧客分析に使われますが、ルートセールスなど法人相手の  
         ビジネスにおいても、基準値を工夫することにより活用可能です。

          RFM分析例

          上記は1年前を起点として、「R」、「F」、「M」のそれぞれについて
          分析した例です。

          顧客Aは最終購入日からの日が浅く、累計購入回数・金額も多い
          ため、最電要顧客ということになります。

          仮に「F」、「M」の値が大きいにもかかわらず、「R」(最終購入日)
          から、長期間経過している顧客がいる場合には、購買力のある
          優良顧客の足が遠のいていることになります。

          完全に離反してしまう前に早急な対策が求められます。

       与信管理

         法人相手のビジネスでは、売上と実際の代金回収にタイムラグがある
         のが通常であり、先方の支払い能力に応じた与信管理をしていくことも
         重要です。

         これまでの取引実績や先方の企業規模・業績などに応じて取引先それ
         ぞれに与信枠を設けて、そのなかで取引を行うことが大切です。

         自社にとってのロイヤルユーザーの定義には、与信管理か万全である
         ことも加えておくべきでしょう。

         具体的には次のような点をチェックし、異変がある場合はその理由を確
         認しましょう。

          ・売掛金の回収サイトは長期化していないか

          ・取引額の増加ペース以ヒに売掛金残高が増加していないか

          ・取引額の増加ペース以上に1回ごとの売掛金か増加していないか

  □顧客情報の活用方法

   どんなによい顧客情報システムであっても、それを活用して販売に結び付けなけ
   れば何の価値もありません。

   逆にいえば、

    販売の効率と効果が得られるように、
    顧客情報の収集・保管・分析がなされなければなりません。

   したがって、顧客管理のシステムを構築するためには、まずどのように活用する 
   のかを明確にしておく必要があります。

   顧客情報の活用方法として、大きく次の4つが考えられます。

    1.販促企画での活用
    2 商品化計画での活用
    3.販売計画での活用
    4.日々の営業活動での活用

   これらの活用範囲からもわかるとおり、顧客情報は営業部門のみならず広く自社
   全体で活用できるものなのです。

   1.販促企画での活用

     販売促進企画を立案する場合、最低限投資した費用に見合うだけの効果が
     期待できなければなりません。

     そのためには、販促の対象となる顧客の層を明確にイメージする必要があり、
     顧客情報の活用が欠かせません。

     すなわち、顧客情報を分類・分析し、販促企画を実施する前に、どのような商
     品がどれだけ売れるかを予測しておくことが大切です。

   2.商品化計画での活用

     販促企画と同じく、新商品の開発、商品の仕入れ、商品の在庫管理について
     も、顧客情報を分析して計画を立てます。

     この代表的なものが、コンビニエンスストアなどにあるPOS端末からの顧客情
     報を活用したシステムです。

   3.販売計画での活用

     一般に、販売計画の立案は、過去の販売実績を基礎に売り上げ増分を盛り込
     むという手順で行われます。

     しかし、この売り上げ増分の算出は経験値によることが多く、販売計画を実行
     に移す際に何をよりどころにすればよいかがはっきりしません。

     本来、需要あっての売り上げなので、顧客情報を基にすれば販売計画を立案
     しやすくなります。

   4.日々の営業活動での活用

     営業活動では、営業マネージャーと営業マンによる活用が考えられます。

     営業マネージャーは、顧客情報や見込み客リストなどを基に、営業マンの活動
     がどのように進行しているか、というフォローに活用します。

     営業マンは顧客情報から、訪問計画を立案したり見込みがありそうな商品を
     ある程度まで予測します。

     なお、こうした顧客情報は一度集めればよいというものではなく、こまめに追
     加・訂正・削除を行い、つねに生きた情報にしておかなければなりません。

     顧客情報に限らず、収集した情報を活用できるかどうかは、それらが使いやす
     く整理されており、古くなったものが確実に廃棄または更新されているかがポ
     イントになってきます。

     そのためにはルールを定め、情報を体系づけて整理・保管することが必要です。

     具体的な手法としてはさまざまなものがありますが、顧客情報のデータベース
     を構築し、営業マンが新しい情報を入力することでそのメンテナンスを行って
     いる会社も多くあります。

  □既存最客を育成強化する

   既存顧客を育成強化するということは、既存顧客への販売を「増量」と「品種拡
   大」の両面から促進することです。

   既存顧客の育成強化策について整理します。

   1.意欲的な顧客にターゲットを絞る

     顧客自体の業績や所得が増加すれば、それに応じて注文量も増えてくること
     が期待されます。

     このような顧客にターゲットを絞れば、効率的な営業活動が可能になります。

     同時に営業マン自身も、顧客の要求に応えるよう、意欲的に営業活動に取り
     組む姿勢が必要となります。

   2.取引品目数を増やす

     取扱品目数を増やすことは、顧客のさまざまなニーズに対応するうえで非常に
     重要です。

     したがって、営業マンは商品の好き嫌いをせず、商品や関連事項などについ
     て多くの情報収集を行い、顧客に提案していくことが要求されます。

   3.上司の同行で顧客上層部にコネクションをつくる

     上司と同行し、通常会うことが難しい顧客の上層部にコネクションをつくること
     が顧客育成には有効です。

     担当営業マンが顧客上層部とも話ができるようになれば、顧客側担当者の対
     応も変わり、商談がスムーズに進むことも少なくないからです。

   4.営業マンの担当顧客を変える

     長年同じ顧客を担当することは、なじみが深くなる一方でマンネリ化を招くこと
     にもなり、顧客の変化に鈍感になってしまうことが多いようです。

     一般に担当変更のサイクルは、

      ・フォロー体制が確立された営業で1年
      ・一般ルートセールスで3年
      ・機械設備など高額品セールスで5年

     程度が目安といわれています。

  既存顧客を守る

    販売後も十分にフォローして最客の満足度を高めることこそが、
    次々に営業機会をつかむための、重要なステップであるといえます。

   顧客の信頼を得ることができれば、新しい顧客を紹介してもらえたり、買い替えの
   際に商談がスムーズに進むといったメリットも考えられます。

   しかしながら、売り上げ目標が設定される関係上、どうしても目の前の商談が優
   先され、販売後のフォローは疎かになりがちです。

   フォローや、代金の回収まで終わってこそ、ひとつの販売活動が完結したことにな
   ります。

   既存の顧客に対するフォローは、営業マン本人がつねに意識して行い、また管理
   職も営業マンが確実に実行しているかどうか、確認していく必要があるでしょう。

   次に、商品納入後のフォロー手順の例をご紹介します。

    1週間後…取引のお礼状を出す。営業マンの手書きによるものが
           望ましいが、数が多くなるようであれば、書式を決めて
           アシスタントが代筆するなどの対応でもよい。

    2週間後…営業マンが直接訪問し、商品について不都合な点などが
           ないかを尋ねる。
           同時に機会があれば別の顧客を紹介してもらいたい旨を
           伝える。

    1カ月後…営業マンの上司が直接顧客に電話をし、取引の礼を述べ、
           その後不都合な点が発生していないかを尋ねる。

    *1カ月後以降も、最低でも2カ月から3カ月に一度は、電話・メールなどに
      よるコンタクトを欠かさない。

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