事業アイディア
 

  アイディアを生み出すフレーム

   社長のなかには常日頃から新しい事業アイディアを考えている方も多いでしょう。

   たとえ現業が好調であってもその状態がいつまでも続くとは限りません。

   次のステップを見据えた事業アイディアはつねにもっておきたいものです。

   ここでは新しい事業アイディアを生み出すためのポイントについてご紹介します。

  1.自社が「何屋(業種)」であるかを再定義する
     事業アイディアを考えるときには、自社が「何屋」であるのか、つまり自社の商
     品・サービスによって顧客のどのようなニーズに応えようとしているのかを改め
     て考えてみる必要があります。

     たとえば、書店ではたくさんの本を売っています。

     普通に考えれば、本を売ることそのものが商売ですが、じつは、本を買う人は
     「モノ」としての本そのものが欲しくて買っているわけではありません(コト

     顧客は本を読むことによって新しい知識を得たり、感動することを期待して本
     を購入しているのです。

     このように考えると、書店とは単純に「本屋」ではなく、「知識提供業」、「感動提
     供業」であることがわかります。

     同様に考えると、パソコン販売店は「計算処理支援業」、「インターネット環境提
     供業」であり、住宅販売業は「快適な生活空間提供業」、「家族の団らん提供
     業」などと定義づけることができます。

     このように自社が現在行っているビジネスの本質を考え、その守備範囲をでき
     るだけ広く捉えることによって、新たな事業アイディアを発見する可能性が高ま
     ります。

   2.価値は3層構造で考える
     前述のように顧客は商品そのものではなく、その商品がもたらす効果に価値
     を感じています。

     この価値を3つの視点でさらに分解して考えることで事業アイディアの発想が
     広がります。

     たとえば本を例にすると、第一の価値は想定する顧客の読みたい内容になっ
     ているかという「本質的価値」です。

     顧客ニーズに本当に応えているかどうかという、もっとも重要な部分です。

     すぐに犯人がわかってしまうような推理小説は誰も買いません。

     第二の価値は手にとってみたいと思わせる形状、デザイン、材質になっている
     かという「付随的価値」です。

     物質としての本そのものの「つくり」が好ましいかどうかということです。

     あまりに文字が小さい本や持ち運ぶのに苦労する重たい本は敬遠されます。

     第三の価値は本が売られている「状況的価値」です。

     書籍の分類方法がわかりにくかったり、欠品していたりすると当然売れる確率
     は低下します。

     自社で扱っている商品の価値をこれらの3つの階層で捉えて、それぞれの階
     層で顧客が本当に欲している価値を生み出しているかを考えることも事業アイ
     ディアの発見に役立ちます。

     なおこの分析は新しい事業アイディアの創出だけでなく、既存事業の改善にも
     つなげることができます。

     ◎価値の3層構造 

     ◎事業アイディア創出の視点
      ・本質的価値
       求められるレベルの品質になっているか、違う価値を生み出すことは
       できないか など

      ・付随的価値
       パッケージやデザインは適切か、商品の説明が十分になされて
       いるか など

      ・状況的価値
       品揃えや販売手法は適切か、店頭販売のほかにデリバリー販売も
       可能か など

   3.2種類の顧客ニーズを考える
     さらに商品の価値を顧客ニーズの視点から2つに分けて考えることも有効で
     す。

     顧客ニーズを大きく2つに分けると、
      ・価値創出型ニーズ(やりたいことができるようになるニーズ)
      ・問題解決型ニーズ(やりたくないことをやらなくてすむニーズ)
     となります。

     普及が進んでいるハイビジョンテレビなどは、「より高画質でテレビがみられ
     る」という価値創出型ニーズと、大画面であるのに省スペースという問題解決
     型ニーズを同時に満たしています。

     またこれも普及が進んでいる食器洗浄機や洗濯乾燥機などは皿洗いや洗濯
     といった、できればやりたくないことを代わりにやってくれる典型的な問題解決
     型の商品です。

     自社で扱っている商品にちょっとした工夫をすることで、これまでできなかった
     ことも同時にできるようになったり(価値創出型)、面倒な手順が省力化できる
     (問題解決型)こともあるかもしれません。

     ここにも事業アイディアのヒントがありそうです。

     ここまでは自社の商品をさまざまな角度から捉えることによって事業アイディア
     を創出する方法について解説してきましたが、まったく新しい発想を得るため
     には日頃からの情報収集活動も欠かせません。

     事項以降では効果的な情報収集の方法について解説します。

  世の中全体のトレンドを把握する

   1.事業化のフィルターを通した「ネタ帳」を作る
     我々がテレビや新聞、インターネットなどで毎日受け取る情報量は膨大です。

     情報を受け取ったときには「なるほど」と感じても、放っておけばどんどん忘れ
     てしまいます。

     しかし、事業アイディア創出のためには、これらの情報に接する際に常日頃か
     ら「自社のビジネスに結びつかないか」というフィルターを通して接することが
     大切です。

     こうすることで膨大な情報から事業化のヒントになりそうな情報のみを抽出し、
     その他の情報とともに忘れてしまうことを防ぐことができます。

     ちょうど新聞をスクラップするように有益な情報のみを蓄積していくわけです。

     そして、抽出した情報は端的なキーワードなど、何らかの形で記録として残し
     ます。

     実際に事業アイディアを考える際の「ネタ帳」として活用するためです。

   2.業界情報だけではなくトレンドにも注目する
     それではどのような情報を「ネタ帳」として残していけばよいのでしょうか。

     すぐに思いつくのは、自社が属している業界の情報でしょう。

     同業他社の新商品などの情報は、当然気になるところです。

     実際にこれらの情報に注目し、業界紙や専門誌を購読している方も多いでしょ
     う。

     しかし、まったく新しい発想を得るためには、世の中全体の流れ、つまりトレン
     ドに関する情報収集も必要です。

     ビジネスとして広く受け入れられる事業アイディアを生み出すには、世の中全
     体のトレンド(時流)に関する情報にも敏感になる必要があるのです。

     たとえば、トレンドとしてすっかり定着した「癒し」という言葉について考えてみ
     ましょう。

     「癒し」という抽象的な言葉からは一見するとビジネスアイディアは浮かんで来
     ないように思えます。

     しかし、実際には最近は「癒し」を目的にしたビジネスがいずれも好調です。

     たとえば「ペット関連ビジネス」、「マッサージ」、「岩盤浴」、「家庭用プラネタリ
     ウム」、「自然食レストラン」、「アウトドア関連ビジネス」、「絵本」などさまざま。

     それぞれ売る商品やサービスそのものは違っていますが、ストレス社会に生き
     る現代人が強くもっている「癒されたい」というニーズに応えようとしている点は
     共通しているわけです。

     ◎トレンドをベースにさまざまなビジネスが興隆 
       このように考えると、
        ・自社の現状のビジネスに「癒し」という付加価値をつけられないか
        ・新規事業として「癒し」ビジネスに取り組めないか
       を検討することが事業アイディアの創出につながるとわかるでしょう。

       ちなみに「癒し」以外に最近注目されているビジネスに応用が利きそうな
       キーワードとしては、

       たとえば、
        「健康」、「安全・安心」、「少子化」、「シルバーエイジ」、「いきがい」、
        「3R(リサイクル、リユース、リデュース)」、「ロハス」、「地産地消」、
        「アンチエイジング」、「温暖化」
       などがあげられます。

   3.同じトレンドのなかでもニーズは微妙に変化する
     「癒し」についてもう一度考えてみると、少し前までは庶民の間では景気回復
     の実感などなかったから、基本的には「癒されたい、でも安く」というニーズが
     主流だったでしょう。

     しかしながらようやく景気回復の実感をもてるようになった人のなかには、「高
     くてもいいから癒されたい」という人も増えているでしょう。

     同じトレンドのなかでも必要とされるニーズは微妙に変わっているのです。

     このように、「世の中全体のトレンドは何か」、「そのなかで今必要とされている
     ニーズは何か」、「そのニーズに自社がどのように対応していくか」を考えること
     は事業アイディアを考えるうえで非常に有益なのです。

   4.トレンドとブームを取り違えない
     トレンドと似たような使われ方をする言葉に「ブーム」というものがありますが、
     事業アイディアを考えるうえでこの2つの概念は分けて考える必要がある。

     トレンドとは先にあげた「癒し」のようにはっきりとした根拠があり、長期的に安
     定した広い分野の需要が見込めるものだと考えることができます。

     一方ブームとは、確かにはやってはいるがその根拠がよくわからなかったり、
     極めて短期間に劇的に盛り上がる反面、ピークを越えると急速に消えていく一
     時的な現象のことです。

     事業アイディアに結びつきそうな世の中の現象を「トレンド」と捉えるか「ブー
     ム」と捉えるかによってその対応の仕方はまったく変わってきます。

     トレンドと捉えるのならば、じっくりと腰を落ち着けて長期的・本格的に取り組む
     価値があるでしょう。

     しかしブームと捉えるのであれば、事業化は見送るほうが無難でしょう。

     なぜなら「ブーム」に気づいた段階から自社が追随しても実際に事業化できる
     ころにはそのブームは終焉していることがほとんどだからです。

     自社にそのブームをとらえるだけの経営資源がすでにあり、ほとんど時間的ロ
     スがなく事業化できるといった特殊なケースは除いて、ブームに便乗した事業
     化は失敗する確率が高いといえるでしょう。

     ◎トレンドとブームの違い

   5.逆張りの発想をもつ
     ここまでトレンドを把握した事業アイディア創出の大切さについて述べてきまし
     たが、ときにはあえてトレンドと逆張りの発想をもつことが有効なこともありま
     す。

     ここで逆張りの発想の典型例を紹介しましょう。

     ある靴の貿易商の話です。

     嵐で船が流されて、文明の発達から取り残された離島に漂着してしまいまし
     た。転んでもただでは起きない貿易商は、その島で靴を売ることを思いつきま
     す。しかし出会う島民はみな裸足です。この島では「靴を履く」という習慣がま
     だないのです。

     つまりこの段階ではこの島のトレンドは「素足」なのです。

     そのときその貿易商は次のどちらの感想をもつでしょうか?
      ①靴を履く習慣がない人たちを相手にしても仕方ないとがっかりする
      ②まだ誰も靴を履いていないということは、この島の靴の市場を独り
        占めできる可能性がある

     あくまでトレンド重視で考えれば貿易商の選択肢は①しかありません。

     しかしあえて自らがトレンドを切り開く(靴文化を根付かせる)という気概があれ
     ば②を選択し、大成功を収めることができる可能性もあるわけです。

     これとは逆にトレンドとしては終焉を迎えつつあり、同業他社が相次いで撤退
     している市場にあえて参入するという方法もあります。

     たとえば、レコードプレイヤーはあっという間にCDプレイヤーにその座を奪わ
     れましたが、一部のコアなオーディオファンのなかにはいまだにレコードプレイ
     ヤーの「柔らかい音」から離れられない人たちがいます。

     急速に市場は縮小したとはいえ、消滅したわけではありません。

     撤退企業を尻目にあえて参入し、小さい市場を独り占めすることも可能なので
     す。

  □地域特性を把握する

   1.地元の特性を理解する
     事業アイディアを考える際には、その地域の特性を把握することも欠かせない。

     とくに中小企業の多くは地元を基盤に活動しているので、そこに住んでいる人
     や企業の特性をできるだけ正確につかむことが大切です。

     世の中全体のトレンドを把握したうえで、活動する地域の特性に合わせて事業
     アイディアを修正する必要があるのです。

   2.こんなに大きい地域格差
     極端な例をひとつご紹介しましょう。

     総務省が発表した「家計調査」(平成16年〜平成18年の1世帯当たり年間の
     支出金額)によれば、県庁所在地のなかでもっとも喫茶代が使われているの
     は岐阜市で金額は16,845円、もっとも少ないのは宮崎市で2,359円でした
     (全国平均は5,275円)。

     岐阜市では実に宮崎市の7倍以上の支出をしているわけです。

     岐阜市の1回あたりの喫茶代が極端に高いとは考えにくいので、岐阜市民は
     とにかく頻繁に喫茶店に通っていることになります。

     一方、同じく総務省による「事業所・企業統計調査」で両市の喫茶店の数(平
     成16年)をみてみると、岐阜市は3,446店で、宮崎市392店の9倍近い喫茶
     店がひしめきあっています。

     もし自社で新規事業として喫茶店ビジネスを展開することを検討するとしたら、
     基盤とする地域が、喫茶店に通う文化が十分に根付いているが競争が厳しい
     「岐阜市型」か、喫茶店文化は低いが競争が少ない「宮崎市型」かによって戦
     い方が大きく異なってくるはずです。

     このように事業アイディアを考える際には、実際にそれを展開する地域の特性
     を把握することが非常に大切なのです。

     なお、地域特性を把握するためには、すでにあげた「家計調査」や「事業所・企
     業統計調査」などのほかに「国勢調査」も参考になります。

     国勢調査では平日昼間の人口や住んでいる人の数が市町村単位でわかるの 
     で、自社の商圏が「ビジネス街型」なのか「ベッドタウン型」なのかの傾向をつ
     かむことができます。

     さらに、朝日新聞社が発行している「民力」という書籍も非常に参考になる。

     「民力とは生産・消費・文化などの分野にわたって国民が持っているエネル
     ギーである」と定義されており、都道府県別・商圏別の各種データのほか、独
     自の指標として「民力総合指数」が掲載されています。

     自社の基盤である商圏の特性を把握するうえで、大変参考になるでしょう。

      家計調査報告(家計収支編)平成29(2017)年

      平成18(2006)年事業所・企業統計調査

      平成27(2015)年国勢調査


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