給与体系と評価制度

  ■給与体系

    1.給与体系の基本的な考え方

    (1)能力主義と年功制

      給与の基本給を決める要素として、属人的要素(年齢・勤続年数・学歴)によ
      るものと、仕事的要素(職務遂行能力)による2つがあります。

      前者を年功給、後者を能力給と呼び、我が国の企業の給与システムは、従
      来の「年功制」から「能力主義」へと大きく転換しています。

      それは、経済の高度成長時代を終え、右肩上がりの成長が約束されない状
      況となった今日、年功制における次のような問題点が顕著になってきたから
      です。

       ・従業員の年齢上昇により賃金コストが大きくなる。

       ・能力と賃金額に格差があると、特に若年層のやる気を喪失させる。

       ・年功給で将来の生活保障があると、安易な仕事の遂行になる。

   2.業績主義(歩合制)について 

     「能力主義」における能力は顕在化された職務遂行能力、即ち、仕事ができる
     能力、実績が出せる能力を言いますが、仕事と処遇、業績と処遇の関係付け
     はどちらかというと間接的で、短期的には仕事・業績と処遇は一致させないの
     が一般的です。

     それらは中長期的に見て一致することを前提に能力主義の人事・処遇制度は
     成立しており、短期的な結果だけに目を向けるのではなく、中長期観点から
     じっくり人材を育てその上で育成、開発した能力を適材適所で発揮してもらい
     成果・業績に結 びつけていく考え方です。

     一方、「成果・業績主義」(歩合制)は短期的な結果を重視し、処遇に反映させ
     る考え方で、合理的な様ですが、短期的な成果は個人のみの力で出せるわけ
     ではなく、以下に起因します。

      ・外部要因(不景気による顧客の倒産、天災、保険料の引き下げ、通販
       会社の参入等)

      ・内部要因(経営者のアドバイス・サポート、他の従業員の協力、担当の
       変更等)

      ・本人要因(病気・けが、個人的悩み等)で大きく左右されます。

     更に、経営規模が小さければ小さいほど成果・業績に変動を受けやすいことを
     考えると、「能力主義」に重点を置いた給与体系が望ましいでしょう。

   3. 総額賃金管理 

     給与を支払う際に経営者として留意すべき事項として、総額賃金管理(組織全
     体の賃金総額の管理)があります。

     この管理手法としては、労働分配率による方法を考えてみます。

     これは付加価値(事業活動の結果、新たに生み出された価値=粗利)に労働
     分配率(粗利の中から支払われた賃金、社会保険・福利厚生費などの割合を
     いう)を乗じ、適正賃金総額を算定するやり方です。

     賃金総額(含む役員報酬)ファンド=粗利総額×55%

     ここで算出された賃金総額には、経営者・役員に支払われる役員報酬・役員
     賞与も含まれますので、従業員だけに支払われる賃金総額は、役員分をマイ
     ナスする必要があります。

   4. 賞与(ボーナス)について 

     賞与には報償金的性格や、企業の利潤分配的な性格がありますが、業績変
     動リスクに対応し、賃金総額を調整する安全弁的な機能を与えることもできる。

     すなわち決算の結果、思うように粗利収入が伸びず(または減収となり)、当初
     予定していた賃金総額の支払いが難しい見通しの場合、その調整を賞与支払
     額で行うことが可能です。

     こうすることにより、自社の経営をより安定させることができますし、従業員に 
     とっても生活給としての毎月の給与(月例給)は保証されることになります。

     <賞与金額の決め方例>

       ・従業員給与ファンドの内、20%を賞与分とする。

       ・決算の結果、賃金総額の調整が必要であれば、賞与フアンドで調整す
        る。

     従って賞与金額については、業績により支給金額を決定するということです
     が、全員が頑張り予定以上に業績(粗利総額)が増えれば、多く配分されます
     し、逆もあるということです。

     従業員個々の賞与金額決定方法は、年間の月例給合計額によって、賞与ファ
     ンドを按分配分する方法が簡便かつ納得感も得られやすいと思います。

     金額を賞与支給の都度、査定するという考え方もありますが、評価スキームが
     複雑になるので、避けた方が良いでしょう。
 
  □評価制度 

   評価には、売上など数値で測られる短期的な貢献度を評価する「業績評価」と長
   期的な人材育成を目的とし、人物を評価する「人事考課」があります。

   人事考課における評価の対象は「能力」や「意欲・態度」などが中心となります。

   代理店における評価については、総人件費管理の視点と明確な職務区分が可能
   なことを考慮すると、能力や意欲・態度を中心とした人事考課よりも「実績」や従業
   員が担う「職務」を対象とした「業績評価」に重心を置いた方が望ましいと言える。

   考課の際の留意点は、従業員へのフィードバックを行うルールを設けること、評価
   項目・基準の明確化と公開性および従業員の納得性を重視すること、昇格や昇
   給へきちんと反映させるルールを設けること、などがあげられます。

  □業績評価の目的や考え方

   評価には、売上など数値で測られる短期的な貢献度を評価する「業績評価」と長
   期的な人材育成を目的とし、人物を評価する「人事考課」があります。

   「業績」とは、売上など目に見える数字となって表れる「定量的な結果」や、業務効
   率がどれだけ改善されたか、自店としての強みが確立されたか、などの「重点戦
   略の達成度」などを指します。

   一方、

    (1)各人に課せられた使命に相応しい計画を策定

    (2)それを実践の場で検証

    (3)事業開発・推進など、新たな施策を立てて成果を生み出したか

   をチェックすることが「評価」です。

   業績評価とは、すなわち自社(店)のビジョンを見据え、存続するための収益力確
   保や、将来の成長のために業務効率の改善や強みの確立などを展開してゆくた
   めの「マネジメントの仕組み」と言えます。

   ◎業績評価の項目

    ○業績評価の項目は、職種によって異なります。
     営業職であれば個人の売上や粗利、事務職であれば全社の売上や粗利
     などが評価項目として広く使われています。

    ○チームワークや職場貢献などを重視するのであれば、営業職に対しても
     個人業績だけでなく全社業績を加味することも必要です。

    ○全社業績と個人業績の評価全体に占める割合などを検討することも必要
     になってきます。

    ○年度事業計画に示される予算の立て方についても前年度の実績をもとに
     慎重に設定する必要があります。
     なぜなら、予算が甘く達成率(予実比)が高くなったりすると評価を誤るから
     です。

    ○重点戦略の達成度などを評価する際には、年度初めに設定する目標に
     ついても高い志があるかどうかといった「意欲度」をまず評価し、そして
     年度末に実際にどれだけ遂行できたかといった「達成度」を評価します。

  □目標設定時のポイントと導入の際の留意点

   目標管理制度は、従業員が自ら目標を設定し、その達成度合いを評価するもの
   で、納得性が高く、従業員の意欲も向上させることができる有効的な評価ツール
   として広く使われています。

   どのような目標にチャレンジするのか、といった目標の難易度も「意欲度」として評
   価します。

   この際、目標は、

    (1)明確・具体的であること

    (2)計測可能であること

    (3)達成可能な適切なレベルであること

    (4)代理店としての目標とリンクしていること

   の4つの点を踏まえて設定することが大事です。

   途中経過をチェックし、常に上司がフィードバックしながら、従業員の能力を向上
   させることが望ましいでしょう。

   導入の際には、スケジューリングや、対象者の選定、面接などのフィードバック、
   ルールの策定など十分な準備を行う必要があります。

  □資格等級制度の意義と各種制度

   資格等級制度は、評価制度・給与制度とともに、基本的人事制度の一つです。

   資格等級制度は、

     (1)能力のレベル

     (2)仕事のレベル

     (3)組織上の位置の高さ

     (4)賃金の額のレベル

   の4つのレベルの関係を決定する制度です。

   資格等級制度は、従業員の能力を基準に決定する「能力等級」と仕事の責任・難
   易度を基準に決める職務等級があります。

   両者とも代理店への貢献度や期待値で等級づけするのは同じですが、「能力」の
   側から測定するか、就いている「仕事」から測定するかという違いがあります。

   一般的な能力等級制度は職能資格制度、職務等級制度の一般例には職務資格
   制度などがあります。

   ◎従業員数名規模の代理店では

     ・従業員数名規模のケースでは、資格等級制度を設ける必要はこの時点
      ではないかもしれません。
      しかし、合併等で規模が大きくなるにつれ、資格等級制度の必要性が
      出てくるケースも想定されます。

   ◎資格等級制度のメリット・デメリット

     ・資格等級制度のメリットは、従業員を能力や担う仕事で格付けし、賃金
      を決定できることが挙げられますが、実際には、必ずしも能力に対応した
      仕事を担っている訳ではありません。

      これは、

       (1)職能基準・要件が曖昧なことが多いこと

       (2)年功的に運用されがちなこと

       (3)職種によっては適さない場合があること

      などの問題点があるからです。

     ・資格等級制度も、明確、納得性、公開性を重視し、メリハリのある運用が
      なされなければ、単なる“資格”を与えているだけとなり、モチベーションの
      向上にはつながりません。

  □役職や呼称と資格等級との関係

   「資格等級」に関連する呼称には、「資格呼称」、「役職位」があります。

   資格呼称は資格等級の対外呼称として設けられていますが、役職位の方が広く
   使われています。

   資格等級制度を採用しているのであれば、資格等級は賃金(の一部)のレベルを
   決定する大きな要素になります。

   一方、役職位は対外的な呼称としての意味が大きく、給与との関係では役職手当
   などに留まっているケースが多いと言えます。

   資格呼称と資格等級は相互にリンクしていますが、役職位と資格等級は必ずしも
   一致しているとは限りません。

   特に従業員規模が大きい組織では、役職不足であることが多く、昇進が限られて
   いるため、昇格でモチベーションを上げる工夫をしているケースが多いと言えます。

   ◎従業員数名規模の代理店では

    ・少人数の代理店の場合(10人未満)、資格等級や資格呼称は必要がない
     かもしれません。

     それらを制度化し、運用することを考えれば、むしろ時間と手間とコストが
     かかってしまい、マイナス効果を生んでしまう恐れがあります。

    ・事務系、営業系、経営管理系と職種が明確に区分されていることもあり、
     わざわざ資格を設けなくても、職種別に給与を決定し、業績に応じて賞与
     を変動させる、(つまり、資格等級制度のように能力に応じて変動させる
     わけではない)シンプルな制度が望ましいとも考えられます。

    ・対外的な呼称としての役職位は設けておいた方が好都合といえます。
     このとき、 役職手当を設けるかどうかは、代理店の経営方針に基づきます。

  □役員への登用に関するポイント

   役員は自社(店)の将来を担う人材です。

   役員の役割は、

    (1)従業員や組織の役割期待を明確にすること

    (2)従業員の職務遂行をしっかり管理すること

    (3)代理店組織としてのパワーを最大限に引き出すこと

    (4)そのパワーによる成果を評価すること

    (5)次の戦略を立てて推進すること

   役員を登用する際には、年功や過去の実績だけでなく、上記にあげたような役員
   としての役割を果たせる力量があるかどうか、能力や 資質を厳密に判断すること
   が大切です。

   役員選任において、以下の素質を保有しているかどうかを見極める必要がありま
   す。

    ・広い視野を持っているか

     役員になるからには、広い視野を持っていることが必要です。
     広い視野というのは全社的な観点からものごとを考えることができるか
     どうか、ということです。
     特定の分野のことしか分からないといった人は役員として適格性がある
     とはいえません。

    ・先見性があるか

     経営環境は日々変化し、先を読む力も求められます。
     厳しい競争に打ち勝つためには、その変化に的確に対応することが必要で
     す。

    ・戦略的思考ができるか
     先見性に基づいて戦略を立案できなければならず、そうした思考ができること
     も重要です。

    ・経営的知識があるか

     戦略立案にあたっては、経営的知識は不可欠です

    ・法的知識を持っているか

     コンプライアンスという点からは法的知識も欠かせない

    ・熱意や意欲はあるか

     精神的、肉体的側面では、熱意や意欲がないと始まらない

    ・激務に耐える体力はあるか

     激務に耐えるだけの体力を持っていることも条件となる

   代理店業務の複雑・煩雑化する中、ますます代理店経営の質が問われています。

   たんに増収を図るだけの保険販売仲介業であってはならないはずです。

   代理店業は特殊な業種ではありません。

   サービス業なのです。

   小規模な組織が大多数を占める代理店業だからこそ、今ある体制を効率・効果
   的に活かさなくてはなりません。

   マンパワーに頼った旧態依然としたやり方では通用しないのです。

   人に多くを依存する代理店だからこそ、人材を大切にすることが第一です。

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