社員のやる気を引き出す 
 

  ■やる気のマネジメント

   1.やる気は指示だけでは伝わらない 

     「もっとやる気を出せ!!」

     この言葉は、社長であれば誰もが一度は口にしたことがあるのではないでしょ
     うか。

     しかしながら、繰り返しいって聞かせても、なかなかその社員の態度が改まる 

     ことはありません。

     社長だけではなく、社員自身にとっても「やる気」をもって働いたほうが楽しい
     はずなのに、なぜうまくいかないのでしょうか。

     社員の「やる気」について考えるとき、社長として覚悟しなければならないの
     は、「やる気」とは基本的には社長自身の心のなかからしか湧いてこないとい
     うことです。

     言葉で表現すると当たり前ですが、やる気のない社員を目の当たりにすると、
     ついこの当たり前のことを忘れてしまいがちです。

     社長としては、「給料を払っているのだから、その分やる気を出してもらわない
     と困る」といいたいところですが、残念ながら問題はそんなに単純ではありま
     せん。

     やる気はあくまで気持ちの問題ですから、社長の指示によって一時的に態度
     が改まったとしても長続きはしないのです。

   2.やる気のマネジメント

     ではどうすればよいかといえば、「やる気を出せ」という直接的な指示によるの
     ではなく、社員が自らやる気を出すためにはどうしたらよいのかという具合に
     発想を切り替えることです。

     どのような環境が整えば社員がその気になるかを考えて、一つひとつ手を
     打っていくしかないのです。

     たとえば、会社の業績確保のためには、社長はありとあらゆる手を講じます。

     計画未達の可能性がある部門に対しては直接指導も必要でしょうし、日々の
     経営環境の変化にも早め早めに対応しなければなりません。

     つまり業績確保のためには、きっちりとしたマネジメントが不可欠なのです。

     実は社員のやる気についてもこれとまったく同じことがいえます。

     つまり社長や部門長には、自分が直接コントロールしている部下に対して、

      ・社長のやる気をどの程度高めておく必要があるか

      ・そのためにはどのような施策が必要か

      ・現時点で実際の社員のやる気はどの程度なのか

      ・あるべき水準までやる気を回復するにはどうしたらよいか

     といった社員のやる気に対するマネジメントが求められているのです。

     会社の業績確保のためのマネジメントの場合も、「売上減少」という問題に対し 
     て、「売上回復」という裏返しの答えではマネジメントとはいえません。

     問題解決のためには、「なぜ売上が落ちているのか」という原因の絞り込み
     と、その解決策の立案が不可欠です。

     社員のやる気のマネジメントにおいても、単に「やる気を出せ」という叱咤激励
     だけではなく、やる気が出ていない原因究明とその対策を示したうえで、社員
     のやる気を引き出すように仕向けることが必要なのです。

   3.適正なやる気度合い

     ところで、前述で「社員のやる気をどの程度高めておく必要があるか」という表
     現をしました。

     この部分について、「全社員がつねに最大限のやる気でいるのがよいに決
     まっている」と考える方もるかもしれません。

     もちろんその状態が持続可能であれば、それに越したことはありません。

     しかしながら、最大限のやる気をもって仕事をするということは「全力で脇目も
     振らずに仕事に邁進する」ということであり、全社員がそのような状態を続けて
     いくことは通常不可能です。

     また、社員の資質によっては、「通常は人並みだが、ここぞというときにはもの
     凄い瞬発力を発揮する」という人もいれば、「突出することはないが、安定的に
     人並み以上のやる気を維持できる」というタイプの人もいると思います。

     さらに、役職の差においても求められるやる気の度合いは変わってくるはず。

     たとえば、経営幹部であるのに、たまにしか人並み以上のやる気を発揮できな
     いようでは明らかに不十分です。

     経営幹部には、社長に匹敵するようなやる気を常時発揮してもらわなければ
     なりません。

     このように、やる気のマネジメントとは社員の資質差、役職差なども把握し、
     個々の社員ごとに、そして部門や会社全体としてそれをどのように高い水準で
     維持していくかということなのです。

     では、実際に社員のやる気を高めていくためにはどのような施策が必要なの
     でしょうか?

  □やる気を高める原則

   社員のやる気を高めるためには、さまざまな手法があります。

   仕事内容や社員個人の資質によって効果の度合いは若干異なってきますが、い
   ずれにも共通するのが、次の4原則です。

    ①経営理念の明確化と浸透

    ②仕事の価値の認識

    ③自己成長の認識

    ④平等で公平な評価

   どれも重要ではありますが、もっとも基本的な条件となるのが、①の「経営理念の
   明確化と浸透」です。

   1.経営理念を明確化し浸透させる

     経営理念とは、「自分たちはこうありたい」、「社会に対してこのような貢献をし
     たい」といった会社が存在する意義を明文化したものです。

     私たちは、会社に限らずさまざまな組織に属しています。

     楽しむためだけの趣味の会もあれば、安心できる生活実現のための地域の自
     治会のような組織もあります。

     これらの会では多くの場合、その会則の最初に「本会の目的」が示されてお
     り、会員は目的達成のために自分は何をすればよいのか、どのような心構え
     で臨むべきかを理解することができます。

     ところが、会社のなかには、この目的、つまり経営理念が作成されていないこ
     とも多く、またあったとしても非常に曖昧なもので、一般社員はその意味がわ
     からない場合も少なくありません。

     社員のなかには、もっとも重要な組織のひとつであるはずの「会社」の目的が
     よくわからずに働いている人が多いのです。

     社員は人生の多くの時間を会社で使います。

     膨大な自分の時間を使っている会社は「いったい何をやろうとしているのか」、
     このことを社員が理解し、それに共鳴しているかどうかで「やる気」のベースに
     大きな差が生じることはいうまでもないでしょう。

     社長のなかには、「うちの社員は給料のために働くと割り切っているから仕方
     ない」と嘆く方もいるかもしれません。

     確かにあえてこのような姿勢を示す社員もいますが、いい方を変えれば社員
     が魅力を感じるだけの理念を示せていないから、割り切るしかないのかもしれ
     ません。

     このように、経営理念が浸透しているかどうかは、社員のやる気を十分に引き
     出すための不可欠な条件といえます。

     それなしには、その他の施策の効果も限定的になってしまいます。

     経営理念に必要な条件としては、

      ・会社は社会全体に対して、顧客に対して、社長に対して
       どのような想いをもっているかを示すこと

      ・社長自身の考え・価値観で社長自身が作ること

      ・具休的なわかりやすい言葉で表現すること

     などが考えられます。

     また、経営理念を浸透させるためには、その理念を作成するにいたった背景
     や、理念実現のためにはどのような姿勢が必要かなどをきちんと伝えることが
     大切です。

     朝礼などで繰り返し説明したり、経営理念を書いた紙を事務所に掲げるなど、
     社員がつねにそれを意識する状態を作ることが有効でしょう。

   2.自分の仕事の価値を認識させる

     たとえば、ある工場のラインで、毎日ひたすら「ねじ回し」の工程だけをやって
     いる人がいたとします。

     いろんなパーツが流れてきますが、その人がやるのは「ねじ回し」だけです。

     最終的にそれがどのような製品になるのか、どのような使われ方をするのか
     はまったくわかりません。

     では、この人は長期間に渡って「やる気」を高い水準に維持することができる
     でしょうか? 

     いくら工場長が「もっと効率を上げろ」と怒鳴ったところで、それは難しいでしょ
     う。

     ここまで極端な例ではなくても、一般の会社のなかでもこのようなことは起こっ
     ています。

     やっていることは毎日同じ定型業務で、その仕事を誰がどのように喜んでくれ
     ているのかまるでわからない、つまり自分がやっている仕事の価値がまるでわ
     からないのです。

     また、比較的仕事の価値がみえやすい営業マンについても考えてみましょう。

     ある営業マンは優秀で毎月1000万円の新規受注を決めてきます。

     ここでは、彼が自部門や会社に対して1000万円の価値をもたらしていること
     は明らかです。

     上司からも褒められて、それなりのやりがいを感じることはできるでしょう。

     しかしそれが長期間続き、もはや当たり前になったとき、彼のやる気はどうなっ
     てしまうでしょうか。

     このとき、彼に気づかせるべきは、

      社内的な価値ではなく、社外にもたらす価値

     です。

     つまり彼が販売している顧客に対してどのような価値をもたらしているのかを
     わからせることが必要です。

     さらには顧客への価値提供を続けることによって、社会全体にも大きな価値を
     もたらしていることを認識させることで、営業マンのやる気は高まるのです。

     ●価値の多重構造

      社長や部門長は個々の社員がやっている仕事が、社内的、社外的に
      どれだけ価値があるかを繰り返し説明することが必要です。

   3.自分の成長度合いを認識させる

     また、アウトプットとしての仕事の価値だけではなく、社員自身の価値がどのよ
     うに向上しているのか、つまり社員の成長度合いを認識させることも重要だ。

     人間は「昨日できなかったことが、今日はできるようになった」と実感したとき、
     大きな達成感を味わうとともに、さらに上をめざそうというやる気が高まるもの
     です。

     ところで、この成長実感の度合いは、社員の保有能力によって変わってくる。

     たとえば、新入社員時代には、顧客とのアポが取れたことだけでも日々成長を
     感じることができます。

     ゼロからスタートした社会人としての基礎固めの段階ですから、日々能力向上
     が実感できるのです。

     ところが、中堅社員クラスになって一通りの仕事ができるようになると、「初め
     てできた」という仕事はどんどん減ってきます。

     なかには「5年前の自分と今の自分は何も成長していない」と感じる人もいるで
     しょう。

     そして、成長実感がなければ「さらに上をめざそう」というやる気はなかなか湧
     いてきません。

     最悪の場合は「こんなもんだろう」という具合に淡々と仕事をこなすだけの習慣
     が身についてしまいます。

     社長としては、中堅以上の社員が「社会人平均レベル」の能力を発揮している
     だけで満足できるはずはありません。

     彼らには自分の右腕として、経営幹部として奮闘して欲しいと考えて当然で
     す。

     そこで、特に中堅クラスの社員に対しては、かなり意識的に自分の成長度合
     いを実感させる、逆にいえば「まだまだ成長できる余地があり、十分には成長
     していない」ことをわからせるために「刺激」を与える必要があります。

     そこで重要になってくるのが、

      会社として彼らに将来発揮して欲しい「会社(社長)の期待」と社長
      自身が今後どのように成長していきたいのかという「個人の目標」を
      明確にして、擦り合わせること

     です。

     まずは、社長自身ができるだけ具体的にその期待像を示します。

     たとえば「3年後には現在の中堅幹部の誰かに営業部門を統括して欲しい」と
     いった期待です。

     ここで、重要なのは期限をはっきりと示すことです。

     「そのうちに」、「将来的には」では現実味がありません。

     もちろん、無条件で誰かに任せるわけではありません。

     「営業部門を任せるためには、これだけの能力や実績が必要」とクリアすべき
     ハードルを明確化したうえで、期待を示すことです。

     これは会社(社長)として「こんな風に育って欲しい」という成長の方向性をはっ
     きりと示したということです。

     次に重要なのは、社員自身の目標です。

     社長が密かに「彼であれば」と目星をつけていた社員がいたとしても、その社
     員の目標が「スペシャリストとして独立すること」として固まっていれば、彼の心
     に響くことはありません。

     しかし、「自分は営業のトップとして組織を動かしてみたい」と社長の期待通り
     の目標をもっている社員がいれば、その社員のやる気は強烈に刺激されるは
     ずです。

     また仮に漠然と「いつかは経営幹部になりたい」としか考えていなかった社員
     にとっても、めざすべき選択肢のひとつが明確に示されたことになります。

     自分の目標がクリアになり、大いなる成長のきっかけになるかもしれません。

     このように、特に成長とやる気が停滞気味の中堅幹部に対しては、会社(社
     長)としての成長期待を示し、彼ら自身に自分の将来の目標と真剣に向き合
     わせることが、非常に重要なのです。

   4.平等で公平な評価を行う

     最後に忘れてはならないのが、平等で公平な評価です。

     「いくらがんばっても結局はあの人ばかりが評価される」、「そもそも評価基準
     がさっぱりわからない」、こんな状態が続いていたら社員のやる気は高まるは  
     ずはありません。

     多くの中小企業では、社員の評価は社長自身の「さじ加減」で決めているのが
     現実です。

     社長としては、社員の能力や評価は十分に考慮しているつもりでも、それがあ
     らかじめ明文化されていないために、社長の恣意性が疑われるのです。

     社員も多少の疑問を感じながらも「社長が決めたことだから」と最終的には納
     得します。

     しかし、決して好ましい状況とはいえないでしょう。

     中小企業のあるべき人事評価について、絶対に外してはならないポイントとし
     て「平等」と「公平」の考え方について説明しておきましょう。

     「平等」とは読んで字のごとく、全員が等しいということです。たとえば社員10
     人に対する人件費の総枠が4000万円であれば、完全平等のなかでは一人
     一律400万円ということになります。

     しかし、経験や能力に差があるすべての社員に対して、一律支給は問題があ
     ることは明らかです。

     平等とはもう少し詳しく説明すると、「ある条件のもとで等しい」という意味で
     す。

     たとえば「男女雇用機会均等法」に規定されているのは、「他の条件が同じで
     あるのに、男女という性別によってのみ差をつけてはいけない」ということ。

     能力の差による待遇の違いは禁止していません。

     また、会社の評価における「公平」とはあらかじめ決められたモノサシ通りに処
     遇する、つまりルールに基づいて差をつけるということです。

     重要なのは「社長の頭のなかでは公平である」という理屈は通用しないことで
     す。

     これらをまとめると、社員のやる気を引き出すためには、たとえば、

      ・年齢の高低や社長との血縁開係の強さなどは一切考慮しない(平等)

      ・業績や能力の速いは十分に考慮してルールに従って評価に差を
       つける(公平)

     という具合に、

      「何を考慮し、何を考慮しないか」というルールをあらかじめ示して
      おくこと

     が重要になります。

     ここまで説明してきたように、社員のやる気を十分に引き出すには、さまざまな
     工夫が必要です。

     そして、そのやる気を上手にマネジメントしていくことが求められます。

     不景気のなか、業績確保のために日々奔走している社長にとっては、随分と
     面倒に思えるかもしれません。

     しかし、長期的にみれば、会社の存続・成長には社員のやる気がもっとも重要
     な要素のひとつであり、その比重は時代とともに高まりつつあることも忘れて
     はならない。

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