販路開拓の考え方


  ■新規販路開拓の重要性

   1.既存顧客頼みでは受注は「先細り」

     中小企業の取引構造の特徴として、取引先が元請け企業のみであったり、ま
     た、古くから付き合いがある企業だけであるなど長期間「固定化」していること
     があげられます。

     もちろん昔からの取引先を大切にすることは重要ですが、時間とともに先方企
     業や自社の競合企業の状況も変化していきます。

     従来と変わらない受注額を今後も維持していけるかどうかはわかりません。

     特に景気低迷が長く続く昨今の状況においては、固定化した取引構造だけで
     は受注額は「先細り」していくと考える必要があります。

     自社に問題があるわけではないのに、先方企業の都合で受注額が減らされる
     のは決して珍しいことではありません。

     また、取引先の予期せぬ倒産によって、自社の経営が大きな打撃を受けるこ
     とも考えられます。

     自社の取引構造を盤石なものにしていくためには、
     既存顧客の十分なフォローとともに新規顧客獲得に向けた計画的かつ継続的な
     取り組みが不可欠です。

   2.新規顧客獲得のパターン

     (1)紹介による販路開拓

       新規顧客を獲得する方法としてもっとも一般的なのは、「既存取引先」から
       の紹介でしょう。

       おそらくほとんどの社長は取引先に紹介を依頼したことがあると思います。

       自社のことを十分に理解してくれている先からの紹介ですので、紹介さえし
       てくれれば、実際の受注に結びつく確率も高いものです。

       また、紹介先からのさらなる紹介も期待できます。

       紹介はあくまでも取引先の「好意」によるものですから、自社の思惑通りに
       紹介が進むとは限りません。

       しかし、後述のような工夫をすることによってスムーズな紹介を促すことは
       できます。

       既存取引先からの販路開拓は範囲こそ限定されているものの、即効性が
       期待できる方法です。

       紹介に向けて最善の手は打っておくべきでしょう。

     (2)自社独自での販路開拓

       次に考えられるのは、自らが主体となって新規顧客を開拓する方法です。

       取引先からの紹介頼みではなく、独自のアプローチで販売見込み先を発掘
       するところから始める必要があります。

       大企業であれば、これらの活動は営業のための専任部署で恒常的に行わ
       れています。

       しかし、中小企業においては、この部分が仕組みとして確立しているケース
       は意外と少ないようです。

       何かの縁でたまたま知り合いになった販売見込み先について、だんだんと
       親しくなって新規受注につながることはあっても、「いつまでに何社の販売
       見込み先を獲得する」、「そのなかで何社と実際の受注につなげる」といっ
       た明確な方針は立てられていないことが多いのです。

       そのおもな理由は、自社独自の新規顧客獲得の重要性は認識していなが
       らも、「何から始めたらいいかわからない」、「新規営業に割ける人員がいな
       い」などの理由で十分な取り組みがなされていないことです。

       つまり「やりたいけどできない」として最初から諦めてしまっていることが多
       いのです。

       特に数ある未開拓先(販売見込み先になるかどうか不明)のなかから、「ま
       ずは販売見込み先を見つける」という最初の一歩が大きなネックになって
       いるようです。

       大企業は豊富な資金力による大規模な広告宣伝など、「物量作戦」でこの
       最初の一歩を突破していますが、中小企業にも対応可能な施策はたくさん
       あります。

       次項以降では、「紹介による販路開拓」、「自社独自での販路開拓」の2つ
       に分けて、それぞれのポイントについて説.明していきます。

  □紹介による販路開拓

   既存取引先からの紹介はあくまで「相手頼み」であることは間違いありません。

   しかし、うまくいけば、短期間で新規受注に結びつく効果的な方法であることも事
   実です。

   ここでは効果的に紹介を受けるためのポイントについて紹介します。

   1.三者三様の目的がある

     取引先から紹介を受ける際の自社の目的は、「新規顧客を獲得したい」の一
     点です。

     では、この紹介依頼に応じようとする取引先、さらには紹介先の目的はどのよ
     うなものでしょうか。

     以下に自社A社、取引先B社、紹介先C社として整理してみます。

     A社(自社)としては、この3社の目的が実現するように上手にコントロールする
     ことが望まれます。

     ここでB社の立場で考えてみると、べースとなっているのは「A社の役に立ちた
     い」という好意でしょう。

     これは日頃からA社に世話になっているから役に立ちたいという感情と、紹介
     することでA社とさらに関係を強化しておきたいという冷静な判断の両面があ
     るでしょう。

     また、B杜にとってC社はすでに取引先である、あるいは社長同士が友人など
     大切な関係にあります。

     したがって、十分に信頼できない企業をC社に薦めることはできません。

     B社はA社を紹介することで、B社とC社の関係が深まることも期待している。

     当然ながらA社のことをよくわからないのにC社に薦めることなどありません。

     さらにC社の立場で考えてみると、信頼できる新規発注先を探したいというの
     が基本的な目的です。

     C社は信頼できるB社から紹介を受けることで、自力でゼロから発注先を探
     す、あるいはまったく事情のわからない新規売り込み先からの営業攻勢に煩
     わされるという手間とリスクを省くことができるわけです。

     また、B社からの紹介を受けた企業に発注することでB社との関係を強化した
     いという狙いもあるでしょう。

   2.自社および自分(社長)自身をB社に十分理解してもらう

     紹介がスムーズに進むためには、まずはA社のことをB社によく知ってもらう必
     要があります。

     B杜に卸してA社の特徴や強みがきちんと伝わっていないと、B社はC杜に紹
     介してあげようとは思いません。

     A社としてはB社と長い付き合いであり、A社のことは十分にわかってくれてい
     るだろうと考えたとしても、必ずしもそうとは限りません。

     B社はたんに「これまで付き合ってきたから」という理由だけでA社と取引を続
     けている可能性もあります。

     またA社が①②③…という複数の商品を扱っている場合に、B社が購入してい
     るのが①だけであれば、B社はその商品のことしかわかりません。

     仮にA社にとっての強みがもっとも発揮されている商品は②③であったとして
     も、そのことはB社にはまず伝わっていません。

     このままでは紹介してくれる先の幅は限定されたままです。

     したがって、特定の商品だけではなくA社の商品全般やA社の強みとしている
     技術などについてもB社に確実に理解してもらっておく必要があります。

     さらに紹介を行う場合はA社が「会社として信頼できるかどうか」というだけで
     はなく、A社社長が「人間として信頼できるか」ということも大きな判断材料にな
     ります。

     中小企業間の紹介においては、むしろこちらのほうが重要な要素になるかもし
     れません。

     そのためB社のような重要な取引先については、A社社長自らがB社社長と常
     日頃から親交を深めておくべきでしょう。
 
   3.紹介しやすい環境を整える

     B社が誰かにA社を紹介してあげようと考えた際に、実際の行動に移しやすい
     環境を整えておくことも大切です。

     たとえば、自社の会社案内や商品案内などについても、あらかじめB社に何部
     か預けておき、C社など紹介先に対して気軽に渡してもらえるようにしておくこ
     となどは有効です。

     また、B社はC社に対してB社というフィルターを通した紹介をすることになりま
     す。

     たとえば「自分の取引先でA社という会社がある、この会社について自分は『こ
     う思う』、だからあなたにぜひ紹介したい」と紹介します。

     このなかの『こう思う』の部分がB社のフィルターです。

     C社からみると、もっとも重要な情報はまさにこの部分です。

     ここで「お薦めだよ」といってもらえるか「特に問題はないよ」で終わるかどうか
     では天と地ほどの差があります。

     もちろん、このフィルターはあくまでB社の評価次第ですから、A社が直接コント
     ロールすることはできません。

     しかし、それをできるだけ魅力的に伝えてもらうための工夫はできます。

     そのひとつは、A社がもっともアピールしたいことを短いキャッチコピーにして日
     頃の付き合いのなかで繰り返し伝え、相手の頭にその情報をインプットしてお
     くことです。

     そうすることで『こう思う』の部分にその言葉を組み入れてもらいやすくなる。

     たとえば「短納期で高品質」というキャッチコピーを作っておき、B社がそれに
     納得してくれれば、その言葉通りに紹介してくれる可能性は高くなります。

     さらにA社に対するアンケートを定期的にB社に応えてもらっておくことも有効
     です。

     本来アンケートはA杜の商品やサービス改善などのために行うものですが、こ
     のアンケートの目的はむしろその逆、つまり「A社のよい部分を再認識してもら
     うため」に行うものです。

     アンケートに記入することでB社に「A社にはこんな優れた点があるから長く付
     き合っているんだなあ」というA社の強みを改めて確認してもらい、それを紹介
     の際の評価として使ってもらいやすくするのです。

     もちろんアンケートでA社に対する改善要望が出た場合には真摯に対応する
     必要があることはいうまでもありません。

   4.B社に感謝の意を伝え、状況を報告する

     新規の販売見込み先としてC社の紹介を受けた以上、自社とC社がその後ど
     のような関係になったかをB社に報告するのは当然です。

     また、B社にとってA社を紹介したのは、「A社という信頼できる会社を紹介する
     ことでC社の役に立ちたい」という目的もあります。

     紹介したことによって本当にC社のメリットにつながったのかどうか、逆にA社
     が無茶な営業をしてC杜に迷惑がかかったのではないか、という点をB社は大
     変気にかけます。

     したがってB社に対してはC杜に初訪した際の様子や、その後の営業活動、さ
     らには成約後の取引状況などについてもタイムリーに報告する必要がある。

     なお、せっかく紹介してもらいながら取引条件が合わずにA社からお断りせざ
     るを得ないこともあります。

     この場合にはその旨をきちんとB社に伝え、十分に納得してもらうような配慮
     が求められるでしょう。

  □自社独自での販路開拓

   自社独自で販路を開拓していくにあたって、中小企業が特に苦手としているの
   は、最初の一歩、つまり販売見込み先の発掘です。

   ここでは、それを突破するための具体的手法についていくつか紹介します。

   1.交流会などへの参加

     各地の商工会や金融機関、同業者組合など、参加企業同士の交流促進を日
     的とした団体は数多くあります。

     これらの団体に参加することで、さまざまな企業と接点をもつことができます。

     直接に販売見込み先となる相手が見つかる場合もありますし、顧客を紹介し
     合える同業者仲間とつながりをもつことも期待できます。

     まずは自社の存在や特徴を広く知ってもらうためにも、これらの交流会に積極
     的に参加してみましょう。

   2.異業種企業とタイアップ

     自社と直接競合しないような相手とタイアップして互いに客を紹介し合う、ある
     いは競合でセット商品を提供するという方法もあります。

     たとえば、一般消費者向けビジネスでは結婚式場と花屋、法人向けビジネス
     では工事会社とリース会社のようなタイアップが行われています。

     自社の販売見込み先になりそうな顧客と、すでに商売をしているような企業に
     アプローチして、双方に有益な提案をすることができれば、有力なビジネス 
     パートナーになることが可能です。

   3.インターネットによる情報発信

     自社の情報をインターネットで発信して広く販売見込み先を募ることも有効で
     す。

     最近では中小企業においてもほとんどの企業で自社のホームページを作成し
     ていますが、販売見込み先発掘ツールとして有効に機能しているケースはごく
     わずかしかありません。

     有効に機能させるための最初のハードルは「自社サイトにたどり着いてもらう
     ための仕掛け」です。

     顧客が最初から自社サイトにダイレクトにやってくることは、まず考えられませ
     ん。

     インターネット上ですでに知名度が高く、アクセス数も多いさまざまな業界サイ
     トがあります。

     多少の費用はかかりますが、それらのサイトに自社のリンク先を掲載してもら
     い、そこからのリンクを通じて自社サイトに来てもらうのが最初は現実的です。

     また、内容の作成の際には、相手の立場に立った情報を掲載する必要があり
     ます。

     たとえば、自社商品の説明や強みなどについては、できるだけデータなどの客
     観的な根拠を示すこと、自社商品を使うことでどんな問題が解決できるのか具
     体的な利便性を示すこと(消費電力○○%ダウンなど)が必要になります。

     すでに自社商品を使ってくれている取引先の自社商品に対する評価などを掲
     載することも、信頼性を高めるうえで効果がある。

     さらに相手が手軽に連絡できるような問い合わせフォーマットを用意しておくこ
     とや、問い合わせには遅くとも翌営業日中には返信するなどの即応体制も求
     められます。

   4.まったく新しい市場を開拓する

     さらに発想を広げて、既存取引先の同業他社など目前の販路だけではなく、
     まったく新たな市場を開拓していく方法もあります。

     たとえば「ターゲットを地元地域だけではなく全国に広げる」、「法人向けに販
     売していた商品を一般消費者にも販売する」、「代理店制度を導入して協力企
     業を通じて売ってもらう」などがこれにあたります。

     最近ではインターネットを活用して新たな販路を獲得している企業も増えてい
     ます。

     そのなかには、これまでは法人向け(プロ向け)販売が常識だった商品に
     ちょっとした工夫を加えて、広く一般消費者向けに販売することで成功を収め
     ているケースもたくさんあります。

     たとえば、プロ向けに売っていた「レンガ」に若干の手を加えて、素人でも作れ
     るレンガの花壇キットを一般消費者に直販している例もみられます。

     直販なのでより大きな粗利が期待できる点も魅力です。

     これらの一般消費者向けの販売は、おもにインターネット上のショッピングモー
     ル(商品を紹介する仮想の商店が集まったWebサイト)で行われています。

     ショッピングモールへの出店は、商品をインターネット上に掲載して、決済でき
     る仕組みを簡単につくり、サイト運営のプロのアドバイスも受けることができる
     ので、もっとも手軽にはじめることができる直販の方法のひとつだといえる。

     特に現有資産に限りがある中小企業にとって、インターネットの活用は避けて
     通れません。

     中には、今もってHPを作成していない中小企業が少なくありません。

     HPは活用次第で大きな効果を発揮します。

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