マーケティングの重要性


  ■中小企業のマーケティング

   1.マーケティングの重要性

     報道では「景気回復の兆しが見えてきた」といっているが、中小企業の経営者
     のなかで、景気回復を実感されている方はむしろ少数派なのではないでしょう
     か。

     大企業は業績を回復させるために、大規模なリストラや合併など、さまざまな
     痛みを伴った改革を実施してきました。

     そしてそのような大企業が取引相手として、中小企業を選ぶ際の基準が厳しく
     なっており、以前よりも大きなメリットを与えてくれる中小企業としか取引を行わ
     なくなってきているようです。

     ここに景気回復の波が、中小企業になかなか波及しない大きな原因がありま
     す。

     これまでのように、景気回復とともに仕事が増えるような状況ではなくなってい
     るのです。

     しかし、これは逆に考えると、以前は自動的に他社に流れていた大企業の仕
     事を、自社が獲得する可能性もあるということです。

     そして他社に先んじて仕事を獲得していくために必要なのが、ここに紹介する
     マーケティングの発想です。

     今こそ、中小企業にとってマーケティングが重要であるといえます。

   2.マーケティング

     マーケティングという言葉は、誰もが一度は聞いたことがあるはずです。

     しかしその意味については「わかったようで、じつはよくわからない」という方も
     多いのではないでしょうか。

     マーケティングとは簡単にいうと、
       商売の鉄則である「客のことは客に聞け」を、大規模に行うこと
     にほかなりません。

     少数の特定の相手とだけ取引するのであれば、鉄則の言葉通りにすべての
     顧客にそのニーズを聞くことができます。

     しかし事業が拡大し、多数の企業と取引するようになると、全員のニーズを直
     接聞くことは難しくなります。

     仮に聞けたとしても、それはあくまで既存客のニーズであり、まだ接触したこと
     がない見込み客のニーズはわかりません。

     また、顧客のニーズは絶えず変化し多様化しています。

     前述のように、大企業が取引先として中小企業に求めるニーズも変化してい
     ます。

     顧客のもつニーズをできるだけ正確に把握し、これに応えていくことがマーケ
     ティングの基本です。

  □顧客ニーズは商品ではない

   1.ニーズは商品・サービスがもたらす「効果」

     たとえばパソコンを販売している会社がお客様のニーズを考えるときに、「お客
     様はどんなパソコンを欲しがっているだろうか」というアプローチだけでは限界
     があります。

     というのも、お客様は機械そのものとしてのパソコンが欲しいわけではなく、
     「複雑な計算を自動的にやってくれる」、「簡単に文書作成ができる」といった
     パソコンがもたらすさまざまな利便性を求めているからです。

     もしパソコン以外の機械でこれらの利便性を享受できるならば、お客様はその
     機械も選択肢に入れて購入を検討するわけです。

     このように考えると、この会社の商売は表面上は「パソコン販売」ですが、本当
     は「計算処理効率向上支援業」、「文章作成支援業」であることがわかります。

     つまり、
      自社で扱っている商品やサービスがもたらしている効果は何であるかを
      改めて確認し、自社が本当は「何屋」なのかを再確認することが大切。

     そうすることによって、その効果をもっと大きくできないか、あるいはさらに違っ
     た効果を付加できないかを考えていくことによって、より一層ニーズに直結した
     商品開発、サービス開発につなげることができます。

     顧客ニーズを考えるときには「お客様がどんな商品を欲しがっているのか」で
     はなくて、「その商品によってどんな効果を得たがっているのか」をベースに考
     える必要があるのです。

   2.表面化していないニーズ

     また顧客ニーズとは別に「顧客ウォンツ」という言葉があります。

     これは顧客ニーズと違って、顧客自身まだどんな効果を得たいかがわかって
     いない、つまり、まだ顕在化していないニーズのことです。

     パソコンを例にとると、パソコンが登場した当初から表計算ソフトやワープロソ
     フトはありました。

     その頃の顧客ニーズの中心は「計算やワープロ機能の強化」にあったでしょ
     う。

     ところが今では通信環境の整備などによって、インターネット経由で動画も楽し
     めるようになりました。

     これは一昔前であれば考えられなかったことです。

     このようにパソコンが登場した当初からあった「計算やワープロ機能の強化」と
     いう顧客ニーズに対し、当時は誰も想像できなかった「動画を楽しみたい」とい
     うニーズのことをウォンツと呼びます。

     すでに顕在化している顧客ニーズに対してはさまざまな企業が凌ぎを削ってい
     ます。

     これに対して、まだ顕在化していないウォンツにいち早く気づき、それに対応で
     きれば、大きな成果が期待できるのです。

   3.ニーズやウォンツと自社の強みの接点を探る

     当然ながら世の中には、さまざまなニーズやウォンツが存在しますが、それら
     にすべて対応することは不可能です。

     そのなかから、自社のもつ強みがもっとも有効に機能しそうなニーズ、ウォンツ
     を選ぶことが大切です。

     そして、それに応えるために経営資源を集中していき、同業他社も同じような
     ターゲットを狙ってきた場合に、どのように打ち勝っていくかという差別化策も
     検討する必要があります。

     よく「経営は選択と集中」といわれますが、これはここまで述べてきたように、
     ニーズやウォンツと自社の強みを重ね合わせて適切な事業分野を選択し、そ
     こに集中して取り組むということなのです。
   
  マーケティングの4つの戦略  

   ところでマーケティングとは商品そのものを対象にした活動だけにとどまらない。

   たとえば、その商品が顧客の要望を満たしていても、販売店が限られていれば多
   くの顧客はそれを手にすることができません。

   また製造方法にむだがあり、顧客のニーズ以下の価格を提示できないとやはりそ
   の商品は売れません。

   つまりマーケティングとは、製造方法、流通経路、販売促進、企業イメージなど、
   会社そのものを顧客のニーズに沿った形に変えていく活動といえます。

   マーケテイングの発想で会社そのものを変えていく際には、通常「マーケテイング
   の4P」、すなわち、「商品」(Product)、「価格」(Price)、「流通経路」(Place)、
   「販売促進」(Promotion)の4つの要素からアプローチしていきます。

   1.商品(Product)戦略

     最初の要素は商品そのものです。

     もっとも大切なのは企業の側から考えた「良い商品を作って売る」という発想で
     はなく、前述のように「顧客ニーズに応える商品を売る」という発想をもつこと。

     商品はニーズに応えるための手段に過ぎません。

     中小企業の商品戦略として、ニッチ(隙間)なニーズにきめ細かく応える商品を
     開発することがあげられます。

     これはニッチなニーズは、それだけ市場規模も小さいため、大企業が参入して
     くる可能性が低いからです。

     中小企業は、大企業がひしめく巨大市場で1%のシェアを狙うよりも、小さな市
     場で大企業との競合を避け、No.1(オンリー1)を目指すほうが向いている。

     顧客ニーズを考えるときに、ある商品を使ってさらに新たな利便性を提供でき
     ないかという視点(価値創出型)と、その商品が宿命的にもっている問題を解
     決できないかという視点(問題解決型)の、2つのアプローチで考えると、よりわ
     かりやすくなります。

     たとえば、携帯電話の新たな利便性を例にとると、価値創出型の視点としては
     「携帯で買い物の決済をしたい」、「携帯をコンサートのチケット代わりにした
     い」などが考えられます。 

     また問題解決型の視点としては、携帯電話であるがゆえの「バッテリーの問
     題」、「複雑な操作方法」などが考えられる。

     このうち、「複雑な操作方法」を解決した商品として、機能を最低限に絞り込ん
     だ簡単携帯が大ヒットしたのは記憶に新しいところです。

     自社で扱っている商品をこのような視点から再度見直してみると、新商品開発
     の方向性が見えてきます。

     なお、ある商品がヒットすると必ず同じようなニーズに応える商品が登場する。

     それらに対抗するためには、商品そのものの利便性(本質的価値)向上だけ
     ではなく、デザイン、包装、アフターサービスといった付加的な部分(付加的価
     値)を工夫することも一つの差別化策になります。

   2.価格(Price)戦略

     第2の要素は価格をいくらにするかということです。

     価格の決め方にはいくつかの方法がありますが、通常は以下の3つの方法を
     組み合わせて決定する。

     まずは商品の製造コストに、会社として確保したい利益を乗せる方法です。

     同じ商品であれば、通常は値段を下げたほうがたくさん売れますが、その分だ
     け利益が出にくくなります。

     そこで利益を確保できるギリギリのラインが、この方法での最低価格ということ
     になります。

     次の方法として、競合企業との競争を踏まえた価格の決め方があげられる。

     競合企業が同様の商品を出している場合、通常は、競合企業よりも価格を高
     くすると売れなくなります。

     そこで競合企業と同程度の価格、できればそれを下回る価格設定ができれば
     有利ということになります。

     しかしながら、スケールメリットの大きい大企業とそうではない中小企業が価格
     競争をした場合、大企業優位は否めません。

     他の要素で大企業と差別化し、価格競争にできるだけ巻き込まれない工夫を
     することが重要になります。

 
     3つ目の方法は、顧客の「これくらいなら払ってもいい」という値頃感からの決
     め方です。

     顧客は商品の価格に対して、「高過ぎる」、「高いけれど許容できる」、「割安感
     がある」、「安すぎて逆に不安だ」といった値頃感をもっています。

     人によって値頃感はさまざまですが、商品の価格が、多くの人の「高いけど許
     容できる」と「割安感がある」という値頃感の間に入っていれば、商品は売れや
     すくなります。

   3.流通経路(Place)戦略

     第3の要素は、商品供給者から顧客までの商品の流れである流通経路です。

     たとえば自社が消費者向け商品のメーカーである場合、おもな流通経路として 
     は、自社(メーカー)→ 卸売業 → 小売業 → 消費者といった流れが考えられ
     ます。

     そして商品を欲しいと思った人がその商品を確実に買えるように流通経路を
     整備していくことが、この戦略の基本となる。

     流通経路は、できるだけたくさんの流通業者に扱ってもらう場合と、あえて流
     通業者を限定する、あるいは自社の直営店を出すなどして独自の流通経路を
     築く場合があります。

     前者は一気に大量販売できる可能性がある半面、最終的に誰がどのように 
     売っているか管理できないため、商品の最終価格のコントロールが利かない、
     会社や商品のイメージ維持が困難といったデメリットがあります。

     一方、後者は急速な大量販売が難しい、独自の流通経路の構築や維持に手
     間と費用がかかる半面、商品の価格やイメージをコントロールしやすいのが特
     徴といえます。

     また、最近では、通信販売、とくにインターネット通販を利用する消費者が急速
     に増えています。

     中小企業の流通経路を考えた場合、このインターネット通販はぜひとも利用を
     検討したいところです。

     販売の仕組みを作るのにほとんど費用がかからないうえ、通信販売を通じて
     入手できる顧客情報そのものが、常連客化してもらうための貴重な情報にな 
     るからです。

     顧客の了解を得られればメールマガジン配信などを通じて、自社商品の情報 
     を定期的に知らせることも可能になります。
      
   4.販売促進(Promotion)戦略

     第4の要素は販売促進です。

     販売促進とは、ターゲットとする顧客に対して、商品の存在、特徴、価格などの
     情報を提供したり、販売員や営業マンを使って購入を促す活動を指します。

     具体的な手法としては、マスメディアなどを使った「広告宣伝」、最終顧客や中
     間業者にインセンティプを提供する「セールスプロモーション(SP)活動」、個々 
     の顧客に直接に接する「人的販売」に大別できます。

     大まかにいえば広告宣伝は「認知させて関心を引くこと」、S Pは「売るための
     仕掛けを作ること」、人的販売は「実際に購入してもらうこと」が目的となる。

     これらの手法を自社の業種業態や規模に応じてうまく組み合わせて使うことが
     大切です。

     また、ここでも強調しておきたいのがインターネットの活用です。

     自社のホームページを立ち上げるだけで、ほとんど費用をかけずに情報を全
     国に配信することができる。

     その際、すでに人気のあるサイトにバナー広告(関心をもったユーザーがク
     リックすると、自社サイトにリンクする広告)を掲載したり、相互リンク(他社と協
     力して互いのホームページから相互にアクセスができるようにすること)を張る
     などして、アクセス数を増やすことが大切です。

     インターネット通販は広告宣伝、SP、人的販売をすべてネット上で完結させて
     いるのです。

     またニッチなニーズで勝負する中小企業にとって大切にしたいのが、いわゆる
     「口コミ」です。

     口コミは基本的に同じニーズをもった人に行われます。

     これは既存客が同様のニッチなニーズをもつ新規客を見つけてきてくれるとい
     うことです。

     そして口コミを成功させるためには、キャッチコピーを作るなどして、既存客が
     商品の特徴を上手に新規客に話せるように工夫することなどが有効になる。

     効果的なキャッチコピーの作り方として、商品の特徴を2つの側面から表現す
     る方法があります。

     具体的には「安くてうまい」、「高機能、簡単操作」といった具合になる。

     これは、商品の一番の特徴、ウリを最初に表現し、その特徴があるがゆえに
     生じるであろうマイナスイメージを2番目の言葉で打ち消してしまうやり方。

     「安い」だけでは「安かろう悪かろう」のイメージがあるところを、「安くて
     うまい」と表現すればその不安は払拭されます。

     また、「高機能」だけでは扱いが難しそうな印象を与えるところを、「高機能、簡
     単操作」といえば、その不安も払拭されるという訳です。

     この考え方を自社商品にあてはめて、口コミを誘発しやすいキャッチコピーを
     考えてみるのもよいでしょう。

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