自転車通勤制度の導入
 

  ■注目されている自転車通勤

   近年の自転車ブームに加えて、健康意識の高まりや環境への配慮から、自転車
   通勤をする人が増えています。

   片道10〜20キロメートルの距離であれば自転車での通勤も十分可能で、満員電
   車から解放されるだけでなく、なかには電車通勤よりも時間の短縮につながる
   ケースもあるようです。

   このように自転車通勤にはメリットもありますが、交通事故の危険性や体力消耗 

   による仕事への影響などデメリットもあります。

   自転車通勤制度の導入を検討する際は、それらを十分考慮して対策を講じる必
   要があります。

   1.自転車通勤制度導入のメリット

     ・健康維持やダイエットに効果的。
      メタボリック症候群の予防・改善としても有効。

     ・通勤ラッシュを避けることができる。渋滞の影響を受けることが少ない。

     ・排気ガスを出さないため、環境への負荷が小さい。

     ・交通費・維持費が安く済む。

     ・自動車と比べて駐輪場の確保が容易。

   2.自転車通勤制度導入のデメリット

     ・車道を走行するため交通事故の危険性が高い。

     ・体力を消耗することによる業務効率低下のおそれ。

     ・天候の影響を受けやすい。

     ・駐輪場確保の問題。盗難や故障のリスク。

     ・汗の処理や着替えの問題。

  □会社として考えておくべきこと

   注目されている自転車通勤ですが、明確な社内ルールがないために、会社に
   黙って自転車通勤をしていたり、会社もそれを黙認しているケースがみられる。

   しかし、これは大変に危険なことです。

   会社に届出をしている通勤手段と異なるために通勤途中にケガをしても労災が適

   用されない可能性もありますし、また、最近は自転車事故の加害者が高額な損害
   賠償を請求されるケースも増えています。

   会社が自転車通勤を黙認していたとなれば、事故を起こした本人のみならず会社

   側にも使用者責任が問われるおそれがあります。

   そこで、自転車通勤に対して、まずは会社の基本姿勢を示さなければならない。

   自転車での通勤を認める場合には、届出制および許可制とし、会社がきちんと状
   況を把握できるようにします。

   そのためにも社内規定を設けて社員に周知する必要があります。

   次に重要なのが、安全運転教育の徹底です。

   自転車通勤をする社員に対しては、安全運転を心掛けるよう講習会を開いたり、
   自転車の定期点検を徹底させるなど、事故を未然に防ぐための働きかけをしま
   す。

   また、実際に自転車通勤をスタートすれば、たとえば、駐輪場の確保や着替えの

   スペースなど、さまざまな問題点や改善点がみえてきます。

   自転車通勤をする社員の立場にたって快適な環境を整えていくようにしたい。

   1.ルールづくり

     (1)自転車のルール例

       ①自転車は、車道が原則、歩道は例外

         自転車は、車両に該当するため、車道を通行しなければならない
                              (道交法第17条)
         罰則:3か月以下の懲役または5万円以下の罰金
             ※標識等により歩道を通行できる場合があります。

       ②自転車は車道の左側通行

         自転車は、道路の左側端によって、通行しなければならない
                            (道交法第18条)
         罰則:3か月以下の懲役または5万円以下の罰金

       ③例外的に自転車が歩道を通行する際は、歩行者優先で、車道寄り
         を徐行
          (道交法第63条の4)

         自転車の進行が歩行者の通行の妨げとなる場合は一時停止しな
         ければなりません。
         また、歩行者がいない場合でも安全な速度と方法で進行する必要
         があります。
         罰則:2万円以下の罰金または科料

     (2)通勤途上の通勤災害や業務中の事故のリスク

       ①通勤時に自転車事故を起こした場合の損害賠償リスク

         ・自転車通行可の標識のある歩道で、夜間にライトを点けずに
          走行していた自転車が、歩行者と衝突し、転倒させ死亡させた例
          損害賠償額3000万円

         ・夜間に歩車道の区別のない道路で、対向方向から来た歩行者と
          自転車が衝突した例
          損害賠償額3123万8305円

        通勤時の事故について、事業主に関しては、直ちに責任を問われるわけ
        ではありませんが、何らかの落ち度があると判断されれば、使用者責任
        が問われ、損害賠償が認められるリスクも念頭に入れる必要がある。

       ②私物の自転車を業務で使用した場合

         事故を起こした場合は使用者責任が問われる可能性があります。
         対処例⇒個人賠償責任保険等の保険への加入を義務付ける
         ※個人用の保険の場合、業務中は対象とならないものもあるので、
           契約の内容を十分に確認する必要があります。

     (3)自転車通勤者に対する労務管理

       ①安全運転の徹底

         自転車が関係する交通事故の割合は、増加傾向にあり、交通事故全体
         の約2割を占めております。

         自転車の普及台数の増加だけでなく、携帯電話の普及や、運転者の交
         通マナーの悪化も原因の一つと言われています。

         交通ルールを認識し、安全運転を心掛けるように指導していくことも重
         要です。

       ②自転車通勤規程の作成

         ◎規程に入れる項目例

          ・自転車通勤の許可願書誓約書を明確にする(許可制か届出制か)

          ・業務上での使用を認めるのか

          ・誓約書の提出の義務付け

          ・自転車用の保険について

          ・自転車を使用する上での禁止事項の明記

          ・自転車通勤者の交通費の取扱い(大雪等の通勤困難時)

     「自転車通勤規定」の作成にあたっては、利用者の条件、自転車通勤許可願
     書
、通勤交通費(自転車通勤者の通勤手当:国税庁)、遵守事項、禁止事項な
     どを考える必要があります。

     通勤交通費を例にあげると、自転車通勤であれば定期代もガソリン代もかか

     らないので通勤交通費は不要だと考えがちです。

     しかし、雨天時などは電車を使って出勤する必要もありますし、修理費などの
     出費もあります。

     そこで、定期代相当額もしくは距離数に応じて支給額を設定し、通勤補助費と

     して支給するのがよいでしょう。

     また、自転車通勤を許可する際に義務づけておきたいのが、自転車保険への
     加入です。

     自転車保険とは、自転車運転中の事故やケガをカバーする保険で、対人賠償

     や対物賠償保険もあります。

     自転車事故というと、車との接触事故を思い浮かべますが、最近は自転車同
     士の事故や歩行者に対する事故も多くなっています。

     警察庁の発表によると、平成28年の自転車事故件数は9万3424件となって

     いる。

     被害者に重い障害が残った場合、5000万円の賠償命令が出たケースもあ
     り、保険なしでは到底支払うことができません。

     事故当事者である社員に賠償能力がない場合、使用者である会社にその賠

     償責任が求められることがあります。

     自転車は、事故の加害者・被害者どちらにもなりえる乗り物であるということを
     十分に認識したうえで、リスクに備えることが重要です。

   2.安全教育、安全対策

     道路交通法では、自転車は軽車両扱いとなっています。

     つまり、お酒を飲んで運転すれば飲酒運転で処罰の対象となります。

     ほかに、夜間の無灯火走行、傘さし運転、二人乗りなどにも罰則規定が設けら

     れており、自転車といえども交通ルールを遵守して安全に運転しなくてはなら
     ないのはいうまでもありません。

     交通事故による損夫は、本人や家族だけでなく会社にも大きな影響を及ぼし

     ます。

     自転車通勤を許可する場合には、交通ルールをしっかりと認識させるのはもち
     ろん、事故の危険性を十分に分からせ、安全運転に対する意識を強くもっても
     らうことが大事です。

     そのためには講習会の開催などが効果的です。

     また、通勤に利用する自転車を定期的に点検することも、安全運転、事故防
     止の観点からは重要です。

     ブレーキの利き具合やタイヤの減り具合をはじめ、早朝や夜間に運転する際

     に道を照らすライトや、自転車が走っていることを知らせる尾灯、不意の転倒
     時や事故遭遇時に命を守ってくれるヘルメットなども点検を行う必要がある。

     また、運転の安全性を高めるために以下の装備をしているか、事前に(あるい

     は定期的に)確認しましょう。

      ・ライト、尾灯 ・ヘルメット ・カギ ・グローブ ・サングラス、帽子
      ・レインコートなどの雨具
      ・その他(通気牲や速乾性に優れたウェア、タオル、仕事用の着替えなど)

   3.環境の整備

     自転車通勤をしている社員が、出社後に快適に仕事を始めることができるよう
     環境を整備することも考慮しましょう。

     (1)駐輪場の確保

       自転車は自動車と比べてスペースをとらないものの、自転車通勤をする社
       員が増えてくれば、そのぶんだけ駐輪スペースも確保しなくてはならない。

       路上駐輪をして歩行の妨げとなったり近隣施設から苦情がくることがない
       よう、またイタズラや盗難防止のためにも、駐輪場の確保は大事です。

       自社の施設内に駐輪スペースがない場合には、近隣の駐輪場と契約する
       ことも検討しましょう。

     (2)汗対策

       汗のにおいは職場のスタッフや顧客に不快感を与えてしまいますし、その
       ままでは本人も気持ちよく仕事にとりかかれません。

       可能であれば、シャワー室や更衣室、タオルや着替えを入れておくロッカー
       の設置など、汗をかいた社員がスッキリと気分よく仕事ができる環境づくり
       を進めることも必要でしょう。

     (3)その他

       タイヤのパンクや空気洩れ、ブレーキの不具合など、自転車には故障がつ
       きものです。

       そのような事態に備えて、空気入れや簡易工具を会社に準備しておいた
       り、近隣の自転車ショップと連携がとれる体制を整えておくことも考えましょ
       う。

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