プレゼンテーション成功の秘訣


  ■プレゼンの本質

   ビジネスの世界においてプレゼンテーション(以下、プレゼン)の重要
   性は疑う余地がありません。

   顧客にとって本当に役に立つと思える内容を提案しても、プレゼンの方
   法がまずければ受け入れてもらうことはできません。

   また、プレゼンは顧客に対してだけに行うものではない。

   部下から上司への業務改善に関するプレゼン、役員会での経営戦略に関
   するプレゼンなどさまざまな社内プレゼンもあります。

   1.顧客に「納得してもらう」ことがすべての基本
    どのような業界であっても一定の経験を積んだ営業マンであれば、誰
    もが顧客にプレゼンをしたことがあるでしょう。

    そして、十分な準備をして臨んだにもかかわらず、ときにはまったく
    の徒労に終わった経験をおもちの方も多いのではないでしょうか。

    当然ながら弊社でもそのような経験は数多くあります。

    では、十分な準備をしたにもかかわらず、そのプレゼンが失敗した責
    任は誰にあるのでしょうか。

    いうまでもないことですが、責任は「わかってくれない顧客」ではな
    く「わからせられなかった自分」にあります。

    自分の商売心を完全に抜きにして、「顧客のためにはこれこそがベス
    ト」と確信できるプランを徹夜で練り上げたとしても、それを相手に
    イメージしてもらえなければまったく意味がないのです。

   2.プレゼンは価値ある情報の提供
    そもそもプレゼンとは何かについて改めて考えてみましょう。

    プレゼンの語源は「プレゼント」にあるといわれています。

    つまりプレゼンをする側(プレゼン者)が聞き手(相手)に対して
    「価値ある情報を提案」するということです。

    より具体的には、「プレゼン者が、相手に対して効果的な説明を行
    い、提案内容について前向きな反応を促すこと」と定義することがで
    きます。

    この定義はプレゼンする側の視点としては正しいのですが、実際には
    プレゼンの本質を半分しか捉えていません。

    通常、プレゼンの対象者は社内プレゼンであれば上司であり、社外プ
    レゼンであれば先方企業の社長など意思決定権をもった人たちです。

    いずれにしろ「忙しくて仕方ない人たち」であることには変わりあり
    ません。

    つまり、プレゼンの実施が決まった段階で、プレゼン者は忙しい相手
    の貴重な時間をすでに「プレゼントされている」のです。

    このように考えれば、提案内容採用の可否以前の問題として、相手に
    対してはいただいた時間に相応の「価値ある情報」を与えなければな
    りません。

    つまり、相手に対して「今回の提案は採用できないが、勉強になる情
    報をもらったよ」と思わせるレベルのプレゼンを行うことが、プレゼ
    ン者の最低限の義務であり礼儀といえるのです。

    プレゼン終了後、相手に「まったく無駄だった」という印象しか残ら
    なければ、プレゼン者は多忙な相手から時間だけをもらい逃げ」した
    ことになってしまいます。

    プレゼン者はつねにこのことを頭に入れておかなければなりません。

    十分な準備もせずに、「うまくいったら、もうけもの」といった姿勢
    でプレゼンを行うことは決して許されません。

   3.相手の『感性』に訴求する
    内容をじっくりと読んでもらうことを前提とした「論文」、「報告
    書」では、詳細な資料によって論理性・正確性など相手の「理性」に
    よる合理的判断を期待することができます。

    しかしながら、プレゼンでは短時間のなかで相手の心を動かすことが
    求められます。

    そのためには理性よりもむしろ相手の「感性」に訴求するものでなけ
    ればなりません。

    詳細な資料を別途配布してプレゼン後に時間をかけて判断を仰ぐとい
    う手もなくはありませんが、プレゼンそのものが魅力的でなければ、
    資料は恐らくゴミ箱行きでしょう。

    もちろん、プレゼンする内容が「見栄えだけ」、「心地よさだけ」で
    よいということではありません。

    プレゼン者の提案したい「主張(こうしたい)」、「データ(主張を
    裏付ける客観的なデータ)」、「論拠(主張とデータを結びつける理
    由)」などはきちんと筋道が通った内容でなければなりません。

    そのうえで、相手がもっとも興味をもちそうな点にフォーカスした内
    容・表現を心掛け、「感性」に訴求するのです。いわゆる「腑に落ち
    る」といった状態をめざします。

    たとえば、コンサルティング会社が、ある顧客に対して初めてのプレ
    ゼンをするときの内容として、次の2つではどちらが相手の感性に訴
    求するでしょうか。

     (A)「○○業界における貴社の販売戦略のポジショニング考察につい
       て」
     (B)「貴社の売上倍増に向けた3つの方策について」 
       絶対とはいえませんが、ほとんどの顧客は(B)のほうに関心をもっ
       てくれるはずです。

       そして、初回プレゼンで話が進んだら、必要に応じて(A)のような
       詳細テーマをプレゼンすればよいのです。

    このように、プレゼンでは相手の主要関心事を的確に察知し、できる
    だけわかりやすい言葉で明確に説明することが非常に重要になる。

  □プレゼンの概要と成功ポイント
   ここではさまざまなプレゼンの目的、基本構成、対象者について整理し
   ながら、プレゼン成功のポイントについて具体的に説明していきます。

   1.プレゼンの目的
    前項ではプレゼンの目的(プレゼン者側からの視点)を、「プレゼン
    者が、相手に対して効果的な説明・説得を行い、提案内容について前
    向きな反応を促すこと」と定義しました。

    このなかの「前向きな反応」について段階的に分類すると次のように
    なります。

    自分がこれから行うプレゼンの目的(ゴール)について明確に意識し
    て、それに沿った内容を設計することが大切です。

    (1)理解してもらうこと 
      プレゼンの内容についてとりあえず理解してもらうことです。
      まったくの新規提案をプレゼンする際には、まずはこの点が基本
      になります。

    (2)好感をもってもらうこと
      プレゼンの内容について少なくとも好感をもって受け入れてもら
      うことです。

      相手から「この点についてもっと詳しい提案がほしい」などとい
      う言葉がもらえれば成功といえます。

    (3)協力してもらうこと
      プレゼン内容の実現や、さらなる詳細なプレゼンに向けて、相手
      から何らかの協力の約束を得ることです。

      たとえば、「では自社のデータを提供するからさらに分析してほ
      しい」といったデータ提供協力などが考えられます。

    (4)承認に向けた条件をもらうこと
      プレゼン内容に対して基本的には了解を得ており、最終的な承認
      に向けて相手から条件を得ることです。

      たとえば「商品の仕様をこのように修正してほしい」といった具
      体的なニーズを引き出せれば、最終ゴールにぐっと近づいたこと
      になります。

    (5)承認をもらうこと
      プレゼンの内容のすべて(または一部)について、相手から承認
      を得ることです。

      場合によっては、「正式決定は社内の役員会で検討してから」と
      いうことなどもあり得ますが、少なくともその場でプレゼンを聞
      いてくれた人が「ぜひやりたい」と感じてくれれば成功といえる
      でしょう。

   2.プレゼンの基本構成
    通常、プレゼンは次の流れで行います。

    慣れてくればさまざまなバリエーションを駆使することもできます
    が、まずは基本形を理解しておきましょう。

    ●プレゼンテーションの基本的な流れ
    (1)お礼の言葉・自己紹介・全体の概要説明
       最初にプレゼンの機会をいただいたお礼を述べます。 

       次に自己紹介をします。

       氏名・年齢・役職などの基本情報のほか、これまでのおもな業
       務内容や仕事に対する信条などについても説明します。

       プレゼンは「提案内容」だけではなく、「プレゼン者自身」を
       アピールすることでもあります。

       通り一遍の自己紹介ではなく、自分がどういう人間であるかを
       きちんと相手に理解してもらうことは非常に重要です。

       謙虚さや誠実さを印象づけるようにしましょう。
       そして、本日のプレゼンの大まかな概要、プレゼンの手順など
       を説明します。

    (2)提案の主旨説明
       このプレゼンで、もっとも伝えたい主旨を説明します。プレゼ
       ンの核となる部分です。

       自分の提案によって、「相手のどのような問題を、どのように
       解決し、どのような成果を得てもらおうとしているか」につい
       て明確に説明しましょう。

       また、提案を受け入れてもらった場合には、「自分はどのよう
       なスタンスで貴社のお役に立っていくのか」という決意表明も
       行います。

    (3)補足説明
       提案主旨を補足するための説明です。

       「今回の提案が有効であると考える根拠は何か」、「どのよう
       なデータに基づいた主張なのか」、「具体的にどのような体
       制・スケジュールで提案を実行していくのか」、「実行に当た
       って想定される問題点と解決策は何か」などを説明します。

       今回の提案内容が十分に練られたものであること、「絵に描い
       た餅」ではなく、十分に実現可能であることなどを示します。

    (4)エンディング・お礼の言葉
       もう一度本日のプレゼン内容を要約して繰り返します。

       質問があるかどうかも確認し、ある場合には丁寧に回答しま
       す。

       プレゼン前に想定問答についても十分に準備しておくことが大
       切です。

       また、前述の項(プレゼンの目的)も踏まえて、プレゼンの目
       的が達成されたかどうかを確認することも大切です。

       たとえその場では答えがもらえなくても「次回は○○の点につい
       てもう少し詳しく説明させていただけますでしょうか」などと
       いう投げかけを行っておくことで、相手の意思決定を促すこと
       ができます。

       最後に、プレゼンをさせてもらったことに対する再度のお礼を
       忘れないようにしましょう。

   3.プレゼンの対象者
    プレゼンをその対象者ごとに分類すると、上司など「社内の人」を対
    象にしたプレゼンと、顧客など「社外の人」を対象にしたプレゼンに
    分けられます。

    そして、ほとんどのプレゼン者は社外向けよりも社内向けのほうが緊
    張感が少なく臨めるでしょう。

    つまり、「社外向けプレゼン」においても、その環境をできるだけ
    「社内向けプレゼン」に近づけることで、より落ち着いて臨むことが
    できるのです。

    社内向けプレゼンと社外向けプレゼンのおもな違いは次のように整理
    できます。

   (1)相互理解
      社内プレゼンのなかでも、とりわけ直属の部下から上司へのプレ
      ゼンの場合、お互いに相手の関心事・性格などが十分にわかって
      います。

      また、社長など普段は距離感のある人へのプレゼンでも、少なく
      とも朝礼などで一度は講話などを聞いたことがあるはずです。

      つまり、プレゼンの下地となる基本的なコミュニケーションが一
      定程度はすでに確保されているのです。

      一方、社外向けプレゼンでは、双方の理解はほとんど進んでいま
      せん。

      初めて顔を合わせるというケースも多いでしょう。

      この状況をできるだけ緩和するためには、プレゼン予定時間より
      も早く訪問して、わずかな時間でも相手と「直接に」会話(雑談
      で可)をして、少しでも心の壁を取り払っておくことなどが効果
      的です。

      なお、社内プレゼンでは「相互理解」が進んでいるがゆえに、
      「しょせんあいつの提案だから」といったマイナスの先入観をも
      たれていることもあります。

      そのような場合にはいかに優れた提案であっても、採用される確
      率は低くなってしまいます。

      プレゼンとはまったく関係ない普段の会話、たとえば、出社した
      ら毎日元気よく「おはようございます」とあいさつすることも、
      社内プレゼンでは重要な下準備といえるのです。

   (2)状況把握
      社内プレゼンにおいては、プレゼン者は社内の主要な問題点、重
      要事項の実質的な意思決定プロセスなど、さまざまな社内事情が
      わかっているはずです。

      一方、社外プレゼンでは、通常は先方から提示されている限られ
      た社内事情しかわかりません。

      自分がプレゼンする内容について、いったい誰が実質的な決定権
      をもっているかわからないことも多いでしょう。

      社外プレゼンといえども、そのきっかけをつくってくれた先方企
      業の担当者は必ずいるはずです。

      担当者の社内的な立場を配慮しながらも、できるだけ先方企業の
      情報についてヒアリングしておくことが大切です。

   (3)リスク
      社内プレゼンでは、たとえ失敗しても「次は頑張れよ」で済むこ
      ともあります。

      また、プレゼンの成否に関係なく、準備のために費やした「努
      力」自体は評価してくれることも多いでしょう。

      一方、社外プレゼンではプレゼン者は自社の代表として話をする
      わけですから、その失敗は会社全体としての失敗を意味します。

      万一、プレゼンの巧拙以前に無礼な態度、不誠実な説明などをす
      れば、当該プレゼンの失敗にとどまらず、会社全体としての信用
      低下にもつながります。

      これを防ぐためには、たんに「弁が立つ」だけではなく、社会人
      としての常識・礼儀・言動を十分に備えた人をプレゼン者に選ぶ
      ことが基本になります。

      また、プレゼン者はプレゼンテーション技法について十分に勉強
      し、入念なリハーサルをしておくことも大切です。

      さらに、プレゼン者を複数人用意しておき、メインのプレゼン者
      が話に詰まってしまった際にサブのプレゼン者とチェンジした
      り、専門分野ごとに複数のプレゼン者が入れ替わりながら話すな
      どのリスク分散策が考えられます。

   (4)プレゼン環境の把握
      ここでいうプレゼン環境とは、プレゼン会場の雰囲気、広さ、机
      やイスの配列、PCを始めとするプレゼン機材などの環境を指す。

      社内プレゼンであれば、日頃から慣れ親しんだ環境で行えるの
      で、プレゼンの進行手順などもイメージしやすく、また、機材に
      トラブルが発生した場合でも、急いで紙べースの資料を用意する
      などの臨機応変な対応ができるでしょう。

      一方、社外プレゼンでは、通常はどのような場所がプレゼン会場
      になるのかわかりません。

      机の配列が「囲み形式」なのか「教室形式」なのかによっても雰
      囲気は大きく違います。

      また、周囲で工事をやっていれば、騒音によって後ろの席まで声
      が届きにくいこともあります。

      さらに、先方の機材を使わせてもらう場合には、PCのハードの種
      類、ソフトのバージョンが、自社のものとまったく異なることも
      あります。

      これでは内容以前に、プレゼンを始めることさえできません。

      これらの「不測の事態」を防ぐためには、先方の担当者からプレ
      ゼンで使用する会場の環境や使用可能な機材について、十分にヒ
      アリングしておきましょう。

      可能であれば、プレゼンの数日前に会場を下見させてもらってお
      くとさらに安心です。

   4.「自分らしく」プレゼンする
    プレゼン者は多かれ少なかれ誰でも緊張するものです。

    そして、「上手に話さなければ……」、「失敗したらどうしよう……」
    という恐怖感がさらに緊張を大きくしてしまいます。

    しかし、必要以上に心配することはありません。

    おかしなもので、聞き手はプレゼン者に対して、わかりやすい説明を
    求める一方で、それがあまりにも「立て板に水」、「自信たっぷり」
    に聞こえると、かえって「言いくるめられているのではないか」とい
    う不信感・不安感をもつこともあります。

    プレゼン実施に向けて十分な準備や訓練を重ねることはもちろん大切
    ですが、「完璧」を求める必要はありません。

    プレゼン者の真摯さと熱意が伝われば、少しくらい言いよどんでもむ
    しろ親近感をもってもらえることも多いのです。

    それによってお互いの心の壁が取り払えればプレゼンは成功に近づき
    ます。

    「準備は納得のいくまで徹底的に、当日は自分らしく『のびのび』
    と」

   これがプレゼン成功の秘訣です。

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