間接部門の目標管理
 

  ■目標管理の概要と導入状況

   1.目標管理とは

     目標管理とは、労働者各人に職務についての具体的な目標を設定させ、その達成度合いを
     評価する人事制度のことをいいます。

     目標管理制度を導入するメリットとして、

      ・従業員の自主的な業務への参加意識が高まり、モチベーションが向上する

      ・上司との面接によって具体的な目標を設定することで、所属部課の重点目標に
       対する認識が高まるとともに、情報の共有、コミュニケーションが図れる

      ・設定した目標とそれに対する達成状況が比較的分かりやすいため、業績連動型
       人事評価との相性がよい

     といったことが挙げられます。

   2.間接部門と目標管理

     目標管理を導入する企業は多いのですが、この制度は一般的に、総務や経理、人事
     などの間接部門では、導入が難しいといわれます。

     それには以下のような理由が挙げられる。

    (1)目標の数値化・定量化がしにくい

       目標を設定する際に、目標は可能な限り数値化・定量化したほうが、その
       到達度が計りやすくなります。

       この点において、例えば営業部門などは売り上げや受注件数、利益額などの
       数値化された目標を立てやすい業務ですが、間接部門の業務はその性格上
       成果を数値で表現しにくいことから目標が立てづらく、また、成果を評価に
       反映させにくい側面があります。

    (2)目標とするテーマが選びにくい

       間接部門の業務は多くが定型化されたものです。

       そのため、例えば伝票整理などの定常的な業務を行っている人にとって、目標
       設定は難しいものとなってしまいます。

       なぜなら、定常業務に大きな効率化をもたらすような目標設定を定期的に行う
       ことは困難であり、結局は無理に何らかの目標を設定せざるを得なくなるからです。

       無理に設定された目標が達成される可能性は少なく、結果的に目標管理は意味を
       なさないものとなってしまう。

    (3)改善・改革を重視する目標設定は自分の首をしめる

       目標管理では設定すべき目標として、従事している業務への改善提案や改革を
       要求することが多くなっています。

       営業や開発・生産部門ならばこうした改善目標は売り上げ増加、コストダウン
       などにつながるのですが、間接部門の生産性向上によって自部門の合理化が
       図られることは、結果として自分の首をしめることにつながります。

       自分の改善目標を目指し業務の合理化をすることにより、自分自身の仕事を
       奪ってしまうのではないかという恐怖感が、間接部門における積極的な目標
       管理活用を妨げている面もあるのでしょう。

       このように、間接部門の業務と目標管理は相性が悪いといえます。

       以下では、そうした間接部門に目標管理を導入する際のポイントを解説します。

  □間接部門における目標設定のポイント

   1.目標は可能な限り数値化する

     間接部門の目標設定の中にも、数値化して定量評価することが容易な業務もあります。

     目標設定においてはまず、こうした数値化しやすい業務に対して数値目標を設定する
     ことからはじめるとよいでしょう。

     定量化しやすい目標としては、以下のようなものが挙げられます。

      ●経費の節減

       ・年間○○万円、○%節減など

      ●ミスやクレームなどの件数

       ・伝票ミス年間○件以下、クレーム件数○件以下、発生率
        ○%以下など

      ●ISOなどに関わる業務の標準化

       ・定型業務の標準化率○○%目標など

      ●処理時間の短縮

       ・月次決算資料作成日数を対前年比○日短縮など

     こうした定量化しやすい目標については、積極的に数値化し定量的に評価を行うのが
     有効です。

     数値化するに際しては、業務の主要な指標のデータ採取を行ない、数値目標が立て
     やすい状態にすることも大切でしょう。

     例えば遅延日数、残業時間、ミスやクレームの件数、クレームや処理件数などについて、
     過去の推移や一人当たりの平均件数を数値化すれば、目標が設定しやすくなります。

     一方、

     「新しい法令を理解し、業務に生かす」「業務における部下との連携を強化し、指導
     することでレベルを高める」などの、定性的な目標については数値化が困難な場合も
     あります。

     このような目標を数値化するのは困難ですが、目標を無理に数値化しなくてもよいと
     いう考え方もできます。

     その場合には、達成状態のイメージをできるかぎり明確に表すようにします。

     目標設定時点での面談では、達成状態のイメージのすり合わせを十分に行うことで
     明確な評価ができるようにしなくてはなりません。

   2.目標のテーマをどのように決めるか

     前述した通り、間接部門の目標設定は目標とするテーマの選定が難しいといわれます。

     そこで、以下では目標を設定するに当たっての基本的なポイントを整理します。

     (1)目標は部門の全体目標と結びつくものを

        個人の目標は全体目標や全体方針を助けるものであり、必ず企業や部門の全体
        目標と結びついていることが必要です。

        部下本人の立場ではいかに立派な目標をたてたつもりでいても、それが全体
        目標と結びついていなかったり、方針に反するものであっては、企業の全体
        目標と結びつきません。

        目標設定に当たっては必ず上位組織目標との関連付けを行い、

         「会社・部門目標」→「組織目標」→「個人目標」

        を常に確認できるようにすることが重要です。

        そのためにも、部署が目標と方針をしっかりとさせておくことが大切になる。

     (2)現状維持の目標ではないか

        努力せずに達成できる目標では意味がありません。

        目標は本人の能力よりやや高いもので、本人が努力することによって達成できる
        程度に設定しなくてはなりません。

        ただし、本人の能力に対して余りにも高い目標を設定してしまっては「あきらめ」
        から努力を放棄してしまう可能性があります。

        全体目標についても同様に、各自が努力することによって達成できるレベルの
        目標を設定することで、個人目標との関連付けも容易になります。

     (3)目標の数は増やしすぎない

        目標の数が多すぎると、注力すべき業務が分散してしまい成果が上がらない
        場合があります。

        目標を多く設定してそのいずれもが中途半端に終わるくらいならば、目標を
        ある程度絞り込んでその分野に注力したほうが成果は上がるでしょう。

        目標設定に際しては重点項目を3〜5点ほどに絞り込むことが有効です。

        また、それぞれの目標についても重要度に順序をつけ、優先順位を明確に
        することも大切です。

     (4)目先の目標に偏重しない

        短期的な目標は早期の成果が求められる性質のものであり、期間単位での
        効果も測定しやすいものです。

        そのため、目標として設定しやすいという側面があります。

        しかし、会社全体の成長を考えた場合、長期目標を設定することも重要な
        ポイントとなります。

        目標を設定する際には長期と短期の目標のバランスをとることが重要です。

     (5)各自の役割を反映した目標を設定する

        目標設定に際しては、各自が現在携わっている業務や部署内での役割を反映
        させる必要があります。

        例えば管理職ならば部署全体の業績に配慮し、さらに人材の育成を視点に入れた
        目標を設定するべきであり、専門職についているのならばその専門性をさらに
        高めるような目標を設定することが求められます。

   3.間接部門における目標例

     間接部門における目標例としては、例えば以下のようなものがあります。

      ●定量的な目標

       ・教育訓練への参加者数(人事・労務)

       ・売上高人件費率(人事・労務)

       ・採用計画の達成度(人事・労務)

       ・人員削減目標達成率(人事・労務)

       ・月次決算の短縮日数(経理・財務)

       ・全社の経費節減金額(経理・財務)

       ・財務コストの削減金額(経理・財務)

       ・支払利子の低減率(経理・財務)

      ●定性的な目標

       ・新しい人事制度の立案(人事・労務)

       ・規定の改定・導入(人事・労務)

       ・教育制度の改訂(人事・労務)

       ・教育研修のマニュアル化(人事・労務)

       ・支払い業務の効率化(経理・財務)

       ・社内会計基準の改定(経理・財務)

       ・資産運用効率の向上(経理・財務)

       ・財務戦略の立案(経理・財務)

     一般的には、コスト削減や業務の合理化に関するテーマは定量的な目標となりやすく、
     新しい社内制度の整備や改革に関するテーマは定性的な目標となりやすいといえる。

     ただし、定性的な目標として挙げた項目についても、例えば資産運用効率などについては
     「新しい資産運用先の選定」などは定性的ですが「資産運用収支率○%向上」などの
     目標設定を行えば定量的な目標となります。

     前述した通り、目標は可能な限り数値化して定量評価したほうが公正な評価が可能に
     なります。

   4.目標管理が有効に機能するケース

     営業部門などと比べた間接部門における目標管理のメリットとしては、目標設定の
     自
由度が高いという点が挙げられます。

     営業部門などでは、目標の項目が売上高、粗利益、新規開拓件数などの数字に固定化
     されがちで、その目標数値だけの設定となってしまいがちです。

     しかもその数値も目標というよりはノルマに近い状態なために、目標設定でどれだけ
     低い数値を設定するかに社員の関心が向いてしまう可能性が否めません。

     一方、間接部門では目標設定こそ難しい面があるものの、設定する目標の項目や達成
     レベルに自由度が大きいため、制度をうまく利用することで社員のモチベーションを
     高めることが可能になります。

     そのためには、各企業・部門が現在抱えている課題や業務内容に合わせて適切に全社
     目標・部門目標を設定し、各個人にも全体目標に連動した適切な目標を設定させる
     ことが最も重要なのです。

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