トラック運送業の経営戦略

  ■運送業の基本戦略

   長引く不況による受注量の低迷に加え、平成15年の「改正貨物自動車運送事業
   法」「貨物利用運送事業法」の改正「物流二法」の施行によって運送業への参入
   が容易になったこともあり、企業間競争は激しさを増す一方です。

   平成28年12月16日付けで「道路運送法及び貨物自動車運送事業法の一部を
   改正する法律」が公布され、平成29年1月16日付けで施行されました。

   また、運送業は厳しい労働条件、低賃金などのために労働者不足が深刻化して
   おり、
    ・サービス向上ができない

    ・仕事に遅れが生じる

   などの問題が起こっています。

   さらに、大手運送業者は、その資金力・組織力を活かし、こうした問題にいち早く
   対応し、中小運送業者の顧客層にまで踏み込んできているところもあり、中小運
   送業者にとってはますます厳しい状況にあるといえます。

   このような環境にあって、中小規模の運送業者の採るべき基本戦略は、

    ・経営の合理化・効率化

    ・取引の改善

    ・競争力の強化

    ・人材の確保・育成

   が主なものになると考えられます。

  □経営の合理化・効率化

   運送業には、「労働時間の短縮」「労働条件の改善」「環境問題への対応」などの
   さまざまな経営課題が存在しています。

   そして、それらに対する取り組みが運送業の合理化・効率化を着実に進めるもの
   であるといわれています。

   こうした中、各社ともさまざまな取り組みを進めていますが、ここでは、「同業他社
   との関係強化」と「荷主との関係強化」に関してまとめてみます。

   保有車両の回転率の向上とドライバーの労働時間短縮を目的に、異なる地域の
   事業者同士が業務提携し、

    ・着地での配送業務を委託しあう輸送体制

    ・中継点で車両を乗り継ぎあう輸送体制

   を採用することが増えてきました。

   物流の合理化に本格的に取り組むには、荷主に対してその必要性をアピールし、
   理解を求めることも必要になってきます。

   自社の実状や労働時間短縮の必要性などを荷主に訴え、同時に合理的な輸送・
   配送システムを荷主に提案することで、両社の関係が物流合理化という時代の
   流れに沿って深まっていくと考えられます。

   たとえば、このための施策として、

    ・荷主企業の計画出荷に合わせた計画的な配車

    ・複数荷主企業に対する機動的な配車

   などの運行管理を行なうことがあげられます。

   これにより、受注産業という意味合いが強かった体質を徐々に取り除き、運送業
   者サイドの主導でサービスを提供していくというシステムに移行することが可能に
   なると考えられます。

  □取引の改善

   運送業におけるコストアップ要素が増加していることを考えると、これを適正に回
   収するための運賃・料金建ての工夫ならびに荷主との運賃交渉能力を強化して
   いく必要があります。

   まず、コストを適正に回収するためには、
    コストのかさむ「ジャスト・イン・タイム」には割増料金を設定するなど、
    「コストに見合った運賃水準の設定」を行なう

   必要があります。

   また、輸送の効率化を促進するために、

    「閑散時と繁忙期における運賃・料金の格差の設定」などを組み入れる

   必要もあるでしょう。

   これに対する具体的な方策として、

    ・繁忙期割増の設定

    ・休日割増の設定

   などが考えられます。

   逆に、荷主を固定客化するために、
    ・貨物の引き取りと輸送を定期便化できる場合には一定の割引率を適用する
    ・待ち時間のロスをなくす方策を提言する

   など相互にメリットを生む方向へ誘導することも必要です。

   さらに、きめ細かい運賃交渉計画のもとに説得材料としての原価策定資料や輸
   送改善案を作成し、説得力のある運賃交渉を実施していくことも重要となります。

  □競争力の強化

   運送業は基本的には地域産業です。

   したがって、営業地域を中心にして荷主を確実に確保するための施策をとる必要
   があります。

   まず、荷主のニーズを引き出し、自社がそのニーズに対応できるかどうか検討
   し、最終的に「合理的かつ効率的なやり方」でのサービスを展開することになる。

   自社の領域で特徴あるサービスを計画し、提供することが競争力強化のポイント
   となります。

   具体的施策としては、

    ・荷主の配送センター管理機能を代行し、センター業務から配送までの
     業務を一括提供するサービス

    ・自社で物流センターを設置し、複数の荷主に対する物流をすべて請け
     負う物流一貫サービス

    ・その他のサービスとして混載輸送サービスや納品代行サービス

   などがあげられます。

   また、特殊な機能や技術を装備することで他の業者に頼めない業務を獲得すると

   いう視点で、

    ・「危険物の運送許可」を取得する

    ・「広大なバックヤード」をもち、問屋のような在庫管理の機能をもつ
    ・特殊な「積み降ろし機」を保有することで差別化する

   などの方法によるサービス力強化の方向性の検討も必要となります。

  □人材の確保・育成

   運送業は、一般的に労働集約型産業と位置付けられ、労働力確保が不可欠とい
   われています。

   しかし、労働条件の整備・改善が遅れていることや定着率の低下などから慢性的
   な人材不足状態にあるため、年間を通じて募集(公共職業安定所、求人誌、口コ
   ミなど)を行なっている状況です。

   そのため、採用や教育にコストや時間がかかり、負担が大きくなっています。

   次に、こうしたことを踏まえて、運送業の人材面における、

    ・人材の質的・量的充足

    ・人材の多面的活用

    ・研修体制の強化

    ・福利厚生制度の充実

    ・労働条件、社内制度の整備・改善

    ・職場環境の充実

    ・自社の魅力向上とP R活動

   などの課題を解決していくための視点をまとめます。

   1.計画的かつ安定的な雇用体制

     従来の運送業の多くが、欠員が生じた際に単発的な雇用計画を採ってきた。

     そのため、ドライバーの定着率や質が向上しないといった問題を抱えていた。

     そこで今後は、

      ・中期経営計画に即した要員計画の策定

      ・募集活動の体系化

      ・将来の経営幹部候補としての新規学卒者の採用

      ・教育研修制度の充実
      ・労働条件の見直し

      ・作業環境の改善と整備

      ・企業イメージの向上とアピール

     などを行なうことにより問題を解決することが必要となります。

     これらの点については、2以下で具体的にご説明しましょう。

   2.教育・研修体制の強化

     自社の経営方針と教育体制を明らかにし、これに沿ったドライバーの教育訓
     練、能力開発、さらに帰属意識や労働意欲を引き起こすための教育研修を実
     施します。

     教育マニュアルや教育研修スケジュールに沿った月単位・年単位での行動計
     画を個人(あるいはグループ)で作成させると効果的です。

     また、研修時以外でも、日常的に従業員の「提案制度」を導入し、業務のロス
     をなくすアイデア、業務の生産性向上や効率化のアイデア、顧客サービスや
     売上向上のアイデアなどを提言させ、効果を上げた提案については「社長賞」
     「部長賞」などの表彰や報奨金の支給、あるいは給与待遇改善など論功行賞
     で報いることも、定着率や帰属意識を高めるのに大きな効果があります。 

   3.福利厚生制度の整備

     労働力の確保のためには、福利厚生の充実を図り、職場を魅力あるものにす
     ることも必要です。

     賃金以外の具体的な福利厚生面での例としては、

      ・独身寮、社宅の整備

      ・住宅手当の支給や持ち家援助制度の導入

      ・フィットネスクラブの法人契約

      ・保養所の確保

      ・人間ドックなど健康面でのサポート

     などを実施することが考えられます。   

   4.中高年・女性の活用

     労働力確保が難しいなか、中高年や女性に目を向ける必要もあります。

     しかし、これらの人々を採用するには、労働環境についていくつか整備しなけ
     ればならない点もあるでしょう。

     中高年であれば、若年層と同一の作業条件で労働させることは困難なので、
      ・仕事量の軽減

      ・労働時間の短縮

     などといった点を配慮する必要があります。

     また、女性を採用する場合、

      ・育児を行なう際の労働時間の短縮

      ・女性専用トイレ、ロッカー室などの整備

      ・男性と区別のない評価制度の採用

     などを考慮しなければなりません。

   5.イメージの向上

     クリーンで活動的なイメージを与えることを目的に、社名を変更する企業が増
     えています。

     これは、CI(コーポレート・アイデンティティー)の一環として行なわれることが
     多く、自社のイメージをプラス方向に転じさせ、雇用確保や社員定着率の向上
     に大きな効果が期待できます。

     いかにクリーンな企業イメージを作っていくかが、雇用確保の面でも重要に
     なってくると思われます。

   以上、トラック運送業の一般的な経営ポイントを取りまとめました。

   経営ポイントにはこの他にも

    ・営業構造をどう作り上げるか

    ・財務体質をどう強化するか

    ・情報収集管理力をどうつけていくか

   など、さまざまな課題があります。

   今後の事業展開に合わせ、順次検討されることをお勧めします。

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