セールスマネジメント
 

  ■セールスマネジメシトの必要性

   1.セールスとは

     セールスのプロセスを整理すると、売り手(営業担当者)が買い手(見込み客) 
     を説得し、買い手が売り手の提案に納得して、両者の合意に基づいて、売買
     が成立します。

     現在の経営環境をみると、市場における企業間の競争はますます激しくなっ
     ています。

     そして、多様化・高度化する顧客ニーズに応えた商品をタイムリーに提供して
     いくことが、現在の企業にはより一層求められている。

     それを実行していくには、企業におけるセールスの方法をつねに革新していく
     必要があります。

     こうしたことを踏まえて、今日求められているセールスのあり方・進め方を考え
     ていきます。

     (1)顧客志向のセールスを徹底する

       ①どのようにして顧客の満足を獲得し、顧客との永続的で発展的な
         関係を築いていくかをつねに考えます。
         こうした「顧客満足度の追求」により、実際のセールス活動にも顧客
         を中心にした行動が自然に表われ、顧客から高い評価が得られます。

       ②顧客の相談にのりながら販売をしていく「コンサルティングセールス
         の強化を図っていきます。
         これは、たとえば消費財のセールスならば、豊富な商品のなかから
         顧客のニーズにもっとも適した商品の選択ができるように提案する、
         耐久消費財や生産財ならば、商品の機能だけでなく広く利用方法
         に関する情報を伝える、小売店へのセールスならば、店の経営相談
         にのりながらセールス活動を進めるといったことを指します。

       ③以前に商品を販売した顧客(既存客)に対し、次の購入を自社商品の
         指名買いに結びつけるための「サービスセリング活動」を積極的に
         行います。
         そのためには、既存客に満足を与えるための顧客管理を徹底する
         ことが必要になってきます。

     (2)組織的な販売を展開する

       ①販売活動を効率的に行うためには、個人プレーのセールスではなく
         組織中心のチームプレーのセールスを行うことが大切です。
         そのためには、見込み客への働きかけを営業担当者まかせにする
         のではなく、トップ層から第一線の担当者まで全員で計画的に行う
         ことが必要です。

       ②対象とする市場に対して戦略的に販売活動を行うためには、営業
         担当者を的確に指導できる「セールスマネジャー」が必要です。
         これにより、営業担当者まかせの販売からセールスマネジャー
         中心の販売へと脱皮することができます。

       ③販売活動は個々の営業担当者を窓口にし、販売部門、販売促進
         部門、サービス部門、製造部門、研究開発部門がお互いに密接な
         連絡をとりながら進めていく必要があります。
         同時に、販売部門におけるセールスマネジャーを中心とした販売
         管理体制を確立して組織的な販売につとめていきます。

   2.セールスマネジメシトの必要性

     上記で述べた、今日求められる「セールスのあり方」を、実現していくために
     は、自社の現状に即したマネジメント手法を用いることが必要になります。

     一般にマネジメントとは、目標を設定し、それにそって計画を立案し、組織を編
     成し、それに基づいて実施し、その結果を計画と対比・評価し、それをもとに次
     のアクションをおこすことです。

     この一連の過程をマネジメントサイクル(計画(Plan)−実施(Do)−統制 
     (Control))と呼びます。

     企業経営の各業務においては、このマネジメントサイクルを実践していくこと 
     が基本です。

     セールスにおいてもマネジメントを実行する必要があり、これがセールスのあ
     り方の革新を生むプロセスになる。

     以上のことからまとめると、
     セールスマネジメントは「売上目標を達成する過程(セールス)をマネジメント
     (管理)すること」ととらえることができます。

     その具体的マネジメントプロセスは図のようになります。

     このように、セールスマネジメントを展開していく意義は、マネジメントサイクル
     のなかでセールスのあり方をつねに革新し続けることにより変化する市場ニー
     ズに対応していくことにあります。

     以降は、上記のセールスマネジメントの体系にしたがって、各ステップの概要
     を説明していきます。

  □セールス計画の立案(計画)

   1.セールス戦略と対象市場の確定

     セールスマネジメントを展開していくためには、まず、セールス計画を立案する
     必要がある。

     計画のなかには、売上目標や販売方法などの具体的な内容を盛り込んでいき
     ますが、その前に、自社の事業領域を確定する必要があり、それに応じた
     セールス戦略を策定していく。

     例えば、次の図のように、「市場―商品」のマトリクスにより、対象市場をモデ
     ル化してみます。

     そして自社におけるセールス活動の事業額域を明確化したうえで、それぞれ
     に応じたセールス計画を立案していきます。

     各領域に対して、考えられる計画の方向性は次のようになります。

     A.市場浸透の戦略

       「商品一市場」の現在の組み合わせにおいて、まだまだ販売増加が
       見込まれるときに、既存の市場(顧客)に対して深耕を図り、売上や
       シェアを拡大していきます。
       これは、きめ細かいサービスなどで、既存商品の市場浸透を図って
       いくものです。
       計画立案に際しては、現在の売上実績をベースに目標値を設定し、
       販売方法などの改善を検討していきます。

     B.市境開拓の戦略

       現在の市場に対して、これ以上の売上増が見込めないとき、自社の
       現有する商品をもって市場を開拓し、新たな顧客層に対してセールス
       活動を行います。
       このときの計画では、新しい市場に適した販売方法を考慮する必要が
       あります。

     C.商品投入の戦略

       いつかは、現在販売している商品が陳腐化し、これ以上の販売が見込
       めなくなるときがきます。
       そこで、新しい商品を開発したり仕入れることにより、既存の市場(顧客)
       に新商品を投入していく。
       このときの計画には、新しい商品の特性に応じた販売計画が必要になる。

     D.新分野進出の戦略

       事業多角化など、まったく新しい市場へ新商品を投入しようとするときの
       セールスです。
       このときのセールス計画は、セールス組織やその方法などの再構築から
       検討、見直しをしていくことになる。

     このように、
     セールス活動を展開していく事業分野を確定し、その方向性を決めて
     いくのが、セールス戦略です。
     セールス計画はこれに基づき立案されるものです。

   2.セールス計画をたてる

     対象となる「商品一市場」の組み合わせが確定したら、それを具休的なセール
     ス計画に落とし込んでいきます。

     たとえば、

      ・今期の販売目標の設定

      ・主力とする商品の選定

      ・重点対象とする顧客層とそのニーズの明確化

      ・販売ルートなどの販売方法の策定

     といったことがあげられます。

     特に、セールス計画で重要なことは、目標売上高を具体的な数字(売上金額、
     売上数量など)で決めていくことです。

     それを商品別、地域別、月別などに割り当てて販売目標を組んでいきます。

     セールス計画の柱は、売上(「販売目標」)をどう設定するかにかかってくる。

     その設定方法としては、次のようなものがあげられます。

      ・販売員1人当たりの売上高・粗利益目標を積み上げる

      ・待意先1件当たりの売上高目標を積み上げる

      ・商品のマーケットシェアによる売上高目標をたてる

      ・前年実績をもとに今期の需要予測を盛り込んで売上高目標をたてる

     こうして設定された販売目標は、自社全体の経営計画と調整を行い、セール
     ス計画書に盛り込んでいきます。

  □セールス組織の編成(組織)

   1.セールス組織の編成

     組織の活用は、目標や計画を達成するための手段です。

     これをセールス組織に当てはめれば、セールスの目標や計画をセールス戦略
     にそって達成するために必要な職務を明確化し、営業担当者を配置し、さらに
     全員の力を目標達成に向けて結集できるようにした管理の手段となります。

     セールスの組織を編成するには、まずセールスの目標、戦略、計画の内容を
     十分に把握することが必要です。

     そのうえで、製品別、販売経路別、地域別、顧客別などの適用区分をどのよう
     に組み合わせたらよいかについて、次のようなことを考慮して、セールス組織
     を検討します。

      ・取扱い製品に特異性がある場合には、製品別または事業部別の組織
       編成を検討する

      ・販売経路(代理店チャネル、直販チャネルなど)に応じた部門編成を検討

      ・地域別の営業担当者の配置で十分ならば、地域別の組織編成を検討

      ・大口取引先については、顧客別に営業担当者の配置を検討する

     組織をまとめ、セールス計画を強力に推進していくためにはセールスマネ
     ジャーの役割が大切になります。

   2.セールスマネージャの役割

     セールスマネジャーの基本的な業務内容は、

      ・販売計画の策定とそれに基づくセールス活動の管理、特に営業担当者の
       毎日の活動を重点的に管理する

      ・部下となる営業担当者と人間関係を良好にし、リーダーシップの発揮を
       心がける

      ・目標達成のために部下の育成を行い、組織全体のパワーアップを図る

     こととなります。

     セールスマネジャーは、セールスマネジメントにおける中核的な存在であり、
     販売現場における革新活動の主体者となるものです。

   3.営業担当者の育成

     業績が向上しているセールス部隊では、つねに営業担当者の育成が実行され
     ています。

     営業担当者を育成するときに考えねばならないことは、どんな人材に成長して
     ほしいかをはっきりさせておくことです。

     一挙に理想的な人材のレベルに到達するのは困難ですので、いくつかの段階
     を設けて、一投ずつステップアップさせる必要があります。

     具体的な育成の方法としては、

     ・社長が自ら行う

     ・上司であるセールスマネジャーがOJTで育成する

     ・外部機関や企業内研修を利用する

     ・本人の自己啓発を促進する

     などがありますが、いずれにせよ、一人ひとりにどんな営業担当者をめざすべ
     きかを十分に理解させたうえで教育することが大切です。 

     そしてそのような人材になるために必要な、

      ・心構えや態度

      ・営業活動に必要となる知識

      ・業績をアップさせるための技術

     などを明確にしておくことが必要なのです。

  □セールス活動の展開(実施)

   セールス活動は、市場を選定・開拓し、そこから見込み客を抽出することからはじ
   まる。

   そしてこの見込み客に対して実際に商談を進め、販売につなげていくことになる。

   さらに販売代金の回収を行い、優良顧客になるようにリピートオーダーを取り付け
   ていく。 

   こうした一連のセールス活動で大切なのは、見込み客の「量」を確保することと、
   商談などの過程で見込み客の「質」を高めていくことです。

   1.見込み客の抽出

     販売成績は、既存の顧客と見込み客の量と質で決まるといっても過言ではあ
     りません。

     既存の顧客は、廃業・倒産・他社との競合など、いろいろな原因である程度の
     目減りは避けられない。

     したがって、適切な顧客管理でその減少を最小限におさえると同時に、販売実
     績をあげるために、つねに有望な見込み客を抽出・リストアップして、見込み客
     の開拓を行う必要がある。

     つまり、

     既存顧客への営業活動の努力と同様に、見込み客の量と質の向上を図って
     いくことが、セールスマネジメントを実行するうえで大切になってきます。 

     見込み客の抽出を効率的に行う手順は、次のとおりです。

      ステップ1:自社商品のターゲットを明確にする

        ・自社商品にどういう特徴、効用があるか、どういう顧客層をねらって
         いるのか、そのターゲットの年齢や性別・職業・業種・購買動機・購買
         方法はどうなのかなど、自社商品がターゲットとする顧客の像を明確
         にする。

      ステップ2:市場・顧客の特性を把握する

        ・現在、固定客となっている顧客の特徴を洗い出す。
         特に、自社商品を支持してくれている顧客の特徴を浮き彫りにする。 

      ステップ3:見込み客候補を探索しリストアップする

        ・ステップ2から導きだされた市場・顧客の特性をひとつの目安として、
         見込み客候補をリストアップする。 

      ステップ4:取引(購売)の可能性を評価する(見込み度の検討)

        ・リストアップされた見込み客候補の取引(購買)の可能性を探り、
         見込み客の絞り込みを行う。 

      ステップ5:見込み客をデータベース化する

        ・選定された見込み客をカード化(データベース化)しておく。
         見込み客が顧客になったときに個別に顧客管理を行い、その後の
         商談や取引の履歴を管理できるようにしておく。 

     ステップ3の見込み客候補のリストの作成などで、実際の見込み客の探し方や
     その絞り込みは、営業担当者の能力や経験、商品の性格などによって違って
     くる。

     また「飛び込みセールス」「縁故利用」「業界団体などの名簿利用」「展示会の
     活用」「DM」「広告」などの技法を組み合わせて、見込み客を質の面から絞り
     込んでいく工夫が必要です。

    さらにステップ4の見込み客の評価基準を整理しておくことは、特に大切なこと。

    例えば、次のような条件を備えている見込み客(折衝者)を抽出し、評価を行う。

     ・商品へのニーズ(必要性)または感心をもっている

     ・支払能力をもっている

     ・折衝相手が購買決定権をもっている

   2.商談を進める

     顧客(見込み客)と実際に商談を進めていくには、次のような
                  商談展開のプロセスを踏み契約に結びつけていく。

     セールスマネジメントでは、これらの各段階で、販売活動が効果的に行われて
     いるか、評価、改善していくことが大切。

      ・場づくり :お互いが話しやすい場づくりをする

      ・説  得 :相手がなるほどと納得できる説明をする

      ・問題解決:顧客の疑問点をともに解決する   

      ・合  意 :双方が理解し納得したうえで商談が成立している

   3.代金回収を行う

     商品を販売しても、代金の回収ができなければ損失が生じることになります。

     セールスマネジメントにおいては、いかに売るかと同時にいかに支払ってもら
     うかという代金回収管理も重要になってきます。 

     最低限、次のことをチェックし、代金回収を確実に行います。

      ・顧客への請求は金額など間違いなく請求書によって通知されているか

      ・支払期日までに入金がなされているか

      ・売上債権管理台帳などによる代金回収管理がきちんとなされているか

  □セールス成果の評価(統制)

   1.業績管理

     セールス活動の目的は、売上目標を達成することにあります。

     したがって、セールス実績の分析と評価は売上高実績に基づいて行います。

     売上高の分析の視点としては、次のようなものがあげられます。

      ・前年度と比較して増減額はどれだけあるか

      ・過去から現在までの傾向はどうか

      ・業界での位置づけはどうか

      ・売上高の増減の原因が売価の高低と販売数量の増減どちらによるものか

     また、業績管理は、できるだけ数値化し定量的に行う必要があります。

     さらに、営業担当者の能力や勤務態度なども積極的に定性面での業績評価と
     して、より具体的な形で取り入れていきましょう。

     業績管理項目の具体例を次にあげておきます。

    さらに、評価と管理で大切なことは、

     ・現状はどうなっているのか

     ・問題はどこか

     ・その原因はなにか

     ・どうしたら解決できるのか

    といった問題解決的なアプローチです。

    このような業績管理を行うことで、マネジメントサイクルにおける計画と実行の評
    価を行い、次の目標・計画へと反映させていきます。

   2.顧客管理

     顧客管理は、顧客(見込み先)の情報を収集・管理し、次の計画・実行に役立
     てていくためのツールといえます。

     顧客管理の目的は、

      ・販売した商品を通じて、顧客に期待どおりの、あるいはそれ以上の
       満足を待てもらうため

      ・再購入や別の自社商品の購入などによる販売増加、および代金
       回収を確実なものとするため

      ・これまでの顧客の購入の仕方、満足度などを知ることによって新規
       開拓先の選定基準など、拡販のための情報源とするため

     などがあげられます。

     顧客管理に必要な情報は、顧客の所在地などの基本項目のほか、折衝状況
     などの詳細な情報です。

     また、誰でも検索できるようデータベース化していくことも大切です。 

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