部下に嫌われる言動

  ■部下がいてこそ上司は輝く
   
   米国の組織論の権威であり、電話会社の経営者だったチェスター・I・バーナードは、
   上司と部下の関係について、「権限受容説」を提唱しています。
   権限受容説とは、「仕事を行ううえでの権限は、肩書や本人に自然についている
   ものではなく、上司の命令が部下に受け入れられ、上司の意図や指示に従って
   部下が行動して初めて成立する」という説のことです。
   そしてバーナードは、「会社が組織として成立し、組織体を維持し続け、
   効率的に動くためには、何より社員間のコミュニケーションが大切であり、
   上司は、その位置や肩書に溺れることなく、常にメンバーから信頼を得、
   コミュニケーションを高める努力をし続ける必要がある」 としています。 
   例えば、部下の状況や意思を顧みず、理不尽な命令を次々に発する上司が
   いたとします。
   最初のうちは、おとなしく部下は従うでしょう。
   上司の持つ肩書や社内での位置、自分のキャリアパスなどを考えての苦渋の
   決断です。
   しかし、上司がその後も同じように理不尽な命令を下し続けたとしたらどう
   でしょう。
   おそらく、精神的にも肉体的にも命令を受容する限界が訪れ、部下たちは、
   さらなる上位管理者に不平・不満をぶつけ、異動や転退職を決意すること
   でしょう。 
   部下に去られた上司は、能力や性格が以前と何も変わっていないにもかかわらず、
   上司としての機能を失い、生産性や効率性が格段に落ちるのは間違いありません。 
   この説は、個人主義や成果主義といった「個人の能力・意思・実績」 などに
   焦点を当てる考え方が浸透してきた現代にあっても、いや、そうなってしまった
   現代であるからこそ、非常に重要な考え方だと言えるでしょう。

  □上司が上司として成立するための四つの条件
   またバーナードは、「部下が上司の命令を受容する=上司が上司として成立
   するための条件」として、以下の四つを挙げています。

   (1) 部下が命令を理解できる=部下が理解できる命令であること 
     上司が命令の意図や目的を理解していない場合はもちろん、部下が理解
     できる命令をしていない場合も上司として失格です。
     根性論を前提にした「とにかくやればいいんだ」という目的不明の命令や、
     「俺が若いころはみんなこうしていた」という時代背景を無視した命令が
     これに当たります。

    (2)命令が組織目的と一致している=会社・部門・チームの目的と、上司の
     言っていることにズレがないこと 
     例えば、エコ活動の実践を事業の目的にしている企業で、環境を汚染する
     ことが確実な「コスト優先」の命令を上司がすると、部下は大きな矛盾と
     懐疑心を抱き、上司に信頼を置かなくなります。

    (3)命令と部下の個人的な目的・利益などが両立している=部下の性格・意思
     ・利益を無視した命令をしないこと 
     会社の目的と上司の命令が一致している場合でも、その命令が部下の性格や
     利益を著しく害する場合も、命令は実行されません。
     プライベートを大切にする社員に休日返上を前提にした仕事を割り振る、
     急な残業で社員の予定を犠牲にする命令などがこれに当たります。
     また、会社の脱法行為に耐えかねた真面目な社員が、監督官庁や世間に
     会社の違法行為を密告するケースも、これに反した結果と考えられます。

    (4)部下が、命令を精神的・肉体的に実行できる=部下の許容範囲を超えた
     命令をしないこと 
     当たり前ですが、できないことはできません。
     上司が部下の許容範囲を把握できない、あるいはあえて把握せずに命令を
     し続けた場合、部下は転退職を決意したり、病気になったり、最悪、
     自殺を決意することも少なくありません。
     もっとも、このような命令を上司が発し続けているような会社は、今以上
     の成功や成長は望めないでしょう。
     大切なのは、頑張れば達成できるレベルの仕事、つまり部下の能力より
     少しだけ高度な仕事を割り振ることです。 
     以上のような組織論における基礎理論を前提として、部下に嫌われる具体的
     な行動について説明します。

  □部下に嫌われる言動〜三つのルールを守る

   会社人にとって、周りの社員に嫌われないように行動することは、直接的な業務遂行
   能力以上に、大切な要素の一つと言えます。

   ましてや部下を持つ上司が部下に嫌われていては、組織が成り立たないばかりか、
   自分が上司として存在することすら危うくなってしまうため、部下以上に細心の注意を
   払わなければいけません。つまり、会社に貢献し、肩書的にも能力的にも成長し続け
   たいと願うならば、「周りの人に嫌われる行動をしない」ことが大前提になります。

   人に嫌われないためには、以下の4つの行動ルールを守る必要があります。

    1.他人の批判・悪口を言わない

    2.責任転嫁をしない

    3.感情的にならない

    4.自分の価値観や常識を他人に押し付けない

   以上の4点は、モチベーション・マネジメントに限ったことではなく、大人が
   大人として行動すべき、基本動作です。

   人に嫌われる、あるいはあまり自分は人から信頼されていないという自覚があれば、
   まずは上記の4つのルールを破っていないかをチェックしましょう。 

   以下に、具体的な「部下に嫌われる行動」をまとめました。自分がこのような行動を
   していないかをチェックし、もしその行動をしていた場合は、上司である・ない
   にかかわらず、大いに反省をして、行動を改めましょう。

   ただし、「自分の出世に響かない程度に気をつけよう」「上司や他社の人間に見られ
   なければ別にいい」といった意識を持っていると、どんなに行動を慎み、好かれる
   行動をしたところで、いずれボロが出ます。

   そうならないためにも、まずは意識を変えるところから始めてみてはどうでしょうか。

    意識が変われば行動が変わる。

    行動が変われば評価が変わる。

    評価が変われば環境が変わる。

   他者を認め、反省するようになれば、いつの間にか部下が信頼の目であなたを見
   つめているかもしれません。

   上司が意識を変えること。

   それが部下のモチベーションと信頼を上げる入り口なのです。

  □部下に嫌われる言動

    ・問題が起こるとすべて部下のせいにする(にもかかわらず、都合がよく
     なると 手柄を独り占めする)

    ・管理職なのに部下の責任を取ろうとしない

    ・言っていることに矛盾がある(自分が過去に言ったことを覚えていない)

    ・仕事を他人に任せない(部下に裁量権を与えない、部下を信頼していない)

    ・パソコンや携帯電話が扱えず、仕事中に聞いてくる

    ・自分の役職にあぐらをかき、派遣社員・出向社員・子会社の社員・パート・
     アルバイト・女性社員・転職者・劣位合併会社の社員を馬鹿にする

    ・学歴差別をする

    ・えこひいきをする

    ・部下が忙しく仕事をしているのに、自分は口だけ出して手を動かさない

    ・部下が成果をあげても、褒めない(逆にあらさがしをする)

    ・部下がミスをすると、必要以上に怒る(フォローもしない)

    ・経営陣や役員にゴマをする

    ・外見がだらしない

    ・男女問わず、セクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメントを繰り返す 
     (そのことに自身は気づいていない)

    ・女性社員に難しい仕事を与えない(女性社員の活躍を認めない)

    ・ごう慢、感情的、衝動的、優柔不断、短気、頑固

    ・自身の仕事の割り振りの仕方が悪かったにもかかわらず、部下に
     サービス残業を強いる(にもかかわらず、自分は定刻で帰る)

    ・部下が自主的に行動すると「勝手に動くな」といい、上司の指示を待って
     いると「自分で考えて動け」と怒る(上司自身は、その矛盾に気づいて
     いない)

    ・頼みやすい部下(気弱・謙虚・優しいなど)に、きつい仕事を頼む(にもか
     かわらず、その部下に感謝をしない)

    ・飲み会では、昔の自慢話・会社への愚痴・説教のための説教しかしない
    ・「叱る」ではなく、「怒る」しかできない

   以上、主なものを挙げてみました。

   この中でも、特に部下のモチベーションを下げる原因になるのが「矛盾したことを
   言う」です。

   具体的には、「動かない時は動けと言い、動いている時には勝手に動くなと言う」
   「分からないことはいつでも聞けと言うくせに、実際に質問すると自分で考えろと
   言う」「その時の感情で言っていることが変わる」など。

   上司がこう言わざるを得ない時があるのは分かりますが、その場合は言葉上の矛盾
   を部下に説明し、その意図や目的をきちんと理解させないと、部下はどうしていいか
   分からずに混乱してしまい、結果、「何をやっても怒られるなら、何もしない方がマシ」
   と考えるようになります。

   この場合、この上司自身が会社にとっての獅子身中の虫。

   経営陣はこの上司に対し、即座に何らかの対応をする必要があります。

   これ以外にも部下の嘆きは数多く存在します。

   身に覚えがあるからと言って見て見ぬふりをしてはいけません。

   上司は、部下の言葉にならない嘆きをきちんと把握し、自身が手本となることで、部下
   のモチベーションを高めていきましょう。

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