社員が辞める会社・辞めない会社
 

  ■社員が会社を辞める時

  □会社を辞める三つの原因

   社員が会社を辞める理由には、大きく分けて3種類あります。

    1.辞める社員自身に問題がある場合

    2.会社そのものに問題がある場合

    3.社員と会社の双方に問題がある場合

   会社を辞める原因が社員自身、すなわち「個人」に由来するものである場合、その
   理由は社員の数だけあると言えます。

   「就職難だったから、とりあえず就職しただけ」「コネがあるから入っただけ」「上司の
   采配についていけなくなった」「自分の将来に見切りがついた」「上司に怒られた」
   「仕事でミスをした」「会社や仕事、同僚などに信頼がおけなくなった」「結婚した」
   「もっとキャリアアップをしたい」「家庭の事情」「体力・精神力がもたなくなった」
   など挙げればキリがありません。

   これらの理由による退職を防ぐには、社員の性格や思考、仕事に対する意識や生活
   スタイルなどの違いを把握し、その社員に適したマネジメントを個別に行う必要があり
   ますが、社員数が多い企業ではその方法は現実的とは言えません。

   つまり、ごく個人的な理由による退職を防ぐ方法はないと言えます。

   会社の体制や仕事そのものに問題がある場合は、当然、退職希望者は多くなり
   ます。

   退職理由も「入社説明会の時に聞いた内容と違う」「事業内容や労働環境が法に触れ
   ている」「社員数に対し、仕事量が多い」「業績が悪く、将来的に大きな不安がある」
   など、ある程度一貫した内容が増えます。

   これらが退職理由の大半を占めた場合は、経営者は大いに反省し、状況の改善に
   努めなければ、人材の流出は防げません。

   仮に、採用人数を増やすことで流出した人材を吸収したところで、問題の根本が改善
   されていなければ同じことの繰り返しになります。

   景気が良くなるなど外部環境が劇的に変わらない限り、いずれ会社の体力が疲弊
   し、業績悪化や倒産は避けられないでしょう。

   実際には、三つ目のケースがほとんどだと言えます。

   つまり、仕事を続けていくうちに会社の体制や仕事そのものに不満を募らせ、やがて
   積もり積もった不満に耐えきれなくなって会社を辞める というケースです。

   退職する社員は、「喫煙ルームが少ない」「自分の部署に同性が少ない」「通勤時間が
   かかりすぎる」など実に些細なことをきっかけに次々に不満を見つけて、心の中に積も
   らせていきます。

   会社そのものにそれほど大きな問題がなくても、社員が不満に思うことも多いため、
   経営者は同時期に数人の社員が退職しても、その理由に気づかないことも少なくあり
   ません。

  □新入社員が会社を選ぶ基準

   新入社員が会社を辞めるきっかけの一つに「入社前の期待と入社後の現実に大きな
   ギャップを感じた」というものがあります。

   (財)日本生産性本部と(社)日本経済青年協議会が共同で行った「平成27年度
   新入社員(2,203人)の「働くことの意識」調査結果」によると、「新入社員が会社を
   選ぶ時の基準」の上位回答は下記のようなものになりました。

    1.自分の能力、個性が活かせるから(30.9%)

    2.仕事がおもしろいから(19.2%)

    3.技術が覚えられるから(12.3%)

   また、それらとは対照的に、「会社の将来性」「一流会社だから」「経営者に魅力を
   感じて」「福利厚生施設が充実しているから」など、会社に対する魅力に関する回
   答は軒並み一ケタ台と、会社そのものに期待を寄せている新入社員はごく少数だ
   という結果が出ています。

   特に、昭和46(1971 年)年度には27%でトップに挙げられていた「会社の将来性」
   が現在では9%と、社員の会社に対する意識は大きく変わったことが分かります。

   同調査では、これらの結果に対し「“寄らば大樹”的な思考が廃れ、個々人の技能や
   能力が問われる、成果主義的なシステムに対応した意識に変化したことを物語って
   いる」と結んでいます。

   経営者にしてみればいささかショックな結果ではありますが、これらの結果を踏まえ、
   モチベーション・マネジメントに真剣に取り組む会社こそ、次代を担う人材を惹きつける
   ことになるのです。

  社員が不満を感じるポイント

   では実際に社員たちは、会社のどのような部分に対して不満を感じているので
   しょうか? 

   インターネットリサーチ事業の「アイシェア」が、ビジネスパーソンに対して行ったイ
   ンターネット調査によれば、職場に対する不満のトップは、「給与」という結果が出
   ました。

   年代や性別を問わず、多くの会社人たちは自分の努力に見合う給与をもらっていない
   と感じているようです。

   この調査結果を年代別にまとめてみた。

                  職場への不満(20代〜40代)

 


   これらの結果を見ると、年代ごとに不満を感じるポイントが微妙に異なっていることが
   わかります。

   20代では「人間関係(上司)」が37.2%、「仕事内容」が32.6%と高いポイントを
   占め、30代では「待遇」、40代では「評価」が「給与」に次いで高い割合を示して
   います。

   面白いのは、年代を増すごとに、「評価」を気にするようになっている点です。

   長く勤めた見返りとして社員が求めるものは「出世」であり、その結果として「給与」
   や「評価」を期待するようになると言ってもいいでしょう。

   これらの結果を逆に考えると、これらの不満点に対し、会社が何らかの対応をしな
   ければ、社員が会社を辞める可能性は高くなるということになります。

   そのため、会社がモチベーション・マネジメントをする際は、たとえば20代にはや
   りがいのある仕事や魅力的な先輩・上司がいる職場環境を用意し、40代には褒賞
   制度や人事考課の見直しを通じてこれまでの功労を称えるなど、それぞれの年代に
   よってポイントを変える必要があります。

  □上司との関係

   若い社員、特に20代前半の若者や新卒者が、会社に対して不満を持つ要素の一つ
   が「人間関係」です。

   会社そのものにそれほど大きな期待を寄せていない一方で、若者は上司や先輩と
   いった目上の人とのかかわりあいを重視する傾向にあります。

   多少給与が安かったり仕事がきつかったりしても、人間関係が良好な部署で働いて
   いる若者は会社に留まり、逆に嫌な上司がいる職場で働く若者は仕事や給与に関係
   なく、辞めてしまうケースも少なくありません。

   嫌な上司、すなわち世代間のギャップを理解しない、あるいはできない上司の下に
   いる若手社員が会社を辞めたくなるきっかけは主に以下の3点が考えられます。

    1.上司の主観で指導・評価・説教をされる

    2.形骸化した規則を強要される

    3.仕事外でも説教される

   世代間のギャップを理解できない上司は、若手の思考や時代背景の変化などを理解
   していません。

   そのため、彼らは若手のことを理解する努力をするのではなく、自分の過去の経験を
   彼らに教え込むという方法を取ります。

   しかし上司が生きてきた時代と現代では、社会情勢・景気・仕事のツールなど、あ
   らゆる部分が大きく異なっています。

   上司が「俺が若いころはこんな努力や苦労をした。だから俺は出世したんだ」などと
   真剣に語ってみたところで、景気が右肩上がりで、終身雇用が当たり前だった時代を
   知らない若手社員は、「今、同じことをやっても、同じ結果になるわけがない」「そんな
   苦労をしなくても、もっと効率的に仕事ができるのに…」などと考えます。

   また、効率的に仕事をしたいと願い、しかもそれを実現するツールを持っている若手
   は、一切の無駄を嫌います。

   しかし上司は、1日100件の飛び込み営業や使いもしない書類を書かされると
   いった経験を乗り越え、これまで生きてきました。

   上司は根性論を振り回しながら、それを若手にやらせようとします。

   これだけでも大きな隔たりがあるというのに、若手が上司に対して意見しようもの
   なら、上司は「今の若者は口ばかり達者で根性がない」などと切り捨てます。

   これでは会社を辞めて当然です。上司は、自分が生きてきた時代と現代が違うという
   ことを理解し、若手の気持ちを把握しなくてはいけないのです。

  ■社員が辞めない会社

   入社して1年も経たないうちに会社を変える。

   この一昔前には考えられなかったことが、今の20代には当たり前のことと認識されて
   います。

   また、少子化や団塊世代の大量退職といった社会的な構造変化の影響もあり、現代
   の社長は優秀な社員の確保と維持に頭を悩ませています。

   これが現代の労働環境をめぐる実態であり、常識と言ってもいいでしょう。

   しかし、このことを本当に理解している社長や上司はどれほどいるのでしょうか?

   テレビや新聞で、毎日のように不景気・大量リストラ・大手企業の倒産などが報道され
   ているため、人材確保の難しさと簡単に転職を考える若手の多さについて頭では
   分かっているつもりでも、実際は「ウチに限って、そんな無責任なことをする社員は
   いない」と思っている社長も多いのではないでしょうか。

   しかし、「ウチは週休二日で、残業も少ない。仕事の割には給料もいいし、人間関
   係だって悪くない」と胸を張る社長を尻目に、仕事が終わると同時に転職サイトを
   覗いている若手社員は確実に存在しているのです。

   今後、会社を維持・成長させたいと願うなら、「ウチに限って…」と現実から目をそ
   らさず、きちんと社員と向き合い、会社の実情を把握しましょう。

  ■社内全体の状況を把握する

   「昔に比べ、若者はすぐに転職を考える」というのは、いまや疑問を挟む余地もない
   ほどの周知の事実です。

   しかし、それはあくまで全体的な話であり、すべての若者に当てはまるわけではあり
   ません。

   終身雇用を願う若者もいれば、会社に愛着を感じて楽しく仕事をしている若者も
   います。

   にもかかわらず、上司や社長が「どうせ転退職を考えているんだろう」という気持ち
   で若手社員に接してしまっては、モチベーションを下げてしまうどころか、かえって転退
   職を助長してしまうことにもなりかねません。

   そうならないためにも、モチベーション・マネジメントを行う前に、まずは自社内の状況
   を正確に把握する必要があります。

   もっとも手軽で確実な方法は、定期的に、社長自らが自社内を見回り、社員に声を
   かけることです。

   もちろん、ただ挨拶をしてまわるだけでは意味がありません。

   声をかけながら、社員の表情や部内の雰囲気などを見て生き生きと仕事をしているか
   どうかをチェックするのです。

   また見回りの際「社員同士で挨拶をしているか」「笑顔を見せているか」「声にハリが
   あるか」なども同時にチェックし、顔色が悪いなどストレスを感じている社員がいた場合
   には、直接、あるいは間接的にその社員に連絡を取り、対応しましょう。

   会社が全国各地に点在していたり、社員数が多かったりで直接見回ることが難しい
   場合には、管理職クラスの人間に部内の様子を聞いたり、社員にアンケートを実施
   するなどして、積極的に状況把握に努めましょう。

  OJTをチェックする

   多くの会社では、新入社員に対し特定の中堅社員を専任の教育係につけ、OJTで
   仕事を覚えさせていくという方法をとっています。

   若手社員は、その教育係を通して会社を知り、仕事を身につけていきます。

   この場合、若手社員が会社で接する機会がもっとも多いのが教育係であるため、会社
   の色に染まる前に教育係の色に染まることも少なくありません。

   会社の実情がどうであれ、その教育係の良しあしで、若手社員は会社を評価する
   ケースも数多く見られます。

   これほど重要な「OJT教育」ですが、意外に専任教育者選定を軽んじている会社も
   多いのです。

   大抵の場合、「新入社員が配属される部門にいる、入社3〜4年目の社員」が教育
   係に選ばれます。

   この条件に当てはまる社員が複数人いる会社ならば、その中から人間的にも能力的
   にも優れた人材を選定すればいいので問題はないのですが、当てはまる社員が1人
   の会社では、必然的にその社員が教育係に選ばれます。

   その社員が優秀ならば問題はありませんが、もしそうでない場合は、せっかく優秀な
   若手が入社したにもかかわらず、その教育係のせいで転退職してしまう可能性があり
   ます。

   優秀な若手に会社にとどまってもらうためには、教育係の選定方法や既存の社員
   への教育制度、OJTのやり方などを総合的に見直す必要があります。

   言い換えると、優れたOJT教育(チェックシート)を行っている会社には、優れた人材
   が長期的に残る可能性が高くなるということなのです。

  □若手社員が考えている将来

   社長や上司が入社した時代と現代では、あらゆる点で大きく異なっています。

   これまでは終身雇用や年功序列が当たり前だったので、社員も「この会社で30年 
   働けば、役員クラスになれるかもしれない」という夢を持って仕事に励むことがで
   きました。

   しかし現代では、大企業が突然倒産するという時代になっています。

   そのため、「3年経って昇進していなかったら転職するか」などと短期的にキャリアパス
   を考える若手社員も少なくありません。

   たとえ転退職を考えていなくても、「この会社もいつまで安泰かわからない」と不安を
   抱えながら仕事を続けている社員もいます。

   これから先、社会がどのように変化していくかはわかりません。

   しかし、このような不安定な時代だからこそ、会社の体制・OJTの方法・採用の方針・
   社員のキャリア形成・社員の動向などを、少なくとも3年周期、できれば毎年見直し、
   常に現代の状況にマッチした体制を整えておくことが、優秀な社員を惹きつける会社
   への第一歩になるのです。

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