販売は科学


  ■「販売は科学」の時代

   これからの販売は精神論だけでは立ち行かないことはすでに承知のことです。

   理論的な販売、データベースに基づいた販売、つまり、「販売は科学」が必要な時代
   に入りました。

   「販売は科学」とは何か、一言で表現すると「データに基づいて販売する」ということ
   である。

   つまり、販売は科学であることは、

    ①常にデータでお客様の情報を管理

    ②常にデータで計画をつくる

    ③常にデータで行動プロセスを管理

    ④常にデータでスキルを把握

    ⑤常にデータで結果を確認

    ⑥常にデータで分析、フォロー

    ⑦常にデータで重要管理項目を明確にする  etc.

   このように、常にデータをベースに、お客様に充分満足のいくセールス活動をすると
   いうことである。

   データを大事にし、データで「思考、反省、決断、行動」するのが販売は科学である
   所以なのです。

   経営レベルで考えると、「創客=顧客創造」「販売力強化」「セールスのやる気」等の
   概念的なものを数値化することは大変難しい。

   しかし、こうしたものをデータで捉えて、経営に活かすことも広義の「販売は科学」と
   考えていただきたい。

  □「販売は科学」の骨子

   「販売は科学」の狙いは、販売力を強化することにある。

   「販売力=セールス力」の概念は、次の方程式で表わされる。

   【仮説】 販売力=量×質×やる気

   とすれば、販売力の強化はこの方程式を科学的に解き、「量」の増大と「質」と「やる
   気」をいかに高めることができるか、を解明することによって可能となる。

   1.行動量(有効面談時間)の増大

     「量」とは行動量のこと。
     行動量(例えば訪問件数、訪問時間、ニューコール件数等)の中で最も業績に
     影響を及ぼす行動量は、お客様と直接商談する時間「有効面談時間」である。

     データでも有効面談時間の長いセールスパーソンは良い成果を上げている。

     その有効面談時間増大のためには、①業務改善と②効率的プロセス販売

     (1)業務改善で有効面談を増やす

       「販売は科学」の最大のボトルネックは、実際、セールスの有効面談時間
       が少ないことである。
       ある事務機器販売のテリトリーセールスの調査によると、
       一日の平均的時間の使われ方の事例では、

       「一日平均行動時間と時間比率」(1 日8 時間実働換算)
        ①有効面談時間    55 分(11.4%)

        ②ユーザー接点時間1時間25 分(17.7%)

        ③移動時間 1時間10 分(14.6%)

        ④デスクワーク時間1時間10 分(27.1%)

        ⑤集合・研修時間 1時間(12.5%)

        ⑥グレーワーク他 1時間12 分(16.7%)

       もちろん、業種、業態によってかなりの違いはあるだろう。
       ぜひ一度、自社のセールスパーソンの行動調査、分析を実施してみましょ
       う。

       この調査では、

        ①有効面談時間はわずか「55 分」、一日実働行動時間の
         「11.4%」である。

         「えっ?」と思われるかもしれないが、それが実態であろう。

        ②お客様との接点時間(故障、クレーム対応、商品配達等)を
         加えてもお客様を訪問している時間は「2 時間20 分」で、
         一日セールス活動の(29.1%)と意外に少ない。

       一方、

        ③移動時間と④デスクワーク時間は多い。

         特に最近は提案書作成に時間がかかる傾向にあり、セールス
         パーソンの業務作業時間が多すぎる。

         問題の多い移動時間と合わせてなんと「41.7%」にもなる。
         これには抜本的な改善策が必要である。

         例えば、

          ①セールスパーソンの仕事の分業、業務委託

          ②社内にセールス支援グループの設置

          ③セールスパーソンの情報武装化(IT 化)

          ④セールスの業務の機械化

          ⑤移動時間短縮のための、直行直帰、ユーザーテリトリー
           制度等の見直し

          ⑥無駄な業務、伝票、書類の廃止

          ⑦セールスパーソンからの自主的改善提案

         等の施策を、できるものから実施していただきたい。

         セールスパーソンにもっと有効面談時間を与える必要がある。

         有効面談時間「55 分」を「120分」に増やすことによって、
         セールスパーソンの生産性は間違いなく20%以上はアップする。

         最近ではパソコンが導入され、ややもするとパソコンに向かって
         いれば、仕事をしているように見えるが要注意!それで商品が
         売れるわけがない。

     (2)効率的プロセス販売で業績向上

       製造も工程があるのと同様、販売にも工程がある。プロセスを明確にし、プ 
       ロセスに必要なツール、スキル、事例等での指導を徹底して行うマネ
       ジャーの指導が重要である。

       プロセスを無視した販売には限界がある。

       プロセス別にマネジャーとセールスパーソンがお客様に対する、しっかりと
       したレビューができるようになる必要がある。
       (レビューとはどのようにお客様にアプローチするか、問題を把握してくる
       か、提案するか、攻める・フォローするか等、商談進捗のストーリーをつくる
       こと。)

       例えば、ある商品のセールスプロセス管理項目として、

        ①事業計画 ②顧客情報管理 ③商品認知活動の推進 ④ターゲット 
        ユーザーのリストアップ ⑤深耕客活動 ⑥問題把握 ⑦提案書作成、   
        提案 ⑧デモ実施 ⑨契約書作成 ⑩導入実施 ⑪フォロー活動 ⑫次の
        計画への反映等

       がある。

       こうした管理項目を自分達の職務に合ったプロセスにしっかり組立て、レ
       ビューを行い、行動すれば素晴らしい業績向上が実現できるため、マネ
       ジャーの腕の見せどころである。

       なお、忘れてはいけないデータ管理項目は有効面談時間、訪問件数、有
       効訪問回数である。

       このプロセス販売によって、

        「訪問目的の明確化⇒商談内容の質の向上⇒お客様への説得力強化⇒
        有効面談時間の増大⇒高い業績達成」

       というサクセスストーリーがデータではっきりと出てくる。

       この事務機器販売会社の事例では、訪問回数3倍、有効面談時間2.5
       倍、業績(粗利益)6倍の素晴らしい実績を上げたグループがあった。

       「業務改善向上」と「効率的プロセス販売」策は確実に行動量そのものを増
       大させるだけでなく、有効面談時間の増大を計り、それがセールスの販売
       力強化となり、業績向上へとつながったのです。

       「販売は科学」である第一出発点でもある。

   2.「質」の向上、販売スキルのレベルアップ

     販売力に影響を及ぼす「質」は知識とスキルである。

     やはり十分な知識とスキルがないと、「量」が増えても成果は上がらない。

     従来、これをデータで把握することは困難であった。

     しかし、最近は新しい手法によって解決されつつある。

     それにより、セールスパーソンの役割別スキルが明確になり、本人の強みと弱
     みが明らかになる。

     これがセールスパーソン教育のポイントでもあります。

     事例としての方法は、販売スキルを、

      ①知識・業務系スキル(テクニカルスキル)と、

      ②営業系スキル(ヒューマンスキル)

     に大別し、ある商品の専門セールススキルを次のように捉えた。

      ①知識・業務系スキル

       市場動向、業界動向、自社方針(戦略)、他社方針(戦略)、顧客情報、
       商品知識、顧客業務、システム知識、パソコン活用、販売ツール、etc.

      ②営業系スキル
       人間関係スキル、コミュニケーション能力、文書構成、プレゼンテーション、
       交渉スキル、状況分析、問題解決能力、シナリオ作成、リーダーシップ、マ
       ネジメント、etc.

     スキルは個人によってかなり差があることにマネジャーも本人も気づくでしょう。

     大事なのは自分の「力」のバランスシートで自分の力を再認識し、刺激として、
     勉強・努力することです。

     前出の専任セールスパーソンのスキルアップのため、
      ①知識・業務教育カリキュラム、②営業スキル教育カリキュラム
     を作って実践教育を試みてください。

     個人別にスキルデータをグラフ化し、個々の育成の成果が一目で把握できる
     仕組を作り、さらにその実践教育の成果が販売活動にどのように活かされ、業 
     績向上に寄与したかを事例発表し、評価し合う。

     データによる「気づき」教育はセールスパーソンの「質」の向上に、いかに役立
     つかを実感できるはずです。

     「販売は科学」である第二の出発点でもある。

  □「やる気(モチベーション)」の高揚

   セールスパーソンの中には、明らかに行動量が多く、スキルが高くても業績の上
   がらない人がいる。

   それは「やる気」に原因があると思います。

   「やる気」の要因を高めることが業績向上に大きく寄与する。

  □業績向上のための提言

   ①人事考課制度は成果主義にする

    人事考課は「成果主義にすべきである」と考え、「成果に見合った考課」と自ら認
    めているセールスパーソンほど、高い業績を出している。業績にリンクした報酬 
    (表彰)、納得のいく人事制度、正しい評価を強く望んでいる。

   ②自信をつけさせる働きかけをする(自己信頼感)

    自己信頼感とは、「自分の言動に対する自信」、つまり「周囲から認められてい 
    る」と自己認知している人ほど業績が高い。

    一人ひとりが自分の存在感をお互いに認め合い、自信をつけさせてくれる、働き 
    かけをする職場環境づくりが大切であることを示している。

   ③ チームワークを良くする

    「情報の共有化」「何でも言い合える職場」「成功事例や失敗事例の情報が還流
    している職場」ほど高い業績者が出る。

    単なる仲良し集団ではなく、積極的な自己主張、話し合い、励まし合いが自由闊
    達に行われる個性豊かな人間集団に「勢い」を感じる。

   ④スキルに対する自信を徹底的につける

    「営業に求められる交渉力、折衝力の販売スキルに対する自信」が高いセール
    スパーソンほど、業績が高い。

   ⑤自己裁量の余地を広げる

    自己裁量とは「自分で自主的に進めることができる」という職場環境のこと。

    「自己裁量の幅が広い」と認知しているセールスパーソンほど、力を発揮し、高
    い成果を上げている。

    予算の立て方、行動計画、販売方法等への上からの一方的な押しつけは、まっ
    たく「やる気」をなくさせている。

    権限の委譲を多くするマネジャーの下にいる人ほど、高い業績を上げているの
    である。

   ⑥プラス思考を醸成する

    「楽観的に物事を捉える気持ちや意識」の高い、プラス思考の高い人ほど、高い
    業績を上げている。

    “なんとかなるさ”的なものではなく、「自分にはできる」「物事は必ずうまくいく」と
    いう前向きな意識の醸成が大事である。

    リーダーが悲観的、皮相的な見方に基づいた言動ばかりしないことだ。

    部下が落ち込んでいる時に上司の励ましの一言が、彼の人生を大きく変える事
    があるのです。

   ⑦自己効力感を高める

    自己効力感とは「人の役に立っているという気持ちや意識」を意味し、その意識
    が高い人ほど、業績の高いことが検証されている。

    「お客様のためなら最大限の努力を惜しまない」「仕事を通して社会に貢献して
    いる」という使命感を忘れてはいけないことを示している。

    この様にやる気の要因は、①モチベーション、②コミュニケーション、③教育
    ④パーソナリティ(個々人の特性)等によって培われているといえます。

    つまり、やる気の高揚による業績向上は、個人の特性を把握し、職場の特性を
    知り、7 つの視点(要因)を参考にして指導し、教育するリーダー、マネジャーの
    双肩にかかっているといえる。

    データでやる気を科学する!!これが「販売は科学」の第三の出発点でもある。

    この様に「データに基づいて販売」する科学する販売(知の販売)は、セールス
    の「量」の増大と「質」の向上と「やる気」の高揚をはかり、顧客の創造、業績拡
    大に大きく貢献することになるのです。

  □「データ」「情報」「やる気」のセールス

   販売の真の目的は顧客を集める「創客」です。

   結果である売上、利益(業績)は、端的に言えばセールスの「マインド」「知識」「技術
   (スキル)」の高さによって決まるということです。

   だからこそ、色々な「データを駆使」して指導し、教育するリーダーシップ、マネジメント
   が大事なのです。

   既に述べたように、明らかに「気づき」のデータ等がセールスの「意識」を変え、自己
   コントロール型の積極的な「行動」へと変える。

   この

    『意識が変われば行動が変わる。行動が変われば成果が変わる。
    成果が変われば感動が変わる。感動が変われば人生が変わる』

   その「意識の変化」「心の変化」がお客様の心を打つのです。

   販売とは単に「物を売る、サービスを売る」ということだけでなく、お客様の心を「どう
   捉えるか、動かすか」「どのように説得するか、満足していただくか」という、奥深さを
   意味しています。

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