プロジェクト


  ■プロジェクトとは

   多くの会社では、日常の業務以外に組織横断的な取り組みが行われています。

   たとえば、新商品開発のために意欲の高い人材を集めて特別チームを編成したり、
   全社員参加型の改善活動などを行ったことのある会社も多いでしょう。

   このような特別業務は「プロジェクト」と呼ばれることが多く、メンバーは期間限定で
   通常業務と同時並行で目的達成に向けて邁進することになります。

   経営環境がめまぐるしく変化する昨今では、機動的な対応が可能であるプロジェクト
   の重要性が増しているものの、多くの企業では運営上の問題などから十分な成果を
   得られていないようです。

  □プロジェクトを成功のポイント

   1.「宴会」も立派なプロジェクトのひとつ

     たとえば、新入社員のための歓迎会を行うことを考えてみましょう。

     社長が、日頃から「宴会部長」と呼ばれている中堅社員Aさんに、「新入社員の
     ための歓迎会を企画せよ」という指示を出した。

     その舜間に、Aさんをリーダーとした「新入社員歓迎会プロジェクト」はスタート
     したことになります。

     プロジェクトメンバーはAさんの指示で主要な役職者のスケジュールを確認す
     る若手のB君であり、会場を予約し予算の交渉を行うC君です。

     また、当日歓迎会に出席する社員は、社長を含めて全員がプロジェクトメン
     バーということになります。

   2.目的を間違えば段取りも間違う

     このプロジェクトの目的を改めて考えてみると、それは「全社員が集まって酒を
     飲んで盛り上がること」ではないのは明白です。

     本当の目的は「既存社員が新入社員に対する歓迎の意を示すこと」であり、そ
     の結果として「新入社員のやる気が高まること」などにあるはずです。

     Aさんを中心とした主要メンバーは、この本当の目的を達成するために、店選
     びや日程調整を行います。

     Aさんはたんに「宴会好き」ではなく、「さまざまな宴会の目的を理解し、それを
     実現させる」手腕を買われているからこそ宴会部長と呼ばれ、社長もプロジェ
     クトリーダーに指名したわけです。

     Aさんは新入社員歓迎会のための店選びは「酒の品揃え」よりも「コミュニケー
     ションの取りやすさ」を重視するでしょう。

     また、日程選択にあたっては「サービスデー」などの割安さよりも、社長を始め
     とするできるだけ多くの役職者が出席できる「参加しやすさ」を優先するでしょ
     う。

   3.目的を共有することが成功の第一条件

     また、Aさんたち主要メンバーだけではなく、当日参加するすべての社員がプ
     ロジェクトの目的を理解して、積極的に新入社員に話しかけるといったことも必
     要です。

     つまり、プロジェクトメンバー全員が新入社員歓迎会の本当の目的を理解して
     共有しておくことが、プロジェクト成功の大前提となるわけです。

     このことを忘れて一部の役職者が新入社員に対して「近頃の若い者は・・・」と
     始めてしまえば会は台無しです。

     ここまではわかりやすい例として、「宴会」という比較的単純で、かつ成功のた
     めの難易度も低いプロジェクトについて説明してきました。

     しかしながら「正しい目的を全メンバーが共有すること」が成功のための第一
     条件であることは、どのような複雑なプロジェクトにおいても変わりはありませ
     ん。

  □プロジェクト失敗の理由

   1.目的が明確化・共有化されにくい
     プロジェクトが失敗する最大の理由は、上記であげた前提である「目的の共有
     化」が難しいことにあります。

     これはプロジェクト業務においてもどうしても日常業務の尺度から抜け出せな
     いことが大きな原因です。

     誰もが容易に想像できる「歓迎会」の目的とは違い、通常のプロジェクトではこ
     の段階で「ボタンの掛け違い」が生じることが多いのです。

     たとえば、多くの会社で実践されている、全社員参加型の「生産性向上プロ
     ジェクト」について考えてみましょう。

     生産性向上とは、インプット(労力、時間、経費など)をできるだけ少なくして、 
     アウトプット(生産量、販売量、売上高、利益など)をできるだけ多くしていくこと
     です。

     では、この「生産性向上」をそれぞれの部門の立場から考えてみましょう。

     同じ生産性向上活動であっても、製造部門にとっての主要な関心事は生産量
     増大、購買部門では原価低減、労務部門では残業削減という具合にその力点 
     に違いが生じる可能性があります。

     たとえば製造部や営業部などの部門では、時間当たりの生産性があがれば、
     余った時間をさらなるアウトプットの拡大にあてようとするのに対し、労務部で 
     は生産性向上を残業時間短縮に直結させたいと主張するといったことが起こ
     ります。

     全社として生産性向上によってどのような状態を実現したいのかという明確な
     目的が共有化されていないためにこのようなことが起こるのです。

   2.指示命令系統が交錯する

     組織の指示命令系統は、原則ひとつです。

     営業部であれば、営業部長をトップにした指示命令系統が構築されます。

     そのなかで、上司は部下の業務内容を完全に把握したうえで、優先順位など
     も含めた業務指示を出すことになります。

     ところが、全社横断的なプロジェクトが立ち上がると、もともとの所属部門以外
     の指示命令系統ができることになります。

   3.予期しない事態が発生して自然消滅する

     プロジェクト業務は通常の業務と併行して実施されますが、通常業務で大きな 
     アクシデントが起こったり、長期の業績不振などが発生した場合には、プロジェ
     クト業務に取り組む余裕がなくなり、放置されることがあります。

     特に短期的な収益に直結しないようなプロジェクト業務ではこの確率が高くな
     ります。

     状況によっては、プロジェクト業務を中断せざるを得ないこともありますが、重
     要なのはあくまで中止ではなく一時的な「中断」であり、どのような状況になれ
     ば再開するかといったことを明確にしておくことです。

     そして、状況が整えばただちに活動を再開します。

     避けるべきことは、たびたびプロジェクトを立ち上げておきながら、「不測の事
     態」を理由に簡単にそれを中止してしまうことです。

     このような事態が続けば、新たなプロジェクトを立ち上げても、メンバーは「どう
     せまたうやむやになる」という気持ちから真剣に取り組まないようになります。

     また、特に重要なプロジェクトについては、多少のアクシデントが起こっても何
     としてもやり抜かなければならないという強い姿勢を社長自らが示すことが大
     切です。

   4.メンバーが十分に動機付けされていない

     参加メンバーにとって、プロジェクト業務は通常業務に加えての負担になりま
     す。

     メンバーのなかには、その負担を不満に感じる者もいるかもしれません。

     また、そのような雰囲気がプロジェクト全体に蔓延すれば、もはや積極的な取
     り組みは期待できません。

     社長やプロジェクトリーダーはメンバーに対して、プロジェクトの目的とともに、
     それが達成された場合にどのようなメリットをもたらすかをきちんと説明し、彼
     らを十分に動機付けしなければなりません。

     その際には、会社としてのメリットだけではなく、社員一人ひとりにどのようなメ
     リットがあるかを理解させることも重要です。

   5.プロジェクトに向かない業務

     組織横断的にプロジェクトに取り組むメリットのひとつに、メンバーがそれぞれ
     の部門の業務と兼務していることで、さまざまな角度からの視点が得られると
     いうことがあげられます。

     しかしながら、状況によってはこのメリットが兼務による絶対的な時間不足とい
     うデメリットに変わることがあります。

     特に重要で長期にわたって多くの負荷がかかる業務については、プロジェクト
     ではなく新規部門を立ち上げてメンバーを当該業務に専任させるほうがよい場
     合もあります。   

     また、新商品開発など、不透明な要素が多いプロジェクトについては、アイデ
     アごとに複数のプロジェクトを立ち上げて進行させ、事業化のメドが立ったもの
     については、その段階でプロジェクトを正式な新規部門に昇格させるといった
     方法も考えられます。

     このあたりの見極めはプロジェクトリーダーによる進言だけではなく、全社的な 
     状況を見極めながら、社長自身が決断することが必要です。

   6.プロジェクトリーダーの力量不足

     プロジェクト業務を成功させるためには、さまざまな問題を克服していかなけれ
     ばなりません。

     すでにできあがっている通常の組織を使ったマネジメントよりもその難易度は
     高いといえるでしょう。

     そして、プロジェクトが成功するかどうかの多くは、リーダーのマネジメント次
     第、つまりプロジェクトマネジメントの巧拙にかかっているといっても過言では
     ありません。

     たとえば、社内でもっとも技術力が高い人がプロジェクトリーダーを務めたとし
     ても、その人に営業的なセンスやさまざまな調整能力が欠けていればプロジェ
     クトは失敗します。

     特に規模の大きいプロジェクトのリーダーには、社長にも匹敵するような広い
     視野と経営センスが必要になります。

     プロジェクトリーダー選任にあたっては、社長自らが、さまざまな角度から吟味
     するとともに、プロジェクトスタート後もリーダーに対する指導が欠かせないで
     しょう。

  □成果を生むプロジェクト推進の手順

   一般的にプロジェクト業務は以下のような流れで進めます。

   1.構想・方針策定

     すべての仕事の出発点は「何のためにやるのか」という目的を明確にすること
     です。

     目的があいまいなままだと、その後の計画、実行などのプロセスは的外れなも
     のになってしまいます。

     特にプロジェクト業務では複数の部門にまたがってチームが編成されるため、
     個々の専門知識や問題意識の違いなどから目的の解釈に微妙なズレが生じ
     ることがあります。

     構想段階で明確な目的を設定しておくことが大切です。

     たとえば、全社的な生産性向上プロジェクトの目的を設定する場合、なぜ、そ
     のプロジェクトを行う必要があるのかを改めて考えます。

     その出発点が「現在の長時間労働では社員の健康面で支障が出る」という人
     事労務面からのものであれば、「時間当たりの生産量増大」は本来の目的達
     成のための手段に過ぎず、何よりもまして「労働時間を減らすこと」が目標とし
     て重視されるべきです。

     また、目的を達成したかどうかの判断材料となる目標の設定も不可欠です。

     そして目標は可能な限り客観的な数字で表せるものでなければなりません。

     残業時間短縮が目的であれば、「全社員の月間労働時間を15%減らす」と
     いった計測可能な目標を設定する必要があります。

     目標が設定できたら、それを実現するための基本的な方針を検討します。

     具体的にはプロジェクトの重要性・緊急性に応じてプロジェクトに投入する労
     力や資金、通常業務との優先順位などを決定することになります。

     この方針作りは、プロジェクトを全社の経営戦略のなかでどの部分に位置づけ
     るかを決定することにほかなりません。

     「自社の存続に関わる重要プロジェクト」と「成果につながるかどうかの可能性
     を探るプロジェクト」であれば、当然ながら取り組む際のスタンスも異なるはず
     です。

     このように構想・方針策定段階では、「何のために、どのような状態をめざし
     て、どのようなスタンスで臨むのか」というプロジェクトの骨組みを固める必要
     があります。

     次の段階の「計画策定」からは任命したプロジェクトリーダーに任せても構いま
     せんが、少なくとも構想・方針策定段階は、社長自身が深く関わっておくことが
     大切です。

   2.計画策定

     次に、決定した構想・方針を具体化するための計画策定を行います。

     この段階では社長自身がおおまかなアウトラインを描いた後に、詳細な計画
     策定や実行段階を任せられるプロジェクトリーダーを任命するとよいでしょう。

     前述のように、誰をリーダーに任命するかはプロジェクトの成否に関わる重要
     事項です。

     ほとんどの場合、リーダーは一定の役職があり、すでにマネジメントの経験が
     ある人から選ぶことになりますが、そのなかでも特に計画管理能力の高い人、
     何としてでもやり遂げる熱意がある人、コミュニケーション能力に秀でた人など
     を任命しなければなりません。

     特にプロジェクトメンバーの所属部門上司との業務調整能力などは必須となり
     ます。

     また、計画には最低限このような事項を盛り込んでおく必要があります。

   3.実行・進捗管理 

     プロジェクトが開始されたら、プロジェクトリーダーはマイルストーン((事業の 
     進捗を管理するために途中で設ける節目)やスケジュールに沿って定期的な
     進捗管理を行います。

     また、リーダーはその結果を社長にフィードバックすることも必要です。

     特に、計画変更の必要が生じた場合などには社長からの承認が不可欠です。

     一般的に計画がうまくいかない理由には、以下の3つが考えられます。

      ①計画そのものに無理があった

      ②計画は妥当であったがやり方に問題があった(担当者の能力不足・努力
        不足など)

      ③計画策定時と比較して環境が大きく変わった

     リーダーは進捗状況を完全に把握し、計画通りにいっていない場合にはその
     原因が上記のいずれかにあるのかを特定して対策を打たねばなりません。

     この際、①の場合は状況に応じて個々の計画を見直し全体の目標達成への
     影響を最低限に抑える必要があります。

     また、②の場合はメンバーへの個別指導や、場合によってはメンバーチェンジ
     も必要になってくるでしょう。

     ③の場合は「計画策定段階」で設定した「プロジェクト中断要件」も参照して、
     計画を大幅に変更してこのまま続行するのか、あるいはいったん中止するの
     かを判断する必要があるでしょう。

   4.終了・総括

     プロジェクトの達成、未達成にかかわらず、きちんとした区切りをつけ、総括を
     することは非常に大切です。

     また総括はリーダーだけが行うのではなくメンバー全員が行うことが重要で
     す。

     未達成の場合にその要因分析をすることはもちろんですが、達成した場合で
     も成功要因をさらに掘り下げることによって、次回以降のプロジェクトでさらに
     大きな成果に結びつけることができます。

     達成した場合には総括をせずに「打ち上げ」などの儀式だけで区切りをつける
     ケースもみられますが、これではせっかく苦労して生み出した「成功の法則」を 
     一度限りしか使わないことになり非常にもったいないといえます。

                       お問合せ・ご質問はこちら  

                       メルマガ登録(無料)はこちらから

 

お問合せ・ご相談はこちら

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
054-270-5009

静岡県静岡市のビジネス・ソリューション㈱です。
静岡・愛知県内、東京周辺を中心に中小規模企業の問題解決支援としてマーケティング・業務改善・リスクマネジメント
企業運営に欠かせない3つの仕組みづくりを支援いたします。
経営者にとって重要課題は会社をつぶさないことです。
しかし、毎年1万件以上の中小企業が倒産に見舞われています。
「知っていれば」「対策を講じていれば」倒産せずに済んだはずの企業が数
多くあったことを、私どもは見聞きしております。
少しでも多くの企業が、このような危機に見舞われず、最悪の事態を招く
ことのないよう、私ども専門家集団は事業運営に欠かすことのできない
マーケティング、業務改善、リスクマネジメントについて全力投球で支援
してまいります。

対応エリア
静岡・愛知県内、東京周辺

お気軽に
お問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

054-270-5009

 (コンサルティング部門 直通<柴田>)

新着情報

2024年4月19日
記事:「効率的な仕事の進め方 Ⅱ」更新しました。
2024年4月18日
記事:「メルマガ708号」 更新しました。
2024年4月18日
記事:「保険代理店 法人マーケットの攻略」更新しました。 
2024年4月17日
記事:会社を育てる」更新しました。
2024年4月15日
記事:「タイムマネジメント Ⅱ」 更新しました。
  • 詳細はこちらへ

ビジネス
ソリューション
仕組み構築

住所

〒422-8067
静岡県静岡市駿河区南町
2-26-501